【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(41) 現代アートやテロが“ダルい民主政治”を変えられない理由

過激なパフォーマンスで知られるロシアの現代アーティストのピョートル・パブレンスキー氏が今月9日、モスクワのロシア連邦保安局(旧KGB)本部の扉に放火して警察に身柄を拘束されました。パブレンスキー氏は、2013年にもモスクワの『赤の広場』の石畳に自身の陰嚢を釘で打ち付ける“作品”を披露し、現代のロシア社会の無力感・政治的無関心を“表現”していますから、今回の行動にも同様の意味が込められているのかもしれません。こうした過激なパフォーマンスを行うアーティストは世界中に存在しますが、その源流は、約100年前に興った“ダダイズム”という芸術運動に遡ります。その思想を一言で言えば“虚無”です。当時は第1次世界大戦が起き、驚異的な技術革新に依って生まれた大量殺戮兵器が初めて実戦で使用され、多くの死者が出た時代。その虚無感から、ダダイストと呼ばれる芸術家たちは既成の価値観や秩序を破壊することを訴え、前衛的なアート作品を作ったのです。

この運動は多くの共感を呼び、一時は世界的な広がりを見せました。しかし結局、「現状を打破できれば青い空が待っている」という彼らの希望は打ち砕かれ、世界は第2次世界大戦へと突き進んだのですが…。急激な変化への期待。そこには、必ず“光と影”があるものです。革命を訴える様子はとても輝いて見えるのに、実際に変化が起き、新たな秩序を作らなければならない段階では、殆ど全ての運動は行き詰まり、望んだ結果は得られない。例えば先日、ミャンマーの総選挙でアウン・サン・スー・チー氏率いる『国民民主連盟(NLD)』が大勝しましたが、恐らく今後、スー・チー氏はこれまでのような“歯切れのいい言葉”“気持ちいい言葉”だけを発し続けることはできない。長期間対立してきた軍政側を完全に無視することもできず、悪く言えば“馴れ合い”“足して2で割る”ような政策を実行していくでしょう。その一方で、国際社会に対しては“いい顔”を見せようと、投資環境を整えたり、中国より遥かに安い労働力を積極的にアピールしたり…ということになっていく筈です。




これは、スー・チー氏の資質の問題ではありません。本質的に、民主政治とは保守的で、動きが遅く、ドラスティックな決定ができない“ダルいもの”。革命ではない方法で、バラバラな意見を取り纏めて普遍的なルールを作る作業は、言ってみれば妥協の連続なのです。「本当の正義は、そんなグダグダなところにはない。大きな“悪”は構造の中にあり、妥協から解決は生まれない」――そう言いたい人もいるでしょう。そして、その見立てはある部分では正しいと思う。ただ、そういったアナーキズムには危うさが付き纏うことも理解する必要がある。正義を叫ぶ時に解き放たれる“魔物”を、本当にハンドリングできるのか? それを制御できず、暴力的な行動に出るのがテロリストなのですから。「民主主義は最悪の政治形態だ。これまでに試されてきた他の全ての政治形態を除けば、だが」。イギリスのチャーチル元首相の言葉には、そういう意味が含まれています。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『チャージ730!』(テレビ東京系・不定期)等に出演中。


キャプチャ  2015年12月7日号掲載


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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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