若者のやる気を搾取する『居酒屋甲子園』のルーツ?――あの『ワタミ』も憧れた“居酒屋のカリスマ”宇野隆史が展開する超ブラック経営術の実態!

あの『ワタミ』を生んだ“ブラックモンスター”渡邉美樹が参考にした“居酒屋の神様”宇野隆史。未来ある若者を低賃金で雇い、使い物にならなくなれば独立させて会社から追い出す。ブラックな飲食業のフォーマットを作り上げた彼の経営術。その腐り切った実態とは――。 (取材・文/ノンフィクションライター 中村淳彦)

美辞麗句で社員や職員たちを操り、洗脳し、労働基準法を逸脱した長時間労働をさせて、差額を利益にする“ポエム系ブラック企業”が揺れている。“ブラックの神様”渡邉美樹氏が創業した『ワタミ』の凋落は止まることが無く、先日発表された今年4~6月期の決算は9億5400万円の赤字となった。唯一の望みだった介護事業も1億3400万円の赤字に転落。自己資本比率も危険水域に達して、「最早、破綻から逃れる為には介護事業の売却しかない」と言われている。そして、介護業界のブラック企業として有名な藤田英明氏が創業した『日本介護福祉グループ』(『お泊りデイ』や『茶話本舗』を展開)も、倒産の瀬戸際という苦境に陥っている。日本介護福祉グループはフランチャイズで拡大したが、職員を徹底酷使するブラック運営、高齢者への虐待、行政からの介護報酬詐取と問題を起こし続け、業績が悪化。昨年11月にゲームセンター大手の『アドアーズ』に買収されたが、何と今年8月11日、アドアーズは藤田英明氏に全ての株を逆に譲渡。「介護事業を休止する」という驚愕の発表をした。発表の内容は、「日本介護福祉グループを買収したものの、蓋を開ければ、想定外の債務超過で改善が困難」という詐欺の臭いさえする内容だった。筆者は、日々伝えられるブラック企業の苦境をツイッターで呟いていたが、先日、そのツイッターに居酒屋店員という男性からメッセージが届いた。「ワタミ、それと介護甲子園に関係する茶話本舗の抑々の元祖は、“居酒屋の神様”と呼ばれる宇野隆史が経営する株式会社楽コーポレーションですよ。居酒屋業界の超有名人です。抑々、宇野さんが居酒屋のブラックを作り上げ、それが間接的にワタミなり居酒屋甲子園なりに伝承されたんですから」。送り主である岡野巧氏(仮名)は、宇野隆史氏が創業した『楽コーポレーション』の関連会社の元社員だった。「匿名取材ならOK」と言うので、早速会うことになった。

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日本一のブラック企業の経営で知られる渡邉美樹が参考にしたという『くいものや楽』。

つい先日まで楽コーポレーションに関係する店舗で店長をしていた岡野氏は、年齢は30代前半。数年間、休みという休みが殆ど無く、勤務時間9~26時という過酷極まりないシフトを数年間継続。過労と疲労とストレスで痙攣して倒れ、身体を壊して退職したという。「宇野さんは、“汁べゑ”とか“くいものや楽”とか様々な居酒屋を運営している居酒屋界のドンです。もう40年くらいやっているから、辞めて独立した“卒業生”と呼ばれる元社員が沢山いるんです。どんどん独立して派生しているので、東京都内を中心に宇野さんの息がかかっている居酒屋は数え切れないほどある。バブル期以前に独立した人たちは皆、5~10店舗ずつくらい経営していますね。それ以降は本当に厳しいので、独立しても多店舗展開までは中々いかない。独立に失敗して消えた人も数え切れないほどです。楽グループの卒業生というか、息がかかった店舗があまりにも増えたから、居酒屋業界で『宇野さんは凄い』って注目されるようになった。ワタミの渡邉美樹さんも居酒屋を始めた頃、何度も“くいものや楽”に通って店舗作りの参考にしたって言われていますし、居酒屋甲子園の大嶋啓介さんも宇野さんを『お父さん、お父さん』って言って慕っています。大嶋さんは取り巻きの1人ですね。居酒屋を目指す人・関わる人にとって、宇野隆史は“神様”だから担ぎ上げられる訳ですよ」。宇野隆史氏は1944年生まれ。34歳の時に『楽コーポレーション』を創業している。“居酒屋の神様”と呼ばれ、『笑う店には客来たる 楽しむ人には福が舞う』『トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる』(共に日経BP社)等の著作もある。宇野氏も関わる『居酒屋甲子園』とは、年に1度開催されるイベントで、居酒屋店員の若者たちが壇上で「夢を諦めない!」「皆を幸せにしたい!」「仲間と夢を見たい!」等々、涙を流しながら絶叫している。そのカルト的な風景は『クローズアップ現代』(NHK総合テレビ)で“ポエム化現象”として報道され、“ブラック経営”“やりがい搾取の温床”と批判を受けている。




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若者の夢を餌にカネを搾取する構造を肯定する恐ろしいイベント『居酒屋甲子園』。“絆”や“仲間”を絶叫する。

「身体を壊してから気付いたけど、宇野さんが作り上げた居酒屋の世界は異常ですよ。家族とか絆とか仲間とか夢とか、あれ皆本気で言っている。店が強制する朝礼とか、居酒屋甲子園みたいなイベントで、業界を挙げて関係者を洗脳するんです。洗脳されていなかったら、あの厳しい労働条件では働けないですね。ブラックは当たり前というか、ブラック以前に従業員は無知なので、労働基準法とか皆知らないですから」。岡野氏が居酒屋の世界に足を踏み入れたのは、21歳の時。勤務時間はランチのある店舗で9~26時、ランチの無い店舗でも12~26時と、兎に角長時間労働を強制される過酷な生活を続けてきたという。「居酒屋の店員は、それだけの時間働いても手取り18~28万円くらい。社員になっても雇用保険も健康保険も無いし、何の社会保障も無い。だから、給料からは所得税が引かれるだけ。僕は恥ずかしながら他の世界を知らなかったので、それが普通だと思っていた。僕は23歳で店長になって、月給25~28万円くらい。給料体系は、最低賃金で計算した15万円くらいの基本給があって、それに皆勤手当てとか役職手当とか家族手当とかが付く。最終的に、店長になって総額28万円くらいになるみたいな。僕は『労働基準法』っていうのがあることは最近知ったんですが、他の社員たちは今も何も知らないんでしょうね。そんな話が出たこともない。いくら残業しても、給料は変わらないってやり方ですね」。社員になると週休1日、月に25日以上は出勤する。その勤務時間を労働基準法に合わせれば、残業時間は200時間を超える。過労死基準の2.5倍という異常な領域である。

40席の平均的な居酒屋では、フル出勤する社員は店長と副店長、それ以外に10人くらいのアルバイトを抱える。固定給の社員2人が異常な長時間労働のサービス残業で店を支えて、人件費を限界まで下げるという。「居酒屋業界では“FL”って、フード(原価率)・レイバー(人件費)と呼んでいる。フード売上30%、レイバー30%以内っていうのが基本ですね。社員が長時間労働して食材費と人件費を限界まで下げて、やっと15%くらいの利益が出るって計算です。儲からないし、社員の異常な長時間労働が大前提にあるビジネスなんですね。社員は身体を壊すことが前提の長時間労働をしていますが、宇野さんは多摩川と八ヶ岳とカナダに自宅があって悠々自適ですね。日本にいる時は経費で飲み歩いたり、キャバクラに行ったりしていますよ」。更に、社員になる条件は店の近くに引っ越すこと。交通費は出ない。深夜まで店で働き、徒歩で近隣の自宅へ帰って直ぐに眠る。そして、起きたら直ぐに店に行く…。完全に仕事中心の、それだけの生活である。バイトがいなければ休日出勤なので自由な時間は無く、居酒屋社員の恋愛や結婚は殆どが身近にいるアルバイト相手だという。遊び呆ける経営者、そして社員たちは奴隷状態での脱法労働。そのプラック運営が一部で常態化しているという話ではなく、業界全体の常識になっている。「その奴隷システムを、宇野さんが作りあげた訳ですよ」。岡野氏は、筆者が資料として持参した『外食産業ほどイイ仕事はない!?』という宇野隆史氏が掲載されているインターネット記事を眺めて、溜息をついていた。

“神様”と居酒屋業界で崇められる宇野隆史氏が、「脱法が前提の奴隷労働のシステムを作り上げた」とはどういうことか? 「居酒屋には、20代の若者しかいらないんです。20代は元気で体力があって、法律に無知で、長時間労働に耐えられる体力がある。宇野さんは独立の素晴らしさを社員に教え込むんだけど、それは使えなくなる30代を雇用したくないから。“独立”という言葉を巧みに利用して、“29歳で定年”という常識を作り上げたんです。楽コーポレーションだけならばいいけど、膨大な店舗数の居酒屋は宇野さんの息がかかっているし、それが業界の常識になってしまった」。“独立の為の修業期間”という意識を徹底させることで、社員や従業員たちを洗脳し、異常な長時間労働に走らせている。「宇野さんとか、彼に影響されている“卒業生”とか、その取り巻きが目指しているのは、ヤクザみたいな組織。だから、『店の仲間は家族だ』って思い込んでいるんですね、全員が。宇野さんは自分のことを“お父さん”とか“オヤジ”とか呼ばせるけど、『黒いカラスも白いんだ』みたいなことをよく言われた。『俺がカラスを白いって言ったら、お前も白って言え』って。『お前も頑張って働いて独立して、そういう社員や部下を増やせ』みたいな。洗脳合戦ですね。だから、絶対に『ノー』ってセリフは吐けません。八ヶ岳に別荘があったり、キャバクラ嬢を侍らせていたり、凄く豪勢な暮らしをしているけど、それを社員に自慢する。自分の店に女を連れてきたりしてね。それは、『お前らも頑張って、俺みたいになれ』って憧れさせるのが目的ですよ。それで皆、真に受けて頑張っちゃうんです」

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居酒屋ブラック体質の“諸悪の根源”とされる宇野隆史が経営する『椿々』。彼には人間の心が無いのだろうか?

そして驚いたのが、過労死基準の2.5倍という異常な長時間労働で搾取するだけでなく、自社の“息子”たちである社員に強制的に“独立”という夢を見させてから、本格的な搾取が始まることだった。「宇野さんは、社員が30代に突入したら給料も高くなるし、長時間労働はできないし、旨みがないので独立させます。色々と方法があるけど、30代の社員を休みの度に飲みに誘う。『お前、これからどうするんだ?』って。『いつ独立するんだ?』って話を只管する。只管なので皆、その気になって独立する。実は、居酒屋を立ち上げるとビールメーカーからお祝い金が貰える風習があるんですけど、それも宇野さんは自らの利益の為に利用しているんです」。ビールメーカーは、居酒屋を開業して契約をしてくれると、席数×1万円のお祝い金を経営者に差し出すのが常識になっているという。「宇野さんの関係は大抵ヱビスビールなので、サッポロからお祝い金が出る。もうべったりで、宇野さんの従妹の結婚式にサッポロの社長が来るみたいな仲ですね。それで、取り巻きの1社である“東京ワイン”っていう酒の卸業者からヱビスビールを仕入れるんだけど、そのお祝い金を宇野さんと東京ワインのところでブロックして山分けしている。息子である筈の独立する社員は、何も知らない訳です」。更に、宇野氏は仕入れだけでなく、物件や店舗内装にも「今まで頑張ってくれたお礼に、息子の為に無料でコンサルしてやる!」と介入する。「“上昇気流”って居抜き物件専門の不動産屋があって、そこの笹田隆さんって社長と宇野さんは友だちで、宇野さん自ら上昇気流の役員として名を連ねている。笹田さんのところには沢山の物件が集まるんです。例えば、赤坂駅前とかに誰がやっても上手くいく超優良物件が出たら、笹田さんが自分で出店するか、楽コーポレーションが新しい店舗を出す。それで、独立を促した社員たちには、自分たちが手を出さない、誰も借り手がいないような物件を紹介するんですね。最初のビールメーカーからの祝い金も貰えないし、変な物件を掴まされるし、大半の卒業生は2年くらいで破綻するんですよ。借金だけを背負って消えていく。それで、その物件がまた上昇気流に戻ってきて、また新しい卒業生に物件を掴ませる。独立詐欺ですね。何か法律に引っかかる可能性もあるんじゃないかな? まあ、酷いなんてものじゃないですよ」

夢・やりがい・仲間との絆を絶叫する『居酒屋甲子園』、そして居酒屋のブラック労働が社会問題化し、若い居酒屋店員たちが自ら過剰な長時間労働に突き進む背景には、そのような薄汚い背景があった。今日も居酒屋の片隅では、岡野氏のように過労で痙攣して倒れる若者や、詐欺的なコンサルで破綻する悲惨な卒業生たちがいる。そして、頂点で君臨する宇野隆史氏は、八ヶ岳かカナダかキャバクラのどこかで悠々自適に優雅な生活を送っている。美辞麗句なポエムを叫ぶブラックの裏側には、哀れな現実があった。


キャプチャ  第9号掲載


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テーマ : ブラック企業
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