【韓国の病・MERS騒動という悲劇】(下) 情報統制の拙さが浮き彫りになった――MERS感染者がいる病院名を長く公表しなかった方針は誤りだ

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『MERS(中東呼吸器症候群)』感染が拡大する韓国では、国に依る情報統制も問題視されている。国民は政府の対応の拙さを批判しているが、恐らく最も激しい怒りと不安を招いたのは、感染者の治療に当たっている病院名を公表しなかった点だろう。最初の感染者が確認されてから約3週間も、政府はそうした病院名を非公表にしてきた。政府は公表を控えた理由の1つとして、「感染を恐れた人々が当該の病院に行かなくなることに依り、病院が経済的な損失を被ることを防ぎたかった」としている。情報の空白を埋めたのは、市民の憶測だった。インターネットユーザー等が感染病院リストを纏めてオンライン上に掲載。感染者のいない病院を間違って名指ししたとして、名誉毀損罪で警察から取り調べを受けた人もいる(韓国では、名誉毀損罪で7年以下の禁錮刑が適用される場合もある)。韓国は、民主国家でありながら情報は厳しく統制されている。例えば、殺人やレイプで有罪判決を受けた犯罪者の名前は報道されず、インターネットではポルノや北朝鮮を支持するような内容は厳しく検閲される。多くのメディアは、MERSに対する政府の対応を批判しながら、殆どが病院名の公表は自粛した。そんな横並びの体制から抜け出し、建陽大学病院やサムスンソウル病院等の6つの病院の名前を挙げて報じたのは、インターネットメディアの『プレシアン』だった。

今月初めに実施された世論調査(全国500人の成人を対象)では、回答者の83%が感染者の収容されている病院名の公表を希望していた。この調査から数日後、文亨杓保健福祉相は漸く、感染が拡大するきっかけとなった病院を1ヵ所だけ公表。ソウル近郊の平沢聖母病院で、同病院を訪れた人に保健当局へ名乗り出るよう呼び掛ける為だ。従来の方針を変えて、全ての病院名を公表したのは、それから更に2日後のことだった。高麗大学の朴景信教授(法学)は、「政府は感染者の収容施設を1ヵ所に纏めることで、各病院の経営に損失を齎すリスクを回避できた筈だ」と指摘する。「今回の1件は、政府の頼りなさと政府に対する国民の信頼の低さを表している。国民からの信頼が厚ければ、政府は1つの大病院を隔離施設に指定し、感染者全員を集めることもできた」。3週間も憶測が飛び交ったせいで、風評被害に遭った病院としては、今更情報公開されても“時既に遅し”だ。 (ジョン・パワー)

               ◇

MERSに四苦八苦する朴槿恵大統領。昨年のセウォル号転覆事故と同様、今回の騒動でも一部の韓国メディアが自国を“後進国”と評していますが、SARSの際は適切に対応したことを考えると、問題は国や社会ではなくて現政権の体質にありそうです。感染の疑いのある人を電話で励ますパフォーマンスの一方で、自らの言葉で国民を安心させようとはしない――国民の安全を最優先して訪米を延期した割には、誠意に欠けているように見えます。 (本誌編集長 横田孝)


キャプチャ  2015年6月23日号掲載


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【教育格差の正体】(03) 教育費について我々は何を考えるべきか――教育費負担の問題は社会の在り方の選択、学力検査の順位だけで政策が動くようでは話にならない

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所謂“格差問題”が社会的に認知されるようになり、教育の役割が問い直されている。一般に、教育は社会全体の生産性を高め、民主主義的価値観を定着させ、出自に囚われない業績主義を促進させると見做される。一方で、教育は成績学歴に基づき、階層的な格差構造を前提とした社会で地位の配分を行う。つまり、教育が格差そのものを無くす訳ではない。そうした地位の配分を正当化する為にも、教育機会の平等・教育を巡る競争の公平性は常に議論の的となる。日本の教育費の家計負担は非常に重い。日本政府の財政支出に着目すると、教育費への配分は国際的に(経済規模――つまりGDP基準で見ても、また財政支出総額の割合で見ても)最低水準である。このことは、教育の専門家の間ではよく知られている事実である。但し、日本は少子化が進み、全人口に占める子供の割合が小さい。だからそれは当然の結果で、「生徒1人当たりに換算すればOECD諸国平均と遜色無い水準だ」という反論が財務省からなされたことがある。図1は、生徒1人当たりの公教育費を物価水準の違いを考慮しつつドルに換算したもので、日本の公教育費は若干OECD平均を上回る。尚、図の注釈にあるように、この公教育は人件費や教材を含む教育機関に対する支出を指し、学校外教育・お稽古事・参考書・給食や学校の寮費以外の生活費は除外されている。図は省略するが、内訳を見ると、初等・中等教育(小中高)ではOECD平均を上回るものの、高等教育(短大・大学)ではOECD平均9221ドルに対し、日本は6384ドル。就学前教育(3歳以上の幼稚園・保育所・認定こども園)に至っては、OECD平均6043ドルに対し日本は2849ドルに過ぎない(数値は2011年)。教育費の総額に占める公的支出の割合では、日本はデータのあるOECD諸国の中で少ないほうから4位で7割未満である。それは就学前教育が半分以下(OECD最低)、高等教育が3分の1程度(下から4位)に過ぎないことに起因している。つまり、小学校から高校までは別として、幼児教育と高等教育は著しく家計に依存しているのが現状である。

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図2は、戦後の授業料の推移を示したグラフである。相対的に公立高校の授業料は低く抑えられているが、それ以外は1970年代半ばから急上昇している。但し、これは物価水準の変化が考慮されていない。負担の大きさを理解する目安として、給与所得者の平均給与に対する大学授業料の割合を示そう(図3)。この平均給与は国税庁発表の1年を通じた勤続者のもので、短期雇用は含まず、男女差や年齢・企業規模は考慮していない。指標としては粗いが、負担の大きさの1つの目安にはなる。これを見ると、1970年代前半に一旦曲線は低下するが、それ以降は右肩上がりで、現在の国立大学は高度成長期の私立大学の負担水準を超えている。家計負担がどのくらいなのかを正確に計算するには、世帯人員数や所得水準等を考慮する必要があるが、満足できるデータを得るのは難しい。これも目安に過ぎないが、総務省の『家計調査』における世帯人員4人の勤労者世帯に着目すると、年平均の教育費は9%前後で推移しており、その内の4分の1程度が補習教育(塾等)に充てられている。但し、これも世帯人員4人というだけで、教育費の支払いの無い世帯も含まれるから、実際の負担額は更に多くなる筈である。国際比較の点ではどうか。図4はILO(国際労働機関)のデータで、世帯規模・構成員や所得水準を一切考慮していない平均値なので、実質的な負担より小さな数値が出ていると思われる。データは稍古いのだが、日本については当時と大きな変化は無い。帯グラフの濃い黒の部分が教育費で、日本は韓国の次に黒の部分が多い。日本社会は年齢規範が根強く、多くの場合、通学するのは子供・若年層に限定される。つまり、特定の年齢の子供を抱えた世帯のみが一気に教育費を自ら負担する。教育費負担の重いことがわかっており、且つ給与の上昇が望めないとなれば、子供を抱える(或いは子供を産もうとする)世帯はせっせと貯蓄に励まざるを得ない。教育に限らず老後の不安も大きいので、基本的に個人は貯蓄を増やそうとする。脆弱な教育・社会保障システムの下では自己防衛せざるを得ないからだ。斯くして政府への信頼は失われ、そして信頼を失った政府は国民負担増の理解を得られない――という悪循環に陥る。

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“ゆるトク”機能性表示食品、出足振るわぬ4つの誤算――2ヵ月半で僅か36品目、健康食品大手も二の足を踏む…“企業連合”で参入目指す、販売員の教育も必要

「内臓脂肪を減少させる」「おなかの調子を整える」──。トクホ並みに食品の機能を謳える『機能性表示食品制度』が2015年4月に始まった。届け出だけで表示できる“ゆるトク”への期待は高かったが、緩い出足に留まっている。 (河野紀子・中尚子)

「制度が始まって2ヵ月以上経つが、一体どうなっているのか…」。大手食品メーカー『マルハニチロ』商品技術開発部長の小梶聡氏は、困惑した表情を見せながらこう語る。制度が始まった2015年4月1日に、主力商品の一部を『機能性表示食品』として消費者庁に届け出たが、未だに受理されていない。「小売りから問い合わせが続いていて、『どんな商品をいつごろ出すのか?』と聞かれるが、確実なことを言える状況じゃない」。2015年4月、『機能性表示食品制度』がスタートした。この制度では、「内臓脂肪を減少させる」「おなかの調子を整える」等の食品に含まれる機能性について、身体の部位と併せてメーカーの責任で自主的に商品に記載できるようになった。対象には健康食品やサプリメントだけでなく、トマト等の生鮮食品も含まれる。制度開始から3ヵ月が経とうとしている今、漸く機能性を謳った商品が店頭に並び始めた。だが、食品メーカーや小売り等、ビジネスチャンスが広がると期待していた業界全体が、思わぬ4つの誤算に見舞われている。

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【誤算1】迅速に出せる筈が、受理までに数ヵ月も
ある食品メーカーの広報担当者は最近、消費者庁のウェブサイトをクリックするのが日課となっている。機能性表示食品の受理状況を確認する為だ。4月に消費者庁に書類を送ったが、届け出が受理されず、一向にアップロードされない。「受理までにどのくらいかかるのか教えてもらえず、只管サイトをチェックしている」と困り顔だ。機能性表示食品は、「特定保健用食品(トクホ)」と違い、消費者庁の審査を受ける手間がかからないのが最大の特徴。その代わり、企業は自社の責任で、成分の機能を裏付ける科学論文などを消費者庁に提出し、同庁がその書類をウェブサイトで公開する。審査が無い分、新商品を迅速に出せるようになり、新たな健康市場が生まれるはずだった。消費者庁食品表示企画課の担当者も、「今回の制度は飽く迄も届け出制なので、審査はしない。書類に不備がないかだけを確認している」と説明する。だが、6月18日時点で消費者庁には約200品目分の書類が届いているにも関わらず、受理した品目数は僅か36品目に留まる。「消費者庁ではたった数人で書類を細かくチェックしているようで、殆ど手が回っていない」とある業界関係者は明かす。審査が無いとはいえ、複数の企業が届け出書類を差し戻されている。消費者庁はその件数を明らかにしていないが、それも受理が遅れている理由の1つだ。消費者庁は差し戻した書類が再び届いても優先的には確認せず、届いた順に書類を確認するようにしている。更に、受理後も直ぐに商品を発売できる訳ではない。届け出番号を印刷しなくてはならない為、パッケージを前もって作ることができないからだ。大手サプリメントメーカーの『ファンケル』は、「パッケージの印刷を乾かすだけで1ヵ月もかかるのに」と訴える。

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千葉少女監禁・生き埋め殺人事件は再び起こり得る! 凶悪化するホスト、その悪質過ぎる儲けの手口――「キャバクラで働いてツケを返してくれないと俺が殺される」と脅迫…強制的に風俗で働かされて心を病み、自殺未遂を繰り返す女性客たち

口には詰め物を入れられたまま粘着テープで塞がれ、両腕には結束バンドをされたまま土中から遺体が発見。あまりにも残忍過ぎる手口が明らかとなった『千葉少女監禁・生き埋め殺人事件』。被害者の野口愛永さんは、18歳にしてホストクラブに多額のカケ(売り掛け=ツケ)や借金があったとされ、こうした金銭トラブルが事件の動機となった可能性が高い。また、主犯格と見られる18歳の少女は、「担当のホストを野口さんに取られると思った」と供述している。10代の少女たちをここまで虜にするホストの手口とは、如何なるものなのか? (取材・文 上野友行)

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「ホストに関わる凶悪事件は、また起こり得る」と危機感を募らせるのは、『歌舞伎町ホストクラブ協力会』の北条雄一会長だ。「僕らの時代、ホストの客と言えば女性経営者や女医・女優、又は資産家の娘さん等、懐に余裕のある方が殆どでした。ところが、近年のメイン客層はキャバクラや風俗で働く若い女性。一般の女性よりは多少自由にお金は使えても、やはり若いこともあってお店や担当に嵌り過ぎてしまい、トラブルや事件に至る例が急増しています」。今回の事件が象徴するように、近年目立っているのが女性客同士の揉め事だ。同じホストを指名している女性に対し罵声を飛ばしたり、陰口を叩くことがきっかけの大半で、店内で掴み合いの大喧嘩を繰り広げる者も少なくない。その際、投げつけたグラスで怪我をさせる等は序の口で、過去には消火器の中身を撒き散らして、店ごと営業停止に追い込んだ客までいるのだそうだ。また、昨年末に“ホスト好き”を公言する某女医タレントを脅迫した容疑で23歳の風俗嬢が逮捕されたように、店内でのトラブルをきっかけにインターネットで誹謗中傷を繰り返す者も少なくなくない。特に、地方の店舗ほど揉めた相手の情報が割れ易い為、「男に頼んで復讐してもらう」ような泥沼の“戦争”に発展し易い訳だ。「確かに、指名客同士の競争心を煽るのはホストのテクニックなのですが、こうした揉め事を起こしてしまうのは己の管理力やカリスマ性の無さ。本来、ホストとしては恥ずかしいことです。ただ、最近はそう考えないホストも多く、トラブルを武勇伝のように語っている若い子も少なくありません」(同前)。寧ろ、若手ホストたちの常識の変化が客層の変化を招いたようだ。

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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(21) エマニエル夫人への欲望を封じ、皇居に敬礼した少年時代

いきなりですが、思い出話に少しお付き合いください。今では「単純な話に引っ掛かるな!」と言い続けている僕が、少年時代に“単純な話”にのめり込んだ思い出です。僕の日本人の母方の遠い親戚に「天皇万歳!」を唱え、皇居に向かって敬礼し、堕胎を否定する右翼系の某宗教団体の大幹部がいました。僕は広島の中学校に通っていた中学2年生の夏、偶々道場で8日間の集団生活に参加。毎朝4時半に起床し、畳を雑巾で掃除しながら祈り、お経を丸暗記して唱える内に、雷に打たれたように教えに嵌ってしまったのです。今思えば、集団が暗示にかかる典型的な現象ですが、そこでは自分の悪い部分を紙に書き、火にくべて燃やした。僕は、前年に大ヒットした映画『エマニエル夫人』を見たいと思ってしまう“性的に穢れた自分”を泣きながら清めた。始発で登校し、お経を唱えて教室も清めた。毎日が幸せで、学級委員にも選ばれた。

しかし、そんな強固な信仰心も、ある事件をきっかけに揺らぎます。何故か道場に入り浸っていた酔っ払いのおじさんが「祈っても救われんぞ」と言い、風俗店に言った話をした。純粋な僕はショックで泣いた。その夜、ある信者が僕を慰めようと外に連れ出し、こう言った。「モーリー君、あの星空をみてごらん。どんなことを言われても気にすることはない。君の心があの綺麗な星のようになればいいんだ」。なんて陳腐なセリフなんだ。こんな才能の無いヤツと同じものを信じていたのか――。少し目が覚めました。それでも、「あいつが無能なだけ」とまだ教え自体は信じ続けたんですが、その後直ぐに父の仕事の都合で渡米。そこでは、東洋人とのハーフだというだけで通り掛かりの人に暴言を吐かれる。時には突然殴られる。「祈りの力で心を通わせよう」と思いましたが、祈りの心で接してもまた殴られるだけでした。しかも、周囲の友達は13~14歳でも男女交際バリバリ。セックスはするわ、無修正のポルノは見るわ……。道場で捨てた筈の性欲は直ぐに全開となり、反比例するように信仰心は消えていきました。

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【韓国の病・MERS騒動という悲劇】(中) 朴槿恵の訪米延期は大誤算――MERSの失策を取り戻すつもりの決断は、アメリカの無関心と日本の地位強化を招く

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韓米関係を再活性化させ、アメリカの対アジア戦略における韓国の重要性をアピールする――その為に、韓国の朴槿恵大統領はアメリカを訪問する予定だった。今回の訪米は、とりわけ大きな意味を持っていた。何しろ、日本の安倍晋三首相の訪米から2ヵ月経たないタイミングだ。安倍は8日間という長期日程を組み、アメリカのバラク・オバマ大統領との首脳会談は勿論、日本の首相として初めてアメリカ議会上下両院合同会議で演説も行った。ところが、韓国政府はアメリカへの影響力を取り戻す機会を捨てた。MERS(中東呼吸器症候群)感染拡大という国内危機への対応を理由に朴は訪米を延期したが、これは間違った決断だ。そのせいで、韓国政府の存在感は一段と後退しているように見える。朴曰く、訪米延期は必要に迫られた上での決断だ。MERS感染の広がりで、韓国では6月第2週末時点で14人が死亡し、感染者は138人になっている。但し、WHO(世界保健機関)に依れば、韓国でのMERS流行は既にピークを迎えたようだ。感染の広がる過程に学校は関係していない為、「休校中の学校を再開すべきだ」とも勧告している。それなのに、なぜ朴は最重要の同盟国への訪問を延期するという挙に出たのか?

最大の理由は、MERS問題に真剣に取り組む姿勢を打ち出したいから。初動対応がお粗末だったとあれば尚更だ。韓国政府の担当者等は、感染拡大から粗3週間が経った時点で漸く、感染者が確認された病院の名前を公表した。昨年4月のセウォル号転覆事故の際にも対応の拙さを露呈した朴政権は、再び国民の激しい批判に曝されている。長らく前から予定されていた訪米を犠牲にしてまでも、国民に真剣な態度を印象付けたい朴だが、その決断は功を奏していない。寧ろアメリカを訪問していれば、国内外に対して「きちんと危機管理できている」と発信することができただろう。延期決定は正反対のメッセージを送っている。アメリカ訪問は韓米の北朝鮮抑止戦略等、重大な安全保障問題に焦点を当てる機会にもなった筈だ。韓国はアメリカの牽制にも関わらず、中国が創設を主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決めたが、この問題を巡る外交上の誤解を解くチャンスにもなったに違いない。

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【教育格差の正体】(02) 点取り競争から抜け出せない大人が教育を駄目にしている――ペーパーテスト1点の差に一喜一憂する愚、これからの公立学校のあるべき姿とは?

大阪桐蔭中学・高校の裏金問題が発覚し、世間を騒がせていますね。僕は、この事件は学校関係者だけでなく、保護者を含めた世間一般の人たちが、教育というもののあるべき姿を誤解していることから生まれたものだと思っています。一流大学への進学率や偏差値だけを見て、“いい学校”にお金をかけて入学させることが、子供たちの為になると思っている。こうした風潮には危惧を覚えます。このままでは、日本という国自体が滅びますよ。私学受験は2000年頃から過熱してきました。全国平均で見れば、私立中学校に通う子供の割合は2014年度のデータで7.0%と、まだまだ少数です。但し地域差があり、東京都は24.1%、高知県は17.6%と平均より遥かに高い。僕自身の実感としても、こうした地域でははっきりと私立学校と公立学校で子供たちが2層化していると感じます。講演を行っても、子供たちの反応が全く違う。あまりの落差に愕然とします。子供の集団というのは、勉強ができる子もできない子も、裕福な家庭の子も貧しい家庭の子も、色んな子供がいるのが自然な姿で、様々な背景を持つ他者と交わることで、多くの学びが得られます。だから、多様な人々に囲まれて育っていくのが望ましいんです。

僕は私立学校と公立学校の双方で、計22年間教壇に立ってきました。その後も様々な教育現場を見てきましたが、「子供たちが早い段階から多様性の無い環境で育つのは、教育的にも好ましくない」とはっきり思いました。こうした状況が広がっている最大の理由は、保護者のエリート志向です。「我が子を学歴社会で優位に立てるようにしてあげたい」という思いですね。高学歴を獲得する為の私立小学校・中学校受験。こうした動機で受験生が集まるのは、私立学校の側にとっても虚しいんです。その学校の校風や理念が好きだからとか、そういう理由での受験なら学校も教師も嬉しいんですよ。しかし、今の保護者が見ているのは大学進学率や偏差値の数字ばかりでしょう。その学校が好きだからではなく、偏差値の上から順に選んでいるだけ。はっきり言って、私立学校の経営者たちもこのような状況を嘆いていますよ。その学校で何を教えているか、どんな取り組みをしているかなんて見ていない人も多いのではないでしょうか? だから、大阪桐陰のような塾と癒着した学校が出現する。兎に角、「東京大学に○○人、京都大学に○○人合格した」という実績を作れば、それだけで受験生が殺到しますから。短期間で急に難関大への進学率が上がったような学校は、注意したほうがいいでしょう。教育は時間がかかるものですから、普通に考えれば急に実績が上がる筈がないんです。教師の力量だって急には変わりません。2000年以降の私学受験ブームの原因は3つあります。2002年度からの『ゆとり教育』の実施と完全学校週5日制、そして所謂“PISAショック”です。『PISA』とは、2000年から始まった『OECD(経済協力開発機構)』が15歳児を対象に3年毎に行う国際的な学習到達度調査です。2000年の結果から2003年に日本の順位は急落し、2006年も続落しました。これが世間に大変な衝撃を与えました。特に、お子さんを持つ保護者が危機感を持った訳です。「ゆとり教育を行い、週5日制にした結果、子供たちの学力は落ちているではないか」と皆が思ってしまった。

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【特別対談】 AIIB、“中国の企み”に気をつけろ 慶應義塾大学教授・竹中平蔵×大和総研副理事長・川村雄介

川村「私が“アジアインフラ投資銀行(AIIB)”の話を最初に聞いたのは2年前の丁度今頃、尖閣問題が拗れ、日中間が冷え切っている時でした。中国社会科学院のトップと『円と元の双方を国際化し、決済をスムーズにするにはどうすべきか?』と話している時に、『実はこういう構想がある』と相手が打ち明けたのです。『これは中国の覇権主義ではない。アジアの為なんだ』と熱心に話していたのを憶えています。その年の10月に習近平(国家主席)がぶち上げた時、参加するのは15ヵ国と言われていました。それが今回、蓋を開ければイギリス・ドイツ・フランス等のヨーロッパ勢を加えて57ヵ国、その4倍です。中国にとっても望外でしょう。日米が主導する“アジア開発銀行(ADB)”の67ヵ国・地域に迫る勢いです」
竹中「ヨーロッパ勢が一斉に参加表明したので、日本の意見も割れましたね。メディアや学識者の論調を見ていると、『参加するか、しないか』という単純な話になっています。でも、この問題は経済と内政・外交、そしてビジネスという様々な論点が含まれている。其々について議論せずして、事の本質を理解することはできないと思います」
川村「そこには、中国という国の複雑さが絡むので厄介です。中国に改めて言われるまでもなく、アジア新興国を中心にインフラ整備の資金需要が高まることは間違いありません。その需要に応えるには、既存のADBや世界銀行だけでは足りないので、『新しい国際機関が必要だ』と中国は表向き説明しています。しかしそれは、アメリカを中心とする国際秩序への挑戦でもあります」
竹中「この組織の大きな特徴は、『1000億ドルと見込まれる資本金の40~50%を中国が出資する』と言われていることです。この点、“日米中心”と批判されて来たADBは、日本もアメリカも出資比率は10%台に抑えられている。歴代総裁は日本人ですが、本部はマニラで、組織の分散もある程度図られています。今のところ、AIIB総裁には元国務院財政部次官の金立群が就任するとされていますし、抑々中国は中央銀行が国務院の中にあるような国ですから、AIIBも中国政府の意思が色濃く影響するのは間違いないでしょう」

川村「隠れた問題の1つが、現在の中国の国内経済です。明らかに供給過剰で、金融面もバブルに近い状態にあり、相当難しい状況になっています。過剰に生産されたモノや生産設備を国内では捌き切れないので、外に活路を見出さざるを得なくなっている」
竹中「近年の日本経済研究センターの報告書では、『中国は早晩“中所得国の罠”に陥り、成長率を大きく低下させる』という厳しい見方が紹介されていました。“中所得国の罠”とは、1人当たりGDPが1万ドルに近づき、中所得国になった段階でインドやミャンマーのような発展途上国の経済的な追い上げに依って競争力を失う一方で、日米のような先進国と競争するにはイノベーションの力が不足している為に、成長が停滞する現象を指します。こうした状態に、中国が陥る可能性はあると思うのです。そういった視点で見ると、AIIBはやはり“中国の国内対策”という面はある。中国は国防費を増やして批判されましたけれど、その国防費よりも実は国内の治安対策費に寧ろ多額のカネを使っています。経済格差が広がって国民の不満を抑えるのに、相当苦労しているのです。だから、中国政府としては不満の捌け口として、リーダーシップを発揮して海外のインフラ整備に乗り出していく姿を国民に見せておきたい」
川村「中国が強力に推進しているのは、陸と海の“シルクロード経済圏”構想、所謂“一帯一路”と呼ばれる経済圏の拡大戦略ですね。中国を起点に、中央アジアからヨーロッパに延びる内陸の“シルクロード経済ベルト”と、東南アジアからインド・中東へと海岸諸国に沿って広がる“21世紀海のシルクロード”。そこには、中国企業がユーラシアからアフリカまで各地の鉄道や道路・パイプライン・都市開発等のインフラ需要を取って行こうという狙いがある。一帯一路沿線の国としては、インフラ整備が進むことは有難い。タダで作ってくれるものは何だって彼らは欲しいですから。でも、中国にとってはヨーロッパに繋がる導管を作るのが目的であって、正直なところ、この中央アジア地域にどのくらいインフラ需要があるのかは私にもわかりません」
竹中「インフラ需要は、それらの国がどういう経済政策を採るかに依っても変わってきますからね」
川村「中華思想丸出しの政治的な野望とか、外交的な夢を下手に追い求めると中国も大損する。それに、中央アジア以上に東南アジアの場合は近年の領土領海進出もあり、中国に対してかなり警戒感があります。対中関係は歴史的にも複雑です。その為、中国も最近はハードコア路線を変えてきた節がある。昨年まで、習近平はアメリカとの“新大国関係”だとか”中国夢”の実現等、覇権主義的な発言を繰り返していましたが、最近は李克強首相等が“朋友圏の構築”とか“新国際関係”と柔軟路線をアピールするようになりました」

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【中外時評】 若い企業が主役の経済に――宝埋もらせぬ土壌つくれ

芽はあちこちに出てきた。花もちらほらと咲いている。ただ、殆どは小振りで、一気に大きな木に育ちそうなものは見当たらない――。新しい企業が日本という土壌にどれだけ育っているかどうかを観察すれば、そんな姿が浮かび上がるだろう。ベンチャー企業の育成は日本の長年の課題であり、安倍政権も成長戦略の柱の1つに掲げる。低すぎる開業率の引き上げ等を目標にしているが、成果は今一つだ。もたもたしている間に、世界は前に動いている。IT(情報技術)の進歩等を背景に、小が大を呑むような下克上が進行中だ。イノベーションの主役となった新興企業が業界の垣根を崩しながら、既存の大企業に挑戦。大企業はこれに立ち向かいつつ、一方で新興勢力と積極的に提携する。そんな潮流の中で、どうすれば日本のベンチャー企業の影響力を高め、経済に活力を与えることができるのか。

「画期的な技術を持ったベンチャー企業が最初からグローバル市場を目指すよう促し、長い目で支えていくことだ」。11年前から技術系ベンチャー企業への投資・支援をしている『東京大学エッジキャピタル(UTEC)』の郷治友孝社長はこう強調する。海外企業と共同開発や市場開拓等で協力したり、海外投資家からの出資を受け入れたりすることで世界での認知度を高め、市場を一気に拡大することがカギだという。UTECもその橋渡しに力を入れている。60社を超える投資先の多くは海外企業と連携する。例えば、大阪大学発のベンチャー『マイクロ波化学』は最近、基礎化学品のポリマーを効率的に造る技術について、ドイツ化学大手の『BASF』と共同開発を始めた。郷治社長は、「日本の高い技術開発力に対する海外の関心は尚強い。日本発のベンチャーが世界で伸びる潜在的なチャンスは大きい」と言う。日本の新興企業が成長するグローバル市場を目掛けて事業を展開し、海外企業と繋がっていくのはいいことだ。それと同時に、大きな資本力と人材を抱えた日本の大企業とベンチャー企業が結びつきを強めれば、もっと大きな相乗効果が得られる筈だ。だが、そこには“見えない壁”もある。

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【日曜に想う】 安保、“脳漿”絞って考え抜く夏

経済同友会代表幹事である『三菱ケミカルホールディングス』の小林喜光会長は、とてもユニークな経営者だ。イスラエルのヘブライ大学で化学を学び、博士号を持つ技術者。“成長優先”を唱える財界人が多い中で、「成長に期待するだけではいけない。社会保障や環境といった分野で、持続可能な制度を設計しなければならない」と説く。4月の代表幹事就任挨拶も個性的だった。政策課題等について、「脳漿を絞って議論し、解決策を導こう」と語った。「“脳漿”とは脳内の液体のことらしいが、今時そんな言葉を使う企業人は珍しい」と事務方も驚いた。小林氏の言葉を引いたのは、他でもない。国会で議論されている安全保障法制について、政治家たち、とりわけ政権を担っている自民党の国会議員たちは“脳漿を絞って”いるかと思ったからだ。元自民党幹事長の古賀誠氏を訪ねた。2012年に政界を引退した後も、若手議員の指南役を続けている。「海外の大学で法律や経済等を学んで、政策の知識が豊富な若手は多いけれど、本当に大事な知恵を持っているのかどうか。政治家に必要なのは判断力と度胸。国の行方を左右する安保法制だというのに、勉強不足だ。考え抜いた議員は殆どいない。そして、発信する度胸もない。この10年で自民党は可笑しくなったね」

確かに、安保法制を巡って自民党は全党的な論議を繰り広げることはなかった。安倍晋三首相が先頭に立って法整備の旗を振ってきたのに対し、党の総務会で元行革担当相の村上誠一郎議員が異論を唱えた程度だ。中堅議員からこんなボヤキを聞いた。「党の会議に出ると、安保法制に最も詳しく、弁護士でもある高村正彦副総裁が中央にドンと座っている。可笑しな意見を言ったら、直ぐに論破されそうだから黙っている。すると、あっという間に『了承』となってしまう」。その昔、消費税導入や衆議院の選挙制度改正等では、怒鳴り合いや掴み合いが珍しくなかった。あの頃に比べると様変わりだ。安保法制について自民党内で活発な論議が欠けているから、メディアも伝えない。その結果、世論の理解は深まらず、“よくわからない”人が多くなっているのだ。“この10年”といえば、自民党は2つの苦い経験をしている。先ず、郵政民営化。2005年、小泉純一郎首相は「郵政を民営化すれば、社会保障も外交も全て良くなる」と叫び、反対派を徹底的に追い詰めた。党を除名し、解散・総選挙では“刺客”と呼ばれる対抗馬を擁立。これを見ていた自民党の政治家たちは、総裁・首相に盾突くと如何に厳しい仕打ちが待っているかを思い知った。もう1つは野党への転落だ。2009年、自民党内の混乱が深まり、衆院選で民主党が圧勝。自民党は3年3ヵ月の野党暮らしを強いられた。自民党本部には中央省庁の幹部も財界の首脳も顔を見せなくなり、政治資金も激減。「『党内で対立すると選挙に響くのではないか』と心配している。野党になることへの恐怖心が強すぎる」(古賀氏)という見方は的を射ている。

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テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

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