【ドイツは模範国家か】(03) 大国のドイツが担うべきは“最強の調停役”――ドイツは影響力を存分に発揮して、より有能なヨーロッパを実現できる

Germany 03
長引くギリシャの債務危機とヨーロッパの難民問題で、『EU(ヨーロッパ連合)』内におけるドイツの役割を巡る議論が活発化している。ドイツはヨーロッパの覇権国になったのか? 今はそうでなくとも、EUの破綻を防ぐ為にその役割を引き受けるべきなのか? これまでの歴史を考えると、ドイツが覇権国になることは摩擦を生みそうだ。それよりもドイツは、フランクワルター・シュタインマイヤー外相が言い表したような“最高調停責任者”の役割を引き受けるべきだろう。その任務は、EUの体制強化に当たること。ヨーロッパが様々な難題に立ち向かう上で必要な、EU共通の外交・安全保障政策を策定する為の環境造りに尽力するのだ。ドイツはこれを全力で行うことで、世界におけるヨーロッパの影響力を増大させ、しかも覇権を巡る議論を抑えることができる。2007年に調印されたEUの基本条約『リスボン条約』は、次のような考えに基づく――EUの繁栄と安全保障は、加盟各国が自国の利益だけでなく共通の利益について考え、協調して行動することで実現される。その達成の為に同条約では、EU全体を代表する“大統領”や“外務大臣”等のポストを新設した。実際に彼らのおかげで、EUは幾つかの重要な成功を収めてきた(イラン・セルビア・コソボとの交渉等)。だが、その権限強化の為の一貫した取り組みがされていない。外交政策の危機等に対処する上で、彼らに重要な役割が与えられないことが多過ぎる。

ヨーロッパ全域で“EU懐疑主義”の高まりが見られるのは確かだ。それでも依然として、より強力なEU共通の外交政策を支持する声はある。ポーランドのラドスワフ・シコルスキー前外相はフィナンシャルタイムズ紙への最近の寄稿で、この問題について次のような考えを表明している。「外交政策の問題が浮上した時に、加盟国は、各国が独自に対処したほうがいいか、或いはEUレベルで対処するかを評価すべきだ。『全体で行動するほうが望ましい』と判断された場合、各国はEUを全面的に支援するのだ」。残念ながら、こうした取り組みはまだ定着していない。加盟各国が互いに噛み合わない政策を追求する傾向があり、それがEUの国際的な立場を弱めてしまっている。中国やロシアの指導者にとって、EU加盟国を反目させるほど楽しいことはないだろう。纏まりのある外交・安全保障政策の実現に向けて影響力を発揮すれば、ドイツは2つの大切な目標を同時に達成できる。より強くて能力の高いEUと、ヨーロッパにより深く根差したドイツの実現だ。手始めとしては以前から求められているような、各国軍の更なる統合に向けて行動を起こすのがいいだろう。EU加盟国が単独で戦争を始める時代は、30年以上前の『フォークランド紛争』で終わっているのだから。アメリカの元国務長官であるヘンリー・キッシンジャーは嘗て、「ドイツはヨーロッパには大き過ぎ、世界には小さ過ぎる」と皮肉った。だが、今のドイツは、このジレンマから巧く抜け出した。積極的で建設的なEU構成国として世界でも十分な大きな役割を果たしつつ、近隣諸国にとっては大き過ぎない存在になっている。シュタインマイヤー外務大臣とジグマル・ガブリエル副首相兼経済エネルギー担当大臣はテレグラフ紙への寄稿で、「我々は力を合わせることでのみ、そしてヨーロッパレベルでのみ合理的な解決を見出すことができる」と主張した。これは難民危機への対応について書かれた言葉だが、現在のEUにおけるドイツの立場と読むこともできる。 (ミュンヘン安全保障会議議長 ウォルフガング・イッシンガー)


キャプチャ  2015年10月13日号掲載


スポンサーサイト

テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR