【誰がテレビを殺すのか】(07) Hulu・Amazon・dTV…配信戦国時代の真の勝者は?

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2015年10月中旬、東京や大阪にある一般家庭を、シリコンバレーにある『NETFLIX』の幹部を含む外国人スタッフたちが訪問していた。「スマートフォンで見る場合はどこで見ますか? 字幕と吹き替え、どう使い分けているのですか?」。スタッフたちが事細かに質問しいたのは、NETFLIXのサービスがどのように利用されているのかという視聴実態だった。時価総額452億ドル(約5兆4000億円)と、世界最大の定額動画配信サービスのNETFLIXだが、その強みは大きく分けて2つある。1つは、前項にも詳述したクリエイター重視のコンテンツ力。もう1つは、徹底したデータ収集・分析力だ。前者が“文系力”、後者が“理系力”とも言える。NETFLIXは6900万人の会員の視聴データを、インターネットを通じて常に分析している。何を、いつ見たのか、最後まで見たか、どんなジャンルか、どこで停止したか、どんな機器で見ているのか、続編を続けて見たか――。「全部は言えませんが、皆さんが想像できるようなデータは全て収集・分析していますよ」と大崎貴之副社長は胸を張る。しかも、作品には膨大な数のタグが埋め込まれており、好きな役者・監督・場面・カテゴリーも単なるホラーやコメディ等という単純な分類だけでなく、ホラー要素のあるコメディなのか、ファミリー向けなのか等、細かく分析されている。これに依り、ユーザーがログインすると、個別の嗜好に合わせた作品が登場し、次々と作品がリコメンド(お薦め)される。この分析を研ぎ澄ませた結果、アメリカでは膨大な作品数があるにも拘らず、75%がお薦め作品から選ばれるほどなのだ。「視聴者が態々検索しなくていいように、先に見たい作品を提示できるシステムを作り上げています」とトッド・イェリン副社長は話す。冒頭の家庭訪問は、インターネット上で採取できないデータにまで踏み込んでいるということだ。「日本人は、字幕と吹き替えで完全に分かれている。字幕で見る人も、家事をしている時は吹き替えに変えたり、使い分けていることがわかった。各国よりも、深夜のモバイルでの視聴が多いのも特徴。要は、貴方たちは働き過ぎなんですよ(笑)」(イェリン氏)。こうしたリサーチを基に、今後は日本仕様の機能等を随時追加していく予定だという。アメリカでの成功事例をそのまま押し付けるのではなく、日本市場に合わせて適合させていく戦略だ。とは言え、「視聴者を引き付ける“鍵”は、やはりコンテンツ」(大崎氏)なのは間違いない。その1つの武器がオリジナル作品だ。NETFLIXは、ここでもデータをフル活用している。

2013年に約1億ドル(約120億円)もの制作費を投じ、人気を博したドラマ『ハウス・オブ・カード』。実は、企画に当たってNETFLIXは視聴者データを詳細に分析し、ケヴィン・スペイシー主演でデヴィッド・フィンチャー監督という組み合わせを“最適解”として導き出し、アメリカの賞を総なめにした。このように、データ分析とコンテンツ制作の好循環を生み出し、サービス強化を図るのがNETFLIXの最大の強みだ。日本でも、コンテンツ拡充と同時に、年末にかけて新たな作品が発表される見込みだ。9月のネットフリックス上陸に依り、動画配信市場は一気に乱戦模様だ。現状、日本での会員数とノウハウは、数年前から事業展開してきた国内サービスに一日の長がある。最古参のサービスが、『NTTドコモ』が『エイベックス』と運営する『dTV』だ。2009年に携帯電話向けに開始されたサービスは、月額500円の低価格が魅力で、会員数は約500万人に上る。「これまで、動画配信は世間に浸透していなかった。我々には今、圧倒的な会員数がいる。NETFLIXはライバルというより、市場の認知度が上がるという意味で歓迎している」と『エイベックスデジタル』の村本理恵子常務は話す。とは言え、NETFLIX上陸に備え、今年初めから布石は打っていた。人気漫画『進撃の巨人』の映画化と同時に、同じ制作陣に依る番外編を制作したり、リコメンド機能等のITシステムを大幅に強化したりしたのだ。エイベックスの強みを生かした音楽ライブ配信等も、他社には無い特徴だ。ドコモと共同運営のサービスだが、既に他の通信キャリアにも対応しており、会員獲得のペースは上がっているという。もう1つの国内サービスが『Hulu』だ。元々はアメリカ発のサービスだったのを、日本事業を日本テレビが買収した。日本テレビに依る買収時の2014年4月には61万人だった会員数は、2015年3月には100万人にまで伸びている。Huluの運営会社である『HJホールディングス』の船越雅史社長は、「うちの最大の強みはコンテンツ所有者であること。ITよりもコンテンツ好きな人間が運営する高級百貨店を目指す」と話す。日本テレビに依る買収前は海外ドラマ好きに人気だったが、現在は日本テレビの番組を中心としたコンテンツが強みになり始めた。テレビ放送との相乗効果が発揮される場面も出てきたという。「例えば、テレビで毎週放映中のドラマはHuluでの視聴数も多いが、最終回だけは地上波で見る人も多く、放送に戻ってくる等の効果もある」(船越氏)。これまで3社のサービスを見てきたが、「実は本命かもしれない」(テレビ局幹部)と業界内で囁かれているのが、『Amazon』に依る『Amazonプライムビデオ』だ。

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テーマ : ITニュース
ジャンル : ニュース

【本当の日韓大問題】(11) 人生すごろくで占う! 日本人と韓国人、どっちが幸せ?

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就職難や老後の貧困等、様々な社会問題が噴出している韓国。とは言え、日本人と韓国人の生活には共通項も多い。果たしてどちらが幸せなのか、韓国人目線の“人生すごろく”で比べてみた。先ずは日本でも問題視される少子化だが、実は韓国が“世界最速”。直近の出生率は、日本の1.42人を更に下回る1.205人だ。原因は女性の高学歴化と社会進出、価値観の多様化等々、日本と似ているようだ。また、金銭的要因も大きい。韓国は教育熱心なことで知られるが、「結婚して子供を生んでも教育費が捻出できない」と結婚・出産に踏み切れない若者が多いのだ。実際に数字で見てみると、韓国では家庭における支出のうち、教育費は11.4%を占め、日本のそれの2倍! しかも、塾や習い事等といった学校教育以外の負担が重い。小学生に高校生の勉強を教える“先取り学習塾”が繁盛している等、日本より遥かに過熱している。こうした教育熱のゴールが大学合格だ。「“S・K・Y(ソウル・高麗・延世大学の頭文字)に入れなければ人にあらず」という偏った一流校志向があり、朝から晩まで勉強潰けとなって受験戦争に邁進する。大学進学率は日本が6割弱なのに対して、韓国は7割に達している。受験戦争の次に待ち受けるのが兵役だ。一般的に、男子は学生の間に約2年間、入隊する。学業が中断され、恋人とも別れ、厳しい訓練を熟さなければならない。除隊後も定期的に訓練を受けるな等、約20年間の服務義務がある。ただ、一般人と金持ちで“優遇格差”がある。病気等を理由に兵役を免除された人の割合が、一般人が6%程度なのに対して、「財閥の子息は30%以上、サムスン一家に関しては70%に上った」と韓国メディアが報じたのだ。それ以降、兵役免除問題が国民の大きな関心事項になっている。一方で、「男は軍隊に行って一人前」という意識は根強い。しかも、「どの部隊で、どんなポジションだったか」は学歴と同じくらい重要だ。例えば、「陸軍の特殊部隊である海兵隊員はステータスだが、基地の食堂スタッフは一生馬鹿にされる」(韓国の会社員)という。

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テーマ : 日本と韓国
ジャンル : 政治・経済

【絶望の非正規】(11) 強まる外国人依存…技能実習制度の矛盾

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コストの安い労働力をどう確保するか。企業が食指を伸ばしているのが外国人だ。最近は、海外から来た技能実習生が日本の労働力の担い手となりつつある。技能実習制度は国際貢献の一環として、途上国の若者らに職場で働きながら、一定の技能を身に付けてもらおうというものだ。実習生の数は、リーマンショック後の2009年から東日本大震災があった2011年にかけて減少したが、景気回復と共に増加傾向を続けている(右図)。実習生の国籍は、中国・フィリピン・ベトナム・インドネシアの上位4ヵ国で全体の9割を超えている。2009年までは“研修生”と呼ばれていた。名称変更と共に法的な取り扱いは変わったが、日本社会の中における実態が変わったところは無い。飽く迄も一人前の労働者になる為の“訓練を受けに来た者”であり、労働者ではないと位置付けられているのだ。現在は改善されたが、制度が始まった当初は労働基準法が部分的にしか適用されていなかった。日本人が敬遠しがちな繊維縫製や、水産加工・農業・建設等、低賃金で労働環境のよくない職場で用いられることが多く、ある意味悪名高い制度だった。しかし、近年は新しい傾向が見られるようになった。実習生が衰退産業での労働力の穴埋めだけとは言えなくなってきたからだ。過去10年間の受け入れ先を業種別で見ると、機械・金属が増加し、年に依っては縫製加工等の繊維・衣服を上回っている(同右図)。機械・金属の受け入れ先の多くは自動車関連の輸送用機器製造であり、日本の基幹産業も技能実習生に依存し始めているのである。

但し、技能実習制度は研修生時代から構造的な矛盾を抱えている。先ずは実習生のリクルーティング地だ。実習生の出身地は、何れも急速に経済発展し始めた途上国が中心となる。その為、地元に十分な雇用先ができて賃金の上昇が見られるようになると、それまで集められた労働力が集められなくなる。そうなると実習生の供給源は次々に移動していくが、石油等の資源と同じようにいつか枯渇する。更に、供給地の移動以上の矛盾を抱えている。これまで最大3年を滞在期間とし、原則として再研修を認めていなかった。来日できるのは1回だけなのだ。このようなルールの下で受け入れを進めていくと毎年、受け入れ人数が増えるに従って帰国人数も増加する。この実習生の大量帰国が両刃の剣となる。途上国からすれば、この制度は自国で学ぶ機会のない産業に触れるチャンスを与えられたことになる。1980~1990年代に、日本の造船業は韓国・中国に相次いで抜かれた。この背景には、日本で訓練を受けた大量の元研修生の貢献があることは容易に推察することができる。技能習得という国際貢献は、裏を返せば海外に強力なライバルを作ることにもなるのだ。尤も、近年は瀬戸内の地場産業である造船業等では、帰国した実習生を自社の海外展開の為の人的資源として活用する企業も出てきている。こうした事例が増えるのであれば、単純に技術流出面ばかりを非難することはできない。こうした側面がありながらも、アベノミクスの下で将来的な労働力の減少を見据え、実習生の拡大に舵を切り始めた。既に、建設業と造船業で実習期間を3年から5年に延長する為の法改正が行われ、施行されている。この動きは更に広がりそうで、法務省の第6次出入国管理政策懇談会では、新たに“自動車整備業”“林業”“惣菜製造業”“介護等のサービス業”“店舗運営管理等”で職種の拡充が言及された。最終的に職種の拡大がどこまで進むかは今後の景気動向次第の面もあり、それに依って受け入れ可能職種がどこまで広がるかに依る。

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テーマ : 派遣労働
ジャンル : 政治・経済

【インタビュー・明日を語る2016】(16) 選挙権に見る18歳の迷い、デモ参加は閉塞感の表れ――作家 羽田圭介氏

改正公職選挙法が6月に施行され、選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられる。70年ぶりの改正は、若者の選挙離れを食い止め、政治参加を進められるのか。低成長時代を生きる若者の価値観とは。17歳でデビューし、同世代の若者と過ごしてきた芥川賞作家の羽田圭介さんに考えてもらった。 (聞き手/文化部 佐藤憲一)

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今年夏から選挙権が18歳まで引き下げられる理由の1つは、少子化で若者の人口が減り、意見が反映され難くなっている中で、世代間の公平性を保つことだと聞く。正直、2歳引き下げられても中高年以上の人口が圧倒的に多く、社会が劇的に変わるとは思えない。しかし、小さな一歩でも若者に有利になる改変が行われたことには意味がある。若い世代に、政治が自分たちの暮らしや将来に関係があることを気付かせる司能性があるからだ。昨年夏、80代の祖父を介護しながら暮らす28歳の男を主人公にした『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞を受賞した。主人公は全ての選挙に真面目に行き、国民年金の保険料も払っていたが、老人に有利な社会保障システムに怒って、保険料の支払いを止めてしまう。選挙で政治が変わらないから保険料を払わないというのは独り善がりな行為だが、現実に若者向けのメディアでは、「好景気の時代を生きて多くの資産を持つ高齢者が優遇されているシステムを見直せ」という極論が聞かれる。今、還暦を過ぎた僕の両親が90代の母方の祖母を介護している。老々介護に近いその姿を見ていると、利害の対立する世代や相手と関わり合わないで、つまり身体性を介さないまま、強気の意見を言う風潮が蔓延っていることに疑問を感じた。そのことが、この小説の背景になっている。僕は高校3年生の時に文芸賞を受賞して、17歳で作家となった。当時も日本の歴史や戦争について考えたりはしたが、目の前のことに精一杯で、リアルタイムの政治への関心は持っていなかった。その経験からすると、今の若者も選挙権を得ても誰に投票すべきか迷ってしまうだろう。一部の若者がインターネットの“まとめサイト”等の極論に扇動され、投票することはあっても、「インターネットの世界は実社会と切り離されていて、現実の政治行動には影響しない」と考えていた。

だから昨年、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を通じて、学生団体『SEALDs』の安全保障関連法案反対のデモが広がったのは意外だった。彼らの行動に共感も反発もしないが、若者がデモのような直接的政治運動を行うようになったのは、日本の閉塞感の表れかとも思う。1985年に生まれた僕の世代は、物心ついた時にはバブルが終わっていた。最初から不況で、その前の日本と比較してどこが駄目なのか、何を望めばいいのかわからない。今の18歳なら尚更だ。母校の中学や高校で生徒たちと話したりして不思議なのは、皆、親と仲がいいこと。大学生でも、親に友だちのことを話すのが普通になっている。勉強に追われ、お金も無い今の若者は、夜は家に帰って親と仲良くするしかないのでは。「内向きだ」とか「車やテレビを買わない」とかの若者像が取り沙汰されるが、それも余裕が無くなっているから。もっと上の30代前半ぐらいまで仕事や生活に追われ、政治に関心を向けられないのが現実だろう。選挙権が拡大されて必要なのは、ジャーナリズムが政治家に対する監視の目を強めること。政治を勉強する余裕が無い若い世代は、本当に実行されるかわからないマニフェスト(公約)を選挙の直前に見て、投票するしかないのが実際だろう。政治家は本当のことを言っているのか。政治の裏側で国民の意思に反したことが進められていないか。権力や世間の批判を恐れない報道がなされないと、若い世代は政治に失望してしまう。今後の日本は人口が減り、経済的にも厳しくなるだろう。しかし、人の幸せは別のところにあるかもしれない。10年前に投票権を得てから、僕は大半の選挙に行っている。「投票しても何も変わらない」と文句を言えるのは、実際に投票を経験した人だけ。政治や社会の未来について、考えることを面倒臭がってはいけない。

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テーマ : 選挙
ジャンル : 政治・経済

【昭和史大論争】(02) 総力戦の罠に嵌まった永田鉄山

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満州事変以後の“昭和陸軍”を実質的にリードしたのは、陸軍中央の中堅幕僚グループ『一夕会』で、その理論的中心人物が永田鉄山だった。一夕会は昭和4(1929年)5月に結成され、メンバーは約40名。満州事変も、現地と陸軍中央での、一夕会の周到な計画と準備に依っていた(関東軍の石原莞爾作戦参謀や板垣征四郎高級参謀も一夕会の会員)。日米開戰時、陸軍を主導した東条英機首相兼陸軍大臣、武藤章軍務局長、田中新一作戦部長もまた、中堅幕僚時は一夕会のメンバーだった。永田は、長野県諏訪出身で、陸軍大学校卒業後間もなく、大戦を挟んで断続的に合計約6年間、軍事調査等の為にヨーロッパ(ドイツとその周辺諸国)に駐在した。その間、大戦の調査を主要な任務とする臨時軍事調査委員の一員にもなっている。その後、陸軍大学校教官・陸軍省動員課長等を経て、昭和5(1930年)8月、陸軍実務の中心となる陸軍省軍事課長のポストに就いた。満州事変の約1年前である。また他方で、ヨーロッパから帰国後、陸軍中央の幕僚を中心に『二葉会』『木曜会』『一夕会』等といった非公式なグループを組織し、それらの指導的存在となっていた(一夕会は二葉会と木曜会が合流したもの)。満州事変後も参謀本部情報部長・陸軍省軍務局長として陸軍中枢の要職にあったが、昭和10(1935年)8月、軍務局長在任中に執務室で殺害される。2.26事件は翌年、日中戦争突入はその翌年である。永田は、ヨーロッパ滞在中に直接経験した第1次世界大戦から大きなインパクトを受けた。第1次世界大戦(1914-1918)は、膨大な人員と物資を投入し、巨額の戦費を消尽した。また、戦死者900万人・負傷者2000万人に達する未曾有の規模の犠牲と破壊を齎した。永田も、そのような事実は十分認識していた。大戦では、戦車・航空機等といった機械化兵器の本格的な登場に依って、戦闘において人力より機械の果たす役割が決定的となった。そこから、兵員のみならず、兵器・機械生産工業とそれを支える人的物的資源を総動員し、国の総力を挙げて戦争を遂行する長期の国家総力戦となった。また今後、近代工業国間の戦争は不可避的に国家総力戦となり、また、その植民地・勢力圏の交錯・提携関係に依って、長期に亘る世界戦争となっていくことが予想された。では永田は、どのように対処すべきと考えていたのだろうか。彼の論考『国防に関する欧州戦の教訓』(『中等学校地理歴史科教員協議会議事及講演速記録』第4回・1920年)・『国家総動員』(大阪毎日新聞社・1928年)・『現代国防概論』(編集:遠藤二雄『公民教育概論』・義済会・1927年)等に依って、その構想を見ていこう。

永田も「今後、先進工業国間(日本も含む)の戦争は国家総力戦となる」と見ており、「それに対処するには、“国家総動員”の計画と準備が必須だ」と考えていた。永田は、大戦に依って戦争の性質が大きく変化したことを認識していた。即ち、「戦車・飛行機等の機械化兵器の大量使用に依る機械戦への移行。戦争規模の飛躍的拡大。それらを支える膨大な軍需物資の必要。これらに依って、戦争が、“国家社会の各方面”に亘って、戦争遂行の為の動員、即ち“国家総動員”を行う“国力戦”(国家総力戦)となった」と見ていた(『国家総動員』)。従って、「戦争は長期の持久戦となり、日露戦争のように短期決戦の後に講和し、戦争を終結させることは殆ど不可能となった」と判断していた。そして、「今後、先進国間の戦争は、国際的な同盟提携や政治経済関係の複雑化に依って世界大戦を誘発する」と想定していた。そこから永田は、将来への用意として、次のように、国家総力戦遂行の為の準備の必要性を主張する。これまでのように、常備軍と戦時の兵力動員計画とその運用のみでは、“現代国防”の目的は達せられない。更に進んで、“戦争力化”し得る“人的物的有形無形一切の要素”を統合し、組織的に運用しなければならない。そして、大戦における欧米の総動員経験の検討からして、「平時より国家総動員の為の準備と計画が必要だ」と言う(『現代国防概論』)。永田に依れば、国家総動員とは、あらゆる人的物的資源を組織的に動員・運用し、“最大の国家戦争力”を発現させようとするものだった。その為に平時からその準備を行い、戦時の為に必要な計画を策定しておかなければならないとされる。また永田は、大戦以降の戦争は、これまでとは異なり、長期の持久戦となる可能性が高い為、国力、殊に経済力が勝敗の決定を大きく左右する旨を指摘している。しかも、交通機関の発達や国際関係の複雑化に依り、従来のように近隣諸国の事情や仮想敵国の観念に捉われるべきではない。「世界の何れの強国をも敵とする場合ある」ことを予想し、それに備えなければならない(『国防に関する欧州戦の教訓』)――。こう、永田は主張している。即ち、それまで陸軍は主にロシア(ソビエト連邦)を仮想敵国としてきた。だが今後は、そのような観点は捨てなければならないとするのである。

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テーマ : 歴史
ジャンル : 政治・経済

【“疑似科学”と科学の間】(02) 教師も騙される! 学校教育に入り込んだ“トンデモ科学”――左巻健男×川端裕人

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川端「左巻先生が、初めに学校で“疑似科学”が教えられていることに気付いたのは、いつだったんですか?」
左巻「高校で化学を教えていた頃、水に関する本を執筆したんです。その本が書店でどんな風に陳列されているのか見に行ってみたら、僕の本の隣に“水からの伝言”(波動教育社)という写真集が並んでいて、そちらのほうがよく売れている。それで、興味を持って読んでみると、『水の入った容器に“ありがとう”という言葉と“ばかやろう”という言葉を書いた紙を貼り付けておいてから、それらの水を凍らせると、“ありがとう”を見せた水は美しい六角形の結晶に成長し、“ばかやろう”を見せた水は崩れた汚い結晶になるか、結晶にならなかった』という説明と共に、様々な結晶の写真が載っている。これは、『水が人の言葉を理解するからだ』と言うんですよ。水には感覚器官がありませんから。『こんな出鱈目は誰も信じないだろう』と思っていたのですが、次第に“水からの伝言”を使った授業を行っている教師が増えていることに気付き、愕然としました」
川端「理科や化学の授業ですか?」
左巻「いえ、主に小学校の道徳の時間です。『水は言葉を理解する。人の体の6~7割は水だ。だから、良い言葉や悪い言葉をかけると人の体は影響を受ける』という考え方が授業に使えると思った人たちがいたんです。写真集の結晶の写真を見せながら、『だから、“悪い言葉”を使うのは止めましょう』という授業が広まりました」
川端「『道徳的に良いことを教えるのだから、細かいことに目くじらを立てなくてもいいじゃないか』と言う人がいますが、どう思いますか?」
左巻「それはおかしいと思いますし、実際、本当に信じている人が多かったんです。教師というある程度知的な階層の人々が、こんな荒唐無稽を信じるとは思ってもみませんでした」
川端「僕の息子が通っていた小学校でも、学校通信みたいなものの中で、校長先生が“水からの伝言”に触れていました」

左巻「“水からの伝言”が全国に広がったのは、“教育技術の法則化運動”という団体が果たした役割が大きいです。これは、『全国の教師の授業法を共有しよう』という趣旨の団体なのですが、今は、“TOSS(教育技術法則化運動)”と名前を変え、約1万人の教師が参加しています」
川端「活動趣旨自体は立派なものだと思うんですが、紹介している授業法の中に非科学的なものが一部あったんですね」
左巻「“水からの伝言”や“EM”(Effective Microorganismsの略称。有用微生物群。乳酸菌・酵母・光合成細菌を主体とする微生物の共生体とされ、放射線を除去し、健康を増進し、農業・畜産・水産・環境浄化等といった様々な分野で効果があると主張されている)を紹介していたので、このような“疑似科学”を全国の教師が授業で用いるようになった訳です」
川端「そうした授業を子供たちが真に受けたらと考えると怖いですね」
左巻「背後にあるのは、『子供たちの言葉遣いを綺麗にしよう』といった教師の善意です。しかし、その方法がおかしい。“水からの伝言”のような出鱈目に頼ってはいけません。『雪は天から送られた手紙である』という言葉で有名な中谷宇吉郎博士(1900-1962)の研究に依って、温度と水蒸気の量でどのような雪の結晶ができるかが明らかにされています。“水からの伝言”は、撮影者が“ありがとうの水”“ばかやろうの水”を知った上で、恣意的に写真を撮っているだけで、水が言葉を理解している訳ではありません。昨年、亡くなった“水からの伝言”の著者の江本勝氏は、物質の波動を測定できるという“MRA(共鳴磁場分析器)”を使う“波動カウンセリング”なるもので、その人の病気を調べることができ、更にMRAで健康に良い波動を水にプリント(転写)した“波動水”を作って病気を治すことができるという、医療紛いのことを行っていました。“ありがとう”という良い言葉(=波動)を水が理解して、綺麗な結晶を作るという“水からの伝言”は、江本氏の怪しいビジネスの宣伝本だったという訳です」
川端「“水からの伝言”の主張が、教育現場と親和性が高かったのも大きいんでしょうね」
左巻「そうです。教師って、基本的に真面目で善い人が多いですからね。シンプルな話にやられ易いのです」

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テーマ : 実験 科学 サイエンス
ジャンル : 学校・教育

【言論の不自由】(02) そんなにいつも繋がっててどうするの

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2013年に起きた『広島LINE殺人事件』、あれは恐ろしかったですね。未だ16歳の女の子が元同級生を集団でリンチして、殺してしまった。何で殺意を抱いたのかというと、「LINEで送られてきた内容がムカついた」とか「グルチャの中で言い合いになった」とかで、俺からしてみれば見当もつかない理由。“グルチャ”って? 抑々、1対1じゃなく、不特定多数を相手に会話をしているっていうのがわからない。未知の世界ですよ。文字を送り合って喧嘩したって、それだけで人を殺したくなるほど憎むものなのかな。感覚が麻痺しちゃったんだろうか。命を軽く見過ぎているんじゃないかと思いました。聞くところに依ると、最近の人たちは家族で食卓を囲んでいる時もスマホを離さないらしい。目の前にいる人と話すほうが絶対に大切なことだし楽しい筈なのに、LINEが送られてきたら、自分が読んだのかどうか相手にばれちゃうからと、急いで返事をするんですって。“既読スルー”というやつが大変罪なことのようだけど、緊急の用事でもないでしょう? 返事しないだけで苛々されたら大変だ。そんな荒ただしい食事、俺は嫌だけどなあ。大体、女房の前でそんなことしたら怒られるどころか、飯抜きですよ。

俺はSNSどころか、パソコンを弄るのが大の苦手。覚えられないんだよね。漫画を描く時に、トーンの指定が一瞬でできるソフトがあるというので、いつかは使ってみたいと思っているけど、本気でパソコン教室に通わない限り、先ず無理だな。携帯も未だにガラケーです。電話帳には50人くらい番号が入っているけど、殆ど仕事相手で、プライベートでは一切連絡をしない。「相手も忙しいだろうな、俺に誘われても困るだろうな」と思うと、掛け辛いですね。メールだって、マネージャーさんから「どこどこに何時」と送られてくるのに「わかった」「OK」と打つくらい。絵文字なんて使いません。以前は女房に勧められて、観た映画の感想や仕事の予定を自分のホームページに書いていたけど、それも止めちゃった。別に皆、それほど俺に興味ないんじゃないかなって。漫画の感想も貰ったりして、その時は嬉しいけど、読み返す内に新鮮味が無くなる。俺の漫画を読んでくれる人って、感想も「面白かったです」とか簡潔なものばっかりだったしね。ツイッターだと、返事を書かないだけで悪く言われるんでしょ? 自分を忙しくするだけでお金にならないなんて、面倒だよね。それだけ一生懸命に友だちと連絡を取り合って、何がしたいんだろう。俺の場合、休みの日に「競艇行かないか?」と誘うことがあるかないか。電話をすれば、相手が本当に「一緒に行きたい!」と思っているのか、「仕方ないから行くか…」と思っているのか、声のニュアンスで直ぐわかる。メールじゃ、こうはいかないでしょう。「断られてもいいや」という覚悟が無いと誘えないです。反対に自分が誘われると、どうにも断り切れなくて、何も予定が無ければ、行くつもりがなくても足を運んじゃう。のこのこ出かけていくのに、女房から怒られたりしてね。本当は、「行きたい」と思ったら1人で行って、友だちとは現場で偶然会うのが一番いい。そしたら、片方が勝っても負けても気まずい思いをしないでしょう。だって、俺が競艇を好きなのは、走者が6人しかいなくて、競馬や競輪よりも当て易いからだしね。お金を増やすことに没頭できるというものです。

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【中外時評】 北方領土交渉への視座――厳しさ増すロシアの対応

安倍晋三首相が早期のロシア訪問に意欲を示している。日本は今年、5月に伊勢志摩で開く『主要7ヵ国(G7)首脳会議(サミット)』の議長国を務める。その立場も利用してロシアとの対話を深め、懸案の北方領土交渉の進展を促す心積もりなのだろう。首相の非公式な訪露案は元々、プーチン大統領が打診した。本来の順番である大統領の訪日計画が中々実現しない中、ロシア側が次善の策を示した訳だ。その意味で、大統領も日露対話に前向きと見ることはできる。実際、ロシアの外交政策で日本の位置付けが上がる兆しは窺える。1つは、ウクライナ危機に伴う国際的な孤立との関連だ。原油安と欧米の経済制裁の影響でロシア経済は昨年、マイナス成長に陥った。モスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授は、「欧米との対立は最早限界で、『西側の反露戦線を崩すには、包囲網が最も弱い日本を相手にすべきだ』との意見が政権内に浮上している」という。

もう1つが、中国依存への警戒感だ。アジア外交でバランスを取るには、日本との関係にも配慮する必要がある。背景には、対中接近に依る経済的利益が然程見込めない失望感もあるようだ。ロシアの大手銀行幹部は、「欧米の制裁で中国からの資金調達に期待したが、融資条件が想定以上に厳しい」と嘆く。東シベリアの天然ガスを中国に供給する大型契約も、当初は中国からの前払い金をパイプライン建設費用に充てる計画だったが、ロシアは自己資金で進めている。『エネルギー研究所』のタチヤーナ・ミトロワ部長は、「中国は前払いでなく高利の融資を提示し、ロシアが拒否せざるを得ない条件を強いた」と見る。更に、国際舞台で存在感を誇示するプーチン大統領の外交姿勢も、今年のG7議長国の日本には追い風だ。『世界経済国際関係研究所』日本経済政治部のビタリー・シュビトコ部長は、「大統領は、大国との首脳間の接触や訪問を特に重視する。それ自体が国際政治面での彼の権威を認めることになるからだ」と言う。

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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

【日曜に想う】 日本の政治は悪くなったのか

30年余り、政治記者を続けてきた。締め括りのコラムとして、「日本の政治は悪くなったのか?」ということを考えてみたい。通常国会は甘利明氏(前経済再生大臣)の疑惑等で序盤から熱を帯びている。論戦の中心は、安倍晋三首相と民主党・岡田克也代表との対決だ。私にとって、この構図は自分の取材してきた政治の1つの到達点に見える。簡単に振り返ってみたい。1985年、中曽根康弘首相を追いかける“番記者”になった。当時は、政権を握り続ける自民党と万年野党・社会党という55年体制だった。竹下登政権では、消費税導入という難事業をやってのけた。業界の代表と官僚が自民党の族議員の下に集まり、“調整”という名目で密室の匙加減をする。それが政治の日常だった。ある日、頭をガツンと殴られたような衝撃に見舞われた。権勢を振るっていた金丸信元副総理が建設業界からヤミ献金を貰い、巨額の脱税をしていたことが発覚。事務所からは大量の金塊が見つかった。自民党一党支配の政治が、根深い腐敗を生んでいたのだ。毎日取材しているのに、その暗部を見抜けなかったことが情けなかった。

どうすればよいのか。「金権の温床は中選挙区制だから、小選挙区制を導入すれば政治は刷新される」という政治改革論議が高まった。私は疑問を感じていた半面、「自民党に対抗できる勢力が無いことが、緊張感の無い政治の原因だ」とも考えていた。1993年、岡田氏は政治改革を訴え、小沢一郎氏らと共に自民党を離れて新生党を結成。安倍氏は自民党衆議院議員として初当選したが、自民党は野党に転落した。この時点で、2人は交差して与野党に別れた。小選挙区制が導入され、衆院選は7回重ねられた。小泉純一郎政権で自民党は息を吹き返し、安倍氏が頭角を現した。2006年には首相に就くが、1年で退陣。挫折を味わった。岡田氏は民主党代表・幹事長等を務め、2009年には念願の政権交代を実現した。だが、その政権も3年余りで崩壊。安倍氏の復権を許すことになる。岡田氏は1年前に代表として再登板。2人は与野党のトップとして、がっぷり四つの国会論戦と国政選挙に臨む。集団的自衛権の行使容認に伴う安全保障法制は、2人の違いを鮮明にしている。憲法解釈を変更して海外での武力行使に風穴を開けようとする安倍氏。十分な説明の無いまま採決に持ち込んだ手法に、多くの国民が疑念を抱いたのは当然だ。一方、岡田氏は立憲主義を唱えて憲法の解釈変更に強く反対したが、成立を阻止することはできなかった。“戦後レジーム”の転換を掲げてきた安倍氏と、戦後民主主義を評価する岡田氏との対立軸も見えてきた。経済政策では、安倍氏が「成長に依って懸案が解決できる」と説くのに対し、岡田氏は「公正な分配や格差縮小が急務だ」と主張する。アメリカや中国との向き合い方にも隔たりがある。

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テーマ : 政治家
ジャンル : 政治・経済

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