【激震VW】(04) ドイツブランド守れるか

「ドイツは魅力的な国だ。難民・インターンシップ・職業訓練、そして職を提供してほしい」。9月17日、『フランクフルト国際自動車ショー』の開会式。ドイツ首相のアンゲラ・メルケル(61)は、最前列に座ったドイツの自動車大手首脳に要請した。“技術大国”ドイツの象徴である自動車産業は、ヨーロッパで一人勝ちが続く。一方、難民問題は国論を二分する難題だ。メルケルは、「雇用吸収力のある自動車業界が好調を持続し、難民問題を解決する」というシナリオに自信を深めた…筈だった。だがその翌日、アメリカで『フォルクスワーゲン(VW)』の排ガス試験の不正が発覚する。VWの業績悪化は必至で、社長のマティアス・ミュラー(62)は従業員集会で、「再建には痛みを伴う」と踏み込んだ。VWは難民受け入れどころか、雇用不安さえ浮上した。目論みは狂った。メルケルは22日、VWに「完全な透明性を示すべきだ」と求めた。だが、発言にはVWを追い込まないよう配慮も滲む。ドイツは、国民の7人に1人が自動車関連産業に就く。信頼の証しである“メイド・イン・ジャーマニー”ブランドに傷がつけば、雇用に影響しかねない。メルケルは10月4日のラジオ番組で、「ドイツの評判や信頼が揺らいでいる訳ではない」と訴えた。

ドイツ北部のニーダーザクセン州ウォルフスブルクのVW本社に初めて検察の家宅捜索が入った10月8日。VW本社には副首相のジグマル・ガブリエル(56)がいた。「VWに真相究明を求めた」と記者団に語る一方、予防線を張った。「これは、ドイツの自動車産業やディーゼル技術の議論に一般化されるべきではない」。ガブリエルは2003年まで、ニーダーザクセン州の首相を務めた。同州は、VWの議決権の2割を握る。VWと政治は密接な関係にある。政治が、不正問題を腫れ物のように扱う一因だ。ウォルフスブルク市は税収の半分をVWに依存し、約12万人の人口の半分はVW関連の職場で働く。9月下旬、市長のクラウス・モールス(63)は「法人税の大幅減少が見込まれる」と、2016年予算の審議先送りを決めた。地元紙は不正発覚直後、「我々はVWを応援する」と1面で報じた。しかし、検察の家宅捜索があった8日には、「人員削減があり得る」とのアナリストの分析が見出しに躍った。地域に不安が広がる。基幹産業と雇用をどう守るか。メルケルの闘いは続く。 《敬称略》


≡日本経済新聞 2015年10月22日付掲載≡


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