2015年の錦織圭は伸び悩んだのか?――怪我や全米オープンの初戦敗退でも、世界8位の凄さを知るべし

20151128 18
錦織圭選手の2015年シーズンが終了した。昨年は17位で始まり、右肩上がりに5位で終わった。今年は5位で始まり、短い期間4位を記録したものの、8位で終わった。これを、世間のスポーツ報道は恐らく、「伸び悩み」「停滞」「後退」と言うのだろう。実態はどうなのか? ランキングや個別トーナメントの結果は、自分の成績と相手の成績の両方で見る必要がある。錦織は停滞していたのか? 錦織自身の成績を昨年比で見る。ランキング算出は複雑な計算が含まれるので、ここでは“出場した全個人戦での獲得ポイントの合計”で比較する。5135(2014年)が4325(2015年)と810ポイント減となった。年間ツアー4勝(2014年)が3勝(2015年)になったが、失ったのは250ポイント(クアラルンプール大会)であり、メンフィス大会とバルセロナ大会は連覇し、2014年の東京大会(楽天ジャパンオープン)を失った分はワシントンDC大会で獲得している。ランキングポイントも賞金も別格に大きい4大大会は、1~2月の全豪ベスト16がベスト8に、5~6月の全仏1回戦がベスト8に、6~7月のウインブルドン(全英)ベスト16が2回戦に、8~9月の全米準優勝が1回戦に…と其々入れ替わって、4大大会の合計は差し引き795ポイント減となる。全米オープンだけ見れば1190ポイント減なので、残りの3大会で395ポイントの増だ。そして、上記以外のランキング対象大会は今年12大会、昨年比2大会増で235ポイント増、しかも2年連続出場したツアー最終戦(ロンドン)で昨年比200ポイント減なので、それ以外の11試合で435ポイント増、しかも上記の通り、ツアー優勝も4大大会も含まれていない。これは、各大会を昨年と全く遜色なく勝ち上がったことを意味する数字である。特に、昨年出場していないアカプルコ大会準優勝・モントリオール大会ベスト4がプラス要因になっている。技術面では、昨年比で唯一変わったのがサーブのレベルアップだ。年間でサービスエース(即得点)が9本増(286→297)、ダブルフォルト(即失点)が31本減(186→157)、それで総試合数が2試合しか増えていないので、全体の半分を占めるサービスゲームの展開がより楽になった筈だ。但し、そのサービスゲームのキープ率も含めて、他の数値は驚くほど変わっていない。伸びていないのでなく、技術的に完成したと見る。マイケル・チャンコーチの仕事は、完成した技術のまま個々のポイントをもっと取れるようにすることとなる。

怪我は、相変わらず錦織について回っている。今年は棄権を含めて4試合(ハーレー大会・全英オープン・モントリオール大会・パリインドア大会)を負傷で棒に振り、シンシナティ大会を欠場している。脹脛・臀部・肩・腰から脇腹と、新たな箇所も痛めた。2014年も、春先に股関節を痛めて3試合(デルレイビーチ・インディアンンウェルズ・マイアミの各大会)を棒に振り、夏に足指の軽い手術でシンシナティ大会を欠場して、全米オープン準優勝は手術後のぶっつけ本番であった。ランキングを争っている相手選手たちはどうだったか。今年のツアー最終戦の出場者(上位8人)で間もなく26歳の錦織は最年少、昨年出場した同世代のチリッチ選手(クロアチア)とラオニッチ選手(カナダ)は落選し、ディミトロフ選手(ブルガリア)やゴフィン選手(ベルギー)等はまだ届かず、次世代のトミック選手(オーストラリア)、キルギオス選手(オーストラリア)、ティエム選手(オーストリア)等もまだ姿は見えない。一方、嘗て錦織が何度も倒しながら追い越してきた年上のベルディッヒ選手(チェコ)やフェレール選手(スペイン)が上位に復帰すると共に、1年前からの怪我の癒えたマレー選手(イギリス)とナダル選手(スペイン)が、“バブリンカ選手(スイス)も含めたビッグ5”の定位置に戻ってきた中での錦織の8位である。今年、錦織が自分より上のランキングの選手に勝ったのは、ツアー最終戦でのベルディッヒ(6位)戦1試合だけで、上記“ビッグ5”を続けて倒すような画期的な戦績は何も残せなかった。しかし、毎週変動するランキングの中で、結果として4位~8位の幅だけで1年間を戦い切った。恐るべき安定性と言わざるを得ない。2年間の流れを追えば、2014年後半の勢いを2015年前半もそのまま維持し、後半が稍昨年比で見映えがしなかったということを以て、「錦織の低迷。全米オープンくらい何故優勝できない? 東京まで負けちゃってどうしたの?」といったスポーツ報道一般の印象なのだろう。錦織本人も、ベルディッヒ戦で漸く「自分のテニスを取り戻していくきっかけになる」と言っており、恐らく、2015年を会心の1年とは総括しないだろう。




しかし、結果を伸ばす年と滞る年は誰にでもある。今年、テニス界に君臨したジョコビッチ選手(セルビア)は嘗て、4年連続の“万年3位”を続けた。現在、世界2位のマレーこそ“世界最強の伸び悩み選手”であろう。34歳にして新境地の超攻撃テニスを展開する3位のフェデラー選手(スイス)も、ジョコビッチの充実の前に、4大大会18勝目に中々手が届かない。錦織の2015年は、「全英オープンを負傷棄権しても、全米オープンで“初コケ”しても、昨年優勝の東京で勝てなくても、何度怪我をしても、本物のトップ10プレーヤーはこのようにワールドツアーを戦い抜くのだ」という新たな姿を見せてくれた点において、「関係者一同恐れ入った1年」と総括したい。そして、4大大会初制覇・世界ランキングの高み(3位以上)・日本代表(デビスカップ)の高み(ベスト4以上)を目指した錦織の戦いは、リオデジャネイロオリンピックという余分なハイテンションも加わって、2016年も続く。


倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 『日鉄住金総研㈱』研究主幹。1969年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、『㈱電通総研』『㈱日本総合研究所』を経て、2014年4月より現職。専門はメディアビジネス・自動車交通のIT化。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』(共に山海堂)等。


キャプチャ  2015年11月27日付掲載


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