【九州地銀・冬の陣】(下) 九州地銀再編、3つのシナリオを大胆予測!

3極体制が鮮明となった九州の地方銀行界。有力地銀を惹き込みたい受け皿側と、取り残されたくない単独行側…。双方の思惑が交錯する中、取材を基に起こり得る再編シナリオを予測する。

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【シナリオ1】『西日本シティ銀行』が近隣の地銀を取り込んで“福岡銀行包囲網”を形成
「50年来となる首脳陣同士の親交が、次の再編の鍵になる」――そんな観測が、九州の地方銀行界で囁かれている。“首脳”とは、共に福岡県を地盤とする西日本シティ銀行会長の久保田勇夫と、『筑邦銀行』(福岡県)会長の井手和英だ。同じ年に生まれ、東京大学法学部の同窓生。しかも当時、福岡県学生会館の男子寮『英彦寮』で友情を育んだ寮友だ。そんな濃密な縁に依り、「両行が手を組むのではないか?」と見られているのだ。 この観測に真実味を与えるのが、過去に存在した“幻の再編交渉”だ。西日本シティ銀行は、2004年に旧『西日本銀行』と旧『福岡シティ銀行』が合併して誕生したが、その裏で「筑邦銀行の合流工作が進んでいた」(西日本シティ銀行関係者)。福岡県南部が地盤の筑邦銀行を取り込むことで、九州のガリバー地銀である『福岡銀行』(福岡県)の「包囲網を形成する狙いがあった」(同)。しかし、発表のタイムリミットまでに筑邦銀行を口説き落とせなかった。そこで、旧2行は門戸を開けておく意図で、持ち株会社設立に依る経営統合を発表する。結局、筑邦銀行の合流は雲散霧消。持ち株会社設立も幻と消え、最終的に旧2行は合併するのだが、ここに来て再び西日本シティ銀行が持ち株会社設立に動いている為、「今度こそ」という見立てだ。ただ、福岡銀行は『熊本銀行』(熊本県)・『親和銀行』(長崎県)を救済統合した為、当時より遥かに強大。そこで、筑邦銀行とシステムを共同化している『十八銀行』(長崎県)と『佐賀銀行』(佐賀県)も合わせ、「3行同時再編を狙う」との声もある。十八銀行と佐賀銀行は、旧大蔵省OBを頭取や会長に招いてきた歴史があり、西日本シティ銀行とは大蔵人脈を通じて「気心が知れている」(西日本シティ銀行幹部)。3行が加われば、単純合算で総資産は約14.5兆円となり、『ふくおかフィナンシャルグループ』の背中も見えてくる。地理的にも南から筑邦銀行、西から佐賀銀行がふくおかFGにプレッシャーをかける形となり、嘗ての包囲網構想が時を経て実現することになるという訳だ。しかし、これには九州FGが待ったをかける。特に、十八銀行は他グループに渡さない筈だ。十八銀行は、『鹿児島銀行』(鹿児島県)が開発した“キーマン”という営業系システムを共同利用している。このキーマンは評価が高く、「十八銀行が再編でこれを捨てることはない」(地銀関係者)とされる。そんなシステムが同じ縁で、鹿児島銀行と十八銀行は定期的に互いの地元を行き来して、役員懇親会を開いている。

鹿児島銀行は『肥後銀行』(熊本県)とも役員懇親会を開いており、これが九州FG設立に一役買った。その為、十八銀行との間で歴史が繰り返されても不思議はない。更に、九州FGの傘下2行と十八銀行は、『つばさ会』という部長クラスの研究会を開いている。その関係から、「2行の経営統合交渉が大詰めを迎えた段階で、肥後銀行の頭取である甲斐隆博が十八銀行の首脳の元を訪れ、仁義を切った」という話も漏れ伝わる。十八銀行としても、県内トップとは言え、ふくおかFG傘下で再建した親和銀行に肉薄され、『ゆうちょ銀行』のシェアも高いことから、首脳同士の信頼が深いグループへ合流するのは自然の流れだろう。こうした状況になれば、焦るのは『宮崎銀行』(宮崎県)だ。周りには敵が多く、合流できる受け皿が限られるからだ。先ず、鹿児島銀行と県を跨ぐ営業合戦を繰り広げている為、九州FGへの合流は難しい。抑々、2行は共に『日本銀行』OBを頭取に迎えてきた地銀として、「非常に親しい関係だった」(鹿児島銀行幹部)。それが、宮崎銀行の現会長である小池光一の頭取就任を機に変わったとされる。小池は日銀時代に鹿児島支店長を務めたこともあり、鹿児島銀行の頭取就任の筋も考えられた。だが、鹿児島銀行では3代前の頭取だった大野芳雄が、自らの代で日銀との決別を決断し、手を打つ。結果、小池は宮崎銀行の頭取に就任するのだが、こうした経緯が、鹿児島銀行に対する小池の対抗心に火を付けたとも言われる。真相はどうあれ、これ以降の2行の関係悪化は衆目の一致するところだ。また、西日本シティ銀行とも歴史的に関係が悪い。西日本シティ銀行は、1984年に宮崎県の『高千穂相互銀行』を救済合併。その為、宮崎県に店舗網を持ち、宮崎銀行と激しく戦ってきた。2013年には宮崎支店を宮崎営業部に昇格させ、営業攻勢を更に強めたこともあり、西日本シティ銀行グループへの合流も考え難い。となると、宮崎銀行にとって残る選択肢はふくおかFGのみとなる。現段階で、宮崎銀行は独立路線の堅持を掲げているが、再編ドミノが倒れ始めれば、いつまでも強気ではいられないだろう。




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【シナリオ2】相互不可侵条約結び…大分銀行が九州FGへ、慶應同期3人衆集結
シナリオ1では、西日本シティ銀行が3行同時再編を仕掛けるも、十八銀行が離脱したケースを想定したが、仮にそうならなかった場合、九州FGは規模で大きく引き離される。その時、重要なピースになるのが『大分銀行』(大分県)だ。大分銀行頭取の姫野昌治は、学部こそ違うものの、九州FG傘下2行の頭取と同じく慶應義塾大学の同期であり、同窓の地銀頭取たちで作る『地銀頭取三田会』でも親交を深めている間柄だからだ。実は、大分銀行は、前述した宮崎銀行とは別の理由で合流できる受け皿が限られる。先ず、同じ大分県内の『豊和銀行』を支援している西日本シティ銀行とは難しい。地銀幹部からは、「豊和を支援しているからとは言え、全く無い話ではない」との見解も聞かれるが、豊和銀行は公的資金注入行。「少なくとも、返済の道筋を付けるまでは、金融庁が首を縦に振らない」というのが大方の見方だ。もう1つの選択肢であるふくおかFGとは、昔から日本銀行OBを頭取に迎えていた縁で仲がいい。しかし、大分銀行は姫野が頭取に就任して以降、県外融資を絞り、地元回帰を打ち出したことで、金利を叩き合う消耗戦からの脱出に成功しつつある。再編を決断する場合、こうした地元密着の経営戦略や独立性の尊重は、大分銀行が譲れないポイント。その為、経営の一本化方針を掲げるふくおかFGとは組み難い。となれば、こうした条件をクリアできる九州FGが、最も相性のいい組み合わせと言えるのだ。

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【シナリオ3】公的資金返済絡めた“ウルトラC”…第2地銀連合の結成
最後に、十八銀行がシステムを同化している2行を引き連れ、親和性の高い九州FGへ合流したケースを考えてみよう。この場合、シナリオ2とは逆に、西日本シティ銀行が九州FGに規模で差をつけられる。そこで“ウルトラC”として登場するのが、西日本シティ銀行が“第2地銀連合”を傘下に収める案だ。この中には、既に支援している豊和銀行に加えて、『南日本銀行』(鹿児島県)・『宮崎太陽銀行』(宮崎県)と3行の公的資金注入行が含まれる。西日本シティ銀行頭取の谷川浩道は、近畿財務局の金融安定監理官として公的資金を注入した金融機関に再編を促す等して、金融システムの安定確保に尽力してきた。そうした経験を鑑みると、公的資金注入行の後始末に期するところがあるのではないだろうか。また、西日本シティ銀行の出自が第2地銀である点も重要だ。第1地銀と第2地銀の間には、大きな壁が存在する。規模や健全性だけでなく、営業スタイルや文化も異なり、両者の間の交流も乏しく、粗断絶状態だ。その為、自らへの理解がありそうな西日本シティ銀行は、第2地銀にとって組み易い相手なのだ。ただ、西日本シティ銀行も株主ら利害関係者がいる手前、“慈善活動”はできない。会計のテクニックを駆使した税務負担の軽減を金融・税務当局が認める等、相当の見返りを得られることが実現の必須条件となる。ここまで再編が進めば、残りの大分銀行・宮崎銀行・『福岡中央銀行』(福岡県)がふくおかFGに合流し、完全な3極体制に移行する可能性が高い。福岡中央銀行は代々、福岡銀行から頭取を迎えており、「実質的な子会社」と評される。また、大分銀行・宮崎銀行は、今年10月にふくおかFG傘下3行と共に“九州観光活性化ファンド”への出資を表明。その発表日が九州FGの設立日と同日だった為、「新たな再編の組み合わせか?」と地銀界を慌てさせた経緯もある。ここ数年、空前の好決算に沸く地銀界だが、それはアベノミクスに伴う株高と、融資先の経営悪化が少なく済んだことに依る与信コストの低下が要因で、真の実力とは言い難い仮初めの好決算だ。その為、状況が変われば一気に逆回転を始める恐れがある。そうなれば、想定よりも早く、更に大胆な形で再編は動き出す筈だ。 《敬称略》

               ◇

鈴木崇久・田島靖久が担当しました。


キャプチャ  2015年12月5日号掲載


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テーマ : 銀行
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