【アメリカ大統領選2016・有権者は今】(01) 強いアメリカ求める“怒り”、アウトサイダー支持拡大

来年11月のアメリカ大統領選まであと1年。共和・民主両党の指名候補選びが本格化する中、様々な思いを抱える有権者たちの今を追った。 (今井隆)

20151107 01
南北戦争で南軍が首都を置いたバージニア州リッチモンド。10月中旬に開かれた共和党の“不動産王”ドナルド・トランプ氏(69)の集会に、一際目立つ金髪の白人女性の姿があった。真っ赤な上着に星条旗柄のハイヒール、カラフルなストールにはトランプ氏の顔写真入りバッジを付けていた。アイリッシュダンスの元教師であるアリス・バトラー・ショートさん(72)だ。トランプ氏を熱烈に支持する原動力は、オバマ大統領に対する怒りだという。「オバマはアメリカ大統領の魂を持っていない。私たちは世界中の人々を助けているのに、アメリカの行いを謝罪して回っているじゃないの」。ショートさんは涙目で語った。ショートさんの怒りは、自らの生活に直結する経済・社会政策に向けたものではなく、“国の形”に関するオバマ政権との哲学の違いに根差している。「オバマ政権は景気を順調に回復させてはいるが、世界の“スーパーパワー”の地位を維持する気概や、競争で最良の社会を作るというアメリカの伝統的な自立の精神を失わせている。それが我慢ならない」とショートさんは言う。リベラル色の強いオバマ政権の誕生後、共和党内では草の根の保守強硬派『茶会運動(ティーパーティー)』が台頭して、穏健な保守との間で路線対立が起き、ショートさんが嫌悪するオバマ政権の医療保険改革『オバマケア』等の弱者救済型の政策や、弱腰外交を変えさせる力を示すことができないでいる。公職経験の無いトランプ氏や元脳神経外科医のベン・カーソン氏ら“アウトサイダー”が、オバマ政権や共和党のエスタブリッシュメント(支配階層)の双方に不満を抱くこうした保守層にアピールし、人気を集めているのは、今のアメリカ政治の中で“保守”の立ち位置が定まっていない為と言える。

「アメリカ人であることを誇りに思わせてくれる大統領を選びたいの。『この国がどうなってしまうのか』という不安から私たちを救い出すことができる強力なリーダーは、彼だけよ」。ショートさんは、トランプ氏をこう絶賛する。アウトサイダーが共和党指名候補争いを席巻するという異例の展開の背景には、ショートさんのような“怒れる有権者(angry voters)”の存在がある。CNNテレビの花形政治記者であるダナ・バッシュ氏は、「有権者は今の政治にうんざりしている」と指摘する。イギリスの週刊誌『エコノミスト』が10月に発表した世論調査では、「アメリカは間違った方向に向かっている」と回答した共和党員が88%にも上った。「だから、政治家ではないトランプなんだ」。トランプ陣営にボランティアで参加するジョー・カッチオッティさん(61)は、そう言い切る。こうした共和党の現状への不満の声に対し、オバマ氏は10月23日の民主党の会合で「まるで“グランピーキャット(不機嫌な猫)”みたいだ」と語り、インターネット上で大人気の猫の顔真似をしてみせた。怒れる有権者とオバマ氏との間には、深く広い溝が横たわる。エモリー大学のアラン・アブラモウィッツ教授(政治学)は、現状をこう分析する。「民主・共和両党支持者は最近、相手の党への敵意を一層強めている。共和党では、オバマ政権を止められない党指導部への不満に繋がり、エスタブリッシュメントが支持する候補ではなく、怒りを体現するアウトサイダーに支持が向かっている」


≡読売新聞 2015年11月6日付掲載≡


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