【墜ちた東芝】(01) 発端は1本の電話

7月21日午後5時。東芝社長の田中久雄(64、同日付で辞任)はやつれ切った表情で記者会見場に現れた。「創業140年の歴史で、最大限にブランドイメージを毀損した」。田中ら歴代社長3人が辞任し、日本企業全体の信頼を損ないかねない巨額の会計不祥事。半年前、これほどの問題になると予想した人がどれだけいただろうか。

発端は1月下旬、東芝の経理担当者宛てにかかってきた1本の電話だった。電話の向こうの声は、「証券取引等監視委員会の開示検査課」と名乗った。「インフラ事業の会計処理で、幾つか聞きたいことがあります。資料を用意してください」。調査は、東芝からの内部通報がきっかけだ。調査官が浜松町の東芝本社を訪れたのは2週間後。冬晴れの空が広がる2月12日のことだった。応接室での聞き取り調査は数時間に及んだ。監視委は、長期プロジェクトの採算を管理する“工事進行基準”と呼ぶ会計処理に疑問を呈した。進捗に応じて費用を年度毎に見積もり直し、損失が出たらその年度に計上するルールだ。「おかしな点がある」と指摘され、東芝の担当者は「直ぐ社内で調べます」と応じた。実は、監視委は当初から「インフラ以外の分野でも同じ問題があるのではないか?」と疑念を抱いていた。だが、単なるミスなのか、どこまで広がっているのか掴めない。「東芝ほどの企業なら自分で対処できるだろう」との声もあり、あまり重大視されていなかった。東芝は先ず、特別調査委員会を4月3日に立ち上げた。委員長は会長だった室町正志(65)で、社内の役員に社外の会計士や弁護士を加えた。社内には、この問題を飽く迄もインフラ会計処理の誤りに留めたいとする空気が強かった。「当社の一部の案件にかかる工事進行基準における見積もりの合理性という会計処理上の問題」。特別調査委の設置を発表した資料の文言にも、そうした思いが滲む。東芝の担当者も金融機関等を訪れ、「今回の問題は担当者の凡ミスなので、直ぐ解決します」と説明していた。「危機管理の対策委員会を設けるべきだ。責任者を置いて、外部の専門家も雇ったほうがよい」。取締役会で出た意見は見向きもされなかった。社外取締役の1人は、「今思えば出だしから対応が後手に回ってしまった」と唇を噛む。

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テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

生データをスクープ入手! 幹部までが次から次へと辞めている――第2次安倍政権発足後に自衛隊の退職者が激増、衝撃の数字と隊員たちの肉声

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最も退職者が多かった陸上自衛隊の元陸将・福山隆氏に依れば、「アメリカにとって、日本は中国が太平洋に出て来ないように見張る番犬」。

「ここ数年、防衛大学校卒業生の任官拒否が増えています。任官した自衛官はどうなのかと思い、防衛省に資料を請求したところ、やはりという結果でした。2012年12月の第2次安倍政権成立後、退職者が急増しているのです」。そう話すのは、沖縄県選出の照屋寛徳衆議院議員(社民党)である。照屋氏が入手した防衛省の資料を見ると、2011年の自衛隊員の退職者数は陸・海・空を合わせて1万940人だった。それが2012年に1万1968人と、1000人以上も激増。翌年は横這いだったものの、2014年は1万2500人と再び急増した。3年前と比べ、1500人以上も自衛隊を辞める隊員が増えているのである。2014年度退職者の年代別内訳を見ると、20代が全体の43%、50代が47%と突出し て多かった。階級別では、下級士官の“曹”と“士”で全体の76%を占め、尉官・佐官・将官ら“幹部”(約18%)がこれに続いている。照屋議員が解説する。「2014年1月、安倍首相は施政方針演説で自衛隊の海外派遣について触れていますし、7月には集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行っています。そうした流れを見て、自衛隊員たちは不安になったのでしょう。専守防衛の使命感を持って入隊したのに、話が違う。このままでは、アメリカ軍と一緒に地球の裏側まで戦争に行かされかねない。国連主導の平和維持活動で世界に出ていくならまだしも、戦争で人を殺めるなど真っ平――。そんな心情がこの数字に表れているのでは」。実際、「防衛省は引き留めに必死で、防衛大学校で任官拒否が増えたことにもピリピリしている」(防衛省関係者)といった声もあるが、当の自衛隊員たちの本音はどうなのか?

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テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

「安保法案はこれで潰せる」「憲法を無力化していく手法はナチスと同じだ」――慶應義塾大学名誉教授・小林節氏が語る

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取材前日は山形、当日は名古屋、翌日は山口で講演。「首相が取り戻したいニッポンは大日本帝国でしょうか?」

先日、湯河原(神奈川県)で行われた講演会の後で、ある護憲派の人に「小林さん、改憲派でしょう?」「自衛隊は合憲だと思っているでしょう?」と議論を吹っかけられました。「思っていますよ」と返すと、「そんな人とは口を利けない!」と。ちょっと待ってほしい。今はそんな争いにエネルギーを費やしている時ではない。憲法自体が破壊されようとしているのだ。憲法第9条第2項で、「日本は交戦権を持たない」と定められています。自衛を除き、日本には戦争をする法的資格が無い。集団的自衛権というのは、同盟国が戦争に巻き込まれた場合に駆け付けて助けるというもの。海外で戦争をする法的資格が無い日本は、抑々集団的自衛権の行使も海外派兵もできないのです。ところが、安倍晋三首相(60)は“存立危機事態”と“重要影響事態”というわかり難い言葉を態と用いて、自衛隊を海外派兵しようとしている。例えば、“存立危機事態”は地球のどこかでアメリカが襲われて、その結果、明日にも日本国民の全人権が否定される危険な事態のことですが、何度考えても具体的に思いつかない。これはつまり、「オレについて来い。細かいことは言えないが、オレが客観的・合理的・総合的に判断する」ということ。独裁者の発想ですよ。憲法上、戦争ができなかった国が、一政府が作った法律に依って戦争できるようになる。これでは、ナチスと同じ主客転倒です。

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テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(25) 軍事よりソフトパワー…日本のエロとアニメで中国を“攻撃”すべし!

南シナ海での中国の横暴な振る舞いに見て見ぬ振りをして、「平和を呼び掛ければわかってくれる」というのは殆ど妄想の域です。しかし、安倍政権の“再軍備路線”――殴られたら直ぐに殴り返せる準備を以て抑止するという路線は、現状において最善の選択でしょうか? 想像するに、中国政府は日本の再軍備を心待ちにしています。凄まじい格差、チベットやウイグルの人権問題、不安定なインフラ……多くのリスクを内包する中国にあって、頼みの綱は経済成長です。ところが、先日の株価暴落を見てもわかるように、中国共産党体制を維持する為の“なんちゃって資本主義”が愈々怪しくなってきた。中国政府がこれをカモフラージュするには、“わかり易い外敵”が必要です。このタイミングで日本が再軍備に舵を切れば、まさに渡りに船。人民に一致団結を呼び掛け、反日ムードを扇動するでしょう。

そう考えると、日本にはもっと先に打つべき手がある。不安だらけの中国を内側からどう突き崩すか――プロパガンダも含めた、本当の意味での“ソフトパワー戦略”です。先ず、日本政府は早急に中国人民向けのインターネットプロパガンダ放送局を作るべき。中国関連のニュースを、日本の専門家が中国語の翻訳付きで解説し、その実態のヤバさ、中国国内の報道内容との違いを明確にするんです。更に、日本にいる中国人留学生の肉声もリポート。言論の自由があることや、差別もあるけど凄い努力をすれば成り上がることも不可能ではないという日本社会のリアリティーを伝え、「中国に帰りたくない」という彼らの“本音”を説得力を以て届けます。中国には当局に依る検閲がありますが、基本的に人力頼りなので実は結構ザル。僕も2007年に、中国国内から日本人ハッカーの手を借りてインターネットラジオの生放送をやった経験があります。中身が面白ければ、若い人たちは検閲を掻い潜って見るでしょう。

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テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

【広告戦争・デジタル空間の覇権を巡る人脈と金脈】(03) 0.1秒で世界の広告を売買! 金融化する広告テクノロジー

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6月中旬、本誌記者はニューヨークにいた。2008年、世界中を大混乱に陥れたこの国際金融の中心地で、新たな広告企業が続々と誕生していると聞き、その現状を実際に確かめようと訪れたのだ。足を運んだのは、金融街のウォール街から北に凡そ4km、超高層ビルが立ち並ぶミッドタウンの5番街と6番街の間に本社オフィスを構える『アップネクサス』。最先端のアドテクノロジー(広告配信・流通の自動化技術)を早くから手掛けてきたインターネット広告企業である。「オフィス内には、図書館からバスケットボールコートまで備えています」。アメリカらしい自由なベンチャー気質を感じさせるオフィスと言ったらそれまでだが、ここは多数のIT企業を生み出したシリコンバレーではなくニューヨーク。そこには、株価チャートのようなグラフが映し出された巨大モニターが各所に設置され、金融機関のトレーディングフロアさながらの風景が広がっていた。金融業界には、ロケットサイエンティストと呼ばれる金融工学の専門家が溢れ返っていたが、リーマンショックの影響で多くが失職。金融エンジニアたちが広告業界に新天地を求めて大移動し、システムを作り上げたのだ。今、アメリカを始めとしたインターネット広告の世界では、リアルタイム入札(Real Time Bidding=RTB)と呼ばれるテクノロジーが登場し、広告価格が常に変動する仕組みが浸透している。謂わば、株取引のような売買システムが根付いているのだ。そんなアメリカ発のテクノロジーは、タイムラグを経て今や日本にもじわじわ浸透しているが、実は日本でも独自に技術を磨き、アメリカ勢を迎え撃つ日の丸ベンチャーがある。起業家・本田謙が2010年に創業し、僅か4年弱で東証マザーズに上場した『フリークアウト』である。

ウェブサイトにアクセスすると、ディスプレイ型の広告が何げなく表示されていることに読者も気が付くだろう。しかし、その広告枠を巡って、一瞬のうちに広告主に依る激しい入札競争が都度繰り広げられていることを知る人は少ない筈だ。これがRTBである。仕組みは上図の通りだが、ウェブサイトを訪問している人物が“誰”なのか、瞬時に分析するのがポイント。広告主は、嘗てのようにメディアの“枠”を買うのではなく、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)と呼ばれるツールを通じ、広告を目にする“人”に対して入札するのだ。例えば、広告主が大手航空会社としよう。予約が埋まっていない席からは1銭も入ってこないだけに、乗ってくれそうな“人”がインターネット上で見つかれば、何が何でも競り落とす。出発の期限に近づけば近づくほど、入札価格を高く提示することもある。驚くべきは、ユーザーアクセスから広告表示まで、僅か0.1秒(!)の間に一連のプロセスをやってのけることだ。瞬きの間に事が済む為、気付かないのも当然。ヘッジファンドのハイフリークエンシートレード(プログラミングを駆使した高速アルゴリズム取引)を想起させる。本田がフリークアウトを創業したのは、「RTBで出遅れた日本にも、この仕組みを何としても導入したい」との思いからだった。実は本田は、アドテクの世界では2度目の創業だった。2005年に本田が創業した『ブレイナー』は、コンテンツ連動型広告を手掛けるアドテク企業。コンテンツの文脈やキーワードを解析し、内容と関連性の高い広告を配信するというシステムを導入。今では有り触れているが、当時はグーグルが最先端のサービスとして開始したばかりだった。「『日本もグーグルに後れを取ってはなるまい』と思い、挑戦することにしました」。サービスは順調に伸び、ヤフーに目を付けられて2008年に会社を売却した。

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テーマ : ITニュース
ジャンル : ニュース

【ゆうちょ銀行&郵便局の株式上場が必ず失敗する理由】(06) “ブラックな社風”はまだ改善されていない!――不可解なスキル評価に依る“恐怖支配”と“人件費削減”疑惑

ミスした社員を晒し者にする“お立ち台”の存在や、社員自らが年賀状を大量購入する自爆営業等、日本郵政の職場環境はブラックだと指摘され続けてきた。上場を控え、このような労務管理と労働争議・裁判の存在がネックとなっている。果たして、職場環境は改善されたのか? (取材・文 北健一)

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「年賀状の“自爆”(従業員が売り上げ確保の為に自社製品を買わされること)に象徴される、乱暴な労務管理と労働争議・裁判の数々。秋にも上場を控える日本郵政にとって、それは喉元に刺さった骨のようなもの」。日本郵政グループの労働問題に詳しい平井哲史弁護士はそう指摘する。「まるでブラック企業」と言われる日本郵便の体質を改めることは、親会社である日本郵政にとって待った無しの経営課題になっている。日本郵政経営陣も、問題意識を持ち始めている。昨年8月27日、日本郵政の西室泰三社長は定例会見で、年賀状の自爆営業について記者から質問されると、こう答えた。「(販売目標を達成)できなかったからペナルティーを科す、或いは何か某記事に依りますと……お立ち台に引き摺り上げて、それで責めるというようなこと、そんなことはあってはいけないんです、職場で」。筆者は本誌2014年9月号で、ミスした社員を“お立ち台”に上げ、晒し者にするパワハラの実態を、『ブラック郵便局 恐怖のお立ち台』とのタイトルで告発した。こうした報道や、パワハラを背景にした過労自死事件(さいたま新都心郵便局過労自死事件)が裁判になる中、遂に社長が「お立ち台を止める」と言わざるを得なくなったのだ。一歩前進は歓迎したい。しかし、である。西室社長がその会見で述べた「強制的に自分で自腹を切ってやらなくてはいけないような職場の雰囲気を作り上げたのは、やはりあったと思います、過去に」との認識は、はっきり言って甘い。社員を自爆に追い込む“職場の雰囲気”は、今も残っているからだ。それは、“スキル評価”を悪用した非正規苛めである。

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テーマ : ブラック企業
ジャンル : 就職・お仕事

【ゆうちょ銀行&郵便局の株式上場が必ず失敗する理由】(05) アメリカが狙う2万4000ヵ所の販売網――TPP加盟で『かんぽ生命』は“ジリ貧”生保業界を活性化させる!?

日本郵政はTPP発効後、外国企業も日本企業と公平に扱うことが求められる可能性が高い。ジリ貧の保険業界はTPP加盟でどうなるのか? (取材・文 平木恭一)

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交渉は大詰めとも言われているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)だが、5月上旬に気になるニュースが入ってきた。TPPの“国有企業規制”に日本郵政が入る見通しになったというのだ。これが現実化すれば、日本郵政はTPPの発効後は外国企業も日本企業と公平に扱うことが求められる。かんぽ生命が提携している外資系生保はアメリカンファミリー生命(アフラック)等数社があるが、「かんぽ生命と新たに取り引きしたい」と海の向こうからリクエストがあれば、その声は無視できなくなる。この規制を外れるには、国が日本郵政の株式保有を50%以下にしなければならない。しかし、それは直ぐには無理と言われており、子会社のゆうちょ銀行・かんぽ生命の2社はTPP発効後、国有企業規制の対象になる。アメリカはTPP交渉が始まる以前から、生損保を含めた日本の金融業界の閉鎖体質に対して、再三に亘って改善要望を出してきた。自国の企業が経営難に陥るような経済政策に反対の狼煙を上げるのがアメリカである。それが、TPP交渉参加の直前に起きた。アフラックとかんぽ生命との業務提携だ。TPPを巡る日米事前協議で2013年、国の関与が残るかんぽ生命の事業拡大に対して、アメリカは自国の保険会社が不利になることを懸念する表明を出していた。アメリカ系企業ながら、売り上げの8割を日本で稼ぐアフラックへの支援が狙いなのは明らかだった。これを受けて、政府はかんぽ生命に依る新商品の申請について、当面見送る方針を明らかにした。その直後、かんぽ生命はアフラックと“癌保険”の販売提携を結んだ。その後、日本政府がTPP交渉に初めて参加した為、「この提携は、TPP交渉参加に対するアメリカへの返礼」との声が上がった。

そして2015年。秋にはかんぽ生命が上場する年に、アメリカはTPP交渉を睨みながら、従来以上に保険分野における商品・サービスの対外開放を声高に叫ぶだろう。アメリカが目指すのは、自国で販売している保険商品を日本で販売することだ。既に、アメリカの有力生保は日本に進出している。後は、商品が認可されるだけである。有力な商品の1つとして注目されているのが、『現物給付型保険』だ。これは、加入すれば介護施設の優先入居権が貰えるような保険で、欧米では普及している。業界関係者がこう話す。「我が国の保険はお金で支払う金銭給付型で、現物給付型は認められていない。しかし、日本の保険市場は飽和状態にあり、保険業界も画期的な新商品を欲しがっている」。現物給付型保険は、数年前から金融庁の保険審議会等で検討の俎上に上がっており、大手生保からも待望論が出ている。当局も、介護や葬儀のサービス料金を保険会社が負担する新種の保険に対して、前向きなスタンスにある。ただ、保険業法の改正が必要で、実現は容易ではない。日本は、国民1人当たりの保険料がアメリカに次ぐ世界第2位の保険大国だが、少子高齢化に加えて若年層の可処分所得の減少で、保険加入のインセンティブは希薄になり、我が国の保険を取り巻く経営環境は劣悪だ。TPPが発効すれば、かんぽ生命はアメリカからの規制緩和要望を突き付けられるだろうが、それに依って保険業法が改正され、現物給付型等の保険新商品が認可される可能性も出てくる。TPP加盟で、かんぽ生命は生保業界を活性化させるという奇妙な現象を齎すかもしれない。


キャプチャ  2015年7月号掲載
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テーマ : 郵政民営化
ジャンル : 政治・経済

【中外時評】 習近平改革はどこへ行く――司法も経済も“逆噴射”

“暗黒の金曜日”と呼ぶ人もいるそうだ。2週間余り前の7月10日。中国で、人権の擁護に熱心な弁護士や活動家たちに対する大々的な迫害が明らかになった。始まりは、9日の未明だったらしい。ウイグル人の人権擁護を訴えて、2014年に逮捕されたイリハム・トフティ氏の弁護等に携わり、“中国で最も勇敢な女性弁護士”と呼ばれてきた王宇氏の北京の自宅に、20人を超える警官たちが踏み込んできた。王氏は連れ去られ、以来、事実上の失踪状態にある。その後、王氏の所属する北京鋒鋭弁護士事務所の関係者を中心に、人権派の弁護士や活動家たちが各地で相次いで連行された。香港の非政府組織(NGO)『中国維権律師関注組』に依ると、これまでに少なくとも249人が刑事拘束されたり、連行されたり、連絡が取れなくなったり、当局に呼び出されたり、一時的に自由を奪われたりしたという。以前から、共産党政権は人権派弁護士を煙たい存在と見做し、時に迫害を加えてきた。ただ、20を超える省や直轄市で一斉に……というのは異例だ。人民日報や新華社を始めとする国営メディアが公然と批判しているのも、これまでにない特徴といえる。

これほどの規模の取り組みは、共産党政権の指導部、つまりは習近平国家主席が指示を下したからだと見なくてはならない。とすると、大きな疑問が浮かんでくる。習主席自らが旗を振って進めてきた司法改革は、どこへ行くのか――。『改革を全面的に深化する若干の重大問題に関する決定』。こんな名前の文書を共産党が年に1度の重要会議で採択したのは、2013年11月だった。政治から経済・社会・文化まで、広い範囲で野心的な改革の青写真を示した文書だ。その1年前に発足した習政権が掲げた“公約”と見ることもできる。その中でも、司法改革は目玉政策の位置付けだった。習主席は、最高指導者に就いた直後から「1つひとつの案件で公平な司法を実感できるようにする」と語り、並々ならぬ意欲を示していた。この“決定”を採択した1年後に、改めて司法改革に焦点を絞った“決定”を採択したことからも、指導部の力の入れようは明らかだった。人権侵害の温床だと批判されてきた労働教養制度を廃止する等、早々に実行に移したとされるメニューもある。それだけに、人権派の弁護士を標的としたかつてない迫害には、司法改革に急ブレーキがかかった印象、或いは改革の方向が大きくそれたという印象を禁じ得ない。

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テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

【日曜に想う】 肥満のトカゲ、垂れたカキ

「白紙撤回にどう臨む」「再コンペに挑む気は」――。新国立競技場問題で局面が動く度に、ロンドンのザハ・ハディド建築事務所に問い合わせをした。返事らしい返事は貰えなかった。代わりに別の建築家から、ハディド事務所幹部がフェイスブックに投じた謎の一文を教えられた。「槇と伊東はこの件で記憶されるだろう」。捨てゼリフらしい。名指しされた建築家・槇文彦氏と伊東豊雄氏についてはハディド氏当人が昨年暮れ、イギリスのデザイン専門サイトに怒りをぶちまけている。両氏ら5人を日本の“偽善者”と呼び、「自分たちは海外で盛んに仕事しながら、東京の国立競技場は外国人に建てさせようとしない」と非難した。槇氏は2年前の夏、競技場事業の進め方に疑問を投げかける論考を発表した。東京都豊島区の多児貞子さん(69)は深く共鳴した。槇氏の講演を聴いた知人らと、『神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会』を立ち上げた。多児さんは、嘗て東京駅赤レンガ駅舎保存に黒衣として携わった。「日本では歴史ある建物を深く考えずに壊してしまう。保存を求めて担当者にかけ合うと困った顔をされる。『もう決まったこと』『上が決めたこと』。国立競技場問題でも似た顔をされました」。『手わたす会』は、旧競技場を改修して使うことを目標に据えた。解体された後は、ハディド案の見直しを訴え、勉強会を開いた。「これから先が大切。やり直しコンペで、同じお偉方が市民の声を吸い上げないまま同じ感覚で選ぶとしたら大問題です」。確かに、イチからやり直すというのに、混迷を招いたお偉方は誰も退場していない。「明確な責任者が誰かわからないまま来てしまった」と文科相が言えば、「誰に責任があるとか抑々論は言わない」と首相が庇う。60億円近い大金をムダにされた下々には納得し難い展開である。大艦巨砲・干拓・ダム・五輪……。戦前から、日本では国策となるとお上がブレーキを失う。破綻するや、「内心は反対だった」と言い訳する。挙句、「状況が変わった」「誰も悪くない」と庇い合う。これを無責任の体系と呼ぶ。

改めて調べてみると、ハディド作品は海外でも盛んに物議を醸していた。例えば、スイスの古都・バーゼルでは音楽堂だった。コンペで選ばれたハディド案に、「宇宙船みたい」と批判が噴出。有志が4000人の署名を集めて住民投票に持ち込んだ。反対が6割を超え、着工は見送られた。8年前のことだ。有志代表のアレクサンドラ・ステヘリンさんは、「奇怪な設計を見て立ち上がった。中世以来の街並みが台無しにされるところでした」と振り返る。進むも引くもお上が決めてしまう日本とは好対照ではないか。お隣の韓国では、ハディド建築に対し、完成後も不満が尾を引く。『東大門デザインプラザ』という公共施設だ。現地を見た。曲線がうねうねと波打ち、巨体が周囲を圧する。住民たちは、「不時着した宇宙船」と酷評した。私の目には“肥満のトカゲ”と映った。「外観だけなら天下一品。でも、建築士たちは曲面ばかりの難工事に泣き、館内で働く人々は使い勝手の悪さに泣いています」。建築家で弘益大学教授の兪ヒョン準氏(45)は容赦ない。そんなハディド作品が数々の国際コンペを制するのは何故か。「流線形のデザインが、お偉方の功名心を刺激するからです。『斬新な建物を自分の治績にしたい、後世に名を残したい』と思う政治家が飛びつく外観なのです」

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テーマ : 東京オリンピック
ジャンル : スポーツ

【ゆうちょ銀行&郵便局の株式上場が必ず失敗する理由】(04) 上場でもメガバンク・地方銀行は安泰――ゆうちょ銀行の上場で地域金融機関の再編が加速する!

ゆうちょ銀行の上場で、メガバンク・地方銀行は粗影響を受けることは無いと言われている。打撃を受けそうなのが信用金庫・信用組合である。 (取材・文 平木恭一)

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巨大銀行『ゆうちょ銀行』の上場は、金融機関に依り受ける影響は異なる。メガバンクは、業界代表の立場からゆうちょ銀行の業務肥大化阻止を唱えるが、ゆうちょ銀行が手を出せない法人融資に強く、資本力もあるので影響は無い。地方銀行も県の指定金融機関であり、地域での優位は動かない。深刻な打撃を受けるのは、信用金庫・信用組合の地域金融機関である。信金・信組は地域密着型の中小金融機関だが、ゆうちょ銀行の実動部隊で全国に2万4000ヵ所ある郵便局もまた、地域密着を前面に出している。金融機関のカラーが似ており、競合状態に曝されているのだ。ゆうちょ銀行は、上場しても成長戦略を示すことができなければ、株主利益を損なうと市場から猛反発を食らう。国債運用に依存するビジネスモデルは金利変動リスクに曝されており、住宅ローンは新規事業として、また本体での資金運用手段として、1日も早く実現させたい。新規業務を始めるには、郵政民営化委員会・金融庁等の関係省庁の認可が必要。民間からの反発は必至だが、2012年に郵政民営化委員会が一旦は住宅ローン業務を認めた経緯があり、現在も自民党が業務拡大について議論し、夏にも結論が出そうだ。仮に住宅ローンが認可された場合、信金・信組業界はゆうちょ銀行の長期で低利なローンとの金利競争に敗れ、更には繰り上げ返済でも顧客を奪われるだろう。「地方に行けば行くほど、郵便局の存在は大きい。民営化後も『国が後ろについているから』とお客さんに吹聴しては、メイン口座を奪っている。その上、住宅ローンを取られたらやっていけない」(関東地区の信用金庫幹部)

住宅ローンの一部業務が認可された場合はどうだろう。スルガ銀行との間で実施している、住宅ローンの販売業務提携を拡大するケースが考えられる。抜け駆けした同行への風当たりは今も強いが、ATM提携では民間金融機関の殆どが手を握っているのだ。「反対の声だけでは儲からない」と追随する銀行が出てきても、不思議ではない。スルガ銀行のゆうちょ銀行向け住宅ローン残高は、2015年3月期で348億円。同行の住宅ローンの1.7%と比率は低いが、相談や申し込みは郵便局が行ってくれるから、スルガ銀行にとっても割のいい商売だし、ゆうちょ銀行にとってはローンの品揃えが充実するメリットもある。「2007年の民営化の時も、『全国銀行協会の会長が業務拡大に柔軟姿勢を示した』との情報が出たこともある。いきなり“住宅ローン解禁”にはならないだろうが、提携拡大なら認可はいらないので、可能性は十分ある」(金融業界関係者)。住宅ローンも怖いが、“上場”というイベントを警戒する向きもある。「ゆうちょ銀行も我々と同じで、投資信託や保険の取り次ぎ販売で得る手数料で儲けているのが現状。投信や保険の取り次ぎ販売において、“上場記念”“民営化10周年”等とキャンペーンを張られたらたまらない。寧ろ、上場をネタにした販売促進で、根こそぎ顧客を奪われる心配が先に立つ」(東京都内の信用金庫関係者)。金融庁は、5年後・10年後を見据えた経営の持続を地域金融機関に求めている。経営の安定している地銀の再編が進んでいる今、信金・信組の生き残りは厳しい。合併の機運がトーンダウンしている信用金庫業界と、地銀・信金に挟まれて金融機関としての存在意義を失っている信用組合業界。ゆうちょ銀行の拡大戦略で局地戦を仕掛けられて、経営不振に陥れば当局の思うツボ。信金・信組の再編は嫌でも加速する。


キャプチャ  2015年7月号掲載


テーマ : 郵政民営化
ジャンル : 政治・経済

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