【アメリカ大統領選2016・有権者は今】(03) 同性婚・中絶「神に反する」…踏み絵迫る宗教保守

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「信教の自由を求める闘いに、神は私を選んだのだと思います」。今月3日に訪れたケンタッキー州ロワン郡庁舎の1階オフィスで、ストライプ柄のセーターを着た女性書記官のキム・デービスさん(50)は、時折涙を流しながらそう語った。郡内でただ1人、結婚証明書発行の権限を持っていたデービスさんは9月上旬、法廷侮辱罪で6日間収監された。同性婚を合憲と認める連邦最高裁の判決が6月に出た後も、同性カップルへの結婚証明書の発行を拒否し続けた為だ。キリスト教の保守的な一派の信者であるデービスさんは、「『結婚は男女間でするもの』という神の定義に反する結婚を承認できない」と考えたという。収監中、デービスさんは聖書の一節を何度も口にして祈り続けた。アメリカのメディアは、デービスさんの収監を連日報道。代理の書記官に結婚証明書の発行権限が与えられ、デービスさんが釈放されると、“宗教保守派”と呼ばれる人たち約4000人が拘置所の前に集まり、熱狂的な歓声で出迎えた。共和党指名候補を争う元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビー候補(60)と上院議員のテッド・クルーズ候補(44)も加わり、盛り上がりを見せた。デービスさんは今も、同性カップルへの証明書発行は行っていない。「これは同性愛者への差別ではなく、私の信仰の問題なのです」。同性婚は、アメリカ社会を二分する社会問題だ。保守的な人々はデービスさんの行動を支持する一方、リベラルな人々は、多様な価値観を受け入れる社会の象徴として容認する傾向が強い。

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2012年の大統領選の際、再選を目指すオバマ大統領は、現職の大統領として初めて同性婚への支持を表明した。『ギャラップ社』が今年5月に実施した世論調査では、“同性婚の合法化”への支持が、1996年の調査開始以降で最高の60%となった。6月の連邦最高裁判決で、同性婚を巡る法的な争いは決着した。だが、7月に『AP通信』等が実施した世論調査では、判決に反対する人が41%となり、賛成の39%を上回った。デービスさんを出迎えに拘置所前に駆けつけた地元・グレイソン市のジョージ・スティール市長(70)は、「最高裁は逸脱した。結婚の問題は州が決めるべきものだ」と批判する。社会的な論争については、「決着した」とは言い難い現状がある。信仰に篤い宗教保守派は近年、共和党支持者の基盤として台頭してきた。背景には、リベラル色の強い政策を進めるオバマ政権への反発に加え、イラク戦争や経済低迷で財政赤字が膨らんだことで、政府の役割を最小限にする“小さな政府”を求める流れが一層強まったこと等があるようだ。『ウォールストリートジャーナル』と『NBCテレビ』が9月に発表した世論調査では、共和党支持者のうち、自分のことを「非常に保守的だ」と答えた人の割合が、1990年の12%から28%に跳ね上がった。『CBSテレビ』が3月に実施した世論調査では、次期大統領と宗教的な信念を共有することを、共和党支持者の65%が「重要」と答えた。宗教保守派は同性婚の他に、人工妊娠中絶にも強く反対しており、共和党の候補者たちに踏み絵を迫っている。同性婚に反対する一連の措置を取ることを誓約するよう求める団体の要請に対し、クルーズ氏ら4人は応じたが、元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏(62)ら多くは回答を控えた。デービスさんの代理人を務めるマット・ステーバー弁護士は、「デービスさんの事案は、大統領選にも影響を与えるだろう」と見る。宗教と政治について詳しいベイラー大学のトーマス・キッド教授も、こう指摘する。「宗教保守派に受け入れられなければ、共和党の指名争いには勝てないのが現実だ」 (大木聖馬)


≡読売新聞 2015年11月10日付掲載≡


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