【絶望の非正規】(01) フリーターを抜け出せない氷河期世代の残酷な現実

20151110 02
「本当は正社員として働きたかった。安定した生活が保障された中で、自分の人生を設計したかったです。振り落とされないように必死になって、社会にしがみ付いている状態です」。兵庫県に暮らすAさん(42)は就職氷河期世代。正社員として就職したものの、家庭の事情から非正規労働者になり、その後は職を転々。今は、セール等の掘り出し物を見つけてはインターネットオークションで売り捌き、生計を立てている。大手流通企業の正社員だったAさんの人生が狂い出したのは1996年、23歳の時。母親の面倒を見る為に兵庫に帰郷し、派遣会社社員として大手メーカーの系列会社で働き出した。最初の派遣先は半年毎の更新だったが、僅か1年で雇い止め。Aさんは実家を離れて、近隣の県に“出稼ぎ派遣”に行く。仕事の内容は、ガラス工場のオペレーターだった。ここでも3ヵ月で雇い止めに遭い、実家へ出戻り。近所の食品会社工場の契約社員になった。それも2年後に過労で辞職。暫く休養した後、別の派遣会社に登録し、再び大手メーカー系列の会社で仕事した。正社員を募集していた職場では、次々に落とされた。「社員にならないか?」と誘う企業が無かった訳ではない。リフォーム会社の訪問販売で給与は出来高制。インターネットで調べてみると、“ブラック企業”だった。結局、1996年から約10年間で、派遣・契約社員・嘱託等の非正規待遇で10社ほど渡り歩いた。時給は大体900~1200円だった。更にAさんを苦しめたのが、2006年のライブドアショック。少ない資産を少しでも増やそうと株式投資をしていたが、裏目に出てしまった。これを機に、株は全て処分。働き方も変え、前述のようにインターネットオークションで生計を立てるようになった。「地元で面接を受けられる会社は全て行ってしまっていたので、事実上、就職できなくなったんです。車の免許を持っていないので、遠くに行くこともできない」。オークションの1ヵ月の利益は「生活保護費の少し上くらい」と、決して多くはない。母親と2人で住む公営住宅の家賃が安いから、何とか成り立っているのだ。「今怖いのは、親が急に死ぬこと。公営住宅では配偶者であればそのまま住めますが、子供だけになると生活保護受給者や障害者以外は退去を求められる。若しそうなった場合は、貯金を全て叩いて、安い住宅でも買わないとやっていけなくなるかもしれない」。オークションでは、これ以上の収入は期待できない。非正規どころか無職の為、非常に不安定だ。「生まれた時期・学歴・親の資産・家庭環境・自分の健康状態…全て、格差を実感します」とAさんは話す。工業高校までしか出ていないAさんは、大卒者と比べると学歴がネックになり易い。「できることなら、人生をやり直したい。政府は格差拡大の方向に向かっていて、『使い捨て社会なんだ』と身を以て体験しています。今死んだら、これまでの人生が全て無かったことにされるようで、悔しい。『どんな状況でも生き抜かなければいけない』とは思っています」

バブル崩壊が招いた就職氷河期。Aさんのように、最初の世代は既に40代に突入した。だが、年齢を重ねても非正規として働いている“中年フリーター”の数は増加の一途。直近では273万人に上っている。Aさんのように、家計を支える稼ぎ手でありながら、経済低迷の煽りを真面に受けて正社員の職に就けず、低賃金で不安定な非正規の仕事で食い繋ぐ。そんなケースは枚挙に暇が無い。東北地方で両親と同居する40代女性のBさんも、その1人だ。彼女は、地元でトップの進学校と大学を卒業。更に、都会の大学に学士編入し、2年学んだ。しかし、就職はできなかった。物価や家賃の高い都会では生活を維持していくのが難しく、仕方なく親元に戻ってきた。それでも、正社員の仕事が見つからなかった。「大卒なんだ。仕事無かったの? 何故、うちの会社なんかに来るの?」。採用の面接官は鼻で笑ったような顔をする。学士編入まで履歴書に書くと、「お勉強が好きなんですね」と嫌みを言われる。だから、その履歴はいつも書かない。ハローワークの紹介で何度も採用試験を受けた。しかし、書類を出しただけで悉く断られた。面接までいったこともあるが、不採用の理由は教えてもらえなかった。「何社も受けているので、ハローワークの人たちも履歴を見て私のことを知っている。『前の会社で不採用になっていますけど、面談の時も雰囲気が良く、何も問題が無いそうなので、あまり気にせずに』って窓口の人たちは言う。落とされた上に『気にせずに』と言われても…」。転職サイト経由で応募しても、返事さえ無い。そんな時、地元に設置されたコールセンターで働き始めた。そこは300人以上が契約社員として雇用され、大半が女性だ。仕事は24時間3交代。月収は固定で、社会保険料を引かれると手元に残るのは10万円前後。一応、土・日・祝は休みになる。「残業代は1分単位でつきます。『うちって凄いでしょ?』ってよく自慢されるんですが、その分、基本給が低く抑えられている。残業代がつかなければ、ただのブラック企業です」。しかも、基本給は月20日がベースだ。カレンダー通りに仕事があるので、それ以上何日働こうとも基本給の額は変わらない。20日を超えて働いていても、有給休暇を申請しないと、休んだ日数分だけ基本給から引かれていく。「国は『雇用を生み出す』と言っていますけど、大量の非正規を安く使い倒しているって感じがします」。1年以上勤めると、正社員への昇格試験を受けられる制度はある。が、管轄するマネジャーの推薦が必要である為、正社員になるケースは殆ど無い。




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Bさんは元々1人でいるのが好きな為、昼ご飯も1人で食べる。しかし、部署毎に結束力を誇示するようなグループができていて、よくランチに誘われるという。「大卒の人は殆どいない為、進学校を出ていることも言えなくなる。グループで昼食中、『Bさんも商業高校だよね?』と聞かれた時、思わず頷いてしまいました。出身高校の話は、今もひた隠しにしています」。以前、コールセンターの同僚から出身高校を聞かれて打ち明けたら、「へえ、凄いねえ。あたしはそんなに頭よくないからなあ」等と言われ、どう反応していいのかわからなかった。そうした気持ちを共有できる相談相手がいないのが辛い。「今勤めているところは、結婚して子供のいる方が殆ど。彼女たちなら月10万円でもいいと思いますが、私みたいに、仕事をして自分で暮らしていきたいと思っている人には道が無いんですよね」。会社側も、家族や子供がいる女性を好む。家庭には、夫という収入を支える大黒柱がいる。その妻は飽く迄も家計の補助。「非正規で、安い給料でも働く」と考えている節がある。「『(育児のし易さ等)女性の働き易い環境を目指す』と、凄くPRしている会社なんです。でも、そこに当て嵌まらない私には厳しい」。Bさんは、自分の思いを誰にも理解してもらえないまま、行く当てのない“非正規の海”を漂流し続ける。「周囲は『20代や30代は楽しい時期だ』って言うけれど、私には楽しかった思い出が無い。『何が楽しいのかな』って考えちゃうんです」。実家で同居する両親も、典型的な昔気質。「あの家には、40歳になっても引きこもっている男がいる。気持ちが悪い」という反応を示す。そのプレッシャーがBさんを苦しめる。「毎日生きているが、息苦しい。色んなレールがあって、外れたり乗ったりできればいいのに。世の中で多様な生き方と言われている割には確固としたレールがあって、少し外れただけで大体の人は戻れない。というか、社会が戻してくれない。『もうちょっと柔軟にならないのかな』って思うんです」

今や、労働者の3人に1人が非正規だ。特に、中年フリーターが抱える問題がこれからどんどん顕在化してくる。その1つが、親の高齢化だ。AさんもBさんも親元で暮らしているから、少ない給料でも生活できている。だが、親の介護が必要になり、出費が嵩んだり、思うように働きに出られなくなった場合、一気に生活が破綻するリスクがある。では、最初から正社員なら一生安定した生活を送れるのかと言えば、それも幻想に過ぎない。ふとしたきっかけで、簡単に正社員のレールから外れてしまう。「タイミングが悪かったんだと思う。自分で考えて辞めてしまったのでしょうがないですが…。今の世の中、中高年世代に対する風当たりは非常に厳しい」。大阪府で実家に住む男性・Cさん(47)は大学卒業後、大手通信会社にシステムエンジニアとして就職。その後、中堅出版社に転職したことが地獄の始まりだった。「元々離職率の高い会社で、総務・経理・システム・営業販促・衛生管理の5つの仕事をやらされていたんです。総務の上司は社長のイエスマン。実務はできない人で、入社してからの違和感がどんどん積み重なる感じでした」。そんな時、会社から「少し疲れているようだから」と休暇を取るように勧められる。産業医からは「鬱病の疑いがある」と言われたこともあり、素直に従った。念の為に精神科医を受診したが、「特に異常は無い」と診断され、直ぐに復帰するつもりでいた。ところが、2ヵ月くらい経っても復帰は許されない。上司には個室に連れていかれ、こう言われた。「お前はもう少し休まなければいけない」。同僚からは、「上司が『あいつは異常だ』と悪口を言いふらしていましたよ」と聞いた。だが、そんな同僚たちもだんだん余所余所しくなった。電話しても「ちょっと忙しいので」と関わらないようになり、遂には職場に居場所が無くなった。「復帰の道を閉ざされた感じがしました」。Cさんが上司との関係に疲れて辞職したのは2009年。リーマンショックで景気が低迷している最中だ。

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転職エージェントに登録して求人に応募。面接まではいけるものの、採用枠の最後の1人にまでは中々辿り着けなかった。アルバイトにも応募したが採用されない。その間に派遣会社にも登録。プログラマーや食品工場の製造ラインを短期で経験した。「企業に常駐して指揮命令を受ける偽装請負や、(禁止されている)派遺先企業での事前面接なども20~30回くらいやっています。しかも、電車賃はこっち持ち。システム会社では常態化していますよ」。ある派遣先では歓迎会に誘われた。だが行ってみると、「駄目だったら直ぐに切るから」と言われ、「こんなところで仕事はできない」と思った。エンジニアの賃金相場は、そんなに悪い訳ではない。時給で約1600円から、いい時には3000円以上のこともあった。とはいえ、「ずっと仕事が続けられるのならいいのですが、短期でしか雇ってもらえない。長くても半年、短ければ1ヵ月で終わりです」。派遣先の中にはCさんのことを気に入ってくれて、「うちに社員として入らないか?」と誘う会社もあった。「ただ、その会社は社員もアルバイトも1日中働き詰めで、ずっと社長の怒鳴り声が響き渡り、社員が土下座して謝り続けるというブラック企業だったんです」。年齢のこともあり、将来に対して見通しが立たない不安は大きい。「正社員に拘っていた訳ではない。仕事として面白みがあるとか、居心地がいいとかいうだけでもよかった。でも、どんどんストレスが溜まり、アルコールに依存するようになってしまった」。自宅にいると、70代の母親から「早く正社員の仕事を探しなさい」と追い立てられたことも、酒を頼る一因に。軈て、Cさんはアルコールを飲まないと仕事に行けなくなった。その後、アルコールは止めたが、最近はアルバイトも落とされる毎日。「アルバイトでもいいから、生活基盤を見つけながら資格の勉強ができればいいんですが…。職歴が無いと採用率が物凄く下がる。その期間に何をやっていたのか、繕うのが物凄く大変。経験が無いから雇ってくれず、経験が積めない」。兎に角、仕事がしたい――それが、今のCさんの希望だ。

島根県に住む男性・Dさん(43)は、故郷を離れて大手ゼネコンに勤務していた当時、ボーナスが年に4回支給される等、羽振りのいい生活を送っていた。ただ、入社から10年余り経つと会社の業績が悪化。まだ若かったDさんも、「地元に帰ろう」という同世代たちのUターンの流れに乗って、希望退職に申し込む。ところが、いざ帰ってみると仕事は少なく、給料も安い。派遣として大手系列の工場等で働いたが、度々派遣切りに遭った。「正社員になりたくても、書類審査すら通らない」。今は実家に住み、アルバイトで土建業の会社社長の運転手をしている。月収は総支給額で13万円。雇用保険も厚生年金も健康保険も無い。Dさんの甥は大学を卒業後、公務員になった。自分より給料がいい為、顔を合わせるのも苦痛だ。「田舎でもいい給料を貰っている人がいて、格差がある。それが長く続くと諦めに変わってくる」。Dさんはどうすればいいのかを考えながら、空き時間にハローワークへ行き、応募し続ける。「僕は社長の都合に合わせて働く為、土日が休みではないし、休んだら逆に給与から引かれる。会社までの交通費も出ない。同じ会社の正社員と比べたら、待遇は天と地の差。安倍(晋三)首相は『賃金が上がる』と言うが、恩恵を受けられる人は決まっている感じ。そこに入るには、年齢的にも分厚い壁がある」。足元では、景気回復に伴って人手不足と騒がれている。それに合わせて大きく期待されているのが、非正規の正社員化だ。確かに、8月の有効求人倍率(季節調整済み)は1.23倍と、23年ぶりの高い水準を記録している。但し、正社員に限ってみると有効求人倍率は0.76倍と、1倍を下回っている。回復傾向にあるとはいえ、求人数が求職者数より少ない状況は未だ変わらない。ずっと非正規で専門的なスキルも経験も無い人になれば、尚更ハードルが高くなる。

20151110 21
「自分で何とか生きていこうとは考えているんですけど、何事にも自信が持てないんです」。茨城県の実家に住む33歳男性のEさんは、就職活動に失敗。エントリーシートも含め、100社ほどの採用試験に落ちた。大学を卒業したが無職になった。本音を言えば、就職浪人して再度挑戦したかったが、両親からはこう言われた。「おカネを稼いでいない奴は家から出ていけ!」。Eさんは、大学時代に経験のある交通整理のアルバイトを始めた。その後、ゲームが好きだったことから、偶々見かけた求人のポスターを見てゲームセンターのアルバイトに移り、現在も続けている。時給800円で、1日8時間働く。月収は、多くシフトに入った時でも12万~13万円。実家から離れてしまうと生活はできない。多い時は、月3万円ほどを家に入れている。「ゲームセンターの正社員になろう」と、試験を受けたことはある。だが、結果は不合格だった。「自信が無い」。取材中、Eさんから頻繁に出てきた言葉だ。長く勤めるゲームセンターの仕事でも、店が忙しい時に1つや2つミスをしてしまうことに対してすら、非常に神経質になる。「『どこか変なところが無いか?』と上司に聞かれても答えられない。例えば、ポスターが曲がっていても気付けなかった。診断は受けていないが、『発達障害があるんじゃないか?』と思うことすらある。『何故、同じことを何回も間違えるんだ?』と言われ続けると、どうしても引っ掛かる」。ゲームセンター以外の世界を経験したことがない為、他の仕事に大きく一歩踏み出すのにも怖さがある。20代の時に比べて、徐々に体力の衰えも感じてきた。「若し今、ゲームセンターの社員になれたとしても、いつリストラされるかわからない。それなら、『違う方法で生きていけないか?』と模索しています。現状では週5日アルバイトしながら、土日に何かやりたいと考えています」とEさんは話す。だが、将来に対する不安は拭えない。

低い賃金・不安定な雇用・教育訓練機会の乏しさ…。非正規を巡る問題は、以前から指摘されてきたことだ。これまでにも、氷河期世代を始めとした若いフリーター層に対する就労支援は行われてきた。だが、目立った成果が上がらないまま彼らは年齢を重ねてきた。中高年世代になると、若年層のような支援策やセーフティーネットは無い。正社員になれないまま、親の介護や自分自身の体力の衰えで働けなくなるといった新たな問題が浮き彫りになってきた。何故、こんな厳しい状況になったのか? 解決策はあるのか? 次回以降で検証する。


池上正樹(いけがみ・まさき) フリージャーナリスト。1962年生まれ。日本大学新聞学科卒業後、通信社等を経てフリーに。著書に『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)・『大人のひきこもり 本当は“外に出る理由”を探している人たち』(講談社現代新書)等。

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中年フリーターの増加が止まらない。雇用問題に詳しい『三菱UFJリサーチ&コンサルティング』の尾畠未輝研究員は、“35~54歳の非正規雇用の職員・従業員(女性は既婚者を除く)”を“中年フリーター”と定義して試算。その推移を示したのが上図だ。バブル崩壊直後に新卒だった世代が、30代後半に差し掛かった2000年頃から増加し始め、直近では273万人。非正規全体の1割強に上る。中年フリーターの問題は数多くあるが、中でも深刻なのが、年齢を重ねた家計の主たる稼ぎ手であるにも拘らず、低い賃金で雇用も安定していないという点だ。非正規と言えば以前はパート、つまり家計補助的な所得を得ている人が中心だった。非正規の平均月収は約20万円。年齢を重ねてもそれほど上がらない為、中年フリーターの収入も20万円前後と見られる。しかも、就職氷河期の最初の世代である40代は、同年代の正社員との格差が非常に大きい。独立行政法人『労働政策研究・研修機構』が行った『壮年非正規労働者の仕事と生活に関する調査』に依ると、壮年(35~44歳)非正規の相対的貧困率(等価世帯所得が雇用者全体の中央値の半分以下の人の割合。同調査では、年収150万円以下を“貧困”と定義)は、男性で31.5%だった。つまり、壮年非正規男性の3人に1人が貧困状態にあるということだ。これは、若年男性の23.3%をも上回っている。壮年非正規女性(既婚者除く)は51.7%と、更に厳しい。中年フリーターの人たちが好んで非正規の仕事をしている訳ではない。非正規職に就いた主な理由を見ると、中年フリーター(データ算出の都合上、ここでは25~54歳男性と定義)は「正規の職員・従業員の仕事が無いから」が半数近くに上り、他の層に比べてもずば抜けて比率が高い。正社員として働きたくても働けないのが実態だ。企業側は、40歳前後の人を正社員で採用する場合、一から教育・育成しなければならない人材よりも、専門的なスキルやビジネス経験を持つ即戦力を求める傾向が強い。教育訓練を受ける機会が乏しい非正規が正社員に転じるのは、ハードルが高い。但し、氷河期世代の中には、新卒時に非正規で働いていながら現在は正社員という人たちも少なからずいる。2009年の厚生労働省『若年雇用実態調査』に依ると、調査時点で30~34歳(氷河期世代)のうち、卒業から1年間は非正規で現在は正社員という人が5割弱、無業から正社員の人は5割強いる。非正規から正社員への転職が絶望的だという認識を持つのは誤りだろう。

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一方で、正社員から非正規になった人も2割強いる。前述したように、労働者全体で見れば中年フリーターが増えているのは紛れもない事実だ。そして、今後は更なる難題が次々と顕在化する。40代ともなれば体力が衰える。体力のある若い時は、低賃金でも仕事の掛け持ち等、量でカバーすることができたかもしれない。だが、高齢化が進むことに依って、働きたくても働けない人が増えてくるだろう。貯蓄も少ない。連合総研『非正規労働者の働き方・意識に関する実態調査』に依ると、非正規が主たる稼ぎ手となっている世帯のうち、「貯蓄なし」が28.2%、「100万円未満」の世帯も26.6%に上る。非正規は、雇用保険や健康保険等の加入率が正社員より低い。病気等で働けなくなり、こうしたセーフティーネットからも零れ落ちると、生活が破綻する懸念が高まる。最後に頼れるのは生活保護しかない。生活保護受給者は6月時点で216万人。それに匹敵する数の中年フリーターが、生活保護予備軍として存在していると言っても過言ではない。今回登場した人たちは、親元にいることで生計を維持していた。だが、頼っている親も高齢になる。抑々、高齢者の暮らしは楽ではない。総務省『家計調査』に依ると、高齢無職世帯の1ヵ月の生活費は平均20.7万円。それに対して、年金等の実収入から社会保険料等を引いた可処分所得は14.8万円。毎月約6万円の赤字が出ている計算だ。これからは逆に、親の介護負担が中年フリーターにのしかかってくる。『生命保険文化センター』の『生命保険に関する全国実態調査』(平成27年度速報版)に依ると、介護に要した費用は1ヵ月平均で7.9万円。収入も貯蓄も少ない中年フリーターが、親の面倒を見ながら自分の生活も成り立たせるのは簡単ではなく、親子共倒れの危機も迫る。自らの老後にも不安を残す。国民年金のみの場合、満額で月約6.6万円。保険料未納の期間があると受け取る額は減り、老後破綻のリスクが高まる。経済低迷の煽りを真面に受け、“貧乏くじ世代”とも呼ばれる氷河期世代。非正規から抜け出せない中年フリーターの抱える問題は根深い。


キャプチャ  2015年10月17日号掲載


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テーマ : 派遣労働
ジャンル : 政治・経済

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