気象庁に潜入撮!――知られざる巨大官庁の秘部を見た! 聞いた! 触った!

箱根山に口永良部島の噴火、そして大型台風の襲来…。日本を襲う様々な天災。その最前線で闘うのが『気象庁』だ。だが、天気予報や地震速報でその情報に触れても、実体を知る人は少ない筈。本誌が気象庁の内部に潜入し、全てを目撃した!

JMA 01

JMA 02
「気象庁はお役所ですから(笑)」。気象庁を取材しようとすると広報室にそう釘を刺され、何枚も企画書を書く羽目に。気象庁は国土交通省の外局である。天気予報等で身近なイメージがあるが、縦割りと書類文化は他の省庁と変わりはない。気象庁本庁は大手町にある。築51年8階建てのビルの内部は薄暗く、天井も低い。館内は静まり返っていた。「こんな古いビルで、本当に天気予報をしているのか?」と不安に思いながら、天気予報を司る“予報現業室”を覗くと、モニターが壁一面にずらりと並ぶ近未来的な部屋だった。細かい数値や雲の動き・天気図等が次々に映し出される。私語は殆ど聞こえない。「夜勤はタ方4時に来て、翌日朝9時半まで。5日周期で休みを取っています。体力的にはきついです。でも、年数を重ねると理解力・判断力がついて、予報の速さがアップする」(予報課)。気象庁の仕事は、24時間365日途切れることはない。別の職員は、「盆暮れ・正月は無いです。しかも、天気や災害に国境は無い。全世界でデータのやり取りをしていて、世界で同時に観測してデータをアップしている」と話す。本庁だけではない。気象庁は全国5ヵ所に管区気象台、3ヵ所に気象台、更には気象衛星から観測船・気象大学校まで擁している。「気象庁職員の多くは、時間の観測を交代で続ける。1年間の南極観測隊に参加することもある。体力勝負の職場」(広報室)なのだ。気象庁職員の殆どは国家公務員試験を受けた技官。理系集団の職場だ。給与は平均すると約600万円(人件費と職員数から算出)。本庁の近くには官舎も用意され、緊急の出動に備える。普段、天気や地震の情報には触れるのに、その実態は知られていない気象庁。その心臓部に潜入しよう。

JMA 03

続きを読む

スポンサーサイト

テーマ : 地震・天災・自然災害
ジャンル : ニュース

【ドローンの時代】(04) 手遅れになる前に対策を急げ――多様なドローンの規制は法律だけでは不可能だ、メーカーとユーザー・行政の協力が欠かせない

近頃、矢鱈とドローンの話題を耳にするようになった。アメリカの人気テレビドラマのセリフに登場したかと思えば、『アマゾンドットコム』は商品の配達にドローンを利用する計画を発表。大型台風に見舞われたフィリピンでは、ドローンを使って被災地マップが作成された。フランスでは、原子力発電所の上空を正体不明のドローンが飛行していたことが発覚した。アメリカやヨーロッパでは、民間の飛行空域をドローンに開放する動きが進む等、ドローンは益々日常的な存在になりつつある。それだけに、この小型機が市民の自由とプライバシーに齎す独特の問題点を早期に見極め、適切な対策を講じることが重要になっている。

ドローンは、データの収集方法を大きく変えつつある。これまでの民生用ドローンは、高解像度カメラで航空写真を提供する程度だった。だが、最近はサーモグラフィーで撮影したり、無線通信の基地局となったり、環境汚染の測定を行ったり、生体データを集めたりと、多様な機能を持つようになってきた。小型化も急速に進み、通常アクセスし難い場所でのデータが可能になってきた。高層ビルの上層階の窓から室内の様子を窺ったり、建物内に入って目につかない場所に着陸して定点観測することもできる。次にフランスの原発上空をドローンが飛ぶ時は、小さ過ぎて発見できないかもしれない。一部のドローンは飛行音が極めて小さいから、秘密の監視にもってこいだ。この点はとりわけ、産業スパイやテロ活動の懸念を生じさせている。低価格化も懸念を大きくしている。既に、基本的なモデルは数百ドル程度で入手できる。企業ユーザーなら、ある程度慎重な運用を心掛けるかもしれない。だが、個人ユーザーは大した罪悪感も無く、ドローンで隣人や家族の行動を覗き見しようとするかもしれない。だから規制が必要だ。勿論、ドローンには危険な仕事を低コストでやってくれる等、一律に禁止するべきでない利点も多い。それに、農薬散布や環境汚染の測定・災害救援活動に使用するなら、深刻な問題を生じさせる可能性は低い。他方、警察活動や報道、更に個人の趣味でドローンを利用する場合は、大きな問題を引き起こす可能性は十分ある。

続きを読む

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
ジャンル : ニュース

【ドローンの時代】(03) ドローン操縦士を待ち受ける後遺症――遂に戦争映画でも無人機が主題に…遠隔操作で人を殺し捲る兵士も戦場の兵士と同様に心に傷を負うのか

drone 07
名作の誉れ高い映画『パットン大戦車軍団』(1970年公開)冒頭、第2次世界大戦の英雄・パットン将軍が前線の兵士に気合いを入れる。「国の為に死んでも戦争には勝てん。別な奴を国の為に死なせてこそ勝てるのだ」。先頃、アメリカで封切られた新作映画『グッド・キル』にも似たような激励シーンがある。教官役の将校が、戦闘前の新兵たちに熱く語る場面だ。「諸君の飛行機は戦争の未来ではない。今ここにある戦争なのだ」。アンドリュー・ニコルが脚本と監督を担当したこの映画では、ドローン(無人攻撃機)操縦士のトム・イーガン(イーサン・ホーク)の目を通して戦争の悲惨さが語られる。主人公は戦場から遠く離れたネバダ州の冷房の効いた建物でコンピューターに向かい、過激派組織と戦っている。1日2時間の勤務を終えるとラスベガスの自宅に戻り、家族と過ごす。いつの時代にも、戦争映画は兵士の人間としての苦悩を描いてきた。その点は『グッド・キル』も同じだ。しかし、遠隔操作で人を殺す兵士の気持ちをどこまでリアルに描けたのだろうか? 本誌は、元ドローン操縦士のブランドン・ブライアントに話を聞いた。彼は、映画製作の初期段階でプロデューサーから意見を求められたという。そこで脚本を読み、意見を述べ、体験を語り、質問にも答えた。だが、暫くすると連絡が途絶えたという。映画業界では珍しいことではないらしい。だがブライアントは、「連絡が切れたのは、脚本に欠けている要素を指摘したせいだ」と考えている。「遠隔操作で戦うドローン操縦士の心理的な負担が描かれていない」と彼は言う。「心理的側面の描写は、この手の映画では最も重要だ」。なぜなら、「ドローンは兵士を戦場から引き離し、孤独にさせたのだから」。

10年前のことだ。モンタナ大学の苦学生だったブライアントは、友人を陸軍の新兵採用事務所に車で送り届けたことがきっかけで、数週間後には自らも空軍に入る決心をした。テキサス州で数ヵ月の訓練を受けた後に配属されたのは、映画の主人公の勤務先と同じような、ラスベガス近郊の窓の無い建物だった。彼の任務は、ミサイルをレーザーで攻撃目標に誘導すること。勿論、気が滅入る仕事だったが、やり続けるしかなかった。2007年には半年の間に4発で13人を殺したという。その中には巻き込まれて死んだ民間人も含まれる。彼は人生初の一撃を細部まで鮮明に覚えている。アフガニスタンのどこかの道を、自動小銃を抱えた男が3人歩いていた。前の2人は何かでもめている様子で、もう1人は少し後ろを歩いていた。彼らが誰なのか、ブライアントには知る由もなかった。上官が彼に下した命令は、「何でもいいから前の2人を攻撃しろ」というもの。「1人より2人のほうがいい」からだ。土煙が収まると、目の前の画面には大きく抉れた地面が表示されていた。2人の肉体の断片が散らばり、後ろにいた男も右脚の一部を失って地面に倒れていた。「男は血を流し、死にかけていた」。赤外線カメラの映像に白っぽく映る血糊は地面に広がり、冷えていった。「男は軈て動かなくなり、地面と同じ色になった」

続きを読む

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
ジャンル : ニュース

【ドローンの時代】(02) 進化系ドローンの潜在力――ビジネス面での活用から人道支援まで…未来の民間用ドローンはここまで便利になる

drone 04
「これが“ドローン効果”ってやつか」――。先月、千葉市の幕張メッセで開催された『国際ドローン展』の会場で、坂本修は自分の目を疑った。ヤマハ発動機で20年来、農薬散布用の無人機を手掛けてきた坂本の目の前で、彼の講演を聴きに来た人々が長蛇の列を作っていたのだ。『ドローン』という呼び名さえ無かった1983年に開発が始まったヤマハの農薬散布用無人機は、謂わば民間用ドローンの先駆け的存在。今では日本国内だけで2500台以上稼働しており、国産米の3分の1以上が“ドローン農薬”の産物だ。全世界のドローン企業が一堂に会する見本市の会場とはいえ、農薬散布というニッチな用途の、しかも1000万円以上する高額なマシンにこれほど注目が集まるのは、民間用ドローンへの期待の大きさの表れだ。日本では4月に首相官邸で不審なドローンが発見されて以来、治安を脅かす“悪役”のイメージが強調されがちだが、ドローンにはビジネスや人道支援に役立つ“善玉”の顔もある。今後、機能が更に向上すれば、今は想像もできない活用法が生まれ、生活の隅々にまでドローンが浸透するかもしれない。「ドローン産業は始まったばかり。日本でも世界でも本当に盛り上がるのはこれからだ」と、東京大学大学院の鈴木真二教授(航空工学)は言う。

ドローンの民間利用として、真っ先に思い浮かぶのは物流ビジネスだろう。『アマゾンドットコム』が2013年末、ドローンで30分以内に荷物を届ける新サービス『プライムエア』計画を発表して以来、世界各地で“ドローン配送”の実験が始まっている。スイスとフランスの郵政事業会社は、早ければ年内の実用化を目指して試験飛行を重ね、ドイツの『DHL』は北部離島への医薬品輸送に挑んでいる。日本でも、香川県高松市で港から瀬戸内海の離島に向けて医薬品を運ぶ試みが始まっている。従来のフェリーの半分の時間で済み、コストも抑えられる。但し、物を運ぶのはドローンが担える仕事の極一部に過ぎない。カメラや熱赤外線センサー・放射能測定器等の搭載機器と融合することで、ドローンの果たせる役割は劇的に広がり、計り知れない経済効果を生み出す。ワイン農家が畑をドローンで監視してブドウを摘むタイミングを見極めたり、海で魚の群れを探知して、従来は経験頼りだった漁場探しを効率化したり。フランス『バロット社』の小型ドローン『eBee』は、700gという軽量を生かして45分間連続飛行することで、数百haの畑を一気に観測できる。

続きを読む

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
ジャンル : ニュース

【ドローンの時代】(01) 人類に迫り来るドローンの時代――相次ぐ事件で注目度が高まる無人機は“空の産業革命”の切り札か、それともプライバシーを脅かす危険な道具か

ミツバチの羽音のような「ブーン」という低音を響かせ、空中を自在に飛び回る『ドローン(無人飛行機)』。その見た目からして、何十年も前から玩具として親しまれてきたラジコンヘリと大差ないこの小さな飛行物体が、今年に入って俄かに世界中の注目を集めている。理由の1つは最近、ドローン絡みの事件や事故が世界各地で頻発していることだ。今年2月には、風刺週刊紙『シャルリーエブド』襲撃事件で揺れていたパリに、正体不明のドローンが連日出没して人々を不安に陥れた。アメリカでも1月、ホワイトハウスの前庭にドローンが誤って墜落して大きな騒ぎになった。ドローン騒動は日本国内にも及んでいる。4月に首相官邸の屋上で微量の放射性物質を積んだドローンが発見された事件は、空からの脅威に何の備えもしていないお粗末な警備体制を露呈した。先月には、15歳の少年が東京・浅草の三社祭でドローンを飛ばそうとしたとして逮捕された。但し、ドローンがこれほど関心を集めるのは、相次ぐ事件のせいだけではない。根底にあるのは、私たちの生活を激変させる可能性を秘めたテクノロジーへの興味と不安。現時点では、ドローンが空からピザを届けるような未来はまだ先の話だが、軍事用ドローンの登場で戦争の形が変わったように、安全且つ高性能な商業用ドローンの普及に依って、物流の常識や農業・漁業の姿が一変する時代は刻一刻と迫っている。革新的なテクノロジーの登場は、期待と同時に不安を掻き立てる。コントロールを失ったドローンがいきなり地上に落ちてくるという直接的な危険から、空からプライバシーを覗かれたり、ドローンを使ったテロが起きる懸念まで不安材料は幾つもある。その多くは既存のルールでは対応し切れない問題だが、法整備等の議論はまだ始まったばかりだ。

drone 02
ドローンとは、一言で言えば遠隔で操作できる小型の無人飛行体。友人航空機と同じ固定翼を持つ機種もあるが、標準的なのは複数のプロペラを回転させ、垂直に離着陸するタイプだ。基本的な仕組みはラジコンヘリと同じ。但し、ラジコンが“飛ばす”こと事態を楽しむものなのに対し、ドローンは飛行中に何らかの作業を行うことを主目的としている。GPS等で目標地点を登録しておくだけで、自力で目的地まで飛行できる点もラジコンより高度だ。近年は専用コントローラーではなく、iPhoneやiPadにアプリをインストールして操作する機種もあり、空撮等の趣味用を中心に世界で月3万台以上のペースで増えているとの試算もある(ホワイトハウスや首相官邸で騒ぎを起こしたドローンも趣味用のマシンだった)。ドローンの開発は当初、軍事目的から始まった。対テロ戦争に乗り出したアメリカのブッシュ前政権は、無人機をアフガニスタンに送り込んで戦闘に使用した。オバマ政権になると、アメリカ軍の無人機への依存度は飛躍的に高まり、今やアメリカ空軍の機体の3割がドローン。「今後、アメリカで新規で開発される戦闘機はドローンになる」との見方もある。一方、ビジネスにドローンを活用しようという動きも2000年前後から高まっている。「農場で作物の生育状況を調べる」「暗視カメラを搭載したドローンで危険地帯をパトロールする」「スキー競技の様子を上空から撮影する」といった利用法は、既に広がっている。更に、「難民に食料を投下する」「ネパール大地震の山岳部の被害状況を調査する」といった人道目的の作業でも、ドローンは強みを発揮している。

続きを読む

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
ジャンル : ニュース

火山が教える“暗記教育”のバカバカしさ――“箱根は死火山”よりも教えてほしかったことがある

小学生時代の思い出に白地図がある。社会科の授業だった。色鉛筆で真っ白な日本列島に山脈山地を茶色、川や湖を水色に描き込んでいく。或いは大都市に印をつけて、それらを鉄道で繋ぐこともある。頭の中に日本列島のジオラマが出来上がっていくようで、楽しい作業だった。その白地図学習で覚えたものの1つが、火山と火山帯である。先ずは火山を三角印で表す。この時、それらが活火山か休火山か死火山かもセットで記憶していったように思う。首都圏の子に馴染み深いものを挙げれば、「富士山は休火山・箱根山は死火山・伊豆大島三原山は活火山」だった。更に白地図には、火山の並びをタラコのような形に囲む。火山帯である。富士・箱根・三原は『富士箱根伊豆火山帯』に含まれていた――。と、懐旧談に耽ったが、この知識は最早全てひっくり返ってしまった。今も活火山はあるが、休火山や死火山という言葉は使われない。しかも活火山の数はぐんと増え、三原山は勿論、休んでいる筈の富士山も死んでいる筈の箱根山も、そのリストに名を連ねるようになった。それだけではない。当時は、日本列島に『千島』『那須』『鳥海』『富士箱根伊豆』『乗鞍』『白山』『霧島』の計7つの火山帯があると教わったという記憶があるが、今は大まかに東日本火山帯と西日本火山帯の2つに括られているらしい。

ここでわかるのは、日本列島の火山に対する見方がこの半世紀で激変したことだ。にも関わらず、半世紀前に当時の知識を叩き込まれた子供たちは、老いてもそれを頭の片隅に固着させている。私が先日、年齢層が割と高いサイエンスカフェで火山の話題を取り上げて、「箱根はナニ火山?」と聞いたところ、会場から「活火山」という答えは返ってこなかった。「暗記教育の“成果”はこびり付いて離れないものだな」と思い知らされたのである。この現実から、私たちが受けてきた教育の欠点が浮かび上がる。自然科学の知識は観測事実が積み重なり、理論の枠組みが変わることで塗り変えられていくものなのに、その変化に対応する教え方がなされなかったということだ。火山については、社会科の授業で扱われたということも問題かもしれないが、科目を問わず暗記ではない教え方があるように私は思う。例えば、活火山について。気象庁の公式サイトには、『“活火山”の定義と活火山数の変遷』と題した記述があり、「火山の活動の寿命は長く、数百年程度の休止期間はほんの束の間の眠りでしかないということから、噴火記録のある火山や今後噴火する可能性がある火山を全て“活火山”と分類する考え方が1950年代から国際的に広まり、1960年代からは気象庁も噴火の記録のある火山を全て“活火山”と呼ぶことにしました」とある。私が小学校で、「富士山は休火山・箱根山は死火山」と教わったのは1960年代前半。既に学界では、休火山や死火山の概念が大きく揺らいでいたことになる。そんな時になぜ、「あれは休火山、これは死火山……」と丸覚えさせていたのか? 火山学者の常識が教育現場に伝わるには時間がかかるとしても、最早暗記させるほどのことではないという判断はできた筈だ。いや寧ろ、こう言うべきかもしれない。1960年代に子供たちに是非教えておくべきだったのは、専門家が1950年代に強く認識したことそのものではなかったか? 即ち、火山と人間では時間スケールが全く違うということだ。300年という時間幅を考えてみよう。人間にとっては十世代に跨る長い歳月だが、火山にしてみれば“ほんの束の間”に過ぎない。そのことを子供たちが頭に入れておけば、大人になってから、大噴火や巨大地震は近過去に記録が無くても起こると警戒するようになるだろう。こちらのほうが、火山のレッテル貼りよりも遥かに有用の筈だ。

続きを読む

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
ジャンル : ニュース

NHKスペシャルで話題沸騰…60歳が20歳に若返り、出産も可能に!?――夢の長寿薬『NMN』を発見した博士がすべてに答えた

世界同時株安で始まった5日の株式市場で、日清製粉の株価は前週比75円高の1245円をつけた。前夜放送されたNHKスペシャルで、子会社のオリエンタル酵母が生産している試薬『NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)』が大きく取り上げられたことが、買い材料につながったとみられる。「30年後の2045年には平均寿命が100歳になる」「60歳の女性が20歳に若返り出産も可能になる」――番組は近未来の超長寿社会をこう描いたが、そのカギを握る“夢の長寿薬”として登場したのが『NMN』だった。NMNの効果を2007年に発見したのが、番組にも登場した米ワシントン大学医学部の今井眞一郎博士である。今井博士のグループが老化して糖尿病になったマウスにNMNを投与したところ、症状に劇的な改善が見られたという。また、老化したマウスの神経細胞を増やす働きもあった。さらに、米ハーバード大学のデイビッド・シンクレア教授による実験では、人間なら60歳に相当する生後22ヵ月のマウスに1週間NMNを与えた結果、筋肉細胞の働きが生後6ヵ月(人間なら20歳)にまで若返ったという。これが60歳の女性でも出産が可能になるという根拠だ。

それにしても、この長寿・若返りはどういう仕組みなのか、今井博士に質問してみた。今井博士がまず着目したのは、“長寿遺伝子”といわれるサーチュイン遺伝子だ。「サーチュイン遺伝子はあらゆる生物が持っていて、老化と寿命を制御しています。人間は活性酸素や免疫の暴走など、100種類以上もの老化の原因を抱えています。これを“掃除”していくのがサーチュイン遺伝子の役割です。たとえば、マウスで働きを強めてやると寿命が16%ほど延びます。このように、老化が遅れて寿命が延びることから長寿遺伝子とよばれるようになったんです」。これを人間にあてはめれば、平均寿命は100歳にまで延びることになる。ただし、ふだんはスイッチがオフになっていてサーチュイン遺伝子は眠った状態になっている。「ところが、食べ物が減り飢餓状態になると、NADと呼ばれる物質が増えてサーチュイン遺伝子が活性化するんです。栄養が少ないなかで子孫を残すのは大変で、下手したら死んでしまう。それを防ぐため、飢餓状態のときは細胞が生き延びられるよう、サーチュインがいろいろな体の機能を守る働きをします。“腹八分目”というのはその点でも意味があったんです」。つまり、NADがあれば若返り遺伝子は機能するのだが、その原料となるのがビタミンB3である。ビタミンB3がNMNに変化し、それがNADを作るのだ。

続きを読む

【小保方事件で失ったもの】(後編) 科学者たちはなぜ『STAP細胞』に騙されたのか

STAPという名の幻の細胞があった。というのが、いまとなっては正しい言い方だろうか。少なくとも、当初発表された方法では作れそうにない。いまさらそんな細胞を論じても大した意味がないかもしれない。しかし、一時的にとはいえ、その存在が信じられたのだ。どうしてそんなことになったのだろう。 (仲野徹)

我々の体は、たった1個の受精卵から発生してくる。その過程において、200~300種類もあるさまざまな細胞へと分化する。受精卵はすべての細胞になりうる性質を有しているので、全能性である、という。そして、通常、細胞分化はこのように一方向性で逆戻りはしない。ご存じiPS細胞は、分化した細胞に遺伝子導入などをおこなうことによって作成される多能性細胞である。科学における用語の使用法は厳密だ。ES細胞やiPS細胞は、ほとんどすべての細胞になりうるが、胎盤の細胞になる能力がないので、全能性ではなくて多能性という。ちなみに、万能性というのは科学用語ではなくてマスコミ用語である。何らかの方法を用いて、分化した細胞を全能性や多能性の細胞へと逆戻り、いわば“先祖返り”させるのが『リプログラミング』である。リンパ球などを酸性溶液に浸すなどのストレスで“簡単に”全能性――多能性ではなく全能性――の細胞へリプログラミングできる、というのがSTAP細胞の“売り”であった。

もしも、であるが、iPS細胞がなければ、STAP細胞が信じられることはなかったに違いない。作成の方法はまったく異なっているけれども、山中伸弥教授らの研究で、細胞というのはリプログラミング可能であるということが、科学者の“常識”として定着していた。だから、STAP細胞も、ひょっとしたらありえるかもしれないと受け入れられた。捏造データが使われたとはいえ、どうして多くの研究者が騙されたのだろうか。これには、関連分野の研究者として、私も深く反省しなければならない点がある。

続きを読む

【小保方事件で失ったもの】(前編) トップ研究機関・理研は立ち直れるか

2014年、STAP細胞の話題が世間を独占した。30歳の“リケジョ”が画期的な研究結果を出したとして、日本中がその業績を讃えたが、その論文に不正が見つかると、世論は牙を剝いた。報道は過熱し、ついに自死者まで出ることになった。問題がここまで大きくなった原因には、理化学研究所(理研)の対応のまずさがある。STAP細胞の“事件”は、日本のトップ研究機関である理研、ひいては日本の研究体制に大きな欠陥があることを示している。 (榎木英介)

理研は日本資本主義の父と呼ばれる実業家・渋沢栄一らの尽力により、1917年に財団法人として設立された。戦前から『主任研究員制度』を設け、研究者の自由裁量にまかせた研究が行われるなど、“科学者の楽園”とさえ言われた研究機関だった。戦後は体制が何度か変わり、2003年に独立行政法人になり現在に至る。ノーベル賞受賞者の野依良治博士が独立行政法人の初代理事長になり、以来11年にわたり理研を率いている。理研は文句なしに日本のトップ研究機関である。トムソン・ロイター社が発表した『インパクトの高い論文数による日本の研究機関ランキング』によれば、理研は大学を含めた日本の研究機関の5位に位置し、旧帝国大学の半数以上を凌駕する。政府が理研を『特定国立研究開発法人』に指定しようとしているのも、自他共に納得行くものだった。

ところが、そんな理研で研究不正事件が発生した。研究不正自体はどの研究機関でも発生している。STAP細胞の件で撤回された論文は2報(3月に発表されたSTAP細胞の作製方法の論文をあわせれば3報)であり、50報を超える論文に疑義がある東京大学の不正事件に比べれば、数としては少ない。問題は理研の対応である。

続きを読む

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR