【少年法の岐路】(03) 生き直す機会「残して」…少年院、18~19歳が4割

20151119 02
酒を飲んでハンドルを握り、人を轢いた。相手から金も取ろうとした――男性(20)が19歳の時だった。逮捕され、約1年前に『多摩少年院』(東京都八王子市)に来た。「あのままだったら、人を殺したかもしれない」。9月、木立に囲まれた少年院で取材に答えた。「ここは、父のいなかった自分に『虚勢を張らなくていい』と教えてくれた」。小学生の頃から家が嫌だった。両親は離婚。母の交際相手の家を転々とし、不良仲間と遊んで粗毎日補導された。高校も退学し、喧嘩相手を縛って車で引き摺ったこともあった。入所後暫く、周りの少年を信用できなかった。転機はバレーボール大会。上手く仲間に合わせられなかったが、1試合勝ち、「嬉しい」と思えた。体育の腕立て伏せや腹筋は、誰かが遅れれば全員が見捨てずに待った。「生きるのは“孤立”のイメージだったのに、違う」と知った。指導してきた法務教官の杉山良治さん(53)は、「彼らは虐待等で家族から離れ、学校にも見放され、自分を諦めている」と言う。昨年、全国の少年院に入った少年は、貧困家庭が26%を占め、実父母が共にいるのは32%に留まった。9月下旬、自民党が少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げるよう政府に提言した。昨年は全国の少年院で42%を占めた18~19歳がいなくなるのを、杉山さんは懸念する。「『もうすぐ大人だ』とわかっている世代だから、一生懸命変わろうとする。その機会を残してほしい」

「捕まった時、『やっと見つけてくれた』と思った」――少女(19)の声が上擦った。女子少年院の『榛名女子学園』(群馬県榛東村)で9月末、取材に応じた。学校では優等生。「娘は自立している」と思い込んでいた親に、悩みを相談できなかった。「中学で勉強は一番になれない」と知った時、心が折れた。“不良で一番”を目指した末、薬物に手を出し、18歳で逮捕された。法務教官の加藤玲子さん(53)は、“子供返り”する少女を沢山見てきた。職員に抱き起してほしくて、何度も倒れる。「愛情に飢えた子供時代を埋め合わせている」。しかし、年齢が引き下げられると、18~19歳の薬物犯や窃盗犯は多くが罰金・執行猶予等で、そのまま社会に戻る。「初犯だった私なら執行猶予。絶対、再犯したと思う」。ここで何度も泣くことができたという少女は、そう言い切る。「少年院は犯罪者を甘やかしている」という被害者側の不信感は強い。多摩の男性の場合、轢いた相手は「更生して」と言ってくれたが、「普通ならあり得ない」と男性は認める。各地の少年院は、被害者の心情を理解させる教育に取り組む。だが約10年前、特殊詐欺に関与して多摩に1年間入所した男性(29)は、「教育プログラムで矯正できるとは思えない」と語る。「所内では誘惑を断ち切れるが、出たら直ぐ悪い仲間に誘われ、興味を惹かれた。流されなかったのは、仕事が決まっていたから」。杉山さんは9月の彼岸の集会で、「少年法が変わるかもしれない」と告げた。多くの少年が「ここで生き直すチャンスを貰えた」と訴えたが、「時代の流れですよね」と諦めたような声も漏れた。

■刑務所より手厚い教育
52ヵ所の少年院は今年8月現在、計2678人を収容。刑務所では、刑務官1人が50~60人を担当することもあるが、少年院は法務教官1人に2~5人程度で、手厚い教育を行う。2010年に少年院を出たうち、5年以内に再び少年院や刑務所に入ったのは21%。刑務所出所者の38%に比べると低い。ただ、少年の検挙人員に占める再犯者の割合は、2014年に過去最悪の34%に達した。


≡読売新聞 2015年11月18日付掲載≡


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テーマ : 少年犯罪
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