YouTubeが大きな賭け、有料版は吉と出るか――専用スタジオを世界に8ヵ所、有料化は諸刃の剣?

『Google』による買収から10年。動画配信サイト『YouTube』が大きな賭けに出る。今年中にも日本やヨーロッパ、そしてオーストラリア等で有料サービスを始める。有料化は収益力を上げるメリットもある一方で、広告収入が減りかねないリスクも孕む。 (齊藤美保)

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2005年、YouTubeで配信されていた1本の動画に、Google幹部の目は釘付けになった。中国人の学生が、イギリスの人気アイドルグループの曲を歌っている動画だった。「世界中の誰でもコンテンツを発信できて、それを誰もが視聴できる。これが、エンターテインメントの新たな形になる筈だ」。そう直感したGoogleは翌年、YouTubeを16億5000万ドル(約1800億円)で買収した。当時の売り上げが約100億ドル強だったGoogleにとって、YouTubeの買収は大きな賭けだった。それから10年。YouTubeは、Googleの想定を遥かに上回る規模に成長した。対応する言語は76に上り、配信地域は世界88カ国を超す。今や、全世界で10億人以上が視聴する世界最大の動画配信プラットフォームだ。創業から11年、Googleの傘下に入って10年が経つ今年。無料という強みを生かし、利用者を増やし続けてきたYouTubeは、有料サービスを世界で開始する。有料動画市場は競合が犇くが、YouTubeにどんな勝算があるのか。カリフォルニア州サンブルーノ。YouTubeの本社オフィスは、現在も創業当時の地にある。『PayPal』社員だった3人の青年が立ち上げた当時と比べると、従業員は数百倍に増え、オフィスも計3棟に増えた。それでも敷地内には、今もシリコンバレーのベンチャー企業独特の活気が満ち溢れている。「過去3年間、YouTubeの視聴時間は年50%以上の成長を続けている。次に考えることは、新たな10億人ユーザーの獲得だ」。Googleに16番目の社員として入社し、2014年からYouTube事業のCEO(最高経営責任者)を務めるスーザン・ウォジスキ氏(左下写真)は、こう語る。私生活でも5人の子供を抱え多忙を極める彼女が、アメリカのメディア以外に露出することはこれまで殆ど無かった。次の10年に向けたYouTubeの戦略を世界に発信する為、今回、アメリカ国外の経済メディアの取材を受けた。

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10年間のYouTubeの歴史を振り返ると、大きく分けて3つのターニングポイントがある。1つ目は、Googleによる2006年の買収だ。未だ知名度が低かったベンチャー企業へ約1800億円を投じることに、当時は「高い買い物」との批判が多かった。そんな声を尻目に、YouTubeはGoogleの資金支援を受けながら規模を拡大し続けた。2つ目は、動画投稿者へ広告収入を分配したこと。YouTubeではそれまで、一部の人気動画投稿者に限って広告収益を分配していた。2012年からは一定の再生回数を超える動画を投稿した人なら誰でも、広告収入の一部を受け取れるようにルールを改めた。この変更で、動画投稿者が爆発的に増えた。その結果、化粧品のレビュー・英会話レッスン・料理・ゲームの実況・曲のカバー等、自分の特技を生かした動画を撮影して投稿する素人が増え、広告収入で稼ぐプロの“ユーチューバー”の誕生に繋がった。アメリカでは、10代で年に5000万円の広告収入を得る人気ユーチューバーもいる。YouTubeが人気を集めた背景には、若者を中心としたテレビ離れがある。企業にとっては、テレビ広告に比べ安価で、よりターゲットを絞った広告が打てるメリットがある。その為、YouTubeや『Facebook』等のインターネット上へ、動画広告の出稿を増やす動きが広がっている。YouTubeに舞い込む動画が爆発的に増えたことで、弊害も出てきた。例えば、投稿されたコンテンツの管理。「これまでに本当に沢山の動画を削除してきた。恐らく…何千万本にも及ぶ」。ウォジスキCEOは、こう明かす。YouTubeには現在、毎分400時間以上に相当する動画がアップロードされるという。その中には、YouTubeのガイドラインに沿わない動画もある。具体的には、アダルトコンテンツ・暴力的なビデオ・ヘイトスピーチ等だ。中東の過激派『IS(イスラミックステート)』は、影響力と発信力のあるYouTubeのプラットフォームを逆手に取り、殺害予告や暴力的なシーン等の動画配信を続けている。YouTubeでは、専門のチームがこうした違法動画を削除している。視聴者が“違法コンテンツ”として報告してくるケースが殆どだ。しかし、その膨大さ故にイタチごっこは続いている。

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『Apple』よりFBIを支持するアメリカ社会の病理――スノーデン事件と9.11テロの影

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銃乱射事件の容疑者が所有していたiPhoneの暗号解除を『アメリカ連邦捜査局(FBI)』が要求し、『Apple』が拒否している問題は、遂に法廷に持ち込まれた。死亡した容疑者夫婦は熱心なイスラム教徒だった。『Google』等の大手IT企業30社はAppleを支持するが、世論調査は逆にFBI支持が多数を占める。価値観が分裂するアメリカ社会を象徴する出来事だ。銃犯罪が多いアメリカでも、昨年12月にカリフォルニア州の福祉施設で起きた乱射事件ほど衝撃を与えたものは少ない。イスラム教に傾倒した容疑者が14人を殺害。FBIは背後関係を捜査する為、iPhoneに残されたデータの暗号解除をAppleに要請した。だが、Appleは拒否。ティム・クックCEO(右写真)は先月、顧客に向けたメッセージで理由をこう説明した。「我々は、暗号技術に依って顧客の個人情報を守っている。しかし、政府はiPhoneに“バックドア”(暗号を解除してデータを抜き取る裏口)のOSを作るよう求めている。これはとても危険なことだ。そんなOSを作れば、世界中の端末から情報を抜き取るマスターキーになってしまう。我々は民主主義への敬意と祖国愛を持って、政府に異議を唱える」。通常、スマホは暗号化されたパスワードでデータを守っている。仮に、FBIが可能性のあるパスワードを大量に入力する“総当たり攻撃”をかければ、いつか解除することができる。しかし、容疑者のiPhoneは、①パスワードを間違えると次の入力までの時間を長くする入力遅延機能②10回間違えると内部のデータを自動消去する機能――という2つの防御機能を備え、総当たり攻撃を不可能にしている。そこでFBIは、この防御機能を解除する為のバックドア用OSを別途作るよう要求しているのだ。FBIは「このOSはAppleが保有し、解除が必要なiPhoneが現れる度に裁判所からAppleに解除要請する形にすれば、プライバシー保護に影響は出ない筈だ」と主張し、Appleを「テロ捜査に非協力的な会社である」と攻撃している。一方のAppleは、バックドア用OSを作れば、FBIはこの先、何度も合法的に暗号解除の要請を繰り返し、テロ対策だけでなく、“国益”の名の下にメディアや市民の思想調査、果ては政敵のスキャンダル探し等に際限なく広がることを懸念する。

2013年に起きたスノーデン事件が、今回の伏線としてある。『アメリカ国家安全保障局(NSA)』で働いていたエドワード・スノーデン氏に依り、NSAが『PRISM』と呼ぶ極秘監視システムを使って、個人の電子メール・画像・利用記録等を極秘に収集していた事実が暴露された。インターネット情報の収集には、IT企業9社が協力していた。『Apple』『Google』『Facebook』『Microsoft』『Yahoo!』『YouTube』『Skype』『AOL』『Paltalk』である。電話盗聴には、通信大手の『ベライゾン・ワイヤレス』が手を貸した。暴露報道に慌てた9社は「PRISMなど知らない」と弁明していたが、後日、数社が事実を認めた。Facebookの場合、半年間で約1万件の提供要請があったという。9社の中で真っ先にNSAに協力したのがMicrosoft(2007年)で、NSAとの共同チームまで作っていた。最後に応じたのがApple(2012年)で、創業者のスティーブ・ジョブズが亡くなった翌年に、後継のティム・クックが協力に踏み切った。ユーザーからiPhoneの信頼性や安全性を疑われたAppleは、2014年以降は自社すら暗号を解除できないようにOSを改変し、諜報機関の要請には応じない姿勢に転じた。AppleとFBIの対立がエスカレートする中、先月に行われた世論調査(ピューリサーチセンター)では、過半数の51%がFBIの主張を支持し、Apple支持の38%を大きく上回った。18歳から65歳以上まで全ての年齢層で同じ傾向があり、年齢が高いほどAppleの支持率は低かった。民主主義やプライバシー保護を訴えるAppleに、世間は意外にも冷ややかだったのだ。9.11テロ以来、アメリカにはイスラムへの嫌悪や恐怖が積もっている。元々多民族の移民国家であり、自由・平等・個人の尊重・民族や宗教の多様性を目指してきたアメリカも、ここへ来て、普遍的な価値より“諜報国家”への志向を強めている。

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『アルファ碁』圧勝の本当の衝撃度――人類に見えないものを見始めている人工知能が齎す未来とは?

『Google DeepMind』の開発した人工知能囲碁プログラム『Alpha碁』と、世界チャンピオンクラスの李世乭9段(韓国)の5番勝負が終わった。Alpha碁が4勝1敗で勝ち越すという衝撃的な結果であった。以前、私は「人工知能が囲碁のトッププレーヤーに勝利するのは、早ければ数ヵ月で決着が着く。遅くとも来年には、人間の世界チャンピオンに勝つ日が来るであろう」と予想したのだが、それを遥かに超える速度で事態は進行している。では、今回の対局から何が見えてきたのであろうか? テレビ等では「Alpha碁は深層学習(Deep Learning)を使っている」と解説されることが多かったが、単なる深層学習から“深層学習+強化学習(Reinforcement Learning)”へと展開したことが強さの秘密であろう。Alpha碁は、深層学習・強化学習・モンテカルロ探索を組み合わせた人工知能プログラムである。大雑把に説明すると、深層学習は盤面理解や打ち手のパターン分類等に使われ、打ち手の決定は強化学習に依って行われている。深層学習に関しても、まだまだ解決しないといけない問題は山積している。しかし、最終的に確率的意思決定が必要な応用に関しては強化学習が使われている。これからは、“深層学習+強化学習”の組み合わせを軸とした展開になることが先ず見えてくる。次に、対局の内容を見てみると、解説者が理解できない指し手が、暫く後になって意味がわかるということが繰り返し起きていた。また、囲碁の対局では先読みのし易い盤面の周辺部が主戦場となるのに対して、Alpha碁では、読み難い盤面中央に気が付くと広大な領土を確保してしまうことが見られた。具体的な棋譜やAlpha碁のデータ解析等から実際に何が起きていたのかは、今後、論文として発表されることになると思う。特に、第2局のAlpha碁の38手目と第4局の李9段の78手目は囲碁の歴史に残るとも言われており、その解析が待たれる。ここでは、これが何を意味するのかを考えよう。

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今回わかったことは、最先端の人工知能システムは、ある意味で「我々に人間には見えていないものを見ている」という領域に入りつつあることだ。これは単に状況認識に留まらず、「何をすればどういうことが起きる」という未来を見通すという意味も含まれる。これは非常に重要なことで、このレベルの人工知能の能力を使うことで、我々の意思決定の能力が飛躍的に高まっていくと考えられる(勿論、第4局に見られるような人工知能の弱点もある。この議論は、別の機会に議論したい)。左の画像を見て頂きたい。深層学習『ニューラルネット』では、上段左の写真をスクールバスと正しく認識し、上段右の写真をダチョウと認識した。右の写真は、実は、左の写真に態とダチョウと誤認識させるような微妙なノイズを加えてあったのである。このノイズだけの画像(上段中央)を見ると、確かにダチョウの首から上にも見える。人間は、右の写真もスクールバスと認識し、ここにダチョウが隠れているとは認識できない。ここで重要なことは、Alpha碁に代表される人工知能は、人間には見られないものを見る能力を備えつつあるということである。この能力の恩恵は、医療分野で非常に大きな変革を引き起こす。大規模医療データから患者集団の細分化を行い、最適な治療戦略を特定する“Deep Clinical Phenotyping(ディープ・クリニカル・フェノタイピング)”という応用が、最初に展開されるであろう。ここには、深層学習を始めとした人工知能技術が力を発揮し、今まででは見えなかったものが見えることになるであろう。実際に著者は、文部科学省の“イノベーションハブ・プロジェクト”(『疾患ビッグデータを用いた高精度予測医療の実現に向けたイノベーションハブ』・受託組織は『理化学研究所』)において、この手法が極めて大きなインパクトを及ぼすことを確信させる予備的な結果を得ている。

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2040年の労働力不足、救世主はロボット――農家の仕事は戦略立案が主、人の能力を覚醒させるロボ

人口減少が続く中、「経済成長を維持するには移民政策が欠かせない」との声が高まっている。ただ、ヨーロッパの現状を見る限り、その導入には十分な国民的議論が不可欠なのは明らかだ。そんな中、「慌てて移民に頼る必要はない」と主張する人々がいる。全国のロボット専門家だ。「次世代ロボットが普及すれば、人口減少は乗り切れる」と断言する彼ら。果たして本当なのか。人口減対策に“移民よりロボット”を選んだ際の、2040年の日本をシミュレーションする。 (西雄大・宗像誠之)

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ドイツ西部の街・ケルン。昨年12月31日夜、新年を祝おうと中央駅や大聖堂に集まっていた市民に暴徒が襲いかかった。多くの女性が性的暴行を受け、一部報道に依ると被害届は500件超。容疑者の大半は、中東やアフリカからの難民だった。昨年だけで100万人以上の難民を迎え入れたドイツだが、暴動以降、世論は一変。メルケル首相率いる連立政権の支持率は過去最低水準に下落した。1960年代から先進諸国の人口減対策の切り札と位置付けられてきた移民政策。労働力不足の解消や国内市場の拡大等、その有効性は多くの専門家が指摘している。が、ドイツに限らず逸早く移民政策を導入してきたヨーロッパの現状を見る限り、その導入には十分な国民的議論と社会的な合意形成が不可欠なのは明らかだ。1月28日、安倍首相が参院本会議で「全く考えていない」と発言したように、今のところ、日本は移民政策に明確な方向性を打ち出していない。ただ、人口減少が加速する中、移民対策をどうしていくのか、具体的議論を始めねばならない時期は着実に近付いている。治安悪化や社会的コスト増大のリスクを承知で移民を受け入れ、経済水準を維持していくか。それとも、移民政策を見送り、“沈み行く国”になるか。何れを選んでも道は険しい。そんな中、この難題に第3の解決策を提示する人々がいる。全国のロボット専門家たちだ。「ロボット技術は想像を超える速度で進化を遂げ始めており、関連ベンチャーが一気に育ちつつある。このままテクノロジーが発達すれば、凡そ四半世紀後の2040年には、第1次から第3次まで多くの産業の人手不足を、ロボットで補える可能性が高い」。ロボット業界に詳しい『トーマツベンチャーサポート』の瀬川友史氏は、こう話す。2016年現在、製造ライン等を除けば、「社会で活躍している」と言えるのは掃除機ロボットや調理ロボット程度。残り24年間で、移民の代わりを担うまで進化できるものなのか。そこで、本誌は全国の自動化専門家を取材し、人口減対策に“移民よりロボット”を選んだ際の、2040年の日本をシミュレーションした。試算に当たっては、人口減に伴う“国内市場の縮小”は輸出でカバーすると仮定。国際社会における道義的責任としての移民受け入れ議論は、一旦脇に置くこととする。先ず、各産業で働くロボットの現状と今後の進化を見る前に、2040年にどの産業でどの程度、人が足りなくなるのかを確認する。自治体の数が半減するとの予測もある2040年(日本創成会議の人口減少問題検討分科会)。当然、労働力も大きく減る。『国立社会保障・人口問題研究所』に依れば、総人口は現状の1億2660万人から1億728万人に、生産年齢人口は7682万人から5787万人になる。その時点で現在の生産能力を維持しようとした場合、各産業で足りなくなる人手数を一覧にしたのが右表だ(試算はトーマツベンチャーサポート)。全産業で586万人、必要就業者の約11%分が不足する。ただ、トーマツベンチャーサポートの瀬川氏は、「11%程度ならロボットに依る代替で何とかなる」と指摘する。

【試算1】第1次産業…農機の自動運転が完成、不足20万人は十分カバー
トラクターや田植え機は自動運転で稼働し、複数台が連携して作業する。マルチコプターに備え付けたカメラが空中から土壌の状態を確認し、肥料の成分と量を決める。田畑に人の姿は一切無い──。2040年には、こんな田園風景が当たり前になるかもしれない。現時点で既に人が足りない第1次産業。農業では、2040年には20万人分の労働力不足が見込まれている。昨年の農業就業人口の平均年齢は66.3歳。今後も高齢化は避けられず、自動化を進めるにしても、“ロボットがカバーしなければならない作業範囲”は年々広がっていく。しかし、『クボタ』の専務執行役員で研究開発本部長の飯田聡氏は「問題は無い」と話す。飯田氏に依れば、2040年には農機が完全自動化し、農家の主な仕事は販売戦略の立案や情報分析になる。そうなれば、農業専用ロボ等を開発するまでもなく、人手不足も高齢化も乗り越えられるという。2014年には、ICT(情報通信技術)を活用した農業支援システム『クボタスマートアグリシステム(KSAS)』を開発。農作業の完全自動化へ向け、布石を打ち始めた。人が全く土弄りをしなくなる訳ではない。新たな栽培方法や品種改良の研究の為、一部、人の手に依る栽培は続ける。「24年後では流石に、農機自身が農作業の改善点等を見つけ、修正するまでには至らない」(北海道大学農学部の野口伸教授)からだ。それでも、「大幅な自動化で農業に必要な労働力は確実に減る」と関係者は口を揃える。「課題は寧ろ法整備。だが、四半世紀もあれば、農機が農村を自律的に動き回れる環境が整う筈」(飯田本部長)。少なくとも農業については、自動化さえ順調に進めば、大量の移民の手を借りる必然性はなくなると言ってよさそうだ。

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【誰がテレビを殺すのか】(08) 放送と同時にオンライン配信…インターネットテレビ化が進む欧米の放送局

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「今や、アメリカやイギリスでは多くのテレビ局がインターネット配信を進め、成功し始めている。このシフトは日本でも今後、数年でより進むだろう」――『NETFLIX』のリード・ヘイスティングスCEOは、テレビとインターネットの関係について、こう説明する。今後も共存は暫く続く筈だが、利便性を考えれば、将来的にテレビがインターネット無しで生き残れないのは間違いない。実際、テレビ局に依るオンライン配信では、欧米が日本の遥か先を行っている。有名なのは、イギリスの公共放送局『BBC』に依る配信サービス『iPlayer』だ。2007年に番組見逃しサービスとして開始され、現在は放送と同時の配信は勿論、他局の番組も見られるプラットホームとなった。国内では同時配信以外は無料で、ニュース等の硬派なものだけでなく、ドラマからスポーツまで見られる便利さ。現在は常時2600万人が接続し、名実共に“オンラインテレビ”になりつつある。

日本では、『NHK』がBBCの成功に倣い、2008年から見逃しを含めた配信サービス『NHKオンデマンド』を開始したが、原則、受信料とは別に料金が必要なこともあり、昨年末で漸く無料会員が145万人を突破したところ。同時配信も民放の反発で遅れていたが、2015年10月に漸くPCやスマホでも見られる検証実験が開始された。一方のアメリカでは、テレビとインターネットの境目がより曖昧だ。ケーブルテレビの契約者減少を引き起こしたNETFLIX等のインターネット事業者を、配線を必要なくさせるという意味で“コードカッター”と呼ぶ。そのNETFLIXのライバルとしてよく挙げられるのが、ケーブル局の『HBO』だ。現在、エミー賞等の各賞を総なめにし、世界中で一番人気ともされるドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』等の制作を手掛けている。HBOは2010年に、ケーブル契約世帯向けの定額配信サービス『HBO GO』を開始し、2015年にはテレビ契約とは別の独立したサービス『HBO NOW』まで開始した。まさに、自らが進んで“コードカッター”にもなっているのだ。NETFLIXがインターネット配信からドラマ制作に乗り出し、HBOはドラマ制作から配信へと軸足を移す等、両者の垣根はどんどん低くなっている。この他、スポーツ視聴でもメジャーリーグ野球(MLB)のサイトが、テレビ局を経由せずに直接、視聴者向けにライブ配信のサービスを始める等、サービスの進化は激しくなっている。

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一度ハマったら廃人まっしぐら、家族との縁を切られる者も?…現代のネトゲ廃人の実態

ゲームにハマるあまり、社会的な生活を送ることができなくなるネトゲ廃人。何故、彼らはここまでハマるのか? 自称ネトゲ廃人だという男性に話を聞いた。 (取材・文/フリーライター 永山あるみ)

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かそく(26)…会社員。仕事以外の時間の殆どをゲームに費やす。仕事をするのは、親等に邪魔されずにゲームのプレイ時間を確保する為。ニコニコ生放送『kskのじこまん放送局』の生主としても活動中で、主にゲーム実況をしている。

インターネットの普及に依り、昨今ではグラフィクスをふんだんに取り入れたオンラインゲームや、スマートフォンやタブレット等で気軽にプレイできるソーシャルゲームが急増している。こうしたゲームの多くは、一般的な家庭用ゲームのように“クリア”という概念は無く、サービスが続く限りゲームがプレイできてしまう為、長時間のプレイや重課金してしまうユーザーも少なくない。現在、かそくさん(26)は「青春の全てをゲームに捧げた」と語る。「最初にハマったのは、“ラグナロクオンライン”という10年以上サービスを展開しているオンラインゲームでしたね。中学の時に友だちの家でやったのがきっかけで、高校になって家にインターネット回線が繋がるようになってからは、学校から帰ってきて翌朝3時までやって、仮眠を少し取ってから学校に行くような生活をやっていました」。日々、ゲーム三昧の生活だった。2009年にモバゲーの『怪盗ロワイヤル』が大ヒットしたが、それ以降、主にSNS上で提供されるソーシャルゲームが流行する。パソコンのオンラインゲームほど世界観は作り込まれていないが、携帯電話やタブレットでプレイできる為、敷居が低く、中高生のユーザーが爆発的に増えた。勿論、かそくさんもハマった。「ゲームは無料なんですけど、アイテムとかガチャ毎に課金があります。重度の課金をする者を“廃課金勢”と呼ぶんですけど、僕も多い時は月に10万ぐらい、平均で月に4~5万ほど課金していましたね」。学生の身分でそれだけお金を使うというのは容易ではない。その為、家族内のトラブルも絶えないようだ。「僕の周りもゲーム中毒者ばかりなんですが、親のスマホやらクレジットカードで勝手に課金しちゃう子とかも周りにいましたね。その後一切、やらせてもらえなくなったり。『レアアイテムが出現する時間と被るから』って、学校での授業が手につかなくなって不登校になる子とか、大学生だとそのまま留年しちゃったりする子もいました。自分の知人なんかは仕事を辞めて、その時に貯めた貯金で生活しながらゲームばっかりやっていますよ。ゲームと結婚できるんだったら、きっと皆、しているんだろうなあ…。僕ですか? 高3の時、母親がブチ切れてインターネット回線を包丁で切られちゃいましたよ。その後、テストで学年1桁台の成績を取ったら、インターネットはまた繋げてもらったんですけどね」。それは凄い…。そこまでやられなければ、ゲームは止められなかったのか。ゲーム中毒者の中には、トイレに行く時間さえも惜しんでペットボトル等に尿を足す“ボトラー”や、オムツに用を足す“オムツァー”、更にはそのまま排泄物を垂れ流す“垂れラー”と呼ばれる重度の依存症の者もいる。ここまでいったら、まさに廃人だ。

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【誰がテレビを殺すのか】(07) Hulu・Amazon・dTV…配信戦国時代の真の勝者は?

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2015年10月中旬、東京や大阪にある一般家庭を、シリコンバレーにある『NETFLIX』の幹部を含む外国人スタッフたちが訪問していた。「スマートフォンで見る場合はどこで見ますか? 字幕と吹き替え、どう使い分けているのですか?」。スタッフたちが事細かに質問しいたのは、NETFLIXのサービスがどのように利用されているのかという視聴実態だった。時価総額452億ドル(約5兆4000億円)と、世界最大の定額動画配信サービスのNETFLIXだが、その強みは大きく分けて2つある。1つは、前項にも詳述したクリエイター重視のコンテンツ力。もう1つは、徹底したデータ収集・分析力だ。前者が“文系力”、後者が“理系力”とも言える。NETFLIXは6900万人の会員の視聴データを、インターネットを通じて常に分析している。何を、いつ見たのか、最後まで見たか、どんなジャンルか、どこで停止したか、どんな機器で見ているのか、続編を続けて見たか――。「全部は言えませんが、皆さんが想像できるようなデータは全て収集・分析していますよ」と大崎貴之副社長は胸を張る。しかも、作品には膨大な数のタグが埋め込まれており、好きな役者・監督・場面・カテゴリーも単なるホラーやコメディ等という単純な分類だけでなく、ホラー要素のあるコメディなのか、ファミリー向けなのか等、細かく分析されている。これに依り、ユーザーがログインすると、個別の嗜好に合わせた作品が登場し、次々と作品がリコメンド(お薦め)される。この分析を研ぎ澄ませた結果、アメリカでは膨大な作品数があるにも拘らず、75%がお薦め作品から選ばれるほどなのだ。「視聴者が態々検索しなくていいように、先に見たい作品を提示できるシステムを作り上げています」とトッド・イェリン副社長は話す。冒頭の家庭訪問は、インターネット上で採取できないデータにまで踏み込んでいるということだ。「日本人は、字幕と吹き替えで完全に分かれている。字幕で見る人も、家事をしている時は吹き替えに変えたり、使い分けていることがわかった。各国よりも、深夜のモバイルでの視聴が多いのも特徴。要は、貴方たちは働き過ぎなんですよ(笑)」(イェリン氏)。こうしたリサーチを基に、今後は日本仕様の機能等を随時追加していく予定だという。アメリカでの成功事例をそのまま押し付けるのではなく、日本市場に合わせて適合させていく戦略だ。とは言え、「視聴者を引き付ける“鍵”は、やはりコンテンツ」(大崎氏)なのは間違いない。その1つの武器がオリジナル作品だ。NETFLIXは、ここでもデータをフル活用している。

2013年に約1億ドル(約120億円)もの制作費を投じ、人気を博したドラマ『ハウス・オブ・カード』。実は、企画に当たってNETFLIXは視聴者データを詳細に分析し、ケヴィン・スペイシー主演でデヴィッド・フィンチャー監督という組み合わせを“最適解”として導き出し、アメリカの賞を総なめにした。このように、データ分析とコンテンツ制作の好循環を生み出し、サービス強化を図るのがNETFLIXの最大の強みだ。日本でも、コンテンツ拡充と同時に、年末にかけて新たな作品が発表される見込みだ。9月のネットフリックス上陸に依り、動画配信市場は一気に乱戦模様だ。現状、日本での会員数とノウハウは、数年前から事業展開してきた国内サービスに一日の長がある。最古参のサービスが、『NTTドコモ』が『エイベックス』と運営する『dTV』だ。2009年に携帯電話向けに開始されたサービスは、月額500円の低価格が魅力で、会員数は約500万人に上る。「これまで、動画配信は世間に浸透していなかった。我々には今、圧倒的な会員数がいる。NETFLIXはライバルというより、市場の認知度が上がるという意味で歓迎している」と『エイベックスデジタル』の村本理恵子常務は話す。とは言え、NETFLIX上陸に備え、今年初めから布石は打っていた。人気漫画『進撃の巨人』の映画化と同時に、同じ制作陣に依る番外編を制作したり、リコメンド機能等のITシステムを大幅に強化したりしたのだ。エイベックスの強みを生かした音楽ライブ配信等も、他社には無い特徴だ。ドコモと共同運営のサービスだが、既に他の通信キャリアにも対応しており、会員獲得のペースは上がっているという。もう1つの国内サービスが『Hulu』だ。元々はアメリカ発のサービスだったのを、日本事業を日本テレビが買収した。日本テレビに依る買収時の2014年4月には61万人だった会員数は、2015年3月には100万人にまで伸びている。Huluの運営会社である『HJホールディングス』の船越雅史社長は、「うちの最大の強みはコンテンツ所有者であること。ITよりもコンテンツ好きな人間が運営する高級百貨店を目指す」と話す。日本テレビに依る買収前は海外ドラマ好きに人気だったが、現在は日本テレビの番組を中心としたコンテンツが強みになり始めた。テレビ放送との相乗効果が発揮される場面も出てきたという。「例えば、テレビで毎週放映中のドラマはHuluでの視聴数も多いが、最終回だけは地上波で見る人も多く、放送に戻ってくる等の効果もある」(船越氏)。これまで3社のサービスを見てきたが、「実は本命かもしれない」(テレビ局幹部)と業界内で囁かれているのが、『Amazon』に依る『Amazonプライムビデオ』だ。

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工場襲う新型サイバー攻撃、ネット未接続でも標的に――“安全神話”は既に崩壊、カメラや餅製造機が踏み台に

猛威を振るうサイバー攻撃が、新たな標的を見い出した。工場だ。オフィスと異なり、インターネットに常時接続していないから安全という“神話”は崩壊。既に感染は始まっている。今後、“IoT(モノのインターネット)”が伸展すれば、リスクが一気に顕在化しかねない。 (小笠原啓)

20160119 07
「日本の工場やプラントの多くは、既にコンピューターウイルスに感染している。表面化していないのは、単に調べていないからだ」――国内製造業に多くの顧客を抱える大手制御機器メーカーの幹部は、溜め息を漏らす。顧客企業の工場に出向いてセキュリティー状況を診断すると、かなりの割合で異常が見つかるという。この幹部が籍を置くメーカーは、プラントや生産ラインの“制御システム”を手掛けている。バルブやポンプのような単純な機器から、ロボットや工作機械に至るまで、様々な装置がスムーズに動くよう管理する“工場の頭脳”だ。制御システムは通常、インターネットとは別のネットワークで運用されている。独自の機器を組み合わせて構築する為、工場やプラント毎に千差万別なのが特徴だ。オフィスのようにインターネットに常時接続している訳でもない為、サイバー攻撃の標的にはなり難いとされてきた。だが現実には、多くの工場で感染が始まっている。ウイルスに感染したら即座に被害が生じる訳ではないが、想定外の事態に直面しているのは事実だ。『日本年金機構』の情報流出をきっかけに、多くの企業がサイバー攻撃の脅威を認識した。個人情報が一度漏洩すると対応コストは膨大になり、信用失墜等の悪影響も免れない。だが、冒頭の幹部が懸念するのは“その程度のレベル”の話ではない。人事や経理等といった企業内のデジタル情報を管理する“情報システム”とは異なり、制御システムは機械や装置といったモノを取り扱う。仮に、制御システムが悪意ある攻撃者に支配されたら、人命に関わる重大事故が起きかねない。危機は直ぐそこまで迫っている。警察庁は先月、国内の製造業に対して警告を発した。制御システムで使う専用コンピューター『PLC』を外部から起動したり停止したりできる攻撃ツールが、インターネット上で公開されたのだ。ツールを悪用してPLCを操り、「システム停止等の不正な制御が行われると、甚大な被害が生じる可能性が危惧される」(警察庁)。

『富士通統合商品戦略本部』エバンジェリストの太田大州氏は、「セキュリティー対策を疎かにする企業は、自社のサプライチェーンすら維持できなくなる。そういう時代に入ったことを経営者は認識すべきだ」と警鐘を鳴らす。何故、インターネットに繋がっていない工場やプラントがサイバー攻撃の被害に遭うのか──。こう考える読者も多いだろう。だが、“インターネットに未接続=安全”等という神話は、世界ではとうに崩壊している。厳重に守られている筈の制御システムが、相次ぎ被害を受けているのだ。2010年、イランの核燃料施設でウラン濃縮用遠心分離機が急停止した。当時のイランは独自の核開発計画を推進し、欧米との緊張が高まっていた。国家機密を扱うだけに設備の警備は厳重で、インターネットからも遮断されている。にも拘らず、制御システムが乗っ取られた。原因は、親指大の小型機器だった。何者かが『スタックスネット』と呼ばれるウイルスをUSBメモリーに仕込み、核施設の職員が拾いそうな場所に放置した。入手した職員がパソコンにUSBメモリーを接続すると、即座に感染。施設内のネットワークを通じてシーメンス製のPLCを次々に制圧し、数千台ある遠心分離機に過剰な負荷をかけて、物理的に破壊していった。その結果、「イランの核開発計画は3年程度遅れた」と推定されている。スタックスネットを開発したのは『アメリカ国家安全保障局(NSA)』とイスラエル軍の情報機関とされているが、真相は藪の中だ。明らかになったのは、インターネットから隔離されていても安全とは言い切れないという新たな常識だけだ。制御機器メーカーが定期的に工場内に持ち込む保守用パソコンも、ウイルス感染の経路となる。工作機械やロボットにパソコンを接続し、設定を調整したりデータを収集したりする際にウイルスが工場内に侵入。制御システムに感染するケースが増えている。アメリカの政府機関で制御システムの危機対応を司る『ICS-CERT』の纏めでは、鉄鋼や精密機器等の“重要機器製造業”を狙うサイバー攻撃が急増。2014年には全体の27%に達し、電力等のエネルギー業界に匹敵する規模となった。2012年からの2年間で、製造業の制御システムを狙った攻撃は8倍以上に増えた。全攻撃の4割は手口を解明できず、対策が取れない状況だ。今は、日本国内では一部でしか発覚していない。これは被害の事実が無いのではなくて、現行の法制度では個人情報が漏洩しなければ、サイバー攻撃を受けた事実を関係省庁に報告したり、社外に公表したりする義務が無いからだ。「システムへのアクセス記録を管理しておらず、攻撃を検知したり原因を追究したりできない企業も多い」と、『マカフィー』サイバー戦略室シニアセキュリティアドバイザーの佐々木弘志氏は指摘する。冒頭で紹介したように、調査すれば被害実態が鮮明になる可能性がある。

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【インタビュー・明日を語る2016】(02) 未来変える科学力、産業育成に国の戦略必要――名古屋大学教授 天野浩氏

病気の予防や治療から、コンピューターや自動車の製造まで、現代社会の全てを科学技術が支える。2014年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学の天野浩教授に、科学技術が社会に与える影響について聞いた。 (聞き手/科学部 山田哲朗)

20160107 01
私が名古屋大学の学生だった頃でも、「赤と緑の“発光ダイオード(LED)”は既にあり、後は青が揃えば、どんな色でも出せるようになる」という知識はあった。また、浜松出身なので、ブラウン管に初めて画像を映し出した地元の高柳健次郎先生の話は、子供の頃から聞いていた。それで学生時代、まだ“マイコン”と呼ばれていたパソコンに夢中になっていた時、「青色LEDができれば、(パソコンの)大きなプラウン管をもっと薄いディスプレーにできる」と思った。実は、それが学部4年で赤崎勇先生(86)の研究室に入った理由だった。「ブラウン管に勝つ」という単純な動機だったので、当時、「何れLEDが蛍光灯を超え、一般照明にまで用途が広がる」とは正直、思ってもいなかった。今でも、LEDの普及のスピードや用途の広がりには驚く。ノーベル賞を受賞した後、モンゴルの教育科学大臣が大学を訪れ、「モンゴルの伝統文化を守ってくれた」と感謝された。太陽電池とLEDを組み合わせたランタンで、遊牧民の子供らが、伝統的な移動式住居のゲルで暮らしながら、夜、勉強できるようになったという。「自分の開発したLEDが人の役に立っているんだ」という実感が湧いた。ただ、安心して教育を受ける為には、明かりの確保は第一歩に過ぎないだろう。食べ物や健康等、様々な条件が整って初めて勉強できる。こうした社会的な問題の解決にも、科学技術が役立つ可能性がある。LED光を使った植物工場なら、北極・南極・宇宙等の極限環境でも作物を育てられる。未だ経済的に見合わない為、食料間を解決するという規模にはなっていないが、上手く利用すれば、食料問題や飢餓の解決に少しは役立てられるのではないか。

より短い波長の紫外線を出す“深紫外線LED”は、青色より作るのが難しいが、改良のアイデアは色々あり、効率を上げようと研究中だ。紫外線には殺菌作用があり、上下水道が整っていない地域で、こうしたLEDを家庭の水道管に取り付けて殺菌できれば、恩恵は大きい。先進国でも、治り難い乾癬や、皮膚が白く抜ける白斑等の皮膚病治療に深紫外線が使える見込みだ。青色LEDを作るのに使った材料の窒化ガリウム(GaN)は、電気のオン・オフを素早く切り替えられる性質があり、照明やディスプレイのみならず、省電力や電気機器の小型化等でまだまだ可能性を秘めている。光を発するのが目的ではなく、電力(パワー)の制御が目的の素子は“パワー半導体”と呼ばれる。パワー半導体を活用すれば、エアコンや冷蔵庫等を少ない電力で効率的に動かすことが可能となり、省エネルギーに繋がる。名古屋大学の研究者の試算では、LEDの省エネ効果とパワー半導体に依る電力利用効率アップを組み合わせることで、日本の電気の使用量を16~17%節約できる。新しい技術ができれば新しい開途を見つけるのが人間の性で、消費量の水準を切り下げられる訳ではないものの、途上国で急上昇する消費量増加のペースを緩和できる。パワー半導体のコストをもっと安くして、エネルギー消費が多いアメリカや中国にも使ってもらいたい。日本のエレクトロニクス産業に、技術のシーズ(種)はある。個々の企業は、イノベーション(技術革新)に繋がる面白い技術を持っている。ところが、新しい商品・システムを売り出す段階になると、殆ど外国に負けてしまう。技術は“当たるも八掛、当たらぬも八掛”という側面はあるのだが、もっと国としての戦略を真剣に考え、「この技術はモノになる」という判断ができる“目利き”の人材を育てなければならない。

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【インタビュー・明日を語る2016】(01) 命救う技術革新、対“感染症”日本の貢献――『ビル&メリンダ・ゲイツ財団』共同議長 ビル・ゲイツ氏

2016年が幕を開けた。頻発するテロや、出口の見えない中東・南シナ海情勢等、戦後の秩序が大きく揺らぐ中で、融和と結束に向けた国際社会の知恵と実行力が問われる1年になる。世界と日本は、どう進むべきなのか。政治・経済・科学技術・スポーツ等の各分野について、内外の識者や関係者が語った。

20160106 01
大村智博士が2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。彼の仕事が広く世に知られるようになったことは、とても素晴らしいことだ。博士の発見に依り開発された抗寄生虫薬『イベルメクチン』は、熱帯で流行する多くの寄生虫病に威力を発揮する。特に、失明に繋がる『オンコセルカ症(河川盲目症)』は、この薬に依って激減した。私と妻が設立した『ビル&メリンダ・ゲイツ財団』は、この薬がアフリカの感染国に届くよう援助をしている。薬は製薬会社から無償提供されており、2030年までには、この感染症を地球上から無くすことができると思っている。ノーベル賞受賞後に大村博士と直接話したが、今もマラリアに関する仕事を続けているという。発展途上国を苦しめる感染症は、未だ多く残されている。話を聞いて、大変嬉しく思った。日本が世界に発信する科学技術のイノベーション(革新)は、医療分野以外でも途上国の人々の暮らしに大きく役立つ可能性を秘めている。二酸化炭素を排出しない安価な新エネルギーの開発は、途上国に大きな問題を引き起こす気候変動への影響を軽減するだろう。私は若い頃、世界を塗りかえていくソフトウェアの仕事に没頭してきた。今の私が魅せられているのは、途上国の人々の健康や生活を変える科学技術のイノベーションだ。例えば、人工衛星から送られる高解像度の地上画像を使えば、地図にも載っていない集落を見つけることができる。私たちは、この画像を手足の麻痺を起こすポリオのワクチン配布で使い、津々浦々の集落に配ることに成功した。1988年に国際的なポリオキャンペーンが始まった時、100ヵ国以上あった感染国は、ワクチンの浸透で今や2ヵ国だけに抑えられた。注目しているのが、途上国で普及が進む携帯電話だ。アフリカでは、食料自給率の向上が大きな課題となっているが、携帯で耕作地の写真を撮って専門家に送ることで、情報が届き難い農民も、きめ細かい農業指導が受けられる可能性がある。一部の国では、携帯電話を使って口座を開設する“モバイルバンキング”も始まった。人々は携帯で貯金をしたり、ものを買ったりしている。財団は、この普及の後押しも重要なテーマとして力を入れている。1990年には、世界で10%の子供が5歳未満で死亡していた。ワクチンの配布等で5%に半減した。科学技術を正しく活用し、途上国の人々に届けることで、今後3年で更に半減したいと思っている。栄養状態も改善し、多くの貧しい人々がモバイルバンキングで資産を管理し、生活を劇的に向上できるだろう。課題は山積しているが、状況は年々改善している。

究極のゴールは、途上国の国々が経済的に自立することだ。だが、多くの国では未だエイズやマラリア等の感染症が流行し、死は日常にある。人々は、貧困から抜け出せないでいる。私たちは未だ投資する必要がある。全ての命は平等なのだから。今から300年ほど前、平均寿命は現代の半分以下で、3分の1の子供が5歳未満で亡くなっていた。電気や交通等の多くの発明のおかげで、日本やアメリカでは当たり前のように暖房やエアコンを使っている。夜でも読書ができ、水を汲む為に遠くに行く必要もない。衛生環境も向上し、健康な生活を送ることができる。科学技術の発展は更に加速している。日本がリードする分野の1つは『iPS細胞(人工多能性幹細胞)』だ。様々な健康問題への応用が期待できる。日本が今後も影響力を維持する為には、科学技術――特に医療・エネルギー・材料・情報技術(IT)の分野で優秀な学生を育てることが重要だ。十分に教えるだけでなく、興味の追求を楽しめる環境にも配慮する。政府の研究開発への投資、大学の役割…。他の国同様、科学技術政策が更に有効に機能するよう、常に見直していくことも必要だ。国際的な科学コミュニティーに参加できるよう、英語力の向上も課題になる。そして、維持した国力でグローバルへルスの分野でも力を発揮してほしい。日本政府は、ジュネーブに本部を置く国際民間財団『世界エイズ・結核・マラリア対策基金』(グローバルファンド)に多額の資金を拠出し続けている。今年5月に日本で開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも、感染症対策等の保健分野を優先議題として取り上げると聞いている。途上国向けの医薬品開発に投資する官民連携組織もある。日本の製薬会社が熱帯病の治療薬を無償供与している例もある。こうした官民の貢献を高く評価している。国民1人ひとりには、地球規模で何が起きているかにも目を向けてほしい。日本は、地域の支え合いの充実した国だ。遠い途上国での出来事を身近に感じられれば、「助けたい」という強い感情が起きる筈だ。個人の寄付や政府の援助が如何に途上国を変えつつあるか、発信していきたい。日本は今、興味深い時期に差し掛かっていると思う。日本は多くの強みを持っている。だが今後、科学技術を含め、グローバルな課題に関わる若者をどう育てていくのか。中国の台頭が日米にどう影響するのか。我々は中国の発展から何を学び、どんな協力関係を構築するのか。世界が日本のリーダーシップに期待している。 (聞き手/医療部 館林牧子)


≡読売新聞 2016年1月3日付掲載≡


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