【国際化する歴史論争】(03) 韓国の“反日”が激化した訳――慰安婦や強制労働への拘りは歴史の忘却ゆえ、“反日自尊派”の暴走が韓国の成熟を脅かす

20151101 05
1910年から1945年までの日本統治期を、近年の韓国では“日帝強占期”と呼ぶ。「日本帝国主義が我が国を強制的に占領した時期」という意味だ。多くの韓国人は、この時期をナチスドイツのフランス占領の如き“軽さ”で語ると共に、今やその関心は益々“慰安婦”や“強制労働”に集中。「韓国人は、日本人の戦争に駆り出された一方的被害者」という議論が目に付く。しかし、この“日帝強占期”の呼称は韓国人の自己認識を歪めている。抑々、この時代の朝鮮は日本帝国に編入されていたのであって、占領状態にあったのではない。ナチスドイツに依るフランス占領が4年間であったとしたら、日本の朝鮮統治は35年間であり、その間に日本は自らの法や制度を朝鮮の地に移植し、日本語を国語として朝鮮人の日本人化を試みた。アメリカの人類学者であるクリフォード・ギアツに依れば、第2次世界大戦以後に独立した“新興国”に生きる人々には、2つの欲望を同時に駆り立てられる状況があった。1つは、「国際政治の舞台で影響力ある国になりたい」という欲望で、もう1つは、「有能で活力ある現代国家を建設したい」という欲望だ。前者が“自尊心”を動機とし、後者は実用的な欲望となる。両者の間に良い緊張関係が維持される時、国家は発展の推進力を得るが、2つの欲望は対立しがちだ。それは、国家の発展を妨げる最大の障害にもなる。

ギアツが念頭に置いていたのは、多民族・多言語のアジア・アフリカ諸国だ。よく知られているように、これらの国々では、国民の自己意識が血縁人種・地域・宗教といった原初的紐帯の感覚と結び付き易い。だが韓国は、“新興国”の中では例外的に民族的同質性や言語的同質性を特徴としていた。また、“2つの欲望”の間に良い緊張関係が維持されていた国でもあった。その韓国に原初的紐帯の感覚が活性化するようになったのは、1980年代後半の民主化以後のことではないか。この時期に、韓国は“反共ナショナリズム”の国から“民族ナショナリズム”の国にそのアイデンティティーを転換する。それは、“反共”と“反日”という2つの理念の均衡が崩されたことを意味し、“反日”の抑止力としての“反共”が後退した。この“反日”こそ、韓国人に原初的紐帯の感覚を喚起するものだ。1990年代半ば、金泳三政権時に繰り広げられた“鉄杭除去運動”が典型例だろう。「嘗て、日本帝国主義が韓国人の“民族精気”を断つ為に、韓国の山々に打ち込んだ鉄杭を除去する」という趣旨の運動だった。金泳三政権はそれを国家事業とし、この時期のメディアには“日帝の風水謀略”等という幻想的な言葉が登場した。韓国は反日を標務しつつ、活力ある現代国家建設の為に日本を上手く利用する努力を怠らなかった。2005年の盧武鉉大統領に依る対日歴史戦(対日外交戦争)の宣言は、その意味で“自尊の欲望”の時代の幕開けを告げるものであった。盧は、“竹島”や“慰安婦”をテーマに日本非難の外交戦を始め、それは今日でも続いている。2004年に公布された親日行為者の子孫の財産を没収する『日帝強占下反民族行為真相糾明に関する特別法』は、近代法における“法の不遡及の禁止”の原則を簡単に放棄してみせた。2011年の元従軍慰安婦の個人請求権放棄が違憲という憲法裁判所判決、更に2013年以後に相次ぐ“強制徴用工”に対する賠償金支払い判決は、韓国特有の“ハンプリ(恨解き)”を近代法に融合させ、またそれを国際条約に優先させるものであった。




普通の新興国では、その多民族・多言語の条件が人心の不一致を生み出し、それが“自尊の欲望”と“実用的欲望”間の乖離を生み出す要因になる。しかし、韓国の場合は、その民族的同質性故に人心の一致が生み出され易く、それが反日という原初的紐帯の感覚の暴走を支える。今日の韓国に見て取れるのは、学校で教えられた“日帝強占期”の“悪意”や“悪政”が博物館や記念館に展示され、テレビで“再現”されて、ある種のリアリティーを獲得するという状況だ。「嘗ては日本帝国の一員であった」という歴史が国内で忘却されるに連れて、被害者性はより本質的な感情になるようでもある。「日本人が彼らの戦争に我々韓国人を駆り出したのはけしからん」という感情だ。日本は、これにどう対処したらよいのだろうか? 何よりも、日本政府は従来の受動的で消極的な対応を改めるべきであろう。「朝鮮人の戦時動員とは当時の国民としての義務であり、韓国人がその被害者性を特権化して語る態度は可笑しいのだ」ということを繰り返し語らねばならない。慰安婦問題で語られるのがいつも韓国人女性ばかりであるのも気になる。慰安婦の多くは、日本の内地出身者だった。韓国人が戦時期の被害者性を語り続けるなら、日本人慰安婦やあの時代に戦場に行った日本人男性の被害者性も改めて語られてよい。今、我々が認識すべきは、「反日自尊派の暴走が韓国の成熟を脅かす」という現実と、「民族的同質性が強固な韓国にとって、日本からの批判や反論が実は貴重なものだ」ということである。 (首都大学東京特任教授 鄭大均)


キャプチャ  2015年10月27日号掲載


スポンサーサイト

テーマ : 歴史認識
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR