スマホゲームの課金方法を否定してきた任天堂と、強力なキャラクターでゲームがヒットすると考えるDeNA――任天堂がDeNAとの提携で迫られる“踏み絵”

3月17日、任天堂がDeNAと業務・資本提携すると発表した。これまで任天堂はスマートフォン(スマホ)向けゲームに積極的な姿勢を見せていなかったが、今後、DeNAと共同で開発・運用する。岩田聡社長は「ある程度タイトル数を絞り込む形で展開・運営することになる」と発言。マリオやゼルダ・ポケモンなど豊富な知的財産(IP)からスマホゲームを作ることになるようだ。ただ、この試みが成功するには、同社がこれまで否定してきた手法を導入する必要がある。 (取材・文/ゲームジャーナリスト・新清士)

任天堂が手がけてきた家庭用ゲームとDeNAが得意とするスマホゲームには決定的な違いがある。家庭用ゲームは5000円程度の価格で買ってしまえば、さらにお金がかかることはない。一方、スマホゲームは無料で遊べる代わりに、ユーザーが適度な“ストレス”を感じるように作られており、その解消のためにお金を支払うように促される。スマホゲームが売り上げを稼ぐ課金方法は大きく分けて3種類しかない。1つ目は、ゲームを規定回数以上、連続して遊び続けるためにお金を払う、つまり熱中しているのに続けられないストレスをみたす『コンティニュー課金』。2つ目は、お金を払えば自分の能力が高くなったと実感できる、一時的にゲームを有利に運ぶ能力を獲得できる『パワーアップ課金』。そして3つ目は、ゲーム内に登場する特別な能力を持つキャラクターやアイテムを手に入れる『ガチャ課金』だ。特にガチャ課金はランダムな確率でしか欲しい物が手に入らない仕組みで、ユーザーの熱中度を高める傾向があり、日本のスマホゲームの売り上げ全体の5割以上を占めるとされている。これら3種類以外にも、様々な課金方法が試されてきたが、あまり定着していない。任天堂はこれまでスマホゲーム型の課金に対して否定的な立場をとってきた。2012年4月の決算説明会で岩田聡社長は「構造的に射幸心をあおり、高額課金を誘発するガチャ課金型のビジネスは、仮に一時的に高い収益性が得られたとしても、お客様との関係が長続きするとは考えていないので、今後とも行うつもりはまったくない」とも話しており、ユーザーに高額課金をする仕組み自体を全面的に否定していた。今後の任天堂のスマホゲームの戦略を読み解く上で、参考になるゲームがある。今年2月に、任天堂の関連会社ポケモンが発売し、任天堂が販売しているダウンロード専用のパズルゲーム『ポケとる』(ニンテンドー3DS用)だ。基本プレー無料のアイテム課金方式になっている。

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今年の新人、“ゆとり型”と“熱血型”で混乱必至――突如出現した新種のトンデモ新人、最大の関心事は「いいね!」の数?

2015年も、新入社員が職場にやってくる季節が近付いてきた。だが、「今時のトンデモ新人=競争意欲のないゆとり世代」と決め付けるのは危険だ。2015年4月入社組の特徴は二極化。むしろ警戒すべきは“ゆとり型”より“熱血型”だ。 (宇賀神宰司・広岡延隆・西雄大)

「真剣に吟味して選んだ会社ですから愛着はあります。ですが再三申し上げた通り、私には地元・名古屋で祖父の介護というもう1つの仕事もある。従っていったん入社はしますが、研修期間後、地元以外の支店への配属が判明した場合は即刻退社いたします」。2014年末、大手IT(情報技術)企業の人事担当A氏は、ある内定者のそんな言葉を聞き、唖然とした。同社が大阪支店への配属を前提に内定をこの学生に出したのは2014年10月。確かにその後、学生は、映画や小説の影響か、友人の勧めか理由は定かではないが「介護に目覚めた」と突如言い出し、「祖父の介護をするため、配属は名古屋支店に限定してほしい」と申し入れてきていた。それでもA氏は学生の言葉を話半分で聞いていた。「そりゃそうでしょう。全国転勤ありの総合職として内定を出したわけだし、1人の人間を特別扱いできないことは分かるはず。苦労して手にした内定を蹴るはずないし、むしろ、介護に興味を持つなんて気骨のある子だと期待していたぐらいだったんです。申告するにしてもあまりに直前過ぎます」(A氏)。配属発表まで1ヵ月。この学生が本当に“2週間退社”するかはまだ分からないが、「連絡を取り合っている感触では、彼はもう介護のことしか頭になく恐らく辞めるだろう」とA氏は話す。本当に入社早々退職されると、自身の評価にも悪影響が及んでしまうA氏。今、思うのは、「今時のトンデモ新人=競争意欲がなく主張しないゆとり世代」と決め付けていたことへの反省だ。これまでにも扱いにくいトンデモ新人はいたが、その多くは一言で言えば“ゆとり型”であり“草食型”だった。確かにやや社会的常識に欠け、競争意欲も高いとは言えない。でも、本人に悪気はなく“のんびり屋”なだけで、粘り強い指導により組織に適応させることは可能だった。「でも2015年は違う。ゆとり型がいる一方で、こうと決めたら一直線で、権利意識と我が強く、理路整然と自分の考えを主張する“熱血型のトンデモ新人”がかなりいる。人事担当者は相当苦労すると思う」とA氏は話す。

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復活したファンド王の実像――村上世彰“寂しきカネと血脈”

「この国の企業風土を変える」「お金を稼ぐのは悪いことですか?」。刺激的な言葉を連発し、2006年に表舞台から去った村上世彰。その名が久々に取り沙汰されたのは今年1月、スカイマークを巡ってのことだった。逮捕前から村上を追い続けるジャーナリスト・高橋篤史氏が綴るこの10年。

3月18日、横浜市港北区にある自動車部品メーカー『ヨロズ』の本社に、シャンパンゴールドの光を放つ派手な高級外国車が滑り込んだ。颯爽と降りてきたのは4人の男女。白髪に髭を蓄えた小柄な男性は、世間を賑わせた9年前とは異なる印象だが、ギョロッとした目つきだけは変わらない。あの村上世彰(55)だ。引き連れているのは、側近の三浦恵美(39)と顧問弁護士の中島章智(54)、それにまだ20代半ばの長女・絢である。三浦が代表を務める金融会社『レノ』がヨロズ株を買い占めていることが明らかになったのは、昨年9月。買い増しは続き、約54億円を投じ持ち株比率は12%に達した。三浦とその部下の絢がヨロズ本社を初めて訪れたのは、今年2月のことである。その時、前触れ無く一緒にやって来た村上は、名刺を切る素振りを見せなかった。「私どものオーナーです」。三浦は村上のことをヨロズ側にそう紹介したという。村上は表に名前を出すことは無い。が、予てからの噂通り、レノの“本尊”が村上であることをヨロズ側が知った瞬間だった。この日、応接室に通された村上ら4人は、創業家2代目の志藤昭彦会長を始めとするヨロズ側の数人と対峙した。故・志藤六郎が軍需品生産の為、ヨロズの前身を創業したのは1940年。戦後は自動車の足回り部品に再出発の道を求め、日産自動車の系列下、数銭単位のコストダウンに心血を注いできた。今、世界各地の工場では6000人以上の従業員が働き、売上高は1300億円を超える。会談の内容は詳らかでないが、村上はヨロズが9日前に発表していた中期経営計画を難詰し、更なる株主還元を要求したようだ。会社側は中計で配当を今後引き上げる方針を示し、ほぼ倍増の年50円配当を実施するとしていた。が、村上はそれでも不満だったらしい。6月の株主総会に向け、両者の緊張が高まっていくことは必至だ。

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トヨタ4000円・日産5000円、それでも“アベのベア”は99%のサラリーマンには“賃下げ”だった――ベア大企業だけがボロ儲け、こうして株高は作られた!

安倍晋三首相の賃上げ要請に呼応して大手企業が次々と過去最高の“ベア”を発表し、大メディアがそれを煽り立てる──それだけ見ているとサラリーマンに“暖かい春”がやってきたように思えるが、実態は全く違う。アベノミクスが生んだ日本経済の悪循環は寧ろ加速している。“アベのべア”の正体を暴く。

春闘の回答集中日となった3月18日、大手各社がベア(ベースアップ)に踏み切ったことについて経団連の榊原定征会長は、「各企業は相当思い切った対応をした。収益を従業員に適切に還元する姿勢を明確にした」とした上で、「経済の好循環の2巡目を力強く回す大きな力になる」と語った。態々“2巡目”と協調したのには理由がある。春闘の労使交渉が佳境を迎えていた8日に、自民党大会に来賓として招かれた榊原氏は「賃金引き上げをしっかりと実現していきたい」と表明し、安倍首相は「昨年は、榊原会長のリーダーシップで賃上げを実現して頂いた。今年は賃上げをお約束頂いている。どれぐらい上がるか。会長のお話を伺って、何だか良い予感がしてきた」と応じた。榊原氏の「2巡目」発言は、政府と経団連の二人三脚で“2年連続の賃上げ”を実現したとアピールする狙いがあったのだ。

大嘘である。昨年、サラリーマンは未曾有の“賃下げ”に襲われた。安倍政権の誕生以来、物価上昇を加味した“実質賃金”は下がり続けている。アベノミクスの異次元量的緩和が円安を招き、輸入品を中心とした物価が急激に上がった為、実質賃金は今年1月まで19ヵ月連続でマイナスとなった。実質賃金が上がらなければGDPの6割を占める個人消費は伸びず、景気が上向くことはない。にもかかわらず、大メディアはそうした指摘も無しに今年の大企業のベアを連日、派手な見出しで報じて好景気ムードを演出した。

「トヨタ、4000円で決着 ベア過去最高」(3月16日付)
「日産、ベア5000円回答へ 製造業大手で最高水準」(3月17日付)
「ベア、最高相次ぐ」(3月18日付)
※何れも日本経済新聞

確かにトヨタや日産のみならず、日立・パナソニック・東芝など電機大手は1998年以降で最高となる3000円、大手ゼネコンも大林組が5500円、大成建設が7910円のベアとなった。円安で業績が回復した輸出企業や公共工事増が追い風となった建設業界など、アベノミクスの恩恵を受けた大企業で“アベのベア”が実現している。因みに、経団連会長の榊原定征氏が会長を務める東レも、昨年を上回る2600円のベアとなった。そうした状況を受けて、麻生太郎財務相は会見で「企業が利益を内部留保に蓄え、賃金や設備投資に回さない状態ではなくなった」と述べ、大メディアがその発言を大きく報じた。本当にそうか。ベアをパーセント換算した数字を併記すると、トヨタは1.14%アップ、日産が1.4%、大林組1.2%、東レ0.9%となる。その一方で、最新の消費者物価指数(食品・エネルギーを除く総合)は前年同月比で2.1%の上昇だった。埼玉学園大学の相澤幸悦教授が言う。「物価が2~3%上がっている状況下では、それに追いつく賃上げなど到底実現しません。大メディアは過去最高のベアと報じていますが、アベノミクスの恩恵を受けているはずの大企業でさえ、賃上げは物価上昇に追いつかず従業員の実質賃金はマイナスとなっているのが実態です」。つまり、“過去最高のベア”と報じられている数字は、実際は“賃下げ”に他ならないのだ。

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【『21世紀の資本』を私はこう読んだ】(後編) 不平等を歴史に学ぶ

格差社会という言葉はすっかり日常に定着した感がある。“1億総中流”と言われたのも今は昔、最近では社会の二極化が懸念されるようになった。日本だけではない。不平等の拡大は世界的な傾向である。特に顕著なのがアメリカだ。“1%vs99%”とも言われるように、人口の1%の富裕層の富が増加する一方で、大多数の国民の所得は伸びていない。最近では上位1%どころか0.1%、或いは0.01%の超富裕層の富が急激に増加している事実が明らかになっている。なぜこれほどの富の集中が起きているのか。この問題を考える上で目下大変な注目を集めているのが、トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』である。元はフランス語で書かれた本だが、2014年に英語版が出版されるや、大部の理論書であるにもかかわらず忽ちベストセラーになった。昨年末には日本語版も登場し、NHKでピケティ氏の講義(パリ白熱教室)が放送されるなど、矢張り大きな話題となっている。

本の内容は至極真っ当だ。不平等のデータを過去200年以上に亘って収集・整理した上で自説を展開するピケティ氏の理論は、類書には無いわかりやすさと説得力がある。日本の格差論争はこれまで、非正規やワーキングプアの増加が問題視されてきた。非正規の割合はこの20年で増え続け、現在では労働人口の35%を超えている。年収が200万円を超えないワーキングプア(働く貧困層)も、若年層を中心に増加の一途を辿っている。平均的なサラリーマン(中位層)とそこに入れない貧困層(下位層)の格差が、従来の格差論争であった。それに対して『21世紀の資本』が扱うのは、「上位1%や上位10%の富裕層への富の集中がなぜ生じるのか」という問題である。これまでの格差論争が“65%vs35%”の格差を問題にしてきたとすれば、こちらは“10%vs90%”又は“1%vs99%”の不平等に焦点を当てている。この本がアメリカでベストセラーになった理由もここにある。アメリカは、先進国でも別格に富の集中が進んでいる。上位1%の所得が国民所得全体に占める割合(所謂“1%占有率”)は、1986年には9%だったが、2012年には19%にまで増えている。小さい数字に見えるかもしれないが、日本(2010年の段階で9.5%)やフランス(8%)と比べるとこの数字は際立っている。資産格差のほうはもっと深刻だ。『エコノミスト』誌の記事によると、アメリカの上位0.1%に当たる16万世帯の資産総額は、下位90%の1億5000万世帯の資産総額にほぼ匹敵するという。『21世紀の資本』は、所得や資産の上位層への集中を示すデータ(“1%占有率”や“10%占有率”)を用いて、それがなぜ生じたのかを歴史的・理論的に明らかにする本である。今までのところ、富の集中はアメリカで顕著に表れているが、本書の議論に従うならこれはアメリカ社会に固有の現象ではない。先進国なら今後どこでも生じるだろうと予測している。

今現在、日本ではアメリカほど極端な富の集中は起きていない。“1%占有率”は1980年代(7%台)から現在(9.5%)までそれほど変わっていない。だからこれまで日本の格差論争では、富裕層とそれ以外の不平等はそれほど重要視されていなかった。ところが、ピケティ氏らが整備した『世界高所得データベース(WTID)』を見ると、上位10%の占有率は日本でも上昇中であることがわかる。2010年には40%と、先進国でもアメリカ(48%)に次いで大きい。因みに、日本の上位10%の平均所得は約900万円である。日本ではアメリカのような大金持ちは少ないが、“小金持ち”の割合は着実に増えている。“1%vs99%”の対立はまだ起きていないとしても、“10%vs90%”の対立なら日本でも既に始まっているのだ。ピケティ氏は複数のインタビューで、「日本も遠からず上位層への富の集中が激しくなる」と警告している。では、なぜ富の集中が起きるのか。そこにはどんなメカニズムがあるのか。『21世紀の資本』の内容を確認しておこう。

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【『21世紀の資本』を私はこう読んだ】(中編) この古典的な“資本主義の病”

現在、格差と貧困が資本主義の病として再認識されている。格差に対して寛容だと言われてきたアメリカにおいても、国民が1%のスーパーリッチとその他99%に分断されていることが話題となっている。格差を巡る論議に一石を投じ、世界的なブームを引き起こしたのが『21世紀の資本』である。戦後、1970年代の石油危機を迎えるまでは、先進諸国は高成長と比較的小さな格差を両立させていた。けれどもピケティは、これが資本主義の歴史の上では寧ろ例外であったことを教えている。19世紀から20世紀初めの資本主義において、富と所得のかなりの部分がスーパーリッチに集中していた。ところが20世紀に入ると、2つの世界大戦・ハイパーインフレーション・世界大恐慌によって、スーパーリッチの富と所得が破壊された。その後の戦後資本主義でも順調に富と所得の平等化が進んだ。1980年代以降、新自由主義が登場した。しかしこの“新しい資本主義”は、格差という側面では古い資本主義への復帰であることをピケティは教えている。大量のデータによる分析によって、アメリカと西欧の幾つかの国についてこうした歴史的事実を明らかにしたことが、本書の最大の意義と言えよう。尤も、統計データの正確さが問題となるのは常のことである。そして、一般的には過去に遡るほど統計データの正確性は低下するだろう。それでも、全体的な傾向としてはピケティの主張は正しいと言えるであろう。

さて、公正さに関する倫理学や効率性に関する経済学の見地から見ると、格差がなぜ良くないのかを理論的に説明することは必ずしも容易ではない。才能と努力によって多大な成果を上げた人は、高い報酬によって報われることが公正であり効率性を高めるという格差擁護論は、よく聞かれる話である。しかし、ピケティが描くところでは、19世紀のヨーロッパ経済はこのような“明るい”格差社会とは異なる。そこでは、スーパーリッチの所得の大部分は富の支配によって生じる不労所得によってもたらされていた。そして、その富の大部分は相続財産によるものであった。700ページにもなる『21世紀の資本』(日本語版)は、図表が豊富である。しかし、数字を使った経済モデルは殆ど存在しない。しかし、彼が資本主義の基本法則と呼ぶ2つの方程式は極めて重要である。

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【『21世紀の資本』を私はこう読んだ】(前編) 資本主義は然して経済成長を生み出さない

本格的な経済学の研究書がベストセラーになることは滅多にありません。その珍しい事例が、いま話題のトマ・ピケティというフランス人経済学者の『21世紀の資本』という本です。フランスで出版された時にも多少の評判ではあったものの、アメリカで一気に火が付き、こうなると万事アメリカの後を追いかける日本でも時ならぬピケティブームと相成りました。アメリカの著名な経済学者のクルーグマンやスティグリッツなどが大絶賛し、「経済学の思考を塗り替える画期的な書物だ」等という評まで出ている。と同時に、「彼の示した統計の扱いに誤りがあった」とか「解釈が不適切だ」等という批判も出ており、欧米ではかなりの論争が起こっています。一体、何が画期的なのでしょうか。ピケティの主張したことはどういうことだったのでしょうか。

実は、彼が扱った問題は極めて古典的なものであり、その回答も驚くほど簡単なものです。彼が取り扱った問題とは、「今日、果たして経済格差が拡大しているのか否か」という問題です。そして、答えは端的に「イエス」というものです。それをふんだんな統計数字に基づいて論証した訳です。これだけなら、特に何という訳でもありません。誰もが感じていることです。誰もが今日、所得の格差拡大を感じているでしょう。しかし彼の主張のポイントは、「経済格差を生み出すものが報酬や賃金から来る所得というよりも、資本の格差だ」と言っている点にあります。端的に言えば、「資産を沢山持っている者は、その資産を投資してもっと金持ちになる。この資産の格差が今日拡大しつつあり、しかもそれは今後益々拡大し、格差は固定されていくだろう」というのです。少し要約しておきましょう。確かに、所得の格差は広がっている。特にアメリカでは、上位10%が国民所得に占めるシェアは1980年頃には30~35%であったものが、2000年代には50%近くになっています。上位1%の上昇率はもっと高く、1980年には10%弱だったものがリーマンショックの前の2006年辺りには25%弱にまで増加している。所得の上位1%とは、2010年で年収凡そ35万ドル(凡そ4000万円)以上ですから、このクラスの金持ちが国民所得の4分の1を占めているということになります。そして、上位10%の者が何と国民所得の約半分を持っていることになります。

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【下村博文・辞任勧告スクープ】(05) 下村博文文科相、歪む教育行政“癒着の構図”

全国各地の後援会『博友会』を政治団体とは認めようとせず、大臣のイスに居座り続ける下村博文文科相。更に問題なのは、自らの“後援者”を文部科学行政に関与させ始めていることだ。政治資金規正法を骨抜きにする下村大臣の下で今、教育が揺らいでいる――。

3月23日、東京プリンスホテルで下村博文文科大臣の新刊著書の出版を祝う会が開催された。主催は、小誌がこれまで追及を続けてきた下村大臣の後援会『博友会』だ。出席者の1人が語る。「ホテル内は厳戒態勢で、事前に申し込んだ人以外は入場どころか会場にも一切近寄らせない徹底ぶりでした。立て看板すら無く、出席者も迷ってしまうほどでした。会費は1万2000円。登壇した下村大臣は約300人の支援者を前に講演の冒頭、貴誌の報道について『5年も10年も前の事実無根のことばかりだ。(博友会は)法律的には何の問題も無いので心配いりません』と語っていました」。今回は政治団体として届け出を行っている東京の博友会(以下、東京博友会)主催の身内の講演会という気安さもあって、下村氏は終始上機嫌だったという。だが、博友会の疑惑は未だ何も解決していない。全国には東京博友会以外に、下村氏を支える数多くの博友会があるが、何れも政治団体として届け出がなされていない。その為、「政治資金収支報告書の提出義務すら生じず、資金の流れが不透明で政治資金規正法に反している可能性がある」と小誌は再三に亘って指摘してきた。下村事務所は「博友会の運営には一切タッチしていない」と説明してきたが、実際は地方の博友会の実態が収支報告書の虚偽記載・迂回献金等の疑いを受けることを認識し、榮友里子大臣秘書官が作成した資料を元に対策を話し合っていた事実も報じた。

更に今回、新たな重要証言を得た。

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テーマ : 政治
ジャンル : 政治・経済

哀れなりピケティ騒動、その“公平と平等”論に異議あり――「再配分こそ正義」という陥穽…「格差は問題であり社会的正義に反する」と強調するだけでは議論にならない

フランスの経済学者であるトマ・ピケティ(パリ経済学校教授)の『21世紀の資本』が、邦訳で700ページ(索引込み)を超える大著であるにもかかわらず、13万部(1月末)を超えるベストセラーになり、各種メディアで大々的に取り上げられている。1月末のピケティ来日の前後には、国会質問でもピケティのことが話題になった。朝日新聞が主催したシンポジウムには、西村康稔内閣府副大臣もパネリストとして参加した。話題の『21世紀の資本』とはどういう本か。タイトルからマルクスの『資本論』を21世紀向けのリニューアルをした本ではないかという連想が働くが、その“期待”は半分しか当たっていない。マルクスは『資本論』に先立つ『共産党宣言』等で、資本主義社会が必然的に自滅し共産主義社会へと移行することを予言している。『資本論』ではその必然性を証明すべく、“資本”とは抑々何か、“資本”はどのようにして自己増殖するか、“資本”の増殖が資本家階級と労働者階級の(敵対)関係にどのような影響を与えるか、について経済学+哲学的な考察を加えている。謂わば、資本主義の誕生から死滅までを描き出そうと試みた著作である。それに対して『21世紀の資本』では、21世紀の資本主義に対して批判的であることは間違いないが、資本主義の本質を論じている訳でも、況してやその終焉を予言している訳でもない。“21世紀の資本主義”の現状をデータに基づいて分析した上で、様々な問題を引き起こし多くの人々を苦しめている現在のグローバル資本主義を制御する仕組みを作ろうという(日本の保守派も、国民としての一体感を守るという観点から受け容れても可笑しくない)提案をしているだけである。市場経済がグローバル化していることが、それ自体として悪だと言っている訳ではない。彼は政治的にはフランスの現政権与党である社会党を支持する中道左派であり、共産主義社会やアナーキズムを目指している訳ではない。

では、然程ラディカルな左派でない学者による比較的控えめな提言を結論とするこの本に、(タイトルだけ見て糠喜びしている連中は最初から論外として)メディアや左派的知識人が惹き付けられるのは何故か? 一番単純な理由は、日本に先立ってアメリカで大ブームになり、ノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマンなど有力な経済学者たちに高く評価されたからだろう。無論、クルーグマンたちが評価するのにはそれなりの理由がある。端的に言えば、“格差拡大”傾向を資本主義経済の特性として実証的に描き出しているからである。2011年9月のウォールストリート占拠事件に象徴されるように、リーマンショック(2008年9月)以降のアメリカでは、トップ1%の富裕層が富の3分の1以上を所有している不平等に対する不満が高まっている。周知のように、21世紀に入ってから日本の論壇でも“格差”を巡る論議は続いており、保守派にも格差是正を訴える人が増えている。ピケティは、厖大な統計データを駆使して、先進諸国において“格差”拡大の傾向とそれが教育などに悪影響を与えていることを明らかにしている。

加えて、アベノミクスを批判する日本のマスコミや経済論客たちには、経済学の世界的スターになったピケティから、自分たちの主張に対する理論的なお墨付きを得たいという願望があるようだ。ピケティの資本主義観からすれば、金融緩和政策主導で景気回復を図るアベノミクスを「金融資産を多く所有する富裕層を富ますだけの政策だ」として彼が批判することは十分に予想できる。実際、日本のマスコミからの取材に応える形で、アベノミクスに対して批判的に見える意見を述べている。ただ、その一方で彼はアベノミクスを全否定している訳ではなく、「労働所得を上昇させる政策で補完すればデフレ不況からの脱出に有効な対策になり得る」との趣旨の発言もしており、アベノミクス擁護の議論に利用できないこともない。ピケティは金融政策の専門家ではなく、日本経済に特に詳しい訳でもないので、アベノミクスについて断定的な評価を下さないのは当然のことである。政治的な立場からすれば、日本の左派の安倍政権批判に共鳴しそうだが、その意味では然程イデオロギー色を見せていない――大人の対応をしているのだろう。まとめると、ピケティには①アメリカの学界でも高く評価されるフランスの最先端の研究機関の教授②“格差”について実証的研究をしている③アベノミクスの賛成・反対の両派が知的権威として援用できる――という、今の日本の論壇でウケそうな要素が揃っている訳である。しかも露骨な敵ではないので、保守系の経済論客にとっては攻め難い相手であろう。ピケティブームを機にして、“経済成長”と“格差”というアダム・スミスの『諸国民の富』以来の経済学の最も基本的な問題を再考し、徹底討論するのは悪いことではない。しかし、ピケティが言っていないことを言っているかのように装って我田引水のプロパガンダをしていたのでは、真面な議論にはならない。『21世紀の資本』で彼が実際に何を言っているのか、簡単に見ていこう。

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総ページ数は728ページ・価格5940円、なのに大ベストセラーの『21世紀の資本』――トマ・ピケティはなぜ“アイドル”になったのか、来日した本人に直接聞いてみた

まるで、彼はアイドルのようだった。雑誌のグラビアを飾り、週刊誌は来日に合わせて空港にカメラマンを待機させる。幾つもの撮影と取材が組まれ、朝から晩までスケジュールはびっしり。フランスの経済学者であるトマ・ピケティのことである。『21世紀の資本』日本語版の出版ポロモーションの為に東京へ来ていたのだ。『報道ステーション』や『クローズアップ現代』等のテレビ出演は勿論、『週刊東洋経済』はピケティ特集号を組み、何と表紙も彼の写真。『週刊現代』なんて「ピケティ教授もびっくり! “21世紀の女性器”格差」という便乗特集を組んでいた。何でも「世界の富の大部分を一握りの富裕層が所有しているように、セックスの快楽の大部分は少数の女性が所有している」らしく、その是正のためにピケティの主張する所得への累進課税に倣って「富める女性器への再分配」を提案している。要は、「セックスの気持ち良さを多くの女性が知るべきだ」ということらしい。まさに“ピケティ教授もびっくり!”の日本メディアの狂乱である。

そんなピケティ旋風が吹き荒れる中、僕も彼に会ってきた。討論番組『ニッポンのジレンマ』でインタビューの時間を貰うことができたのだ(2015年2月28日24:00-25:00放送・NHK Eテレ)。しかし、流石アイドルのピケティ、信じられないハードスケジュールだった。木曜日に来日して、日曜日の昼間に帰国という僅か4日間の行程中に、信じられないくらい予定が詰め込まれていたのである。哲学者の萱野稔人さんとのニコニコ生放送対談に至っては、前のスケジュールが押してしまった為15分しか時間が取れなかったという。まあ、そのプロモーションも実って、本誌が発売される頃には恐らく夥しい数のインタビューや対談が既に発表されているだろう。この原稿も完全にそれに乗っかる訳だが、ピケティの主張内容や解説・異論・反論は多く出回っているのでここでは繰り返さない。それよりも本稿では、ピケティへのインタビューを再構成しながら、なぜ彼が日本でここまで人気を獲得したのかを考えてみたい。勿論、大前提としてピケティの『21世紀の資本』という研究成果自体が素晴らしいということもあるのだろう。しかし日本では、前評判だけでピケティ論が大きな話題になっていた。どうして、ピケティはこれほどまでアイドルのような存在になったのだろうか。

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