【アメリカ大統領選2016・有権者は今】(02) ヒスパニック票、重み増す…移民政策、活発な議論

20151108 01
カジノ等の娯楽施設が集積する世界有数の歓楽街・ラスベガス。10月21日。共和党穏健派の支援団体は、移民が多いヒスパニック(中南米)系住民約200人を郊外の大学に集め、政策フォーラムを開いた。ネバダ州は、過去6回の大統領選で民主が4回・共和が2回勝っており、選挙毎に結果が異なる“スイングステート(揺れる州)”だ。フォーラムは有権者人口の約16%を占め、勝敗のカギを握るとされるヒスパニック系への働きかけを強める狙いがある。参加者は一様に、メキシコからの不法移民を一方的に犯罪者扱いし強制送還を主張する、共和党の大統領選候補で“不動産王”のドナルド・トランプ氏(69)への危機感を口にした。メキシコ出身の不動産業者であるジゼル・アリアノさん(34)は、「トランプの発言は我々を侮辱している」と憤りを隠さない。アリアノさんは、麻薬絡みの犯罪等で治安が悪化したメキシコを2010年に離れ、ラスベガスに移住。父親がアメリカ人の為、直ぐに市民権を獲得できた。一方、同様にアメリカ入りしたものの、市民権を得られないメキシコ人が多数いた。彼らは真面目に働いて所得税等の税金を納めていたが、交通違反等で摘発されれば送還されかねない恐怖に怯えている現実を目の当たりにしてきた。「彼らは(納税等で)地域社会に貢献している。法的な滞在資格を認める制度が必要だ」。アリアノさんは、そう強調する。フォーラムには、同党の大統領選候補で元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏(62)が駆けつけ、「不法移民が日の当たる場所に出て来られるようにすべきだ」と滑らかなスペイン語で訴え、拍手を浴びた。

今回の大統領選では、不法移民への対応等の移民政策の議論が、これまで以上に活発だ。不法移民の一部は「婦女暴行犯だ」というトランプ氏の発言が、論争に火を付けた。底流にあるのは、ヒスパニック系有権者の急速な増加だ。2012年大統領選の敗因を分析した共和党全国委員会の報告書に依ると、1980年の大統領選に投票した有権者に占める非白人割合は12%だったが、2012年に28%に増え、うちヒスパニック系が10%を占めた。2012年大統領選では、移民問題で強硬姿勢を取った共和党のミット・ロムニー氏が白人票で勝利しながら、ヒスパニックや黒人等のマイノリティー(人種的少数派)票を殆ど得られず、敗北した。同委員会は、「マイノリティーに歩み寄らなければ、今後の選挙で我々は敗北する」と警告した。しかし、教訓が生かされているとは言い難い。共和党指名候補争いの候補者たちの多くは、同党支持者に占める割合が高い白人保守派へのアピールを優先し、移民への締め付けを強めるような政策に偏りがちで、不法移民の滞在資格を認める政策を掲げるブッシュ氏は少数派だ。一方の民主党は、共和党の混乱を横目に、ヒスパニック系有権者を囲い込む動きを強めている。ネバダ州でヒスパニック系に有権者登録を呼びかける団体のエミリア・パブロ代表は、「トランプ氏への怒りは相当なものがある」と手応えを語る。今年は選挙が無いにも拘らず、全米での登録者数は中間選挙が行われた2014年に迫る勢いだという。ネバダ大学リノ校のエリック・ハージック教授(政治学)は、「“トランプ効果”は、本選で共和党に破滅的な結果を齎しかねない」と指摘する。アリアノさんは、こう言い切った。「トランプが党の候補になったら、民主党候補に投票するわ」 (加藤賢治)


≡読売新聞 2015年11月7日付掲載≡


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