創価学会の“反乱”で維新カードを失った安倍政権――『大阪都構想』否決で変化する永田町の力学

Toru Hashimoto 16
今年5月17日深夜、大阪市長の橋下徹は、予定より10分ほど遅れて記者会見場に現れた。「(僅差でも)負けは負け。戦を仕掛け、『叩き潰す』と言って潰された」「民主主義は素晴らしい。これだけの喧嘩を仕掛けて命を取られないというのは、素晴らしい政治体制だ。この後も普通に生きて別の人生を歩める」。時折、笑みを浮かべながら、歯切れよく敗戦の弁を語る橋下の表情を映し出すNHKの中継映像を見ながら、ある自民党幹部は「タレント弁護士時代の顔に戻ったな。ある意味でホッとしているんじゃないか? 来年の参院選出馬など無いだろう」と漏らした。7年半に及ぶ“橋下劇場”は終焉を迎えた。賛成49.62%、反対50.38%――橋下が政治生命をかけた住民投票は、僅か0.76ポイント差で否決された。否決の理由についてはマスコミ報道で様々に分析されているが、投票結果を仔細に分析すると、大阪で特に大きな影響力を持つ『創価学会(=公明党)』の支持者を“反橋下”で結束させてしまったことが、最大の敗因として浮かび上がってくる。マスコミ各社の出口調査で政党支持層別の賛否を集計すると、何れの調査でも、共産党支持層と並んで公明党支持層で「反対」と答えた比率が最も高い。例えば、共同通信と毎日新聞・産経新聞等が共同で行った調査では、公明支持層の「反対」は87%で、共産支持層89%と粗並び、突出して高かった。公明党は、自民党や共産党のように反対運動を積極的に行った訳ではない。それにも拘らず、反対が57%に留まった自民支持層とは比較にならないほど、反対の比率が高かったのだ。大阪市は、公明党の“政党支持率”が10%を常に上回る金城湯池であることを考えれば、公明支持層の賛否が自民支持層のように分かれれば、住民投票は賛成多数となった可能性が高い。

大阪における『維新の党(大阪維新の会)』と公明党との関係は、この7年、目まぐるしく変化してきた。2008年1月の大阪府知事選で38歳の橋下が初当選した際、公明党は推薦した自民党大阪府連に付き合って、大阪府本部の“支持”を出して支援した。その後、公明党は自民党大阪府連と足並みを揃えるように都構想に批判的にはなったものの、維新は市議会でキャスティングボートを握る公明党を取り込む為、2012年の総選挙で橋下自らが公明党大阪府本部の幹部と会談して、公明党が候補を擁立した大阪・兵庫両県の6選挙区全てで候補擁立を見送り、公明候補に推薦まで出した。ところが公明党は、選挙に勝って自民党と共に与党に復帰すると、大阪では都構想に反対の地元の自民党寄りに明確にスタンスを変え、府と市で設置した大阪都構想を議論する法定協議会で、正式に反対を表明。都構想は頓挫する寸前まで追い込まれた。「住民投票の実施に公明党が賛成する見返りに、勝てる可能性のあった関西の6選挙区で敢えて候補者の擁立を見送った」との認識だった橋下らの怒りは凄まじかった。橋下は2014年2月の党大会での演説で、「2012年総選挙での選挙協力の際の約束を、公明党が一方的に破った」として、名指しで強烈に批判。その中で、「公明党の支持基盤の皆さんは宗教を説いているが、宗教の前に人の道があるんじゃないか?」と激しい口調で創価学会を支持基盤とする公明党を非難した。この時の「宗教の前に人の道がある」との一言が、後に橋下の命取りになる。両党の対立は先鋭化。安倍晋三が衆議院解散を表明した2014年11月には、橋下が大阪3区で自らを支部長とする選挙区支部の届け出を行う等、公明党が候補者を擁立する関西6選挙区で、自分と大阪府知事の松井一郎を含む維新候補の出馬準備を着々と進めた。ところが、橋下は公示日直前に一転して、公明党が候補者を立てる全ての選挙区で維新候補の擁立を“一方的に”見送ることを決めた。橋下はその理由を問われても、「それが大阪の為になると判断した」としか語らなかった。その為、当時から「維新と公明党との間で、何らかの密約が図られたのでは?」と囁かれたが、口を極めて罵り合ってきた両党が何故急転直下、妥協できたのかは詳らかにはならなかった。

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【タブー全開!政界斬鉄剣】(02) 『戦後70年談話』に中国政府が黙した理由は、『9.3抗日戦争勝利記念日』に安倍首相を招く為だった!

今回は、安倍首相の『戦後70年談話』の背景に斬り込みましょう! 国内では、「子や孫、その先の世代の子供たちに、謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」といった部分が好意的に受け止められています。が、逆に中国や韓国・欧米のメディアでは批判的な報道が多いようです。その大きな理由は、「過去の談話を引き継ぐ」と言っただけで、安倍首相本人の意思が全く入っていなかったから。日本で70~80点くらいの評価を受けた内容の談話は、中韓のメディアから見れば20~30点くらいの評価です。それにも拘らず、中韓の政府はあまり騒ぎませんでした。何故でしょうか? 談話が発表されるまで、日本の新聞や評論家は、“植民地支配”“反省”“お詫び”党のワードが盛り込まれるかどうか、散々お祭り騒ぎをしていました。結果、彼らの“期待通り”、周辺国から猛烈に非難されそうな内容の談話となった。なのに、中国も韓国も静かなのです。そうしたら、日本のマスコミも静かになっちゃった。中韓が大人しい理由がわからないからです。このように、報道がズレてしまった理由は、以下のことを重要視してしまった為です。

①『原爆の日』の式典での首相の演説“内容”
②『戦後70年談話』の“内容”
③首相の靖国神社参拝があるかないか

実は今回、この3点は中韓両政府のリアクションを占う為の材料にはなっていませんでした。彼らが今回の談話に静観している“謎”を解くヒントは、アメリカ政府の行動にあります。

結論から先に言うと、“戦後70年”が問題視され、それに伴って日中関係が悪化することを、アメリカが猛烈に望んでいなかったのです。そして、日本政府も安倍首相も、勿論中国政府も、序でに韓国政府も、このアメリカの意志を重く受け止めたのです。順を追って説明しましょう。先ず、『原爆の日』の式典について。去る8月6日と9日、広島と長崎で開催された式典で注目すべきだったのは、安倍首相が演説で“過去の反省”や“非核3原則”の堅持等に触れるか否かではなかった。最大のポイントは、アメリカからゴッテモラー国務次官が正式参加したことだったのです。国務次官という役職は、アメリカ国務省の事務方のトップ。日本で言うと外務省と総務省を足したような、外交と安全保障政策等を司る強力な機関です。キャロライン・ケネディ駐日大使より事実上“格上”なんです。「いや、大統領や国務長官よりは“下”じゃないか」と思う方もいるでしょう。しかし、広島と長崎の式典は“市”の主催です。外交儀礼上、地方自治体主催のイベントにアメリカが送り込める“最高位”が、国務次官だったのです。なのに、一般報道ではゴッテモラーさんの“史上初参加”には一切の解説が行われず、ケネディ駐日大使に注目しちゃう始末。そんな日本の残念な報道はさて置き、原爆を2度も投下した当事国であるアメリカが本国政府の高官を“史上初”参加させたのには、重大で明確な意図があります。それは何か?

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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(29) “国民の声”でリーダーを潰すのは、もう止めにしない?

戦後70年となる今年の8月は、安全保障関連法案の審議・川内原発の再稼働と“政治の季節”になりました。反対派の間では、何れも“安倍首相の強権発動”というイメージが広がっているようです。気になるのは、安倍政権を批判する人たちの奥底に見える、日本特有の“リーダーアレルギー”です。確かに、自民党は所々で“相変わらず”な体質を露呈しているし、安倍首相も若干、自身のイデオロギーに縛られているように見える。ただ、実際のところ、やれ暴君だ独裁者だと叩かれている安倍首相は、例えば強力な権限を持つアメリカの大統領と比べれば、寧ろ周りの顔色を窺いながら事を進める日本的なリーダーに過ぎません。

こういうことを言うと、「安倍首相は独裁的に時計の針を戦前に戻そうとしている」というような海外メディアの記事を、印籠のように持ち出してくる人がいます。でも、実はその記事自体、殆どは日本の左派メディアの受け売りですよ。今や、英語圏のメディアにおける日本の重要性はそれほど高くないので、報道の正確性も“推して知るべし”なのですが、日本語と英語を水平に理解する語学力が無いと、その辺りを全然検証できない。抑々、アメリカの知識人の間には、選挙戦を勝ち抜いた大統領に対する畏敬の念があります。オバマ大統領の演説中に「ウソつき!」とヤジが飛んだ時は、犯人の共和党議員が直ぐに謝罪に追い込まれ、議会から譴責処分を受けた。“史上最もバカな大統領”と言われたブッシュジュニアに対してさえ、最低限の敬意は共有されていました。一方、日本では何故、リーダーや有能な専門家より“一般人”が強いのか? 確かに一般人の視点も大事ですが、いくらなんでも比重が可笑しい。テレビでも、全く政治をわかっていないタレントや文化人がリーダーを感情的に叩くことが許される。どんなに破綻した論理でも、インターネット上では同じく“リーダー嫌い”な人々がそれを称賛し、拡散する。あろうことか、知識人と言われる人たちまでもがそこに迎合する。まさに衆愚です。

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【新聞不信】 安倍首相のヤジ報じぬ読売

安倍首相がまたヤジを飛ばした。この首相は、痛いところを突かれると直ぐに興奮し、激昂してしまうようで、今年5月にも民主党の辻元清美氏に「早く質問しろよ」とヤジを飛ばしている。22日付朝刊各紙が報じている『安保審議 首相またヤジ』(朝日4面)の見出しにうんざりする国民も多いのではないか。毎日(5面)に依ると、21日の参議院特別委員会の審議中、中谷元防衛大臣追及する蓮舫氏に対して、安倍首相が「まあいいじゃん、そういうことは」とヤジを飛ばしたのだという。具体的な文言については、朝日は「そんなこといいじゃないか」、産経(5面)は「まあいいじゃないか」とバラつきがあるが、信じ難いことに、“安倍首相応援団”とも評される読売に至っては、このヤジ騒動を記事にしていない。問題は“そういうこと”が何を指しているかだが、ここは朝日が詳しかった。「蓮舫氏は、他国軍を後方支援できる“重要影響事態”がどんなケースか質問した。中谷元防衛相は、周辺事態を例示した野呂田芳成元防衛庁長官による“野呂田6事例”と答弁しようとして、他国軍の武力行使との一体化の基準を表す大森政輔元内閣法制局局長による“大森4要素”と混同し、“大森6事例”と答弁」したのだという。蓮舫氏がその旨を指摘すると、安倍首相の「まあ、いいじゃん」発言が飛び出したという訳だ。鴻池祥肇委員長の注意を受けた安倍首相は、「(言い間違いが)答弁の本質ではないので、答弁を続けさせてもらいたいという意味で申し上げた」と言い訳しながらも、結局、発言を撤回した。後方支援は、今回の安保論議の中でも自衛隊員のリスクが高く、場合に依っては死者も出る可能性が指摘されているポイントだ。「いいじゃん」という言葉の軽さは全く以てそぐわない。これでは、まるで子供の言い草だ。騒動自体を報じなかった読売は論外だが、粗事実を報じただけの各紙の取り上げ方には疑問が残る。斯くも言葉の軽い首相が、日本の歴史の転換点ともなるかもしれぬ重大な法案を通そうとしていることを如実に示す“事件”なのだということを、はっきりと指摘してほしかった。 (翼)


キャプチャ  2015年9月3日号掲載


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【特別対談】 ドイツの傲慢と日本の孤立――池上彰×エマニュエル・トッド

『“ドイツ帝国”が世界を破滅させる』が大ヒット中のエマニュエル・トッド氏と、池上彰氏に依るSkype対談が実現! 予断を許さないユーロ圏経済を皮切りに、強大化するドイツを一刀両断! フランスの誇る知性から、日本への貴重なアドバイスとは? (通訳/堀茂樹)

池上「ざっくばらんに参りましょう。トッドさんは、Skypeでインタビューをお受けになったことはあるんでしょうか?」
トッド「初めてです。Skypeは普段、家族や友人としか使っておりませんので、日本の皆さんの為でなければお受けしませんでしたよ」
池上「では、記念すべき第1号ですね。扨て、トッドさんの著書が今、日本でベストセラーになっています。どうしてだと思いますか?」
トッド「本書が売れていると聞いて、非常に驚いています。私には、これといった見解がある訳ではありませんが、二、三思うところがあります。1つは、『日本人は元々、ドイツに関心があったのだ』ということ。歴史の不幸な時期に、日本がドイツの同盟国であったことが関係あるのかもしれません。もう1つ、本書では“ドイツ帝国”と“アメリカ帝国”の対決について言及しています。アメリカとの関係が深い日本にとって、より興味の惹かれるところなのかもしれません。踏み込んで言えば、独米の対決はフランス人によりも、日本にとって切実な問題であると言えましょう」
池上「本書の成功の背景には、最近のヨーロッパ、或いは世界の中でドイツの存在感が大きくなっている印象を、日本人も持つようになっていることがあると思います。2009年以降のユーロ危機――ギリシャだけでなく、スペイン・ポルトガル・イタリアの財政問題等にも、ドイツが大きな政治的影響力を発揮しています」
トッド「ドイツへの関心は、これからもっと高まるでしょう。ドイツのヨーロッパにおける台頭は、第1次世界大戦前の帝政ドイツ、1930~1940年代のナチス、そして21世紀のこれからと3度目になりますが、合理的であまりに強すぎるドイツは、何れ理性的な態度を逸脱していくだろうと私は見ています」

池上「ドイツは合理的な国と言われているのに、そのドイツが台頭すると、どうして非合理的・非理性的な態度に出ると言えるのでしょうか?」
トッド「合理主義的であることと、理性的であることとは違うのです。合理的であることは、学問の世界等では良い事ですが、人間の生活や人生は全て合理的である訳ではありません。合理的というより、理性的であることが求められます。極端に合理主義で事に当たろうとすることは、寧ろ病的であると言えましょう。良識を超えて、極端になってしまうことが問題なのです」
池上「極端に合理的であることで、非理性的になってしまうと。例えば、6月から7月にかけてのギリシャの財政危機では、ギリシャが債務減免や返済期限の猶予を求めたのに対して、EU、とりわけドイツが強く緊縮財政を主張しましたね。これが、ドイツの極端な合理主義ということでしょうか?」
トッド「それもその1つですね。ドイツには、生真面目なところが多分にあります。真面目というよりも、“生”真面目。日本も規律正しさではドイツに劣らない国ですが、それでもユーモアを解する精神もあるように感じられます」
池上「トッドさんはよく、『ドイツを嫌いなんでは?』と言われませんか?」
トッド「とんでもない。自分は歴史家です。ヨーロッパの歴史から見れば、ドイツの果たした役割は実に大きいことを理解しています。先ず、ルターのドイツ語訳聖書。そして、グーテンベルグの活版印刷に依って、ヨーロッパの人々の識字率は格段に上りました。それから、科学の知見にもドイツの貢献は大きい。付言すれば、今日のフランスは核兵器を持つ国であり、ドイツがフランスに攻めてくるとも心配していませんよ。ただ、ドイツの精神には自己破壊的な傾向があるのです」

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プーチンと習近平が目論む“世界新秩序”――“ユーラシア大陸制覇”という中露の思惑が交錯し、そこに割って入るドイツの親和外交…日米首脳も憂慮する事態の行く末は?

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よく尋ねられる質問がある。「情報を入手するコツは何ですか?」。最近はそれに加えて、「プーチンは何を考えているのか。習近平もわからない。世界は不安定なのか。情報が欲しい」という問いも増えた。コツという言葉には、どこか“巧いやり方”というニュアンスがある。細やかな信念の1つとして、「巧いやり方はしない。できれば王道を往きたい」。その王道は3つあると、情報の現場で考んている。第一に、「どうなりますか?」と聞かない。「こうすべきだ」と議論する。例えばインテリジェンス――即ち、情報機関の当局者も軍の情報将校も、行政や政治の決定に与る人々も、重い守秘義務を背負っている。「どうなる、どうする」と聞かれて答える筈がない。答えるのなら偽者か、撹乱情報だ。だが、彼らも別角度の情報は欲しい。情報とは水面下の事実等に限らない。事実を根拠とする異見なら、情報に含まれる。私は共同通信の地方支局で、新人記者として末端の刑事の家を夜回りする時から、東京本社の政治部記者として総理に私邸で向かい合う時まで、非力ながら常にこの原則を己に課してきた。その発展型を手探りしつつ、現在の独立系シンクタンク社長としての情報収集がある。相手が胸の内で考えに考えている勘所を突く議論をすれば、本物の情報を持つ人なら必ず応戦する。その応戦ぶり・主張に、情報がたっぷりと盛られている。彼らは評論家ではなく、実務者だから。第二に、謂わば敵方からこそ情報を取る。世界を敵味方に分けることは決してしないから、正確には「意見の違う情報にこそ接する」ということになる。例えば、新聞は朝日新聞を最も長く購読している。そして、一番時間をかけて熟読吟味する。何れも、外国の工作で作られた偽情報である“従軍慰安婦”や“南京大虐殺”の記事も熱心に読む。すると、総理官邸や外務省・防衛省・警察庁の誰への取材がこの記事の元になっているか、わかる時がある。その人物に電話する。議論になる。意見が違うから、相手は懸命に反論する。そこに、中韓の水面下の動きが立ち現れることがある。意見の合う人と群れあっていても、情報は入らない。同じ所をぐるぐる回っているだけだ。第三に、小さなニュースにこそ目を向ける。特に、“短信”というやつだ。最近では、安倍総理がロシアの下院議長と5月21日に会談した短い記事がそれだ。メディアの公開情報を付き合わせただけでも、異例の展開がわかる。そこに若干の非公開情報を加えれば、事実はこうだ。

先ず、このナルイシキン下院議長は単なる議会人ではない。プーチン大統領の側近中の側近だ。それが、安倍総理とたった15分しか話していない。通訳を挟むから、事実なら正味7~8分だ。ところが、ロシア側は“50分”と発表している。会談の中身の発表が食い違うことは日常茶飯事だが、会談時間そのものがこれほどかけ離れるのは珍しい。背景は、ナルイシキン議長がアメリカとEUからウクライナ問題を巡り入国禁止措置を受けていることだ。日本に入っただけでも外務省は心配し、総理が会うことに強く反対した。ロシア側は諦めず、森喜朗元総理に働きかける等して、最終的には安倍さん自身が決断し、会った。この日、総理は官邸からホテルニューオータニに入り、パプアニューギニアのピーター・オニール首相との昼食会に臨んだ。そのホテルの一室にナルイシキン議長を呼んで会談し、午後1時10分に官邸に戻っている。官邸を避けたのは明らかにアメリカへの配慮だが、新聞はこれを外務省の発表のまま「下院議長の表敬」と総理動静に記した。表敬でホテルに呼ぶか? ポイントを絞った実務会談だったことがわかる。ナルイシキン議長は、「年内に訪日する。その代わり、条件がある」というプーチン大統領らしい端的なメッセージを携えていた。「総理と会わずに帰れない」。外務省内でロシア課と北米1課が対立した末に、「会わない」と決まった。アメリカを代弁する、いや、向き合う北米1課のほうがロシア課より発言権は強い。それが急転、総理の決断で会談が設定されたから、ロシア側は「安倍総理はこっち寄りだ」と考えてしまった。それに気づいた官邸は、菅官房長官が定例記者会見で問わず語りに、「プーチン大統領の口頭メッセージを総理が受け取った」と公表した。だが中身は一切言わず、「プーチン訪日の件か?」との質問に「そんな話はしていない」と答えた。実際のメッセージは、「年内に訪日するから、ウクライナに絡む日本の対露制裁を解除してくれ」、これだけだった。ところが、日本の制裁は実効性が無い。ロシアの要人に入国禁止や資産凍結の制裁を掛けていることになっているが、その要人とは誰か、公表すらしていない。形だけG7に合わせているに過ぎない。この同じ日に開かれた『日本・ロシアフォーラム』に、安倍総理はメッセージを寄せた。「北方領土問題の解決とロシアとの平和条約の締結は、総理大臣として最重視する」。安倍総理の意志は明確である。「アメリカと国際社会がどうあれ、日本には北方領土の問題がある。プーチン政権と接触するのは当然だ」――これが総理の胸の内だ。外務省とは姿勢が違う。安倍総理は、財務省・外務省の言うことを聞かない珍しい総理になっている。

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【空転する沖縄の“未来”】(中) “普天間”という火種の根本にあるもの――我部政明×山口昇

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――政府と沖縄県が互いに態度を硬化させ、両者の距離は広がるばかりです。近年、ここまで政府と沖縄県の関係が悪化したことはないと思うのですが、このような中で実現した菅義偉官房長官・安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事の会談をどう評価しますか?
我部「菅官房長官・安倍首相と翁長知事との会談について、公開されている内容を第三者の立場で見ると、翁長知事の主張に道理があると思うでしょう。沖縄県民の思いを受けて、自分の言葉で語っているからです。対する安倍首相・菅官房長官は、これまでの政府の立場を繰り返すだけで、心に響くものがありませんでした。とりわけ、安倍首相が経済振興支援を強調したことは、『政府がお金で解決する従来の方法を採るのだな』と思いました。安倍政権は、翁長知事の求める飛行場建設の中止を一顧だにしないとの印象を受けます。翁長知事には、覚悟を持った建設阻止への姿勢が読み取れます。この事態を、日本国民はどう見ているのでしょうか?」
山口「我部先生の仰る通り、『自分の言葉で語っているか?』というのがまさに問題の本質です。基地問題は、沖縄県民からすればずっと悩み続けてきた問題ですが、東京にいる政治家や官僚は、基地問題の担当者になった時に初めて真剣に考え始める訳です。担当者が代わると一からスタートですから。沖縄県民の何十年分もの思いと東京の担当者では、重みが違う。沖縄の人にとっては、『首相や官房長官との会談で、その差が表れた』と映ったのかもしれません」
我部「安倍首相は、訪米前に沖縄にも配慮しているという姿勢を見せたかっただけでしょうから、今後、具体的にどうするかという部分については、公開されている情報だけでは見えないですね」
山口「ただ、私は首相と知事の会談が行われたことで少し安心しました。少なくとも、これから話し合いができるということがわかっただけでも前進だと思います。安倍首相も菅官房長官も、基地間題や沖縄の将来の姿に関して翁長知事と腹を割って話し、思いを共有する為のきっかけができたという意味は大きいと思います。官僚にせよ政治家にせよ、沖縄の基地問題を担当することになると前任者が馬鹿に見えるんですよ。『もっといい案がある筈だ。検討し直そう』と皆言いたくなる。普天間から辺野古への移設案がいい例なのですが、撤去可能な海上基地案に陸上代替施設案・L字型滑走路のキャンプシュワブ沿岸部埋め立て案、そして、人家の上空を飛ばないよう滑走路をV字型に配置して離着陸で使い分ける現行案に、自民党政権も民主党政権も落ち着いた訳です。それで色んな選択肢を検討しているうちに、早い人は数週間、遅い人は数ヵ月、下手をすると1年くらい経って、初めて基地問題の難しさがわかってくる。現状認識に追いつくまでに、そのくらい時間がかかる。現行案はべストではないかもしれませんが、長年落とし所を探ってきて辿り着いたものなんです。それをひっくり返して、またべストの解答を探そうとしても中々いい知恵は出ない。思いつくような案は既に検討済みですから。例えば、嘉手納への統合案は過去に何度も出ています。但し、飛行場にも容量があって、1日の発着回数や上空を飛べる飛行機の数には限りがあり、嘉手納はこれ以上増やせない。こういうことを説明していくと、『現状案がベストではないけれど、現実的なのだろうと思わざるを得ない』ということを繰り返してきた訳です」
我部「沖縄開発庁の山中貞則長官や橋本龍太郎首相・小渕恵三首相等、ある時期までの自民党には、『同胞として、沖縄の基地問題を何とかしなくては…』という思いを持った政治家がいました。実際に、橋本首相が1996年に取り纏めた“SACO(沖縄に関する特別行動委員会)”合意に沿って、これまでに安波訓練場・ギンバル訓練場・楚辺通信所・読谷補助飛行場・瀬名波通信施設が返還されています。その多くは、既に幾度もなされた地元からの返還要求に対応した結果でした。一方では、日米安保を維持しなければいけない。他方で、沖縄の民意に応えて基地縮小を進めなければならない――この2つの狭間でできることを、これらの政権は進めてきました。それが小泉政権以降、雰囲気が変わります。2001年の9.11同時多発テロで、“テロとの戦い”という新たな宿題に取り組まなければいけなくなったこともあり、基地問題は放置されてしまった。現行の“日米ロードマップ”が出るのが2006年ですから、丁度小泉政権は基地問題に関して谷間の時期だったと言えます。この時期を経て、沖縄県民の思いに配慮するという雰囲気が自民党内で希薄になり、日米安保に力点を置くようになりました。それ以降、沖縄の人々は、『政府から距離を置かれてきた』という思いを感じてきたんだと思います」

――現在の移設案は2006年の合意が基本になっていますが、この合意も相当無理をしてできたもので、当時の稲嶺恵一知事も「飛行場は軍民共用にする」「15年の使用期限」という条件をつけています。こうした交渉の経緯があるにも拘らず、2009年に民主党政権が突然方針転換して、これまでの合意を無視した県外移設を主張しました。鳩山由紀夫首相の県外移設案を、どう受け止めましたか?
我部「民主党の沖縄県連は、2009年の総選挙以前から普天間の県外移設を要求しています。ところが、総選挙のマニフェストにはそれが無かったので、県民は落胆しました。だから、選挙の最中に鳩山代表が県外移設を言い出した時は、驚きというよりも、『県連が言ってきたことを党本部が取り上げた』と受け止められました。しかし、1年も経たずに首相自ら県外を撤回してしまいます」
山口「鳩山首相の発言の後、仲井眞弘多知事が『これで3年遅れる』と嘆いたという報道がありました。少なくとも、沖縄県民にとっては期待を高めた上で『裏切られた』という思いを残したし、それまでの合意への反対気運に火をつけてしまいました」

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【働きかたNext】第7部・女性が創る(05) 脱“優しい会社”――甘えなくせ、挑む資生堂

「保育園のお迎え、どうしよう」――2013年秋、『資生堂』で接客や販売を担う美容部員(BC)の百崎ゆかり(35)は途方に暮れた。会社から働き方改革の方針ビデオを見せられた為だ。2014年春から1万人のBCを対象に、育児中でも夜間までの遅番や土日勤務に入ってもらうという。20年以上前から育児休業や短時間勤務制度を導入し、“女性に優しい会社”の評判を築いてきた資生堂。何故、ここに来て厳しい態度に転じたのか? 「忙しい夕方、同僚に感謝の言葉も無く帰る等、育児中の優遇が既得権益化し、摩擦が生まれた」。BC出身の執行役員常務・関根近子(61)は、改革の理由を話す。育児中で短時間勤務のBCは午後5時頃に帰宅する。客でごった返す夕方から夜等の繁忙時間は、若手やベテランが肩代わりしてきた。いつしか、BCの時短勤務者は1200人に増え、「このままでは回らない」と通常勤務の社員から悲鳴が上がり始めた。充実した筈の制度が、逆に士気後退に繋がる――その危機感が、資生堂を“優しさの次”へと向かわせた。改革から1年余り。子供を持ち、東京都内の化粧品店で働く広嶋由紀子(40)は、土日や遅番にも意識的に入る。そのほうが周囲の協力が得易いからだ。実家の協力を得て遅番に入るようになった百崎も、「販売増に貢献できる」と前向きだ。勿論、全ての社員が納得した訳ではない。「『リストラ宣告だ』と呆然とした」と会社を去ったBCもいる。ただ、関根は「育児中の人にはプロ意識が、他の社員は配慮や協力の意識が増した」と分析する。

国内約2万人の女性従業員を抱え、“女性に優しい制度”充実に励んできた資生堂。同社が抱える悩みは、女性支援に動き出した多くの日本企業が今後直面し得る課題でもある。単なる優しさを超え、性別を殊更特別視しない風土や仕組みは築けるのか? 幹部登用でも模索が続く。「管理職試験を受けてほしい」――2014年秋、産休中だった資生堂グローバル事業本部の長谷直子(38)は、上司の言葉に驚いた。長男はまだ生後1ヵ月。悩んだが、「子供を産んでもキャリアに傷は付かないと後輩に示せたら…」と勉強を開始。今春、管理職として復帰した。資生堂は2004年、「2013年までに女性管理職比率を30%にする」という目標を掲げた。しかし、2013年は25.6%と届かず、目標を2016年に延期した。達成を急がなかったのは、「力の付いていない女性を無理に引き上げないという宣言」だ。女性の意識も様々だ。上を目指す女性も多い半面、「子供を抱え、責任の重い管理職は難しい」(40代総合職女性)、「普通の時間に帰りたい」(20代同)との声も少なくない。同社は女性のロールモデルも1つに限定せず、幅広い働き方を選んでもらう考えだ。「経営の意思決定に関わる女性の数はまだ少ない」。社長の魚谷雅彦(61)は語る。子育て中でも貪欲に仕事に挑戦できる環境を整える。その上で、本人の自覚とやる気を後押しする。制度や仕組みを作るだけでは進まない。トップの意志と社員1人ひとりの覚悟が、日本の働き方を変える原動力となる。 《敬称略》

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【働きかたNext】第7部・女性が創る(04) フィリピンは“先進国”――家事、他人とシェア

共働きが主流になった日本。家事や育児を抱えて働く女性に、「頑張れ」と言うだけではあまりに無責任だ。負担を分け合う新たな仕組みが要る。ヒントの1つがアジアにある。フィリピンのセブ島。4歳と7歳の子を持つシングルマザーの佐藤ひろこ(36)は、観光情報誌を発行する経営者だ。現地のマッサージ店に勤めていた2007年に、「日本人向け情報が少ない」と立ち上げた。ホテルとの打ち合わせ・英会話学校とのイベント企画・社内ミーティング…。各地を目まぐるしく動き、帰宅は午後8時を過ぎることも多い。仕事に集中できるのは、2人のフィリピン人メイドが子供の世話や家事をしてくれる為だ。費用は月に3万円程度かかるが、「ここでは働く女性がメイドを使うのは一般的」。世界経済フォーラムが調べた女性管理職比率は、日本は11%なのにフィリピンは48%。世界トップクラスの原動力は、家事の代行や育児支援サービスにある。日本では、家事や育児を他人に委ねることに否定的な風潮が強い。経済産業省が昨年6月に25~44歳の女性に聞いた調査では、家事代行サービスの利用経験がある人は僅か3%だった。だが、急速に広がる日本企業の海外展開が、そんな意識を変えるかもしれない。『住友商事』に勤める出浦直子(33)は昨年12月、赴任先のタイで長男を出産した。日本では1年程度の育児休業を取るのが一般的だが、出浦は0歳児保育を使い、8週間で職場復帰した。「タイでは当たり前。同僚も同じように働いており、不安はなかった」。来月からは、会社が新設した補助でベビーシッターを雇う。

外国人に家事を委ねる機運は、国内でも出てきている。医療シンクタンクに勤める土井甲子(31)は6月初旬の休日、家事代行マッチングサイト『タスカジ』を使い、フィリピン人ハウスキーパーに自宅の掃除を頼んだ。「次は何をしましょうか?」。夫が日本人で永住権を持つロドラ(39)は日本語で土井の指示を仰ぎ、居間や風呂場を掃除していく。その間、2歳の長男と遊んだ土井は、「子供と沢山触れ合えて、心に余裕ができた」。日本人キーパーも選べたが、「子供が英語に触れる良い機会」と敢えて外国人にしたという。昨年7月に開業したタスカジの利用者は既に1500人。料金は1時間1500円からと、3000円程度かかる他の家事代行より割安だ。取り次ぎに徹し、自社でハウスキーパーを抱えないので安くなるという。コストをかけずに子育てを助け合う動きもある。代官山にあるシェアハウス『スタイリオウィズ代官山』は、20~30代のシングルマザー5世帯・単身者8世帯が大家族のように暮らす。「買い物に行くから、ちょっと子供を見てて」。リビングで母親が互いに簡単な仕事を頼むことで、子育ての負担を軽くする。家賃はワンルームで9万~11万円。近隣マンションと変わらない。家事の担い手不足を家庭の中で解決するのは限界がある。家の外と家事を分け合う様々な形を創ることが、働く女性を輝かせる。 《敬称略》

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テーマ : 働き方
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【日曜に想う】 沖縄が問う、日本人の洞察力

戦後70年のこの夏、沖縄について考えることが多かった。翁長雄志知事の話を聞いた。「東京等で講演すると、私たちがアメリカ軍普天間飛行場の辺野古移設に反対しているから、『日米安保に反対なのか?』と聞かれることが多い。始めのうちは『そうではない』と説明していたのだが、最近は『貴方は自宅近くにアメリカ軍基地ができるとしたら、受け入れますか?』と逆に質問することにしている。大抵は『受け入れない』という答えだ。そこで私が、『では、貴方は日米安保に反対なのですか?』と聞くと、相手は黙ってしまう。多くの日本人と同じように、沖縄県民の大半は日米安保に反対している訳ではない。国土の0.6%に過ぎない沖縄県に、在日アメリカ軍基地の74%が集中するという過重な負担に異議を唱えているのだ。それは、極常識的な主張ではないか」――翁長氏は訴える。沖縄の基地問題を考える時、“抑止力の維持”という現状の安全保障論と共に、沖縄の歴史を踏まえなければならない。太平洋戦争の地上戦で、県民の4人に1人が命を落としたという悲劇だけではない。7月、安全保障関連法案を審議していた衆議院特別委員会の地方参考人質疑が那覇市内で開かれた。大田昌秀元知事の証言が耳に残る。「戦後、沖縄は日本から切り離されてアメリカ軍の軍政下に置かれた。27年間、沖縄は日本の憲法の適用が受けられなかった。憲法には人権等が細かく規定されているが、それが適用されない沖縄は他人の目的を達成する為の手段として、モノ扱いされて、人間扱いされてこなかった訳です」

永田町を見渡すと、沖縄の問題に真剣に向き合う政治家が少なくなったことに気づく。嘗ては橋本龍太郎・小渕恵三・梶山静六・野中広務各氏らがいた。彼らの先輩格に山中貞則氏がいる。1970年から総理府総務長官・沖縄開発庁長官等を務め、沖縄の基地問題や経済振興策に取り組んだ。鹿児島の選挙地盤を引き継いだ森山裕衆議院議員に依ると、ある時、山中氏は支持者から「先生、沖縄に注ぐエネルギーの10分の1でもいいから、地元のことにも力を入れてください」と言われた。山中氏は「何を言うか!」と一喝。「沖縄の人たちが地上戦で踏ん張ったから、アメリカ軍は鹿児島に上陸できなかった。沖縄の人々が戦わなかったら、君らは海に沈んでいた。沖縄の為に働くのは政治家の責任だ」と力説したという。この6月、自民党本部で開かれた若手勉強会では、「沖縄の歪んだ世論を正しい方向に持っていく」といった発言が続いた。山中氏の時代との“落差”は、あまりにも大きい。

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テーマ : 沖縄米軍基地問題
ジャンル : 政治・経済

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