【下村博文・辞任勧告スクープ】(01) 子どもには教えられない“裏の顔”――安倍首相ショック! お友達・下村博文文科大臣、塾業界から“違法献金”

安倍首相との親密さを喧伝、自ら熱望して文部科学大臣に就いた下村氏。塾業界を全国8つの後援会に続々と入会させているのだが、驚くことに全ての後援会が政治団体の届け出はなし。つまり“闇の政治資金”を吸い上げているのである。見返りは何か? 後援会幹部による爆弾告発。

2月13日、文部科学省大臣室には、全国から集まった下村博文文部科学大臣(60)の後援会組織『博友会』の各地域の会長と事務局長らがズラリと顔を揃えた。彼らはいずれも学習塾などを経営する教育関係者。この日話し合われたのは、小誌からの取材依頼への対応だった。この日を境に、緘口令でも敷かれたかのように関係者への取材アポイントのキャンセルが続いた。果たして、彼らが口を噤まなければならなかった理由は何か。

下村氏といえば、安倍晋三首相と思想信条を同じくする側近中の側近だ。「下村氏は、安倍氏がまだ森喜朗政権で内閣官房副長官だった頃から、同僚議員らと“安倍さんを応援する会”を立ち上げようと動いたほどの信奉者。“お友達内閣”と言われた第1次安倍政権では官房副長官として官邸入りしました。2012年の自民党総裁選では、所属派閥の清和研の意向に逆らって安倍支持を宣言。第2次安倍政権では文科相に起用され、内閣改造でも留任した。首相周辺も『閣僚の中でも、塩崎(恭久厚労相)さんと下村さんは別格なんだよな』と洩らすほど“お友達の中のお友達”です」(政治部記者)。下村氏は自著『9歳で突然父を亡くし新聞配達少年から文科大臣に』の中で、自らの波乱に満ちた半生を書いている。父の事故死で暗転した家庭環境の中、交通遺児育英会の奨学金で地元・群馬の高崎高校を卒業、政治家を志して早稲田大学へと進み、名門・雄弁会の門を叩いた。大学在学中から板橋区内で学習塾を経営し、その後は都議を経て1996年に衆院議員に初当選。衆院議員になってからの下村氏は、文部科学大臣への意欲を隠そうとしなかった。自著には、今回の入閣の経緯を赤裸々に書いている。まず、環境大臣を打診されたが拒否。さらに、別のポストを提示されても首を縦に振らなかった。4回目に、安倍首相が「わかった。そんなにやりたいのだったら、下村さん、あなたに任せる」と文科大臣を提示し、念願の入閣を果たしたのだ。その教育行政への熱意の原点が、塾経営の経験だ。大学卒業後の1979年に自らが経営する『博文進学ゼミ』を会社化して、本格的に塾経営に乗り出している。

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テーマ : 政治
ジャンル : 政治・経済

ブラック企業の監督官庁で『サービス残業』を強要――安倍首相の“いつか来た道”、お友達・塩崎厚労相の大暴走

発足から2年が過ぎてなお高い内閣支持率を維持し、“一強”と称される安倍政権。しかし今、その足元で見えざる亀裂が生まれている。その震源地は塩崎恭久厚労相。第1次安倍政権で官邸崩壊を招いた元凶とされる男が、厚労省で再び繰り広げる大暴走を衝撃スクープ。

「いい加減にしろ! 言った通りにやれって言ってるだろ!」。昨年12月19日夕刻、菅義偉官房長官は珍しく電話口で声を荒げた。電話の相手は塩崎恭久厚生労働大臣である。「かつてないほど厳しい口調で注意した」と菅は後に周囲に漏らしている。この電話の前、首相官邸で塩崎と向き合った菅は1枚の紙を渡した。『GPIF改革について』と題された紙に書かれた項目は3つ。「最低限の法律改正」「運用の責任問題」「責任問題が明確でシンプルな組織」。止めの文章にはこうあった。「次期通常国会は、GPIFのガバナンス改革については以上の考え方に基づいた独法整備法案を提出することとし、法人形態を変更する法案は提出しない」。昨年9月以来、燻ぶり続けてきた“GPIF問題”を収束させるべく、菅は異例のペーパーで“指示”を出した。だが、塩崎は納得していなかった。夕方、菅に電話しこう告げた。「これは総理の了承を得ていますから」。その言葉に菅はキレたのだ。

厚労省が所管する『GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)』。国民の年金130兆円を運用する世界最大の年金基金だ。安倍晋三首相は昨年1月のダボス会議で、GPIFの運用を「フォワードルッキングに見直す」と述べ、これまでの日本国債中心の運用を見直し、日本株を含めた株式の比率を高めることを“国際公約”にした。安倍政権にとって、GPIFの運用見直しは株価対策に直結する。莫大な資金を持つGPIFが買い手に回れば、株価の上昇が見込める。運用見直しは政権の“悲願”だった。昨年6月に閣議決定された成長戦略『“日本再興戦略”改訂2014』には、GPIFについて“基本ポートフォリオの適切な見直し”が書き込まれた。自民党で取りまとめにあたったのが、当時自民党政調会長代理だった塩崎だった。昨年9月2日、運用見直しに積極的な塩崎がGPIFを所管する厚生労働大臣に内定した。この速報に日経平均株価は200円近く上がった。だが塩崎厚労相の誕生により、GPIFは安倍政権内に大きな亀裂を生じさせていく。

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警視庁が重大関心! 都知事選“買収リスト”入手――田母神俊雄“政治資金1億4000万円”の使い途

「通帳も印鑑もカードも渡しっぱなしで、ちょっと迂闊だったと思っております」。2月19日、政治資金が会計責任者に横領されたことを突如記者会見を開いて打ち明けたのは、元航空幕僚長の田母神俊雄氏(66)である。政治部記者が解説する。「田母神氏は航空幕僚長時代の2008年に、『日中戦争は侵略戦争ではない』など政府見解と異なる主張を綴った論文を発表、更迭されて一躍有名になりました。その後は積極的に政治活動を続け、昨年2月の東京都知事選挙に出馬。落選したものの、61万票を獲得した。12月の衆院選にも次世代の党公認で出馬しましたが落選。次は来夏の参院選に意欲を示しています」。田母神氏は所謂『ネトウヨ』を含め、保守層から圧倒的な支持を受けている。事務所スタッフの話。「都知事選出馬にあたって、田母神氏は“東京を守り育てる都民の会”(注:昨年6月に“田母神としおの会”へと改称)という政治団体を設立し、1億2000万円もの寄付金が集まりました。さらに都知事選後、衆院選までの期間に約2000万円、合計で1億4000万円もの政治資金が集まったんです」

実は、冒頭の会見には伏線があった。2月上旬、本誌は「田母神氏の政治資金が使途不明になっている」との情報を得て取材に動いていた。だが、関係者に当たる中で田母神氏が本誌の動きを察知、慌てて会見を開き次のように語ったのだ。「都知事選が終わった段階で6000万円が残っておりましたが、衆院選が始まる頃には1000万円になっていました。衆院選が終わり、経費の支払いが滞っていたので会計責任者Aを追及したところ、『約3000万円から4000万円を生活費と遊興費に使った』と自白した。弁済できなければ刑事告訴せざるを得ません」。田母神氏は会見で「会計責任者1人の犯行」だとした上で、「(選挙での買収など)不正に使われたことはない」と断言した。だが、これは嘘だ。本誌は、田母神事務所の膨大な内部資料を入手した。そこには、Aに全てを擦り付けた会見内容を覆す、驚愕の事実が記されていた。

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「俺のバックは山口組直参の組長だ」――小室哲哉を使って1億6000万円集めた詐欺師集団

「ある日、自宅に突然“イーミュージック”と名乗る会社の人間から勧誘の電話がかかってきました。『小室哲哉の版権を持っている』とか、『音楽業界は潰れることがないから安心だ』などとセールストークを受けました。配当が1割から1割5分は出るというので、有利な資産運用が出来るかなと安易に700万円分の株券を購入してしまったのが間違いでした。今も『金を返してほしい』と請求し続けているのですが、一向に取り合ってもらえないのです」。老後のための財産を奪われた苦労をこう吐露するのは、西日本在住の60代男性・A氏だ。小室哲哉氏(56)といえば、自らの著作権を餌に投資家男性から5億円を詐取した詐欺事件での逮捕(2008年)、執行猶予付き有罪判決(2009年)で世を騒がせたかつての人気音楽プロデューサー。最近は往時の人気には程遠いが、テレビにもしばしば出演。2011年にくも膜下出血に倒れた妻のKEIKO(歌手)を世話する様をツイッターで呟き、美談として再三メディアに取り上げられている。だが、そんな小室氏の名を借りた詐欺的商法に未だに苦しむ被害者は後を絶たないのだ。

A氏が続ける。「私自身はそもそも、小室哲哉のファンでも何でもありません。ただの資産運用で投資したのですが、金も返してもらえず、『脱会したい』といくら連絡しても何の反応もありません。それなのに、イーミュージックの幹部は今もブログで偉そうなことを書き綴り、羽振りが良さそうなので余計に腹が立ちます。『何とかお金を返してほしい』と先日もメールで請求しましたが梨の礫です」。『株式会社イーミュージック』(笹原雄一社長、以下EM社)。かつての一時期は実際に小室氏が契約していた芸能事務所だ。今もホームページ上では、「社名の由来は『いい音楽を届けたい』との小室の希望」などと小室氏との親密さを強調するが、小室氏は既に契約タレントではない。また、ホームページ上にはどこを探しても所在住所も電話番号も見つからない。登記上の本店所在地を訪ねても事務所も何も存在しない、不可思議な会社である。冒頭のA氏が700万円をつぎ込んだのは、小室氏を応援すると称した『EMサポートクラブ』なる持ち株会。1口10万円(1株)から投資を募り、A氏のように投資する人が相次いだ。小誌が入手した決算書でも、既に1300株が売れており、計1億3000万円が集められている。小室氏の逮捕・有罪判決を経てもなお、1口を半額の5万円にするなどして同クラブは存続。今も火種は至るところで燻ぶっており、「よほど苦情がしつこい人だけは解約・返金に応じている」(同社関係者)という。

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必要なのは“瞬発力”、改善で“おもてなし”取り戻す――中小企業の現場を次々再生、元ソニー社員の改善魂

ソニーはかつて、国内各地の生産拠点で活発な改善活動を実施していた。その活動を支えていた“元ソニー”社員たちが今、異業種の現場再建に乗り出している。彼ら、彼女らはどのような方法でムダを見抜き、会社を立て直すのか。 (池松由香)

北陸新幹線の開通を2015年3月に控える金沢市。ここから車で数十分の山中温泉(加賀市)に、大胆な改革で、赤字転落からわずか3年で業績を回復させた旅館がある。開業1958年、春には門前に咲き誇る桜が売りの『お花見久兵衛』だ。伝統を重んじる老舗旅館が大胆な改革に成功したのは、元ソニーの改善ウーマンで経営コンサルタントの村木睦(48歳)のおかげだ。村木はソニー在籍時から現場改善で数々の実績を収め、キヤノンの工場に講師として招かれるなど、社内外で知られていた人物だ。「村木さんと出会っていなかったら、うちは今も赤字で苦しんでいただろう」。お花見久兵衛を経営する吉花の4代目社長・吉本龍平(34歳)は振り返る。老舗旅館だけではない。介護の現場に食品工場、はたまた農場から物流倉庫まで──。実は今、村木のようにソニーの工場を去った後、古巣で学んだ改善力を生かし、異業種の現場の再建に取り組む人が続々と登場している。かつての輝きを失い、断続的なリストラを余儀なくされてきたソニー。本格的な業績回復はまだ見えていないが、“元ソニー”たちは活躍の場を広げ、日本各地で産業復興を支援している。

お花見久兵衛が改革に乗り出したのは2012年12月のことだ。同年12月期は、4億6000万円の売上高に対して経常損益が1600万円の赤字。この年は月次で幾度も赤字を計上していたため、これに危機感を抱いての決断だった。2010年までは、吉本が推進したインターネット販売戦略が功を奏して収益を順調に伸ばしていた。が、2011年秋口に状況が変わる。客足が遠のき、2011年12月期の売上高は前年から7000万円の減少。その翌年はさらに5000万円減った。「何が起きたんだ?」。調べると、原因はすぐに判明した。顧客増に対応しきれず、旅館にとっての生命線である“おもてなし”を提供できなくなっていたのだ。チェックインでは顧客を待たせる。調理場も混乱を来し、料理や取り皿を探すのにも一苦労。仲居やレストラン担当者は、接客にいそしむどころかバックヤードであたふたしていた。「従業員の作業を効率化しなければお客様にきちんとしたサービスを提供できない」。吉本が地元の金融機関に相談すると、石川県能美市にあったソニー根上(2002年4月にソニーケミカルに統合)で6年にわたり改善活動を推進した村木を紹介された。話を聞いた村木は状況をすぐに理解した。必要なのは、コスト削減よりも顧客満足度を上げること。

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英語版が世界的なベストセラー!―― トマ・ピケティ『21世紀の資本』で読み解く「アベノミクスは是か非か?」

フランスの経済学者トマ・ピケティが発表し、英語版が出るや否や全米で50万部のベストセラー。日本でも700ページの翻訳版が話題に。日本語版の翻訳に携わった山形浩生氏に、その要旨と同書から日本経済の現状をどう解説できるのか寄稿してもらった。

ピケティ『21世紀の資本』は決して難しい本ではない。分厚いだけだ。主張は明解だし、欧米の分厚い基礎文献の常として基本的なところも丁寧に説明する。それをまどろっこしく感じる人もいるかもしれない。訳しながら、ちょっとゲンナリしたのは事実だ。それでも、読者の皆さんは訳者とは違って知っている部分は飛ばせばいい。本書の内容については、既に多くの雑誌記事やアンチョコ本はおろか、NHKの番組『白熱教室』でもピケティを取り上げかなり解説が行われている。そして本書は、こけおどしの難解さで無内容な意味不明さを誤魔化すような哲学書ではない。基本的な話は“r>g”。資本(これは不動産・株・事業用の資産や設備・債券などバランスシートの資産に挙がるもの全て)の収益率(r)は、経済成長率(g)を上回るのが普通ということだ。トレンドを見ると、rは大体4%くらい、gは今世紀だと1.5%くらいかもしれない。“r>g”だとどうなるのか? こういう状態が続くと、資本のほうが経済全体よりも急速に拡大しかねない。経済成長と同じくらいしか増えない労働所得に対し、資本からの不労所得がどんどん大きくなり格差が高まる。しかもその資本が世襲されれば、その格差は拡大する一方となる。これを避けるためには、資本からの収益を税金で下げることが必要となる。両者の差は年率3%ほどだから、資本に2~3%の税金をかければ格差増大の力が相殺される! ピケティはこの課税を一国内に留まらず、グローバルな規模で行うことを提唱した。これは邦訳書の帯にすら書いてあることだ。そして多くの人は、それだけ読んで何か本書がわかったような気になる。「そんなの知ってたよ、大したことないね」と嘯く人もツイッターなどでたくさん見かける。でもそれでは、この本がなぜ騒がれているのか、つまりは本書の価値は理解できない。

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【ピケティ狂想曲・ブームの賞味期限】(04) ピケティは政治の文脈で読め――金融危機後に燻ぶる問題に光を当てた『21世紀の資本』、ピケティは格差拡大への懸念が高まる時流にうまく乗った

トマ・ピケティの『21世紀の資本』は、超富裕層が過去250年にわたり経済成長を上回るペースで富を蓄積してきた事実を明らかにしたとされる。「このままでは金持ちと貧乏人の格差は広がる一方だ」とピケティは説く。そして「政府が富裕層への課税を強化しなければ、格差拡大への流れは止まらない」と論じている。

しかし、著名な経済学者たちはピケティの理論に異議を唱えている。例えば、クリントン政権で財務長官を務めたローレンス・サマーズは、「格差が拡大し続けるのは必至だ」とするピケティの主張を一蹴し、「金持ちとその子孫はいずれ浪費に走り、蓄積した資産を相殺してしまうから、ピケティの予言する不公正な社会は来ない」と論じている。マサチューセッツ工科大学の経済学者ダロン・アセモグルとハーバード大学の経済学者ジェームズ・A・ロビンソンも同様な欠陥を指摘し、過去のデータからあるパターンを見つけ、それを未来にまで引き延ばしただけで将来の経済事象を予見するのは拙速だと批判した。ピケティの著作に対するこうした疑義が、いずれもリベラル左派によるものだという点は注目に値する。ピケティ自身も左派の活動家であり、左派の理論的支柱の1人でもあるからだ。何しろ彼は、この世の不平等が左翼的な神話ではなく厳然たる事実であることを示し、格差の拡大が社会悪であることを膨大な資料で実証したのだ。

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【ピケティ狂想曲・ブームの賞味期限】(03) 国境を超えるカリスマ人気――それぞれの経済・社会事情によって、人気の背景や受け止められ方には微妙な国柄の違いが表れている

■アメリカ…権威とデータに幻惑されたアメリカ人
本書は、どうしてこれほどの話題になったのか。もちろんアメリカ人は、格差の拡大や賃金の伸び悩みを酷く憂いている。本書の英訳版が出る少し前の時期には、バラク・オバマ大統領がこれらの問題を政治の争点にしようとした。ところが、少なくとも世論調査を見る限り国民の反応は全く鈍かった(ああいう調査を見たらこんな本が売れるわけないと悲観したくもなる)。それでオバマは一時期、格差について語るのをやめてしまった(今はまた語り始めたが)。そこへ、この本が出て凄まじい反響を引き起こした。なぜなのか。1つには、著名なノーベル賞学者(経済学)のポール・クルーグマンの影響が大きい。彼はニューヨークタイムズ紙の連載コラムで何度も本書に触れているし、ブログにも書いていた。やはりノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツとロバート・ソローも書評で褒めた。つまり、3人のノーベル経済学賞受賞者が揃ってこの本を絶賛し、多くの経済学者が無視してきた所得の再分配という問題に再び目を向けようと主張したことになる。このように、経済学界での反響は大きかった。その理由は、ピケティが経済学の世界で長らく信じられてきた基本的な仮定に異議を唱えたからではないだろうか。

1971年にノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツは、1960年代に資本主義経済の発展につれて一度は格差が広がるが、やがて中流層が増えて格差は縮小に向かうという『クズネッツ曲線』を提唱。そして彼は、幸運にもまだ格差が少なかった時期にこの世を去った。だが、クズネッツがもっと長生きしていたら、その曲線の続き、つまり格差が再び広がる時代を見て、ピケティと同じ考えに行き着いたかもしれない。ならば、ピケティはクズネッツの後継者なのか? いや、多くの経済学者がクズネッツの仮説を鵜呑みにして分配の問題に背を向けたのに対し、ピケティは異議を唱え分配の問題に正面から取り組んだのだ。もちろん、学者がいくら『21世紀の資本』を買ってもそれだけではベストセラーにならない。オバマの呼び掛けに応えなかった人たちが本書に飛び付いたのは、著者が権威ある専門家で、しかも膨大なデータで武装しているからだろう。本書に出てくる数多くのグラフや数字を前に、一般読者は引いてしまうだろうと思うだろうか。私は、むしろ数値や統計の山に魅了されたのではないかと考える。一般国民は格差の拡大を肌で感じていて、その問題を隣人たちと議論したがっていたのではないか。ただし、その際にオバマの主張の受け売りと思われたくはなかった。そんな時に、マサチューセッツ工科大学(MIT)で教壇に立った経歴を持ち、母国フランスで一流経済学者と見なされている人物が、この問題についてハーバード大学出版局から本を出した。こうした権威のお墨付きがあれば、隣人と格差拡大の話をするに当たって素敵な武器となる。もちろん、これは私の勝手な推測に過ぎない。実際に何が起きたのかは知らない。ご存じかもしれないが、ウォールストリートジャーナル紙に興味深い記事があった。電子書籍リーダーに残る履歴データから、いわゆる本の“読了率”を調べたものだ。『21世紀の資本』は最下位で、読者が目を通したのは平均して25~30ページだけだった。読まなくても持っていたいもの。それが“名著”の条件ということか。 (英語版翻訳者 アーサー・ゴールドハマー)

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【ピケティ狂想曲・ブームの賞味期限】(02) ネタ化する学術書ブーム――ガルブレイス・ネグリ・サンデル…分厚い学術書はなぜ売れ、なぜ忘れられるのか

フランスの経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』(邦訳・みすず書房)が日本のマスコミで話題になり、首都圏や近畿圏の大型書店では関連本コーナーが設けられている。「700ページの大著であるにもかかわらず、アメリカのAmazonの総合売り上げで1位になり50万部も売れたすごい本」という(まるで映画のような)前評判があったので、日本でもブームになることはある程度予想できた。私にとって多少意外だったのは、フランスやドイツの哲学系のかなり難解な本を出している地味な出版社というイメージが強いみすず書房が版元になっていることだった。

みすず書房で思い出すのは、一昨年から昨年にかけてのプチアーレントブームだ。映画『ハンナ・アーレント』が岩波ホールで盛況を博したおかげで、普通の人は存在さえ知らなかった哲学者アーレントの本がプチブームとなった。みすず書房からはアーレントの著作が数多く刊行されているが、映画との関連で重要なのは『イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告』だ。ユダヤ人の強制収容を担った責任を巡るアイヒマン裁判に関する見解を述べ、当時ナチス擁護との批判を招いたこの本も結構売れた。ただ、にわかアーレントファンたちは彼女を「世の中の風潮に逆らって自分の考えを堂々と述べた思想家」として薄っぺらく称えただけで、アーレントが何を指摘したのかという肝心な点を全く理解していなかった。「アーレントで儲けて少し商売っ気を出したのかな」と意地悪な見方をしていたら、そのうちNHKでピケティを主人公にした連続講義番組『パリ白熱教室』が始まった。案の定、『21世紀の資本』の新しい帯には「NHK“パリ白熱教室”はこの本の講義から生まれた」と謳われている。2010年には『ハーバード白熱教室』を機に、ごく少数の専門家にしか知られていなかった政治哲学者マイケル・サンデルが日本でスターとなった。直後に翻訳刊行された『これからの“正義”の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』(原題は『Justice』で、“これからの”も“生き延びる”も入っていない)が80万部という異例のベストセラーを記録。これを意識し、今また白熱教室ブームを再来させようとする意図がメディアと出版業界の双方に働いているのか明らかだろう。

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【ピケティ狂想曲・ブームの賞味期限】(01) ピケティが起こした大論争の行方――世界で大ヒットした経済書『21世紀の資本』、富と格差を巡る議論が生み出すものは

昨年の経済学で最大の話題と言えば、トマ・ピケティ著『21世紀の資本』をおいてない。各国でベストセラーとなったこの本は、富と格差の過去・現在・未来について考察したもの。無制限な資本主義は富の格差を拡大させ、一握りの名家に富が集中する時代に逆戻りすると説く。2013年8月に本国フランスで出版された同書は、昨年4月に英語版が出ると経済学者らから絶賛された。格差が問題視されているアメリカで瞬く間にブームを呼び、分厚い専門書にして異例のベストセラーに。先月までに世界十数ヵ国で150万部以上が売れたという。一方で、理論的説明が足りないといった批判も出るなど、賛否両論を巻き起こしている。

筆者は昨年末、パリ経済学校の教授であるピケティに電子メールで取材をした。「予想外の爆発的ヒットの熱狂が少し落ち着いた今、著書に対する人々の反応をどう考えているか」と。「私が思うに」とピケティはメールで言う。「この本が与えた影響で最も興味深く有益なものの1つは、多くの国、特に中南米とアジアの各国政府が税金データを公表するようになったことだ。だから私は今、“世界トップ所得データベース”にさらに多くの新興国を含めることで忙しい」。彼はもう少し細かく述べていたが、要点はそんなところだ。『世界トップ所得データベース』は所得格差の推移に関する歴史的データベースで、世界の研究者たちの共同作業で作られたもの。インターネットで公開されている。『21世紀の資本』を巡る大騒ぎのおかげで、ブラジルやメキシコ・台湾・韓国などはピケティにデータを提供した。彼は大喜びだ。正直に言うと、ピケティの反応は想像していたより素っ気なかった(彼が自分を批判する人々を攻撃したら、この記事ももっと面白くなっただろうが)。しかし、そのことでかえって重要な点が浮き彫りになった。ピケティの世界観が勝利しつつあるということだ。経済学者たちは、資本主義の自然な力学を巡るピケティの理論を完全には受け入れていないだろう。しかし、不平等についての現在の理論は間違いなく彼が提示する理論に沿って行われている。諸外国の政府から学者仲間まで、誰もがピケティが問い掛けている疑問への答えを求めている。

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