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【耕論】 異分子よ、いでよ 

安倍晋三首相が人事でライバルを取り込み、長期政権に向けた地歩を着々と固めつつある。1強のもとで一色に染まってゆく政治。それに抗する“異分子”はいないのだろうか。

■異論、受け入れる包容力を  常井健一さん(ノンフィクションライター)
内閣改造で石破茂前幹事長が安保法制担当相の打診を断り、安倍晋三首相に物申す「異分子」になるかと思われました。しかし石破氏は「組織人として従う」と入閣します。国民がいま政治に求めるのは安定だと考えた結果なのかもしれません。では自民党の組織人とは、“安倍1強”体制に身内から異議を唱えず、トップの言いなりになるような者を意味するのでしょうか。それは違います。
異分子とは“反主流派の派閥”のイメージがありますが、実は『青年局』という党組織も、異分子の宝庫でした。45歳以下の国会議員が全国を回り、同年代の地方議員や党員と会って声を吸い上げ、歴代首相や党幹部を突き上げてきた。古くは1973年、列島改造によるインフレが起きる中、田中角栄首相に格差是正を訴え、公共料金の据え置きを直言しました。小泉純一郎首相が再選した2003年の総裁選では、青年局主催で総裁候補による公開討論会を実施します。派閥単位ではなく、誰が総裁にふさわしいかを若手が見定める構図に変えたのです。ベテランの反対を乗り越え、テレビ中継され、以後、恒例行事になりました。

ところが最近、若手が声を上げない。例えば集団的自衛権。行使容認をめぐる首相の説明が足りないと指摘されています。「キャラバン隊を作り全国をまわって説明しよう」。そんな動きがあってもいいはずです。みんな“いい子”になっている。ポスター貼りのノルマを課し、行動計画表を提出させるなど執行部による管理が厳しく、萎縮した。公募での候補者選びが主流となり、政治未経験者が公認を得て追い風の選挙で大量当選した一方、“うるさ型”の地方議員らが国会議員になりにくくなったのも原因です。

そんな中、安倍首相に主張できる数少ない存在が小泉進次郎氏です。私は自民党が政権に復帰する前後の1年間、青年局長として全国を飛び歩く進次郎氏を追い、党再生を担う同年代と語り合う様子を取材しました。野党時代には、消費税率引き上げを決めた『3党合意』に対し、党執行部に破棄を迫りました。復興政務官就任後にも、2月の東京都知事選で党が舛添要一氏の支援を決めたことに「大義がない」と反対し、筋論で応援演説を拒んだ。最近は静かに見えますが、自分の言葉の影響力に気づき、“ありのまま”の言動を控えているだけです。決して政権幹部ににらまれるのを恐れたからではない。

強大な力を持つ安倍首相に進次郎氏が不都合な点を指摘する場面は必ずあるはずです。その時、どこまで異論を受け入れるか。異分子を排除するのではなく、自らを映す「姿見」とできるのか。保守本来の包容力が自民党に問われています。 (聞き手・渡辺哲哉)


とこい・けんいち 1979年生まれ。ライブドア・朝日新聞出版を経て、2012年からフリー。著書に『小泉進次郎の闘う言葉』『誰も書かなかった自民党 総理の登竜門“青年局”の研究』。







■自由な意見、豊かさへの道  森永卓郎さん(独協大学教授・経済アナリスト)
最近バラエティー番組のロケの仕事が多く、そこで出会った『富裕層』と話して気づいたのですが、株式や不動産を運用し、おカネにおカネを稼がせている人がほとんどでした。大成功した富裕層の有料セミナーや自己啓発本は相変わらず人気が高い。「おカネを稼ぎさえすればヒーローになれる」という空気が蔓延し、「自分さえ良くなればいい」と考える排他的な傾向は強まっていると思います。リーマン・ショックは、おカネにおカネを稼がせる金融資本主義の限界を露呈しました。日本経済が本格的に成長するには、国境を超えて魅力を発信する製品や時代を先取りするビジネスモデルの開発といった『イノベーション』を実現する必要がありますが、残念ながらその胎動を感じられません。

かつての日本は、『ウォークマン』など、ものづくりのイノベーションで世界に衝撃を与えました。実現できたのは、企業に挑戦する気風があふれていたからです。それを支えたのが終身雇用制などの社員のゆとりを守る仕組みでした。パナソニックの創業者、松下幸之助さんは「一日教養、一日休養」という言葉を掲げ、日本企業の先駆けとして週休2日制を導入しました。社員の才能を開花させるには幅広い視点を育む教養とゆとりが大切だと考えたのです。どんな業界であれ、アイデアや創造性を生み出すには、常識にとらわれない幅広い視点や異能がある“異分子”が欠かせません。異分子が組み合わさったとき、イノベーションが生まれやすい。かつての経営者は、すぐに利益に結びつかなくても、異分子を抱え続ける度量の広さがありました。

バブル崩壊後、働く人々を取りまく環境は厳しさを増すばかりです。安倍政権下で解雇を金銭で解決する道を開く制度や一定の収入がある場合は残業代を払わなくてもいい制度が議論されるようになりました。リストラにおびえ、疲れ切って上司の顔色をうかがう環境で異分子が生き残れるはずがありません。私自身、民間シンクタンクで働いていましたが、親会社の合併などの影響を受け、「やりたいことができない」と考え、退社しました。経済アナリストとして“平和と平等”の大切さを訴えてきましたが、金融資本主義や競争を重視する『構造改革派』やネット右翼などからの風当たりは強い。硬派な討論番組の出演依頼は減っています。

「時代の空気に迎合したら楽になれる」という悪魔のささやきが聞こえるときもあります。でも、自分の考えを曲げたくはない。異分子であっても、自由に意見をぶつけあえる風通しの良い社会をつくることが、偏った考えや判断の暴走を防ぎ、人々が豊かさを取り戻す近道だと考えているからです。 (聞き手・古屋聡一)


もりなが・たくろう 1957年生まれ。UFJ総研主席研究員などを経て2006年から現職。著書に『庶民は知らないデフレの真実』『“超貧困”時代 アベノミクスにだまされない賢い生き方』。

               ◇

■出る杭として盛り上げる  指原莉乃さん(アイドルグループHKT48)
私、秋元康さんから「お前はアイドル界の田中角栄だ」って言われるんです。この間、リリー・フランキーさんからも「角栄みたいな性格だね」って。伸びそうな若手に目をかけて自分の仲間を増やしていることが、派閥を大きくしていった角栄さんに似ているみたいです。私は頑張っている後輩への差し入れが大好きなんです。「レッスン、頑張っていたから」とさりげなくアイスやコーヒーを渡すんです。「さっしー、ありがとう」って感謝してくれるのがうれしい。私はHKT48劇場の支配人だし、コンサートでも後輩に厳しい。怖い人だけで終わらせたくないんです。せこいやり方かもしれませんけどね。

本当は正統派のアイドルを目指していました。AKB48の先輩ではあっちゃん(前田敦子さん)や(大島)優子ちゃんのような存在です。地元の大分でも「自分はそれなりにかわいいし、イケてる」と思っていた。だから中学3年のときにオーディションを受けました。でも会場ですぐに気づきました。「あれ、様子がおかしい」って。周りはあまりにかわいい子ばかり。自分に自信がある子でないと応募しないわけですから、当たり前ですね。「これは勝負できない」と思いました。私には正統派は無理。政治で言えば『自民党』のど真ん中で行きたかったんですけど、異分子でいくしかありませんでした。

私の自慢は切り替えが早いことです。テレビの企画でバンジージャンプが飛べず“へたれキャラ”になってしまいました。最初は嫌だったんですが、秋元さんは「日本人はかわいそうな人を応援したくなるから」と言うんです。そう見えるのなら否定せずにいこうと思いました。へたれゆえに“いじられキャラ”の枠にはまり、2年前のAKB48選抜総選挙で4位まで順位を上げました。が、その直後に週刊誌に“恋愛スキャンダル”を報じられ、福岡のHKTに行くことに。たくさんの“負”が重なりましたが、だからこそポジティブになろうって。私が移籍したことでHKTの露出も増え、知名度も上げられたんじゃないかと思っています。

ピンチの中にチャンスを見つける。大事なのは“逆転力”です。私も強くなりました。自分なりに土俵を替えながら勝負していくことで、翌年の総選挙で1位になることができました。私は正統派のように自分の力だけでセンターにはなれない。だから、ファンのみなさんに押し上げてもらっているんです。正統派への未練も消え、今はヒール(悪者)キャラ。ネットでいっぱい悪口を書かれますけど、出る杭は打たれる、ですよ。異分子がいたほうが盛り上がるでしょう。政治もそうなんでしょうね。キャラっぽい人、いないのかな。 (聞き手・安倍龍太郎)


さしはら・りの 1992年生まれ。2012年にAKB48からHKT48に移籍。HKT48劇場支配人を務める。2013年のAKB48選抜総選挙で1位に。近著に『逆転力~ピンチを待て~』(講談社)。


キャプチャ  2014年9月20日付掲載
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