【中露接近で何が起きるか】(04) これは市場経済と民主主義への挑戦なのか――横手慎二×久保文明×川島真

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横手「最近の“中露接近”の背景に、多かれ少なかれアメリカの地位低下があることは言うまでもない。対シリアや“ISIS”(別名:イスラム国)問題で有効な手が打てなかったのに加え、昨年勃発したウクライナ紛争以降、当地ではロシアが影響力を保ったまま。中国の“アジアインフラ投資銀行(AIIB)”設立の件でも、虚を突かれた感が否めません。東西冷戦が終結した1990年代頃には、“アメリカ一極体制”で世界が整理されていました。『そのアメリカの標標する“市場経済と民主主義”こそ、世界の普遍的な原理なのだ』という公式が、確かに存在したと思います。しかし、それは最早遠い昔のお話で、その2つのキーワードは随分錆びついてしまった。経済発展で存在感を強めた中国は、経済に堂々と政府が介在しているし、冷戦の相手国だったロシアも、権威主義的な政治手法を取るに憚るところがありません」
久保「アメリカの中にも色んな勢力や考え方がありますが、“中露接近”に関して言えば、『両者が結託して“世界秩序”に抵抗してくるとしたら、それはそれなりに厄介な事態だ』という現状認識では一致しています。ウクライナやクリミアを巡るロシアの振る舞いは元より、中国の膨張政策にしても“力に依る現状変更”という点で、“戦後1945年以降の国際秩序に対する正面切っての挑戦”と取れる訳です。それは許し難いし、結束してそうした動きを強めるのは阻止しなければならない。『では、どうするか?』となった時に、『ロシアが完全に“あちら側”に行ってしまわないように、過度な経済制裁は避けよう』とか、或いは『中国をなるべく引きつけておいたほうがいいのではないか?』とかいう方向性が1つあります。他方、アメリカ国内には、『根源的な国益は異なるし、中露の結び付きはそんなに堅牢なものではない筈だ』という見方も根強いんですね。同盟関係にあった冷戦初期とは違って、ある種、便宜上の付き合いに過ぎない。だったら、ロシアや中国に対して手加減する必要はなく、飽く迄も『“世界秩序を守る”という原則に立って行動すべき』ということになります。但し、では共和党右派政権だったら、即時にISISやウクライナに地上軍を展開するかといったら、必ずしもそういう状況にはありません。アメリカ全体に厭戦感のようなものが広がっているのも事実。ただ、何れにしても、今の世界は可笑しなことになっている。そんな漠たる不満が、今はオバマに向けられているんですね」
横手「その“世界秩序の維持”がロシアからはどう見えるのかを補足しておくと、『アメリカは“世界の国々が民主化するのは当たり前だ”というスタンスで、自分たちの価値観を押し付けようとしている』ということなんですね。でも、例えばイラクでそれをやろうとして、見事に大失敗したではないか。無論、自分たちはそんなものを受け入れるつもりはない――それがロシアには、そして多分中国にも抜き難くあるのです。『重要なのは、民主主義より主権である。主権無くして秩序は維持できない』という訳です」




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川島「中国のスタンスに関して言うと、一時、あのリーマンショックの影響を読み違えました。『アメリカは凋落するだろう』と思って、強気に出たのです。しかし、そうはならなかった訳です。それがわかったので、『オバマとも距離を置きつつ、協力できる部分はしよう』という姿勢でやってきたんですね。我々から見ると、ロシアに急接近しているように見えるけれども、中国に はそういう意図も多分無いんだと思うのです。彼らにとって気になるのは寧ろ、“米露の緊張関係”なのではないでしょうか。ウクライナやクリミアの問題で、両国関係が一気に厳しいことになりつつある。それを踏まえて、中国としてはどんなスタンスで行くべきなのかを、彼らなりに模索しているんだと思いますよ。勿論、アメリカ一辺倒で行く訳にはいかないし、さりとて全面的にロシアと組むという構図も描き難い。なんだかんだ言って、中国とロシアとの間には軍事面を含めて、それなりの緊張関係が存在してますから。加えて空母を始め、武器を輸入しているウクライナとの関係も中国は慮らなければならない。結構、悩ましい立場なんですね、実は。何れにせよ、アメリカに対抗する中露の枢軸が出来上がるような予兆は、少なくとも北京からは伝わってきません」
横手「中国のスタンスはよくわかります。一方、ロシアはというと、今回はプーチンが“枢軸”とまではいかないまでも、『過去の経緯はそれとして、中国とある程度結びつきを強めるしかない』という選択をしたのだろうと思います。プーチンが、中国のロシアの極東方面への膨張を警戒しているのは明らか。川島さんが仰るように、中露間の安全保障面での戦略的な利害対立についても勿論、認識しています。にも拘らず中国に近寄ったのは、EUそれにNATOが隣国のウクライナを“呑み込もう”としたからに他なりません。ロシアから見れば、EUやNATOに加わるということは、先程述べた“市場経済と民主主義”という欧米流の価値観を受け入れることとイコールなんですね。『それと対抗する為には中国と結ぶしかない』という計算があったのだと思います」
川島「モスクワに身を置いてみると、“拡大”してくるのはヨーロッパのほうなんでしょうね。NATOがどんどん自分のほうに勢力を伸ばしてきて、バルト3国を持って行ったのに飽きたらず、遂にウクライナまで食指を伸ばしてきた…。そういうことなのでしょう。ヨーロッパの人たちが東アジアでの中国の膨張を殆ど理解していないのと同じように、我々にはヨーロッパのことになると、今一つピンとこない感じがします」

横手「『ウクライナの“西欧化”はウクライナ自身の選択ではなく、裏にはアメリカがいる』というのがロシア人の認識です。『ロシアを押し潰そうとするファシストの仕業だ』等と、我々からするとギョッとするようなことも言う。その結果、例えばカーネギー財団モスクワセンターのドミトリー・トレーニン所長が、『ロシアはヨーロッパの一員であることを諦めて、アジアに軸足を移した』と最近の論文で指摘するような状況になっている訳ですね。個人的には、そこまで方向転換したとは思わないのだけど、彼らがある種の“中国カード”を切ったことは確かです」
久保「今のお話を聞いていても、米露間のパーセプションギャップの大きさを感じます。アメリカからすると、『自分たちがウクライナを嗾けて云々等ということは、一切無いんだ』と。『EUやNATOの問題が俎上に上ったのは、飽く迄もウクライナの人たちの自主的な判断で、我々はそうした動きをサポートしたに過ぎない』と、ロシアの“アメリカ介入説”には強い違和感を覚えています。ワシントンにすれば寧ろ、『我々は、NATOの拡大については慎重に事を進めてきた。ロシアにも“一緒にやろう”と声をかけたではないか』という思いもあるんですね」
横手「これも日本人がよく理解していないことの1つなのですが、1990年代後半辺りからロシアでは反米意識が物凄く高揚しました。『経済政策にしろ安全保障にしろ、ある意味アメリカの言う通りにやってみたら、全部失敗してしまった。挙げ句、NATOを拡大し、“旧兄弟国”に次々に“民主主義革命”を仕掛けてきたではないか』と」
川島「中国にとっては、ロシアがそうやって“国際秩序”に対する疑義を強めれば強めるほど、居心地のいい状況になります。向いている方向は違うにしても、やはり民主主義よりも国家安全の論理が上位にくる国ですから。そんな風にロシアからメッセージを送られ、またAIIB構想をぶち上げたら、ロシアと敵対するヨーロッパのほうからも『是非参加したい』という反応が返ってきた。一見すると、願ってもないチャンス到来です。でも、逆に中国には、『ユーラシアで交錯する様々な対立的な思惑に巻き込まれたくない』という思いも強い筈なのです。さっきも言ったように、ロシアとウクライナのどちらかに与することはできない。兎に角、“どこかに一辺倒”と見られないようバランスを取るということに今、彼らは相当腐心しているのではないでしょうか。プーチンが自らに接近してきているのをわかった上で、『“習近平がロシアに接近”とはならないように、ヨーロッパともアメリカとも等距離でやっていく』というのが基本戦略なのではないかと感じます」

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久保「“ロシアの民主化”について、実はアメリカには1990年代には大きな期待があったんですね。事実、オバマ政権初期ですら“対露リセット外交”を打ち出して、戦略核兵器の削減をそれなりに進めることができた。ところが、期待は幻滅に変わり、今回のウクライナやクリミアの事態で完全に吹き飛んでしまいました。因みに、中国に対しても『経済的に力をつけるに連れて、国際規範を受け入れる国になるだろう』という期待はあった訳ですが、こちらも依然として行動様式は大人気ない。アメリカにとっては、極めて遺憾な結果と言わざるを得ません」
横手「そこも先程、久保さんが言われたパーセプションギャップなんですね。ロシアの中には、『ドイツの東西統合に際して、時のべーカー国務長官(アメリカ)が“NATOの東方不拡大”を約束したではないか』という議論がずっとあるんです。まあ、その気持ちは10のうち3ぐらいは認めてあげてもいいんじゃないか(笑)。但し、だからといってウクライナに干渉したり、既にロシア領ではないことが明確であったクリミアを奪いに行ったりというのは話が別で、ロシアとしても相当な覚悟を決めた行動だったことは言うまでもありません」
久保「クリミアの“奪還”がロシア国民の悲願だったのも事実。それをやったプーチンは、また人気を高めました。ただ一方で、ロシアの今後を考えると、経済制裁は厳しさを増すかもしれないし、頼みのエネルギー輸出も、中東と“シェール革命”成ったアメリカの“仁義無き増産合戦”もあって、正直厳しい状況です。一時的に熱狂的な支持を集めたとしても、中長期的に見て国民全体にとって賢明な選択だったのか、大いに疑問は残りますね」

横手「中長期的なことを考えれば、仰るように、経済は明らかに悪化するでしょう。抑々、プーチンが2012年に大統領として再登板した時には、『自分なら経済を立て直すことができる』と公言していた訳ですが、そうはならずに、支持率は20%近く低下。ところが、クリミアを取ったことで80%くらいまで跳ね上がりました。ウクライナもクリミアも、膨張するヨーロッパへの対抗手段であると同時に、自身の人気復活策の側面もあったという点は押さえておく必要があるでしょう。3月半ばの“核の桐喝”発言も物議を醸しました。『昨年のクリミア併合時に、核兵器を臨戦態勢に置く用意もあった』という発言の真意は、“本人のみぞ知る”です。状況に依っては本当に核を持ち出して、欧米諸国を牽制するつもりだったのかもしれません」
久保「アメリカは冷戦終結後、ロシアと協力して核弾頭の削減に取り組んできました。オバマ政権は、更にそれに積極的に取り組んだ訳ですね。自らも削減に取り組む前提には、『もう、お互いに核を持ち出すことはないだろう』という信頼がありました。にも拘らず、今になって“核兵器使用”という言葉がロシアの最高指導者の口から出た。『戦略核兵器削減の流れが、ここで止まる可能性すらある』と衝撃を持って受け取られたのは、当然のことでしょう」
横手「敢えてそんなことを言ったのは、『そうすることで、国民に自らの“不退転の決意”を示す』という意図があったのかもしれません。プーチンは、指導者と国民の間にあった代議制のシステムを破壊しました。だから、直接国民に語りかけることで、統合を図っていくしかないんですね。では、何を基軸にして訴えるのか? ソ連が崩壊して、共産主義のイデオロギーが消滅した今、ナショナリズムがそれに取って代わりました。それが危険だとわかっていても、使わざるを得ない訳です。ナショナリズムに頼り、中国に接近する現状に対して、リベラル派を始めとして、警鐘を鳴らす人はロシア国内にもいます。しかし、今や国民自身がそうした意見を聞こうともしない状況が生まれているんですね。それもロシアの現状です」

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川島「日本では、中国が設立を目指すAIIBが実に派手に報じられています。結論から言えば、私は『ちょっと買い被り過ぎではないか?』という気がしているんですよ。中国は一昨年、ユーラシア各地で展開している地域協力・経済協力の枠組みを繋ぎ合わせて、中央アジアやヨーロッパを結ぶ“シルクロード経済べルト構想”、或いは“海のシルクロード構想”をぶち上げました。そうしたある種の地政学的な戦略と、国内での外貨のダブつきという問題、更に国内経済の成長が限界にきている現実――そうした幾つかの要因から導き出された1つの結論で、このタイミングで年間数十兆円とも言われるアジアのインフラ市場に打って出るということ自体、中国の事情からすればわかり易い。但し、このような国際的な銀行について、中国側は“わかっていない”ことばかり…というのが私の率直な感想です。例えば、中国の出資比率が50%云々等と言っていますが、これがどれほど異例なことか理解していたでしょうか? 例えば、“アジア開発銀行(ADB)”に対する日本の出資比率は15%強です。恐らく、中国から見れば、国内の外資系企業の出資比率が50%とか49%とかいう話から類推して、そう言っているのではないでしょうか? 世界50ヵ国以上が参加表明したことで、中国の影響力を見せつけたというのもどうでしょう? 銀行なのだから、どれだけ貸して儲けるかが勝負。参加国の多くは、『取り敢えずべットしておくか』というところだと思いますよ。寧ろ、財政部の人に会うと、『こんなに世界から注目されて、果たして上手く回せるのか?』と非常に緊張しているんですね。評価できるのは、まだまだ先のことでしょう」
横手「今の分析は、大変興味深いですね。ロシア人の多くも、『あれは中国がアメリカの強みに食いつき始めた出来事だ』と捉えていますから」
川島「そういうことになる可能性もあるし、『始めたら思いの外、反発が強いから止めよう』という選択をするかもしれない。その辺りも含めて未知数だということです」
久保「日本だけでなくアメリカでも、『AIIB設立の動きに対しては、もう少し上手く対応できなかったのか?』という議論が当然あります。敢えてアメリカの“責任”について触れておけば、中国はこれまでIMF等の国際機関における増資を求めてきました。『もう少し、発言権を高めさせてほしい』と。しかし、アメリカ議会は徹底してそれを拒否してきたんですね。そうした経緯も含め、先程川島さんが仰ったように、これだけ経済力を高めた中国が自ら主導してああいう機関を作ろうとするのは、むべなるかなという気もします。私は今、『日米が最も考えるべきことは、TPP交渉を上手く纏め上げることではないか?』と思うんですよ。言ってみれば単なる投資銀行で、その影響力も未知数のAIIBに比べ、新たな通商の枠組みを構築しようというTPPのほうが遥かにインパクトが大きいのです。日米という、AIIB構想で世界から孤立した指導者が中心になって(笑)、TPPの合意に全力を尽くすべきだと思います」

川島「『一辺倒になりたくない』という中国の事情をお話ししましたが、そうしながら彼らはクリミア情勢を注視し、そこから注意深く学んでいたと思うんですね。軍の部隊を“現地住民に依る自警団”に偽装して侵攻するやり方とか…」
久保「そうしたことをすると、『国際社会はどう反応するか』とか(笑)」
川島「クリミアは大きな半島ですが、中国も南シナ海の島で同じような“力に依る現状変更”をやっている訳で、今回のロシアの手法というのは、学習価値の高いケーススタディーだった筈です」
久保「そんな強かさも含めて中露を比べると、『中国のほうが手強い』というのがアメリカの見方ではないでしょうか? 確かに、クリミアを力ずくで併合し、“核の恫喝”さえ厭わないロシアは脅威です。事実、自分たちと肩を並べる核大国だし、何をやるか予測不可能な不気味さはある。他方、中国は核の数こそ少ないものの、用意周到な軍事政策を持ち、何といっても強大な経済力を身に付けるに至ったのが大きい。少なくとも、ソ連のように経済が原因で潰れることは考えられない訳ですよ。経済面では既にアメリカと相互依存関係を構築している訳で、そういう意味で中長期的には、よりアメリカの命運を左右しかねない影響力を持っている」
川島「但し、中国にしてもロシアにしても、“世界秩序”全体を変えようとしているのではないんですね。今の彼らは飽く迄も自分の“お膝元”の、ロシアで言えばウクライナ、中国は南シナ海・東シナ海へのアメリカの影響力を排除しようとしている訳です。だから、特に中国は、アメリカ一極の世界には対抗するけれども、アメリカに敵国扱いされることを決して望んではいません。そこは、正確に見ておく必要があると思うのです」

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横手「ロシアにとって難しいのは、その“お膝元”の数が多く、歴史的な繋がりも深いということです。チェスゲームのように攻守ところを変えるユーラシア大陸全体が、ロシアにとっては周辺国なのです。だから、そのユーラシア大陸にアメリカの影がちらつくと、『関与する理由は何か?』『正当性はあるのか?』という設問の立て方を常にする訳ですね。ロシアの言いたいのは詰まるところ、『アメリカは自らの価値観を他国に押し付けようとしているだけで、そんなのをウンウンと聞く必要はないし、最早言うことを聞かなければならないような国でもない』ということ。ロシアが依って立つのは、この“正当性”の論理です。彼ら自身、それをグローバルに貫き通すだけのリソースは既に無いのだけれども、この論理を振り翳されるのは、久保さんが仰るように、アメリカにとって心外且つ面倒臭い事態であることは間違いないでしょう(笑)」
久保「“価値観の広め方”という点では、実はアメリカ自身も揺れてきた歴史があります。例えば、1990年代のクリントン外交においては、“民主化”は極めてマイルドなやり方で推進されましたが、プッシュ政権時代は力の行使に転じました。それを反面教師としたオバマは、稍“羹に懲りて”の嫌いもあって、アメリカ国内で批判に曝されている訳です。アメリカは2016年に大統領選挙を控えていますが、誰がなったとしても、新しいリーダーは現政権よりも強硬なスタンスで外交政策を講じることになるでしょう。ただ、『外交問題は交渉を通じて解決する』という戦後の価値観・秩序に反する事態が公然と進行している現状を変えられるだけの具体的な政策が、果たして打ち出せるのか? 道が平坦でないことだけは、誰の目にも明らかです」

横手「中露に対抗するアメリカの話ばかりしてきましたが、当然、日本としても考えなければならないことは山積しています。今回のAIIBの一件で最も驚いたのは、報道べースに依れば、『日本の外務省や財務省の然るべき人たちまでもが、ヨーロッパ諸国の動向を計りかねていたらしい』ということです。長く“アメリカ一辺倒”に慣らされた日本は、視野がどんどん狭くなり、ヨーロッパのことさえわからなくなっている」
久保「日本の視線は粗アジアに限定されていて、益々その傾向が強まっている感があります。でも、考えてみると、今5つある国連の常任理事国の内の2つの国が、戦後の秩序を力ずくで壊す、乃至壊そうという行動に出ている訳です。『現在起こっているのは、そういうレベルの危機であるということを再認識する必要がある』と痛感します。そういう意味では、東シナ海や南シナ海で発生している事態と同じ目線で、ウクライナやクリミア問題にも目を向けなければいけない。これからの日本に特に求められるのは、その姿勢だと思います」
川島「日本の場合怖いのは、視野狭窄に陥った挙げ句、『中国のやることだから警戒せねば…』といった“決め打ち”に走ることです。世界が変動期に入っている今は、国際政治を考える上での変数も著しく増えています。抑々、東アジアや中国のことだけ念頭に置いて事を進めようとしても、正しい解が導けないのは明らか。にも拘らず、物凄く認識が単調で、ともすれば“白か黒か”になり易い現状は、やはり問題ではないでしょうか。変数を受け止めるのは、それなりにコストのかかる大変な作業ではありますが、どこかで頭を切り替えて、仰るような危機に対応する体制を整えなければなりません」
横手「AIIBにヨーロッパが参加するのかどうか、それを決めるのはヨーロッパ自身。この当たり前のことに、日本は気づかなかったんですね。『ヨーロッパやアメリカや、世界の“世論”に依って日本の運命も変わるということを本当の意味で認識し、世界にアンテナを広げ直すところから始める必要があるのでは?』と、私は感じています」 (構成は南山武志) =おわり


横手慎二(よこて・しんじ) 慶應義塾大学教授。1950年、東京都生まれ。東京大学教養学部卒。同大学院博士課程中退。外務省調査員としてモスクワの日本大使館に勤務。慶應義塾大学法学部助教授を経て現職。著書に『現代ロシア政治入門』(慶應義塾大学出版会)・『ロシアの政治と外交』(放送大学教育振興会)等。

久保文明(くぼ・ふみあき) 東京大学大学院教授。1956年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。慶應義塾大学教授等を経て現職。著書に『ニューディールとアメリカ民主政 農業政策をめぐる政治過程』『現代アメリカ政治と公共利益 環境保護をめぐる政治過程』(共に東京大学出版会)等。

川島真(かわしま・しん) 東京大学大学院教授。1968年、東京都生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。北海道大学助教授や東京大学大学院准教授を経て現職。著書に『中国近代外交の形成』(名古屋大学出版会)・『近代国家への模索 1894-1925』(岩波書店)等。


キャプチャ  2015年6月号掲載


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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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