【私の履歴書】JR東海・葛西敬之名誉会長(26) 品川駅新設、増発へ態勢…全工費1000億円、2年で回収

『新幹線鉄道保有機構(保有機構)』の解体・時速270km運転と並ぶ、新幹線強化の為のもう1つの離れ業が、『品川駅』の開設である。それは、国鉄時代からの懸案でもあった。東海道新幹線の列車本数は、東京駅のプラットホームと本線を結ぶ分岐路を列車が何分で通過できるかに制約される。当時、それは4分――即ち、1時間に片道15本が上限であった。田町駅付近から大井車両基地に分岐する回送列車の為に毎時4本を確保すると、営業列車は11本まで。既に『ひかり』6本・『こだま』4本が運行されており、増発余力はあと1本だった。品川駅を開設し、そこで4本を発着させれば、品川以西では毎時片道15本の営業列車を確保できると共に、積雪等の自然災害時の列車遅延も早期に収束する。また、品川で乗降可能になれば、多くの旅客にとって新幹線へのアクセス時間が20~30分は短縮される。輸送力増強と利便向上の切り札であった。しかし、実現の最大の困難は用地の取得であった。JR各社への用地分割を担当した国鉄経営計画室は、保有機構に奪取された東海道新幹線には寸土の余裕も持たせず、その上、JR東日本の“薄皮一枚”の用地で包囲するよう密かに処理していた。東海道新幹線の品川車両基地は国鉄清算事業団の債務返済用に差し出し、23haに及ぶ在来線品川ヤード用地は、簿価7億5000万円でJR東日本に引き継がれた。当社は開業早々に『東京参与会』を発足させ、経団連の平岩外四副会長・瀬島龍三行革審委員・日経連の亀井正夫副会長・国鉄の杉浦喬也元総裁・鉄道建設公団の岡田宏総裁らを含む10人の有識者に基本問題を説明し、理解と助言を頂いてきた。国鉄改革に深く関わったこれらの人々は、「品川駅設置には大賛成。是非、実現すべきだ」という意見だった。

「用地問題については、株式上場までのJRは“国有民営”であり、その資産は全て国家・国民の財産である。故に、品川ヤード用地の活用方法は、政府が国家・公共の為にどう使うべきかを大所高所に立って判断し、“民有民営化”される前に処理すべきだ」という見解であった。「JR東海は、品川駅構想を天下に周知した上で、全てを政府に委ねて静観すればよい」と助言された。まさに正論だった。東海道新幹線品川駅計画は、公表と同時に世論の強い期待と要望を喚起し、実現は必須の流れとなったが、JR東日本首脳の強硬な反対で用地の協議は難航した。しかし、日本経済の大動脈機能を維持・増強するという大義は動かし難く、結局は株式上場を前にして、国鉄清算事業団及びJR貨物用地と例の“薄皮一枚”の買収で、何とか品川駅の開設は決着した。2003年10月1日、品川駅完成と全列車270km運転化を踏まえた白紙ダイヤ改正が行われ、1時間に『のぞみ』7本・『ひかり』2本・『こだま』3本体制がスタートした。東京・品川両駅合わせての利用増は1日2万人、年間収入増は500億円に上る。品川駅の建設費は、用地も含めて1000億円弱、全工事費を2年で回収した勘定だった。荒涼たる空閑地であった品川駅港南口には、完工までの5年間に巨大なオフィス街が出現した。その延べ床面積は、東京ドームのグラウンド約100個分に当たるという。新幹線品川駅は、極めて大きな外部経済効果を齎したのである。


≡日本経済新聞 2015年10月27日付掲載≡


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