【安倍内閣・曲がり角の政策】第1部・社会保障(中) 医療費抑制、痛み伴う…診療報酬改定、抵抗大きく

Shinzo Abe 22
「予防に重点化した医療制度へと改革を進める」――9月24日の自民党総裁再選を受けた記者会見。安倍首相は医療政策について一言、触れただけだった。看板の経済政策『アベノミクス』は、医療を成長戦略の目玉とした。“岩盤規制”緩和の象徴でもあり、安倍内閣は患者が保険適用外の最新治療を受けやすくする『患者申出療養制度』や、医療輸出の強化等を次々に進めた。だが、これらの政策には「どれも小粒で、毒にも薬にもならない」との冷ややかな見方もあった。次の課題に取り組むどころか、安倍内閣が直面するのは来年度予算編成での社会保障費の抑制策だ。政府は高齢化に伴う増加分について、概算要求での6700億円増から5000億円増に抑制する考えで、差額の1700億円程度をどう減らすかが焦点だ。最大のターゲットは、年末の診療報酬改定だ。財務省は、「マイナス改定は当然だ」と主張する。診療報酬を全体で1%引き下げると、国庫負担は1100億円減るとされる。一方の厚生労働省は、「2年前も実質マイナスだった。マイナスが続けば、多くの医療機関は立っていられない」と牽制する。医療費抑制への風圧は、医療界の身内同士の争いも引き起こしている。9月9日の厚労省の中央社会保険医療協議会では、日本医師会の委員が薬局に支払われる調剤医療費に矛先を向けた。「近年の調剤医療費の伸びは、他に比べて高い。改定に向けた重要な論点だ」。これに対し、日本薬剤師会の委員は、「(医師が出す)処方箋枚数が増えたことが影響している」と反論したが、これまで共同歩調を取ってきた医師会・薬剤師会の応酬に、傍聴席からは失笑も漏れた。

引き下げが検討されている調剤医療費は年約7.2兆円で、年約40兆円の医療費の約18%を占める。内訳は、薬そのものの費用である薬剤費が約5.4兆円、薬剤師の調剤に支払われる技術料が約1.8兆円。薬局への風当たりは厳しく、今年、大手薬局チェーンが薬剤服用歴(薬歴)を記せずに、診療報酬を不正請求していた事例が発覚した。また、服用歴を管理する“お薬手帳”を忘れた患者に、薬局が何度も手帳を発行して診療報酬の加算を受け、「家に沢山手帳がある」といったケースも問題視されている。医療費は毎年、増え続ける。2014年度の国民医療費(概算)は前年度比7000億円増え、初めて40兆円に達した。“団塊の世代”が全て75歳以上となる2025年度には、医療費は61兆円に膨らむ推計だ。高い伸びを示す医療を巡っては、数々の抑制策が検討されてきた。「外来患者の窓口負担に一定額を上乗せ」「後期高齢者の窓口負担引き上げ」――今年5月の自民党財政再建に関する特命委員会(委員長・稲田政調会長)では、こうした“痛みを伴う改革”も提示されたが、自民党議員の反対で先送りされた。「来夏の参院選、再来年の消費増税を控える今、社会保障で更なる負担増を求める訳にはいかない」。社会保障費の抑制について首相の口が重い理由を、ある政府関係者はこう解説する。薔薇色の未来だけでなく、痛みを伴う改革をどう語るか。首相の第2ステージには、厳しい課題も突きつけられている。


≡読売新聞 2015年10月4日付掲載≡


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テーマ : 安倍政権
ジャンル : 政治・経済

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