総合スーパー大量閉店、解体論より“買いたい論”を

“GMS”――どれだけの人がこの言葉の意味を知っているだろうか? G(ゼネラル・全般的な)・M(マーチャンダイズ・商品計画)・S(ストア・店)。流通業界では“総合スーパー”と呼ぶ。食品・衣料・日用品・家電等、幅広い品揃えを誇る形態のことだ。これを経営の中核に据えて高度成長期に業容拡大した『ユニー』や『イトーヨーカ堂』が大量閉店を打ち出した。

GMSは時代遅れなのか? 確かに、その側面はある。経済産業省が定義するGMSの数は2012年で1122店と、15年ほ程で40%も減った。同じ時期の小売り全体では27%減。GMSの1㎡当たり売上高は73万円から46万円に落ち込んだ。だが、GMSの意味を知らない生活者からすると、「GMSだから…」とその店を敬遠するものでもないだろう。「買いたい商品が無い」から行かないだけだ。アメリカ発のGMSを参考に、近代的な流通業を目指してダイエー・ヨーカ堂・イオン等が同事業を立ち上げたのは約半世紀前。底流にあったのは規模の追求だ。規模が伴えば仕入れ条件が良くなり、低価格で販売できると考えた。ダイエー創業者の中内㓛氏の口癖は「物価を半分にする」。規模の経済を目指し、M&A(合併・買収)を繰り返した。現実はどうか? 大資本のGMSと地方の零細食品店に並ぶ人気のカップ麺の通常売価に、大差はない。低価格化のゴールは逃げ水のように捕まえられない。低価格の為に、GMSは本部主導で店舗面積や品揃え等の標準化を推進した。それでも低価格の果実を手にできないのは、商品をメーカーや卸会社から単に仕入れる古典的な流通構造に依存し続けたからだ。特売価格は販売奨励金が原資なので、商品自体の価格体系の見直しではなかった。高度成長期の大量生産・大量販売の成功体験の名残が色濃く残る。同業の真似が横行した結果、同質化を生み、店の魅力が落ちた。何故、そうなったのか?

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テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

【中国人の攻略法】(03) 中国を“大掴み”に理解する! 歴史と古典で学ぶ中国人のツボ

今や、中国に関する情報は溢れている。だが、表層的な変化だけを追っていては却って本質を見失う。より大事なのは、「中国人とは何か?」を大掴みに捉えること。そこで頼りになるのは、歴史と古典の知識である。京劇研究を通じて中国社会の深層を見つめてきた明治大学の加藤徹教授に、中国人の世界を理解する為の道案内をお願いした。

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①中国史を複数の時間軸で掴む
“中国4000年の歴史”と言いますが、日本との関係では3000年・300年・30年という複数の時間軸で考えることをお勧めします。因みに、1世代を表す漢字“世”の原義は30年です。日本人が“中国人”という時に思い描くのは、漢民族の人々でしょう。その祖型は今から約3000年前、“殷”と“周”という2つの民族集団が衝突したことで生まれました。これを“殷周革命”と言います。詳細は後で説明しますが、この衝突の結果、東アジアの諸民族が玉突きのように移動し、その一部が弥生時代の日本に水稲耕作を齎しました。日中関係の歴史は、ここまで遡ります。その後は、中国が日本に文化的影響を一方的に与えるという“直流”の関係が続きました。中国の周辺で集約農業を基盤とする都市文明を持てた主要国は、朝鮮・ベトナム・日本の3ヵ国だけ。その中で最大の人口を持つ日本ですら、人口規模は中国の1割程度でした。お互いに交流して刺激し合うような文明が近隣に無かったのが、中国文明の悲劇です。内外に競合的協力者とでも言うべき存在がいて、発展の芽を絶やさなかった西欧文明とはそこが違います。これが、中国文明が地球規模の文明になれなかった理由の1つでしょう。日本は中国と対等の関係を保つ為に、敢えて冊封(朝貢)体制に入りませんでした。近代以前に日中が国家規模で戦ったのは3回だけですが、活発な交流も無かったのです。現代の中国人に繋がる歴史は精々300年前から。中国人が領土の議論をする時も、清朝(1636~1912年)が基準になっています。北京等の主要都市の町並みや料理・演劇等もそう。だから、中国では時代劇のセットも清代が標準です。現代の日本人のライフスタイルが江戸時代から地続きなのと似ています。現代の中国の政治や経済と歴史を結び付けて考えるには、300年遡れば十分でしょう。また、中国人の生活は、改革開放政策が1970年代末に始まってからの30年余りで劇的に変わりました。このように、中国を考えるには3000年・300年・30年の3つの時間軸が有用です。

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テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

【オワハラ時代の大学と就活】(03) 大学生・企業採用担当者・大学職員のホンネ…仁義なき就職戦線の全舞台裏

今年の就職活動では何が起き、昨年と何が変わったのか? 大学生・企業採用担当者・大学職員が赤裸々に語る。 (取材・構成/本誌 秋本裕子)

覆面座談会出席者
A 有名私立大学(文系)4年生男子
B 有名私立大学(文系)4年生男子
C 地方国立大学(文系)4年生女子
D 有名私立大学(文系)3年生女子
E 有名国立大学(理系)3年生男子
F 大手企業採用担当者
G 関西地方私立大学職員
H 大手企業採用担当者


A「僕は去年、インターンに参加した第1志望の大手金融会社から7月に内々定を貰った。その前に、かなり高級なレストランにも連れて行ってもらったし、立食パーティーや忘年会を通じて社員と密接になることができた。やっぱり、インターンは“青田買い”の場と実感した。後輩にも、『インターンは実質的に採用の場。絶対に行くべきだ』と勧めている」
D「私は体育会クラブに入っていて、週6回フルに練習があるから、インターンに行く時間なんて全く取れない。『行ったほうが採用され易い』と同じゼミの友達や先輩等からよく聞くので、かなり不安がある。体育会は有利らしいから、部のOBに上手く引き上げてほしい」
E「僕は、1年から外資系IT会社のインターンへ行った。早くから会社の仕事を学んだことは収穫だったし、学歴だけで実力は測れないとわかった。日本企業の採用試験では絶対受からないような人が、実は一番優秀だったりする。日本企業は正しく実力を測る手段を考えるべきだ。今はアメリカの大学に留学して、将来はアメリカの企業で働こうと思っている」
C「私の周囲は教員や公務員志望が多く、民間企業への就活をしている人は皆無。高校時代の友人を頼って活動したが、周囲に情報交換できる相手がおらず苦戦した。インターンも沢山申し込んだけど、どこにも行けなかった。やはり、地方の国立大学生は東京都内の有名私立大学の学生とは情報量の格差やOB・OG不足で、就活には決定的に不利と感じた」

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【安保法制賛成の意見も聞いて下さい】(02) 『イスラム国』が民間船団を襲撃してきたら

今の厳しい国際情勢の下では、どの国もそうですが、個別的自衛権だけでは自国の国民や財産を守り切ることはできません。やはり部分的にせよ、集団的自衛権を使うことが必要になるのです。次の事例を考えてみて下さい。前回書いたアラビア海ですが、海賊に依る民間船舶襲撃が相次ぐこの危険な海域には、海上自衛隊の護衛艦隊が派遣され、民間船舶を守っています。これまでに660隻もの日本船舶が警護され、無事にこの危険な海域を通過しました。それだけではないのです。海上自衛隊の護衛艦は、実に2800隻もの外国船舶を日本船舶と共に警護してきたのです。何故でしょうか? 船舶は其々の運航計画に従って航海しますから、日本の船舶だけを集めて船団を組むことはできません。途切れることなく通過していく色々な国の船舶を、各国の海軍と海上自衛隊が分担して護衛するのです。“集団的自衛”そのものなのに、何故日本で問題にならないのか? それは、相手が海賊なので、海上自衛隊の行動は無法な襲撃者に対する“警察行動”と見做されるからです。ところが、襲撃者が残虐な『ISIS(別名:イスラム国)』である場合はどうでしょうか? 僕は最近もイラクを訪問し、ISISとの前線から40kmのところに行きましたが、今でもこの強大な暴力組織には戦闘員が毎月1000名も増え続けているそうです。主権国家が束になってかかっても勝つことができない。ISISが“国家に準ずる組織”であることは疑いないでしょう。彼らはアラビア半島全域の支配を目標とし、数ヵ月前にもエジプトの巡視船を襲ったとの報道がありました。海賊ではなく、ISISが民間船団を襲撃してきたらどうなるのか。

“国家、又は国家に準ずる組織”が相手の場合には、自衛隊の行動は“軍事行動”になるので、海上自衛隊が自分が警護する多国籍の商船隊を守る為に武力を使うことは集団的自衛権の行使となります。結局、1972年政府見解は「自衛隊はISISの襲撃は放置しておけ」と指示している訳です。こんな馬鹿げた話はありません。「弱い海賊に対しては武力を行使できるが、強い敵が襲ってきたら傍観しろ」と言うのですから。ISISは、忠誠を誓う中東各国のテロリスト組織を使って広範な地域を支配しようとしています。ですから、上に挙げたケースは現実に起こり得ることなのです。こうした僕の設問に対して、反対派の人々から回答を得たことはありません。繰り返しますが、今回の安保法制は政府自身が作った1972年見解には適合しませんが、「国民の生命と自由を守れ」と政府に命じた日本国憲法の13条を守る為には必要だと思います(実は、上記の船団護衛のケースでも海上自衛隊が自由に動けるかどうかは疑問なのです。今度の法制に依っても、日本は他の国が行使しているような集団的自衛権は使用できません。民間船舶に対する襲撃が“日本の存立を脅かす”ほど深刻なものでない限りは、海上自衛隊は多国籍の船団を守れないのです。反対する人々が言う“他国の戦争に参加する為の法制”どころではありません)。


岡本行夫(おかもと・ゆきお) 外交評論家・マサチューセッツ工科大学シニアフェロー。1945年、神奈川県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、外務省に入省。1991年退官。同年に『岡本アソシエイツ』設立、代表取締役に就任し現在に至る。橋本内閣で1996~1998年総理大臣補佐官(沖縄担当)、小泉内閣で2001年9月より内閣官房参与、2003年4月~2004年3月まで総理大臣補佐官(イラク問題担当)を歴任。立命館大学客員教授。東北大学特任教授。東北漁業再開支援基金・希望の烽火代表理事。


キャプチャ  2015年9月25日付掲載


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ジャンル : 政治・経済

【安保法制賛成の意見も聞いて下さい】(01) 安保法は憲法には違反していない

これから時々、このコラムに執筆することになりました。僕は“穏健保守”の立場ですので、安全保障や外交問題については朝日新聞の論調とは異なりますが、それでもこの場を与えてくれた朝日新聞に感謝します。9月18日に安保関連法が成立しました。与党は「何が何でも成立させる!」、野党は「何が何でも潰す!」と国会で審議する前から決め込んでいる。そうであれば、あのようなガチンコ対決にしかならないことが最初から決まっている。悲しいことです。自民・公明等の5党が賛成しての成立ですが、多くの人々が尚反対しており、政府として決して喜べる事態ではありません。反対する人がこれだけ多いのは、政府がわかり易い説明をしてこなかったせいでもありますから、政府にはこれから国民に改めて説明を尽くしていく義務があります。そうでなければ、与党(特に自民党)は選挙で国民に見放されるでしょう。僕自身は、この法律に賛成です。理由は簡単です。日本の安全保障の体制が柔軟なものになり、国民の生命と財産を守る為に危険に応じた対応策が取れるようになるからです。

勿論、憲法違反の法律は無効です。僕は、「この法律は1972年の政府見解には違反しているが、憲法には違反していない」と考えます。この法律の違憲・合憲論議の混乱の元は、1972年の“政府見解”にあります。内閣法制局が作ったこの見解は、国家が自衛する権利を“個別的自衛権”と“集団的自衛権”に分け、個別的自衛権を「日本国土に対して攻撃が行われた時のみ反撃できる権利」と極めて狭く解釈した上、「それ以外は、全てが集団的自衛行為である」と区分けし、しかも「集団的自衛権とは他国を守る為の武力行使」と定義しました。つまり、日本が直接武力攻撃を受けるという現実には考え難い極端な場合の武力行使以外は、全てが“他国を守る行為”と定義したのです。海外で多数の日本人が他の国の人々と一緒に危険に陥る事態な等は、全く想定していません。国の安全保障というものを単純化し過ぎた解釈だったと思います。乱暴な表現をすれば、集団的自衛権には日本にとっての“良い集団的自衛権”と“悪い集団的自衛権”があると思うのです。“良い集団的自衛権”とは、日本を他国の軍隊の協力を得て一緒に守る為の武力行使です。今の国際情勢の下では、日本一国では世界中に広がる日本人の生命と財産を守り切ることはできません。後で具体的な例で説明します。一方、“悪い集団的自衛権”とは、日本防衛とは関係のない他国を守る為の武力行使です。これは違憲で、駄目です。今回、限定的に可能になるのは勿論前者です。憲法13条は、政府が国民の生命と自由を守ることを義務付けています。ところが、多くの憲法学者は、「海外で日本人の生命や財産が攻撃されていても、日本への武力行使の着手がない段階での武力行使は(個別的自衛権の行使としても)違憲だ」という考えです。つまり、「日本の国土が攻撃されていない限り、日本人の命を守る為でも海外で自衛隊が武力を使うことは駄目だ」と。僕は納得がいきません。海外で日本人の生命や財産を外国軍隊と一緒に防衛できるようにする今回の安保法制は、“1972年見解が解釈した憲法”には違反すると思います。しかし、この解釈自体が間違っていたのではないでしょうか?

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【働きかたNext】第8部・若者が問う(05) 地方は都落ちじゃない――“等身大”が活力生む

岡山県のある過疎地が若者の注目を集めている。住民の大半が70歳以上の美作市梶並地区。20~30代が頻繁に訪れ、3年で約30人が移住した。赤星賢太郎(27)もその1人。東京都内のIT企業でウェブデザインを手掛ける技術者だった。仕事は面白かったが、残業続きの仕事に追われて「新鮮な発想が出なくなった。自分のペースで働きたい」と移住を決めた。「地方で生活できるか?」――そんな不安を、現地で若者の支援を行う藤井裕也(28)が和らげる。「収入が少ないなら仕事を増やせばいい」。商品のパッケージ作りから田畑の草刈りまで熟す赤星。「楽じゃないが、気がつけば収入も東京の約2倍」と笑顔を見せる。地方に移り住む若者の輪が広がっている。内閣府が昨年実施した調査では、20~30代の過半が「地方移住も良い」と回答。『ふるさと回帰支援センター』への問い合わせも、半分近くは20~30代からだ。都会の“歯車”になり、自分を見失いがちな若者たち。大企業神話が色褪せた彼らにとって、地方は決して“都落ち”の存在ではない。汗をかき、仲間や地域と成長する。そんな等身大の活躍の場を求める動きが広がる。不動産会社を辞め、『パソナ』の関連会社で働く加藤大祐(29)の舞台は淡路島だ。農業チームの5人を率い、東京ドームほどの広さの農場を管理する。上司への事前報告や相談は必要ない。生産品目や販路開拓等、何でも自分で判断して行動する。「普通のサラリーマンにはできない経験」と手応えを感じている。やりがい・生活との両立・ゆとり…。新たな働き方を探る若者が求めるものは様々。だが、担い手を求める地方にとっては貴重な戦力となる。

「使っていない家はありませんか?」――佐賀県庁の移住支援担当である大徳孝幸(31)は、若者の住居確保の為に県内を駆け回る。実は、大徳自身も移住者だ。前職の『リクルート』で長野県小布施町の地域おこしを担当。「自ら地方に住み、活性化させたい」と考えた。個人でも“佐賀移住計画”を立ち上げ、移住成功者や希望者・自治体職員等を繋ぐ交流会を開催する。「人と人の繋がりを広げれば仕事の機会も増える」と話す。優秀な若者を呼び込もうと地方企業も変わる。“デュアルライフ採用”――宮崎市のIT企業『アラタナ』は、一風変わった制度で若者を募る。1年間は、東京都・宮崎県で其々希望の日数で働けるよう配慮する仕組みだ。平田あずさ(26)は昨夏、求人サイト運営の『リブセンス』に1ヵ月間出向した。「東京は刺激的だったが、田舎で働く良さも感じた」と話す。敢えて宮崎に囲い込まず、多様な働き方を認める柔軟さが若者を惹き付ける。東京大学教授の玄田有史(50)は、「若者にとって、地方は自分に価値があると実感できる場所」と見る。地方では、受け身では何も生まれない。悩みながらも自ら考え、自ら動く若者が増えれば、陰る地方の光明になり得る。次代の若者の問いに向き合えば、常識に捉われない明日の日本の働き方も見えてくる。 《敬称略》

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【働きかたNext】第8部・若者が問う(04) 人脈は社内だけじゃない――共感の輪広げ飛躍探る

「エンジニアさん、興味のある人はフラっとオフィスに遊びに来て下さい」――通販サイト支援の『BASE』(東京都渋谷区)がツイッターで呟くさりげない“お誘い”の文句。実は求人広告だ。「面白そうだな」。実際、遊びに行った藤田健太郎(26)は社員や職場の雰囲気を気に入り、2年前から同社で働き始めた。「楽しそうな感じで自分に合うと思った」。ツイッターやフェイスブック等の交流サイト(SNS)の普及が、若者の行動を変え始めた。堅苦しい挨拶抜きで情報を交わし、気の合う仲間の輪を広げる。そんなSNS世代のキーワードはスピードと共感。職場選びだけではない。仕事の進め方も変化が見える。「ちょっとご飯に行きましょう」。動画制作ベンチャーの『ビーバー』(東京都品川区)社長の上坂優太(31)は、対話アプリで『ヤフー』執行役員の荒波修(44)に呼びかけた。知り合いの荒波に事業の相談をする為で、動画産業に興味があった荒波も直ぐ応じた。メッセンジャーで会話すること50~60回。要所は直接会って話す内に話は膨らみ、資本・業務提携に発展。5月にヤフー等から7億円の資金を得た。会社対会社で交渉を始め、進展の度に決裁を仰ぐのが常識だが、それでは商機を逃しかねない。上坂は「人の繋がりが財産」と強調する。SNS世代にとって重要なのは、会社という枠組みよりも肩書や年齢を超えた社外との繋がりだ。趣味や志向、似た価値観を持つネットワークを生かせば、ビジネスの可能性は大きく広がる。

8月中旬。渋谷駅近くの雑居ビルにTシャツ姿の若者が集まった。若手起業家が自社サービスを説明するイベント『スプラウト』だ。観客はSNSを通じて繋がった約60人。流行に敏感な“アーリーアダプター”と呼ばれる人たちだ。彼らが共感すれば、SNSを通じてサービスが広まるだけに真剣そのもの。インターネットメディア運営会社を立ち上げた真野勉(28)は、「様々な人の意見を聞けばサービスも向上する」と話す。勿論、SNSは万能ではない。参加者は様々。立場の違いに依るトラブルや炎上リスクもある。だが、形式に拘らずアイデアと行動力・人脈を通じて、新たな成功の機会を探る働き方はシリコンバレー流にも通じる。大事なのは、内に籠らず外に目を向けること。大手企業でも社外に活路を探る動きが広がる。『大阪ガス』は新技術の開発を速める為、自社が求める重要技術を敢えてインターネットで公開し、社外に連携を呼びかけ始めた。スマートフォン用アプリの共同開発を探る鈴木智之(31)は、「新しいアイデアを生み出す為に外部と組みたい」と話す。国や組織の枠を超え、インターネットで様々な人に繋がる時代。出会う機会を逃さず、外の知を上手く生かせば新たな地平を切り開ける。危うさをも孕む若者の行動だが、インターネット時代の働き方のヒントも見える。 《敬称略》

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【働きかたNext】第8部・若者が問う(03) 無気力な訳じゃない――“さとり世代”丹念に咲かす

淡泊で高望みしない。生活も仕事もコストパフォーマンス重視――入社4年目頃までの“さとり世代”が輝く職場はどう作れば良いのか? 『河合塾マナビス』では、2012年4月に入社した新入社員の多くが1年半以内に退職した。「入社前のイメージと違った」「やることが多くて大変」。現実の仕事の厳しさに、仕事を投げ出す若者が続出した。そこで始めたのが、指導役となる校舎長の意識改革だった。押しつけ型を止め、耳を傾けて信頼を得る。「新人が育てば仕事が楽になるから」。研修で強く意識付けた。久喜校(埼玉県久喜市)の校舎長・田中友佳梨(28)は、掃除の仕方等の細かいことでも意識的に若手の意見を聞く。入社2年目の部下・門村龍(24)は、「上司が否定から入らず、理由を説明してくれるので嫌な業務でも頑張れる」。2015年4月に同社に入社した24人は、まだ誰も辞めていない。職場の外で若者に刺激を与える会社もある。東京都中央区月島にある地上8階地下1階の大型寮『月島荘』。2013年の完成から2年でメーカーや金融機関等の約40社が利用し、若手400人が入居するようになった。月島荘では、祭りや講演会といったイベントを通じて入居者が交流を深める。1月に実家から移った『森永乳業』の柴田珠実(25)は、「異業種の同世代から刺激を受けている」。同社人財部の永安紀人(40)は、「多様な価値観に触れて、ネットワークを創る力を身に付けてほしい」と狙いを明かす。

淡々とした“さとり世代”は、バブル世代等から「無気力だ」と批判されることもある。ただ、日本経済が傾き、震災等の社会の価値観が揺らぐ時代に育った彼らは、様々な局面で浮かれず、冷静に対処できる特徴もある。「週休4日・月給15万円で働きませんか?」――昨年、こんな条件を謳う“緩い就職”が話題を攫った。人材サービスの『ビースタイル』(東京都新宿区)の説明会には、若者380人が足を運んだ。ただ、若者の考えは必ずしも緩くない。同社を通じ、オフィスへの野菜宅配を手掛ける『KOMPEITO』(東京都渋谷区)に就職した山口大貴(26)は休みの4日間を利用し、友人のウェブサイトの運営に携わる。「副業が許されない日本企業の在り方に疑問を感じる」。大学卒業後、ベンチャー企業の立ち上げを手伝ってきた山口には、時間を柔軟に使える“緩い就職”は魅力的に映る。勤務に当たる週3日は、顧客開拓やプレゼン資料の作成等、正社員と同じ仕事を熟す。若者の意識に詳しい『インフィニティ』(東京都港区)代表の牛窪恵(47)は、「さとり世代は要領が良く意見もしっかり持っている。IT(情報技術)等のスキルも高く、丁寧に接すれば大きく育つ筈だ」と指摘する。職場と若者が価値観を押しつけ合うだけでは消耗するだけだ。世代の違いを認め、歩み寄った先に若者が輝く働き方が見えてくる。 《敬称略》

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【働きかたNext】第8部・若者が問う(02) 型通りじゃつまらない――吹き出す個性、社会に新風

「作品に名前を残したかった」――東京都内の中学3年生・武藤篤司(15)は5月に映像制作会社を立ち上げ、自ら社長の肩書を得た。小学生から映像作りに熱中。インターネットに動画を投稿する“YouTuber”としても活躍する。「未知なことでないと飽きちゃう」。学校が終わると、人気アーティストの音楽ビデオ制作に励む。沖縄県の高校1年生・仲田洋子(16)も2000年前後生まれの“ミレニアム起業家”の1人。「地元の若者が視野を広げられれば」と、沖縄出身の著名人を紹介するサイトを運営する。「大企業に就職すれば一生安泰」。そんな図式が通用しないことを知る若者たち。型通りの道を選ばず、自分の力を磨き世に挑む動きが広がる。合格した早稲田大学を蹴り、敢えて起業家育成の通信制大学に入学した細川大己(20)は昨秋、飲食店の評価を動画で投稿するアプリの開発ベンチャーを起業。投資ファンドから出資も得た。「いい大学は就職等で損しないが、大勢の学生の中で流されそう」。最年少上場を狙う細川には、横並びの就職活動のほうがリスクに映る。社会が成熟し、低成長が続く日本。大量生産のコスト競争では最早新興国に太刀打ちできない。必要なのは横並びの会社人間ではなく、型破りの発想や行動力を持つ人材だ。そんな若手を増やし、成功の機会を広げるにはどうすべきか。

2013年にアプリ開発の『ワランティー』を起業した庄野裕介(29)には苦い経験がある。家電製品の保証書を電子化し、スマートフォンで管理するアイデアは斬新だが、「潰れないことを証明しろ」と営業先は冷たい。先に上場した『クックパッド』が出資するまで、大手の慎重姿勢は変わらなかった。日本の新規開業率は4.8%と欧米の半分。政府は日本再興戦略等でベンチャー支援を打ち出すが、庄野は「販路の拡大支援等、ベンチャーとの取引を促すような政策が必要」と訴える。リスクや失敗を恐れて前例踏襲。波風立たせず、集団で行動する――そんな日本人の保守的な体質を、教育の現場から変えようとする動きもある。「自ら発言し、動かないと」。西村のあ(15)は7月下旬、全寮制の国際高校である『インターナショナルスクールオブアジア軽井沢』が開いたサマースクールで痛感した。世界31ヵ国・地域から80人が参加。髪や肌の色・母国語・価値観も違う。英語の授業の内容は生徒に考えさせ、議論するものばかりだ。「自ら変革を起こせる“チェンジメーカー”を育てたい」。代表理事の小林りん(40)は狙いを話す。“出る杭”を認め、伸ばす社会に変える。前例に捉われない若者だからこそ、停滞する日本に新風を吹き込む起点になり得る。 《敬称略》

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【働きかたNext】第8部・若者が問う(01) 10年も待てない――変革の芽、僕らが動く

「もう1年以上やっているんでしょ。しっかりして」――『アサヒ飲料』で働く斎藤亜未(30)は年下の同僚たちにこう言われ、衝撃を受けた。入社4年目。海外研修に手を上げ、マレーシアに赴任した。周りは20代の現地人マネジャーたち。時間はルーズだが、仕事のプロ意識は高い。キャリアを求めて、1年半の間に8割が転職した。「現地では4年目でベテラン扱い。7年目の自分もいつまでも若手気分じゃ通用しない」。帰国後は、考えるより先に行動するようになった。老いる日本企業――職場の平均年齢は約42歳と、50年前より10歳上がった。『リクルート』に依ると、課長の平均年齢も40代後半の日本に対し、インドやタイは30代前半だった。若手が牽引するアジアと対照的に、膨れ上がったミドルやシニア層の処遇に追われる日本。“10年雑巾掛け”を宣告したままでは若手が育たないばかりか、優秀な人材にソッポを向かれる。『富士ゼロックス』の関連会社で新規事業を担当する寺嶋毅(23)。新卒ながら、シンガポールで5人のチームの一員として働く。今の道を選んだのは卒業直前の冬。海外での活躍を狙い、自動車大手の内定を得たが、海外勤務は数年先と知って断った。「直ぐ自分を試したかった。何年も待てない」。社内の歪んだ人口構成の煽りで、昇進や重い職務の“順番待ち”を迫られる日本の若者たち。そんな閉塞感を打ち破ろうとする動きもある。

3年前、『パナソニック』社内に発足した若手有志に依る交流組織“ワンパナソニック”。代表の浜松誠(33)は、若手停滞への強い危機感があった。新人の配属先には数倍のミドル。新しいことを提案しようにも中々通らず、やる気があっても3年すれば挫けてしまう。「近い将来、会社を支えるのは僕ら。若手や幹部との交流で士気を高めないと」。今では、交流会に社長の津賀一宏(58)も年に1度は参加する。活動は社外にも広がる。『日立製作所』『NTT東日本』『リコー』…。浜松らと似た交流組織がある十数社で“ワンジャパン連合”を立ち上げ、若手主導で日本を活性化させる夢の実現を探る。意欲ある若手を如何に育てるか。危機感を募らせた企業も策を巡らす。『ダイキン工業』は20代の優秀な社員を年10人前後選び、会長と社長直轄で育成する仕組みを始めた。会長の井上礼之(80)は、「一律の人材育成は限界。20代から育て方を変えないと」と話す。40代後半のミドルが一線を退く15年後には、今の20~30代が日本を支える。早稲田大学教授の白木三秀(64)は、「若いうちに修羅場を経験しないと、世界で勝負できる人材は育たない」と警鐘を鳴らす。いつまでも若手扱いし成長の芽を摘んでいると、企業は飛躍の原動力を失う。 《敬称略》

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