風雲急を告げる製紙業界“再編”の正念場――大株主『北越紀州』との対話を拒む『大王製紙』が抱える“2つの難題”

製紙大手の“再編構想”を巡り、業界に不穏な空気が漂っている。あの“カジノ事件”以降、急進的な“脱・創業家”を目指してきた大王製紙が、大株主でもある北越紀州と冷戦状態に突入。だが、そんな大王製紙に新たな難題が降りかかる――。

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製紙業界の再編を占う上で注目が集まっている、大王製紙(業界4位)と北越紀州製紙(業界5位)の対立が鮮明になっている。現在、大王製紙の大株主で約21.2%を保有する北越紀州。2011年に発覚した大王製紙の巨額不正融資問題の際、創業家と佐光正義社長ら経営陣の対立を仲裁する形で、創業家の株を北越側が引き受けたことから、現在の両社の関係が始まった。その後、「製紙業界の“第三極”形成を目指す北越と大王製紙が経営統合するのではないか?」とも見られていたが、ここにきて大王の佐光社長が大株主である北越の岸本哲夫社長との面会を拒む等、両社の対立はその度合いを深めている。「象徴的だったのは、今年6月に愛媛県で行われた大王の株主総会でした」と大手紙記者が語る。「この総会で、佐光社長の選任案賛成は71.2%に留まった。反対しているのは他ならぬ北越紀州と、大王製紙創業家の“中興の祖”で、個人大株主でもある井川高雄氏と思われますが、この状況では両社の経営統合はあり得ません」。北越は大王の2割超の株を保有する筆頭株主で、大王は北越の持分法適用会社に当たるが、北越側が佐光社長の選任に反対しており、本来、大王は大株主である北越側に対して理解を得る為の十分な説明をする義務と責任が生じる。「しかし、北越の岸本社長は4月に予定していた両社のトップ会談を直前にキャンセルされた為、トップ同士の建設的な対話を目的とした会談の再設定を大王の佐光社長に求めているにも拘らず、大王側は『北越は自社の利益だけを図る目的だ』として、頑なに大株主との会談を拒み続けています」(同)。何故、大王側は大株主を警戒しているのか? それを理解する為には、時計の針を10年ほど前に戻してみる必要があるかもしれない。

現在の北越紀州がまだ『北越製紙』の時代だった2006年、業界トップの『王子製紙』(現在の『王子ホールディングス』)から敵対的TOBを仕掛けられるという出来事があった。「この時に共闘を誓ったのが、北越の岸本社長と大王製紙創業家の井川高雄氏でした。後に、岸本社長が大王の巨額不正融資事件の際、大王株を引き受けて同社を助けたのも、この時の恩義に報いたからだと言われています」(前出の記者)。だが、現在の佐光社長ら大王の執行部は、不正融資事件を起こして有罪判決を受けた井川意高元会長だけでなく、事件とは全く無関係だった意高氏の父・井川高雄氏を大王製紙から排除しようと動いた。「その背後には、高雄・意高父子を排除することで、それ以外の井川家が大王の実質的な実権を掌握し、北越の影響力に対抗しようとする意図があったことは明らかです」(同)。今年4月、北越紀州と『三菱製紙』(業界6位)の販売子会社の経営統合に向けた検討の“中止”が発表されたが、この一件についても「大王の介入があった」(北越)、「当社は関知していない」(大王)と両社の言い分は食い違っている。だが、北越が20%超の株式を握る大株主である限り、大王側が北越を無視し続けることはできない。大王側には厳しい情勢だ。「現在、大王を悩ませている問題は2つあります」と語るのは司法記者だ。「大王製紙は現在、関係者が原告となっている5つの民事訴訟を抱えており、その全てにおいて旗色が悪い情勢になっていることが1つです。その中には、井川高雄氏が『不当に顧問職を解雇された』と佐光社長を訴えている裁判、嘗て同社で勤務していた幹部社員が『社内で不正経理が行われていることを内部告発したところ、不当に解雇された』と訴えている裁判等がある。特に、内部告発者の訴訟は、これまでの公判で大王側の不当解雇が認定される可能性が高まっており、ここにきて不利を認めた大王側が和解を打診しているとも言われている」。裁判の行方がどうなるかは不透明だが、仮に原告側が和解を受け入れずに判決が出て大王側が敗訴すると、大王はまた株主に新たな説明責任が生じることになる。




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また、中国で40万部を発行している経済誌『中国経済週刊』(7月27日号)が次のように報じたことも、国内で波紋を広げている。「大王製紙は賄賂行為を通して、江蘇の地で工場を建てる過程で中古設備を輸出しようとした。但し、大王製紙は正面から答えない。大王製紙等の事件は今尚収束せず、広がりつつある」。前出の司法記者が語る。「佐光社長が北越側からコンプライアンスやコーポレートガバナンスの改善に対する説明を求められれば、ずっと逃げ回る訳にもいかなくなるでしょう。抑々、佐光社長は社内での実権が無く、重要な決定を自分で下すことができないと見られている。裁判の原告は元々大王の内部にいた人物で、その辺りの事情を熟知している為、仮令大王が和解を持ちかけても、今更それに応じる可能性は低いでしょう」。そして、大王側が恐れるもう1つの“爆弾”がある。「ズバリ、現在服役中の井川意高元会長の出所です」と前出の司法記者。カジノで100億円以上を浪費して話題になった意高元会長は、2年前に告白本『熔ける』(双葉社)を上梓している。「懲役4年の実刑判決が確定した意高元会長ですが、模範囚として過ごしていることや、勾留期間の一部が刑期から差し引かれることを考えると、早ければ来年の前半にも出所できる見込みです。著書の“熔ける”ではそれほど踏み込んだ話は書かれていなかったものの、被告時代の意高元会長は、言いたくても言えなかったことが数多くあったのは想像に難くない。出所し、改めて事件の真相についてメディアの取材を受ければ、大王製紙にとってどのような爆弾発言が飛び出すかわかりません」。創業家排除に依って、再生を誓った筈の大王製紙。だが、その混迷は益々深まっていくように見えるのは、何とも皮肉である。


キャプチャ  2015年10月号掲載


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テーマ : 経済・社会
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