【激震VW】(05) 追い風か、逆風か

2014年2月、『マツダ』のディーゼルエンジン開発チームはロサンゼルス郊外の山道にいた。試作車を持ち込み、ヨーロッパのライバル車との比較テストを実施する為だ。650kmを2日かけて試走した結果は、マツダの完敗。「とても歯が立たない」。ショックは隠せなかった。対象は、『フォルクスワーゲン(VW)』の主力車『パサート』と『BMW』の車両。中でも、燃費・加速共にパサートが抜きん出ていた。「『燃費計が間違っているんじゃないか?』と目を疑った」。マツダのエンジン開発トップで常務執行役員の人見光夫(61)は明かす。技術差を痛感し、北米でのディーゼル車発売計画を一旦中止した。だがその後、VWの排ガス不正が発覚する。「マツダは大丈夫か?」。環境技術“スカイアクティブ”を軸にディーゼル車へ注力するマツダに、消費者からの問い合わせが相次ぐ。人見は語る。「少し遅れることになるが、意地でもアメリカで新型車を発売する。それが、『我々が不正をしていない』という意思表明だ」

9月にVWとの資本提携を解消した『スズキ』。両社対立のきっかけの1つがディーゼルだった。裏には、スズキの“神回避”と呼ばれる出来事があった。スズキは2009年の提携当時、独自のディーゼルエンジンを持っていなかった。頼みの綱はVWだが、十分に技術情報を開示してくれず、クルマ作りが難航する。結局、『フィアットクライスラーオートモービルズ(FCA)』から技術供与を受けることにした。これで、VWとの溝は決定的に。スズキ幹部は、「VWから調達していたら、今頃大変だった」と胸を撫で下ろす。日本車メーカーにとって、VWの不正は対岸の火事ではない。「特にコメントはありません」。10月1日、『トヨタ自動車』専務役員の吉田守孝(58)は、新車発表そっちのけで取り囲む報道陣に繰り返した。「ハイブリッド車(HV)に力を入れるトヨタにとって、VWの躓きは追い風になる」との見方がある。だが、経営陣の表情は一様に硬い。トヨタも実は、新興国やヨーロッパを中心に年100万台規模のディーゼル車を販売し、6月には日本でも8年ぶりに乗用車を発売した。ある幹部は懸念する。「VW問題は、自動車業界全体への不信に繋がりかねない。各国が規制強化に動く事態の想定も必要だ」 《敬称略》 =おわり

               ◇

加藤貴行・森本学・阿部哲也・中西豊紀・中山修志が担当しました。


≡日本経済新聞 2015年10月23日付掲載≡


スポンサーサイト

テーマ : 自動車・バイク関連ニュース
ジャンル : 車・バイク

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR