【“貧困”無間地獄の現場】(02) ドヤ経営者が語る貧困街の現実――死ぬ前も死んでも山谷は孤独が当たり前

20151024 02
「ここら辺の物件の管理は、大手はやりたがらないんですよ。元々ゲストハウスを管理していたので、似たようなものだと思って引き受けました」。山谷でドヤを経営する松村さん(仮名・57歳)。10年前、元々取り引きのあるオーナーから、山谷のドヤ経営をできないか相談されたのが縁だという。九州出身で、関西の有名大学を卒業した松村さんにとって、東京のドヤ街・山谷は未知の世界だった。「それまでは足を踏み入れたこともなかったし、ドヤのような物件を見たのもその時が始めてでしたが、驚きましたね。普通に歩いているだけで、挨拶するように自然な感じでいきなり殴ってくるんです。ほんと。しかもシラフ。大手が敬遠するのも納得ですよ。殆どは普通の人だけど、危ないのが結構いるんです」。殴られる理由はよくわからない。「仲間をコケにした」等、身に覚えのない因縁をつけられることが日常茶飯事だという。「殴られて警察署に行ったこともあるけど、『民事ですよね?』なんて調子で真面に取り合ってくれないんです。だったらと思って、今もメリケンサックを自衛の為に持ち歩いていますよ」。松村さんは苦心して、ドヤ経営を継続。現在は、山谷で4つの物件を経営している。因みに、ドヤの間取りは1人につき6畳ほどの部屋が1つ。これに共用のトイレとキッチンが付き、現在7人が生活している。1ヵ月の家賃は、生活保護における住宅扶助基準額の5万3700円。これに光熱費4000円が加わるという。「山谷の物件を経営すると、生活保護費を充てにしたあくどい貧困ビジネスをやっているみたいに見られるんですよ。山谷のドヤは、狭い部屋を並べて廊下にしかエアコンがないところもあるし、熱中症で救急車で運ばれる人をよく見ます。うちの場合、冷暖房もあるしインターネットも引いています」。家賃は変わらないが、ドヤの設備は経営者に依って雲泥の差があるという。「食事付きを謳うドヤもありますが、朝にパン一切れとバター1個、昼にジャムパン1個、夜はおにぎり2つ。それで、食費6万円だとか取るんです。そんなのとは一緒にされたくないですね」

山谷という場所柄、孤独な死を目の当たりにしたことも多いという。「死体は何度も見ましたね。最後は去年の夏です。ある日、ぶわーっと建物全体が急に臭くなって。それで、臭いがキツい部屋を訪ねても応答が無い。仕方なく合鍵で開けたら、入居者の70代の男性が亡くなっていました。夏場だったので、腐敗の進みが早かったんでしょう。物凄い数の蝿が部屋の中で飛んでいました。部屋にあった連絡先からご親族に連絡しましたが、「手配はこちらでやるので、取り敢えず来て下さい」と言っても全員断るんです。ドヤで亡くなられた方の後始末で、誰かが来てくれたことは…ゼロですね。死ぬ前も死んでも、山谷は孤独が当たり前なんです」。山谷に流れ着く人々の殆どは、特殊な事情で身を隠すように生きる人々が殆どだ。彼らに住居を提供する松村さんは、その過去にはできるだけ触れないように心がけているという。「故郷を捨てちゃってる人が多いから、お客さんに出身や経歴は絶対に聞きません。大体、4分の1ぐらいの人は刺青が入ってますけど、トラブルを起こしそうな雰囲気を感じたら断ります。こればっかりは勘ですね」。孤独は山になく、街にある――まさに、山谷はそんな場所なのだ。 (取材・文/大島大蔵)


キャプチャ  2015年10月号掲載


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テーマ : 貧困問題
ジャンル : 政治・経済

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