【激震VW】(03) 広がる火の手

「何故、先にアメリカで判明したのか?」「ヨーロッパ委員会は何をやっていたんだ?」。10月6日、ストラスブールで開かれたヨーロッパ議会本会議。『ヨーロッパ連合(EU)』の産業政策担当閣僚であるエルジュビエタ・ビエンコフスカ(51)は、突き上げを食らっていた。「調査権限は欧州委でなく各加盟国にある」。繰り返す“官僚答弁”は、「ヨーロッパ議会は『寝て待ってろ』と言うのか?」といった怒号に掻き消された。3週間前の9月18日、アメリカの48万2000台で火の手が上がった『フォルクスワーゲン(VW)』の排ガス不正は、瞬く間に燃え広がった。世界で1100万台、うちヨーロッパが850万台――。次々明らかになる数字は、問題の主舞台がヨーロッパであると示していた。それは、官民挙げてディーゼル車普及を仕掛けてきたヨーロッパの産業政策にも打撃となる。「脱ディーゼル車の準備を直ぐ始める」。10月4日、フランスのエコロジー・持続可能開発・エネルギー担当大臣であるセゴレーヌ・ロワイヤル(62)は、税制優遇の段階的廃止を表明。翌5日には、スイスがVWの一部車種の販売を禁じた。フランスは原子力、スイスは水力。温暖化ガスが出ない電源が主力の両国は、電気自動車の導入に熱心だ。VW問題は、一枚岩ではないヨーロッパ各国のエネルギー政策の温度差をも浮き彫りにした。

「温暖化ガス削減目標の達成に重要なディーゼル車の役割を、危険に曝してはならない」。10月12日、『ヨーロッパ自動車工業会』事務局長のエリック・ヨナー(58)は、排ガス検査強化を急ぐ欧州委に“現実的な対応”を求めた。が、ヨーロッパの環境意識は高いからこそ、ディーゼル車への不信は押し留めようがない。不信の連鎖は、ディーゼル車とは縁遠い域外市場にも及ぶ。「ドイツだって中国と同じじゃないか」。10月上旬、VW中国法人が北京で開いた対策会議。出席した担当者は、インターネット上に拡散する批判に凍り付いた。VWにとって昨年368万台を売った中国は、ヨーロッパと並んで世界販売の4割弱を占める金城湯池だ。しかも、不正対象のディーゼル車の累計販売は2000台に過ぎない。ところが、販売の最前線では「ガソリン車を8万元(約150万円)値引きしても売れない」(北京市内のVW販売店)。販売員は、「インターネット世論が不買運動に発展しかねない」と戦々恐々。2019年までに220億ユーロ(約3兆円)を投じて、中国での年産能力を5割増の500万台に引き上げるVWの計画は、見直しの瀬戸際にある。 《敬称略》


≡日本経済新聞 2015年10月21日付掲載≡


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