【少年法の岐路】(06) 18~19歳“保護”判断、誰が…家裁調査官の活用、焦点

20151123 12
「誰かを傷つけようとは思っていなかった。とても恥じている」――7月、ベルリンの少年裁判所の法廷。男性被告(22)は、20歳で車からラジオを盗み、警察官に石を投げたことへの反省の言葉を並べた。だが、少年福祉の専門官が就任する“少年審判補助者”は、被告について「肯定的な変化は見られない」と厳しい意見を述べた。女性判事のレギナ・ヘンツェ裁判官は、「両親から経済的に自立し、成熟の遅れは見られない」として、禁固8ヵ月・執行猶予2年の判決を言い渡した。ドイツの刑事手続きでは、18~20歳を成人と少年の間の“青年”と位置付ける。原則公開の裁判で、青年に有期刑等の刑罰を科すか、少年と同様の保護処分とするかを裁判官が判断する。ヘンツェ裁判官は、「青年の年齢層は、被告に依って精神的な成熟度が大きく異なる。更生の可能性を含め、裁判官で慎重に見極めることが大切だ」と語る。自民党は9月、少年法の適用年齢の引き下げを提言する一方、18~19歳については少年院送致等の保護処分も選択できる仕組みの検討を求めた。念頭にあるのが、ドイツの制度だ。「18歳以上を全て刑罰の対象にすると、未熟な若者に矯正教育を施す機会が失われる」という懸念が背景にある。ただ、「保護処分にするかどうかを、誰が判断する制度にするかが難しい」と、ある刑事裁判官は語る。検察が起訴前に判断する制度だと、弁護士会等が「公正さが保障されない」と反発するのは必至だ。一方、起訴後に地裁が判断する制度にした場合も、地裁にはドイツの少年審判補助者のような専門家がいない。今後の法改正の議論で焦点になると見られるのが、家裁調査官の活用だ。

2012年2月、福岡地裁の裁判員裁判。北九州市内で仲間と一緒に男性を襲い、財布等を奪う事件を繰り返し、強盗致傷罪に問われた男性被告(事件当時18)に対し、「保護処分が相当」として家裁に戻す異例の決定が出た。最初に家裁が審理した段階で、家裁調査官が「更生可能性が認められる」等と調査票に記載していたことが、重要な証拠となった。弁護人を務めた阿野寛之弁護士(40)は、「地裁が保護処分の適否を決めるなら、家裁調査官の専門知識を生かすべきだ」と話す。現在、18~19歳が刑罰を受けるのは、殺人や強盗致傷等の重大事件だけだが、年齢引き下げが実現すれば対象は大きく広がる。全国7ヵ所の少年刑務所が、その立ち直りを担う。川越少年刑務所(埼玉県川越市)で受刑中の男性が今年9月、取材に応じた。被害者を暴行して死なせ、服役して間もなく3年。刑務官から「遺族の恨みは消えない。ちゃんと生きる責任がある」と強く諭され、目が覚めた気がした。「受け入れてくれるなら、遺族に謝罪したい」と言う。刑務官の矢田豊さん(56)は、「問題を起こすと刑務所は懲罰を科すが、ここでは教育の為に手を差し伸べる必要もある。入所者が多様になれば、処遇は一層難しくなる」と課題を語る。元裁判官で立教大学の広瀬健二教授(刑事法)は、「保護処分を選択できる年齢を23歳程度まで広げることも考えられる」と、20歳前後では刑罰と教育を柔軟に使い分けることを提案した上で、こう指摘する。「厳罰化を求める被害者も、更生を重視する立場の人も、『2度と同じような犯罪が起きてほしくない』との思いは同じ筈。その願いに応えられる制度設計が求められる」 =おわり

■50家裁に1600人配置
家裁調査官は、心理学や社会福祉学等の専門知識を持ち、50家裁に約1600人が配置されている。少年本人や保護者・学校等からの聞き取りを基に、成育歴や生活環境等を調査し、意見を添えて裁判官に報告する。家裁はこれを参考に、刑罰を科す為に検察へ逆走するか、保護処分とするかを決める。

               ◇

柏原諒輪・小泉朋子・倉茂由美子・駒崎雄大・工藤武人が担当しました。


≡読売新聞 2015年11月23日付掲載≡


スポンサーサイト

テーマ : 少年犯罪
ジャンル : ニュース

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR