【政治の現場・自民党60年】(03) 歴史認識、新たな火種に

自民党政調会長の稲田朋美が、「戦後の極東国際軍事裁判(東京裁判)等の検証の為、新たな組織を党内に設置する」と表明したのは、6月18日のことだった。その後の記者会見等で、「東京裁判で認定された事実をきちんと日本人自身が検証し、反省すべきことを反省し、将来に生かしていくことが必ずしもできていない」と語り、検証の意義を強調した。稲田は、「東京裁判の判決の主文自体は受け入れる」と述べたが、

①実行当時に無かった刑罰規定を適用する“事後法適用”が無かったか
②裁判で“20万人以上”と認定された南京事件の被害者数
③憲法の制定過程

等を検証するとした。これまでも党内で問題提起されたことはあるが、アメリカが主導した東京裁判に疑義を突き付けることは、日米関係の悪影響が容易に想定されることから、表面化することはなかった。稲田は、先の大戦の謝罪やお詫びを明記した村山首相談話を批判し、歴史認識問題では安倍首相と近い立場にある。安倍は、8月14日に閣議決定した戦後70年の首相談話では“侵略”を認め、“お詫び”も盛り込んだ。安倍を支持してきた保守層には不満も残った。

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検証組織は調整が進まないまま夏を越したが、稲田に諦める様子は無く、党内では「首相談話の“リベンジ”では」との懸念が広がった。稲田の元には、自重を求める声も相次いだ。先月、幹事長の谷垣禎一と会談した稲田は、「検証組織の運営を(谷垣に)委ねたい」と伝えた。谷垣は周囲に、「幅広く近代を学ぶ勉強会だ。憲法制定過程の検証等、一切受けない」と語り、歴史の検証は行わない考えを示している。歴史認識を巡る自民党内の相克は、これまでも繰り返されてきた。村山内閣当時の1995年6月、衆議院で可決された戦後50年決議を巡っては、自民党内が割れ、大勢の議員が抗議の為に本会議を欠席した。当時、当選1回の安倍は反対を表明しようとしたが、「将来のことを考えろ」と安倍を諌めたのが、旧三塚派(現在の細田派)の中堅幹部で、後に首相となる小泉純一郎だった。戦後日本は“侵略の非”を認めるところから出発しており、小泉は安倍に、「こうした認識を否定すれば、リーダーになれない」ことを伝えようとしたと見られる。安倍は結局、欠席に留めた。今月10日の衆議院予算委員会で質問に立った稲田は、安倍を前に「政治家も歴史の認識を深め、言うべきことは言い、反省すべきことは反省し、総括すべきだ。その為の議論を、我が党でも始めたい」と宣言した。組織のトップは谷垣に譲ったが、“検証”の重要性には拘る。“ポスト安倍”にも名前の挙がる稲田が仕掛けた歴史を巡る論争は、新たな火種となって党内に燻っている。 《敬称略》

■東京裁判批判、安倍首相は封印
日本の戦争指導者に対する責任追及は、戦勝国に依る1946~1948年の東京裁判で行われた。裁判の結果、28人が起訴され、東条英機元首相ら7人が死刑、16人が終身刑、2人が禁錮刑の有罪判決を受けた。日本は1951年に連合国と締結したサンフランシスコ講和条約で、東京裁判を受諾した。安倍首相は嘗て、日本の戦争犯罪を連合国が一方的に裁いた“東京裁判史観”や、村山首相談話への批判を繰り返し、欧米の一部から“歴史修正主義者”との評を受けた。ただ、こうした発言は首相就任前や野党時代に集中し、首相在任中は粗封印している。


≡読売新聞 2015年11月21日付掲載≡


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