【安倍内閣・曲がり角の政策】第2部・経済財政 机上の“GDP600兆円”…新3本の矢、問われる具体策

Shinzo Abe 24
7日午後、入閣が決まった国会議員が続々と首相官邸に集まった。安倍首相はその1人、加藤勝信前官房副長官を執務室に呼び、内閣改造の目玉に掲げた“1億総活躍社会”の担当相への起用を告げた。「政権の看板政策だから、スピード感を持ってやってほしい」。“1億総活躍社会”のネーミングは、首相自ら決めたものだ。強い経済・子育て支援・社会保障の“新3本の矢”の実現に取り組み、来夏の参院選に臨むという戦略である。とりわけ問われるのは、昨年度は490兆円だった国内総生産(GDP)を2020年頃に600兆円に引き上げるという大目標だ。第2次内閣発足後、首相は経済再生の為の“3本の矢”を打ち出した。金融緩和と財政出動は奏功し、円高是正や株高等の成果を上げた。だが、民間活力を引き出す3本目の成長戦略は結果が出ていない。それを打ち消すように放たれた“新3本の矢”に、「成長戦略の失敗を認めたようなものだ」(市場関係者)との皮肉も漏れる。“GDP600兆円”のスローガンは、内閣府が7月に発表した経済成長試算を分かり易く言い換えたものだ。試算では、経済政策『アベノミクス』の効果で名目3%、実質2%の経済成長が続けば、2020年度にGDPは594兆円に達する。首相周辺は、「今後5年間、高い経済成長を続けて目標を達成するという決意の表れだ。明確な目標を掲げたほうが国民に伝わり易い」と狙いを解説する。ただ、首相自身が“野心的”と認めるように、達成への道筋は見えない。直近の成長率である2015年4~6月期の実質GDPは年率換算1.2%減で、3四半期ぶりにマイナス成長を記録した。目標達成の前提となる“名目3%、実質2%”の成長率は現実と隔たりがあり、経済界からは早くも「600兆円はあり得ない数値だ」(経済同友会の小林喜光代表幹事)と疑問の声が上がっている。

政権が意気込む公共インフラ輸出でも、インドネシアの高速鉄道計画の受注競争で中国に敗れた。当初は日本が先行したが、中国は財政負担や債務保証を求めない異例の手法で巻き返した。菅官房長官は9月29日、中国案採用を伝えるインドネシア大統領特使に「常識的にあり得ない」と声を荒らげた。周辺は、「首相が新3本の矢を発表した直後だっただけに、出鼻を挫かれたとの思いが強かったのだろう」と語った。相次ぐ財政出動で、国の借金は1057兆円(6月末現在)に上る。国民1人当たり800万円に達し、先進国では最悪の水準だ。それでも、安倍政権は経済成長を重視し、痛みを伴う財政再建への踏み込み不足が目立つ。6月に閣議決定した財政健全化計画では、歳出額の上限設定が見送られた。欧米の格付け会社『フィッチレーティングス』等は、「経済成長の効果が楽観的過ぎる。税収増に頼り切っている」と指摘する。経済成長の具体策が伴わなければ、“GDP600兆円”は画餅に帰す。同時に、財政再建との両立も求められる。2017年4月には消費税率10%への引き上げもあり、対策を講じるのに残された時間は少ない。


≡読売新聞 2015年10月9日付掲載≡


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テーマ : 安倍政権
ジャンル : 政治・経済

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