【私のルールブック】(28) 「本気で考える」を真剣に考える

小欄で映画批評などするつもりはなかったのだが、どうしても紹介したい作品と出会っちゃったんだから、仕方がない。それは…『セッション』。ご存知の方も多いとは思いますが、本年度のアカデミー賞で3部門を獲得した注目作である。いや~痺れましたね。完璧主義の鬼教師と天才学生ドラマーとのセッション(=バトル)は、どんなアクション映画よりも息詰まる緊迫感に満ち溢れておりました。ただ、今回何故この作品を取り上げさせて頂いたかと言いますと、何も褒め称えたかった訳じゃないんです。私が本作品を観て強く感じたことは…教え方・伝え方の難しさ。鬼教師の教え方がエグいのなんの。言葉の暴力は当たり前、必要ならビンタも辞さず、シンバルまで投げつけちゃう始末。今の御時世なら、大問題になって即クビですよ。でも、一方で男の子のドラムの腕は確実に上がっていく訳です。

男の子だって上手くなりたくて門を叩いた訳ですから、お互いの利害関係は一致している。ただ、まさかここまで追い込まれるとは思っていなかった。逆に、教師のほうもそこまで男の子に執着するつもりはなかったのかもしれない。結果、どちらも引くに引けず、最後は壮絶な結末を迎えてしまうのですが…。私も子役を育てる立場にあり、かなりリアルに考えさせられました。結果主義に徹するやり方もアリだと思うんです。本人並びに親御さんとの了解が得られていれば。とはいえ、本人といってもまだ子供。親御さんが「ビシバシ鍛えて下さい」と言ったとしても、鵜呑みにすることはできません。何より、教える作業において体罰は必要ありませんから。言葉で充分な訳です。当然、言葉だけでは中々伝わらない子もいます。必然的に時間が必要となる。けど、それがその子の時間の流れであり、「力尽くで私の時間軸に引っ張り込むのは、教える側の手抜きではないのか?」と私は考えます。百歩譲って、条件付きでスポーツ系ならアリかな~。条件というのは、「うちの学校は、かなりの確率で甲子園に行くことができます。但し、甲子園に行くぐらいですから、場合に依っては体罰もあるかもね。それでもいいなら、うちにおいでよ」ってね。




こういうことを書くとまた怒られちゃうかもしれませんが、“体罰”と一口に言っても幅がありますから。致命傷に及ぶような体罰は、体罰でも何でもなく“犯罪”です。抑々、“体罰”って言葉がな~。私が学生の頃は普通にありましたし、体罰なんて思ってもいませんでしたから。悪いことをやって、それが先生にばれて拳骨で殴られる。定規で尻を叩かれる。廊下に立たされる――当たり前のことが、今となってはクレームの対象となってしまった訳で…。そういった意味では、本気で教えることが難しくなってしまったのかもしれない。いや、「本気で教える方法論がかなり限られた時代」と言ったほうが正しいのかな? でもね、めげてても仕方ないんで、私はこうするようにしているんです。「本気で叱る」「本気で褒める」「安易に怒らない」「安易に子供に擦り寄らない」…。綺麗事ではなく、本気でぶつかればワンちゃんにだって通じるんです。人間に通じない訳がない。但し、本当の本気じゃないと駄目。叱るのが苦手な人は、演技力を磨いて下さい。演技でも本気であれば、必ず伝わるから。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2015年11月26日号掲載


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テーマ : 俳優・男優
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