【私のルールブック】(27) おもてなしはあくまで“相手とのバランス”

私の平日の始まりは、『バイキング』(フジテレビ系)という生放送の番組である。月曜から金曜まで、決まって同じ時間にスタジオ(楽屋)入りしている。で、その移動手段として、今年の4月から自車ではなく、タクシー会社に依頼し、ワンボックスタイプのハイヤーをお願いしている。理由としては、行きの移動中に事故等のアクシデントに巻き込まれるケースも充分考えられ、その場合、タクシー会社さんに対応して頂いたほうが、番組への迷惑の度合いもいくらか軽減できるのではないか…よって、行きはハイヤー、それ以降のお仕事は自車での移動という日々を送っている。とはいえ、専属の運転手さんがハンドルを握って下さっている訳ではなく、数人の方々でローテーションを組んで頂いている感じ。当然、色々なタイプの方がいる。車内温度等、積極的に話しかけてくる人。無言なのに、緊張がこちらにも伝わってしまう人…。因みに、私の好みは最小限の言葉で、尚且つ気配が薄い人。

毎朝のことですしね。そりゃあ、昼間だったら「運転手さんとの会話も楽しもう」って気が起きるかもしれませんが、何より仕事前ですし、そんな余裕はありません。ものの30分足らずですが、寝るでもなく目を瞑り、今日1日の仕事についてあれやこれや考えを巡らす、私にとってはそこそこ貴重な時間ですから。だからこそ、わかってほしいのです。私がどんな人間で、どんな性格で、どんな癖を持っているのかということを…。じゃないと、本当の意味での気遣いは生まれませんから。カウンターだけの小料理屋があったとします。私は基本的に端っこに座ります。電話で端っこの席が空いているか確認するほどです。で、空いていなかったらキャンセルするぐらい端っこに拘っている。この時点で、何か感じますよね。私が店主であれば、そこまで端っこに拘るお客様にベラベラ話しかけることはありません。お客様のほうから何かしらのサインが無い限り、最小限の失礼の無いおもてなしに徹します。ですが、中にはお構いなしに、自身のおもてなし法を貫き通す店主さんもいらっしゃいます。「端っこが好きだ」って言っているのに、話しかけられても微妙に居心地の悪いサインを送っているのにも拘らず…。




別にいいんですけどね。二度と足を踏み入れなきゃいいんだから。逆に、嫌な思いをしてでも味が恋しくて通ってしまうお店だってありますから。ただ、どちらにせよそのやり方はある意味、店主側が客を選んでいるとも取られかねない。我流ですから。というか、お客様が先のようで、実は“俺のやり方”ありきな訳です。流行言葉になっちゃっていますが、“おもてなし”と一口に言っても、突き詰めるとこんなに面倒臭くて難しいものはない。小料理屋ならば我が城ですから、“俺のやり方”を通すことはできるでしょう。しかし、ハイヤーの運転手さんの立場となると、同じ客商売でも大きく異なる。それは、私の商売でも同じこと。どこを向いておもてなしをすればいいのか? どこまで気を遣えばいいのか? 気を遣いながらも、どのようにして自分自身を失わず維持すればいいのか?――答えなんてわかる筈ないですよね。でも、私は“相手とのバランス”にしています。自分を失わない程度の相手様への気遣い。それぐらいしかできまへん。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2015年11月19日号掲載


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