【オワハラ時代の大学と就活】(07) 受験生&父母必読! 主要19大学の“財務力”と“運用力”を徹底分析

進学を考えている大学がしっかりした教育サービスを提供し、就職に向けた手厚い指導ができるか――。これを見極める前提として、大学経営の安定度を確認しておこう。 (『アビームコンサルティング』シニアエキスパート 松本康宏)

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私立大学法人では、収入を“帰属収入”、支出を“消費支出”と呼び、その差額(収支尻)は企業会計における当期利益に該当する。企業会計と同様に、大学でも赤字決算が続くと、自己資本を食い潰し、破綻に追い込まれる。記念行事等の特殊要因で一時的な赤字は許容範囲だろうが、恒常的に赤字が続くような状況ならば注意が必要だ。ここでは、日本の主要19私立大学の収入・支出面における特徴を、国立大学(東京大学)とアメリカの私立大学(ハーバード大学)等と比較してみよう(開示時期の問題から、東京大学は2014年3月期、ハーバード大学は2014年6月期)。端的に言えば、東京大学は補助金等で費用の大半を賄っている。ハーバード大学は、寄付金と資産運用収入で費用の半分を賄っている。日本の私立大学から見ると、羨ましい状況だ。

ここで取り上げた19私立大学で、収入である帰属収入から支出の消費支出を差し引いた収支尻を見ると、東京理科大学(マイナス3億円)・明治大学(マイナス16億円)・専修大学(マイナス8億円)の3校を除き、プラスとなっている。収入面における特徴は、授業料・入学金等の学生生徒等納付金の割合が高いことである。19大学では、学生生徒等納付金が全収入の平均62%に達する。但し、慶應義塾大学・日本大学・近畿大学等の医学部を運営している私立大学では、併設の大学病院に依る医療収入があり、学生生徒等納付金への依存度は3~5割程度と低いことがわかる。国立大学(東京大学)の場合は、学生生徒等納付金の割合は全体の収入の1割にも満たない。収入の6割近くは、政府等の公的機関からの交付金や補助金等で補充されている。一方で、私立大学の収入に占める公的機関からの補助金等は1割程度に留まる。これは、アメリカの私立大学であるハーバード大の場合(約2割)と比較しても低い。日本の大学の収入面では、政府等の公的機関に依る支援で、官(国公立大学)民(私立大学)格差が極めて大きいと言える。これまでに蓄積された利益又は損失は、“消費支出差額”として貸借対照表の右側の“負債”、自己資本である“基金”の次に掲載されている。この消費収支差額が赤字の場合は、これまでに蓄積された当期損失の累計額が赤字を意味し、“翌年度繰り越し消費支出超過額”と呼ばれる。消費収支差額の基金残高に対する割り合いを見れば、これまでに蓄積された赤字が自己資本である基金をどの程度、毀損しているのかがわかる。例えば、早稲田大学の翌年度繰り越し消費支出超過額は981億円。これに対して基金は3881億円なので、基金の25%を毀損していることになる(981億円÷3881億円×100)。19私立大学法人平均では、21%だ。




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次に、大学が資産運用でどの程度稼いでいるかを見てみよう。収入源を広げることは大学運営上、重要であるが、リスクを取り過ぎるのにも注意が必要だ。そこで、ここでは運用している資産の内訳と利回りに注目する。「リスクを取り過ぎていないかどうか?」である。2008年のリーマンショック以降、世界的な低金利が続き、運用環境は厳しくなるばかりだ。現金預金が最も安全な運用となるだろうが、利回りの確保は難しくなる。バランスが大切だ。ハーバード大学等のアメリカの私立大学は、運用効率を上げる為に現金預金を極力持たないようにしている。実に、運用資産に占める現金預金の比率は1%に過ぎない。日本の私立大学の運用は、全く対照的である。日本の私立大学は、保守的な運用を反映して現金預金の割合が平均23%と高く、更に国内の低金利環境が加わり、総じて運用利回りが低い点が挙げられる。大学の総資産から土地・建物施設等の有形固定資産を除いたものが運用資産であり、ここで取り上げる19私立大学では総資産の平均約4割を占める。運用資産は主に、有価証券・現金預金等の金融資産から構成されている。運用資産の運用からの収入(資産運用収入)は、殆どの大学で全収入に占める割合が5%未満と低い。この割合が、約4割のハーバード大学とは大きな開きである。ハーバード大学の運用資産は、円換算で8兆円近くもある。これは、日本の大学として最大の運用資産残高を持つ日本大学の約26倍だ。ハーバード大学等のアメリカの有力私立大学では、長年の寄付に依り蓄積された多額の余剰資金を持ち、資産運用では専門家を雇っている。運用のリスク管理ができる能力と余力があるという訳だ。現在、日本の大学では、国内経済の少子高齢化の進展と、今後予想される大学受験生の減少に伴い、学生生徒等納付金に依存する現在の収入構造が見直されている。そこで、リーマンショック以前は多くの大学で資産運用収入の強化が目指され、より利回りの高い運用が志向された時期がある。しかし、リーマンショックに依り多くの金融商品の価格が下落し、リスクを取った大学に悪影響が出た。その為、近年、私立大学における資産運用はより保守的になっているようだ。具体的には、東京理科大学では運用資産に占める現金預金の比率が7割近く、極めて保守的な運用がなされている。主要大学では、現金預金の割合は平均2割程度である。前述したハーバード大学とは大きく異なる。

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リスクの少ない保守的な資産運用では、高い運用利回りは見込めない。金利のつかない現金の保有や、金利が殆どゼロに近い銀行預金、更には信用リスクの低い10年物日本国債の利回りが1%を大きく下回るような状況下で、逆に2%を超えるような運用資産利回りを確保しているような大学には、注意が必要かもしれない。しかも、運用に関する情報開示があまり進んでおらず、これは今後の課題だろう。大学の運用資産における有価証券の内容については、その時価情報程度の開示に留まり、具体的な運用方法(債券・株式の区別、債券のうち国債・社債の区別、国内・海外の区別等)や運用方法毎の利回り等について、殆ど開示されていない。大学には今後、その運用資産の内容の詳細な開示が求められる。情報開示に依って、投機的な資産への運用を回避する歯止めにもなる。尤も、足元では株高等で良好な市場環境の恩恵を受けている。2015年3月末現在、19私立大学は保有する有価証券の獲価に対して、1割程度の含み益を抱えている。株価・為替又は金利にリンクした金融派生商品を組み込んだ有価証券の残高及び時価を開示しているのは、青山学院大学・関西学院大学・立命館大学等に限られている。これらの大学では、金融派生商品を組み込んだ投資は、有価証券残高全体の5%から2割程度に留まる。その評価損益も少なく、大学法人財務全体への影響は軽微だろう。


キャプチャ  2015年8月25日号掲載


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