【裏切り・化血研不正】(04) 患者の不安重く…手術延期、他社製品使用も

20151213 04
「薬は患者の命に直結するもの。『重大な責任を負っている』という認識が欠けているとしか思えません」。患者の母親は今月上旬、『荻窪病院』(東京都)理事長の花房秀次医師(60)に訴えた。息子は、出血性疾患の『フォンヴィレブランド病』。今年7月に骨移植の手術を受けることが決まり、この病気に唯1つ止血効果のある、一般財団法人『化学及血清療法研究所』の血液製剤『コンファクトF』を手術中に使う予定だった。だが6月、化血研が未承認の方法で血液製剤を製造していたことを知らされ、手術を延期した。子供の成長を考えれば、手術は待ったなしだ。化血研に問い合わせても、返事は無い。説明に訪れた化血研の担当者に花房医師が、承認書に記載の無い添加物の種類を尋ねたが、「国の委員会に説明するまで答えられない」の一点張り。「先ず、患者と向き合うべきだ」。現場軽視の姿勢に愕然とした。血液製剤の工程で第三者委員会が認定した31件の不正の中で、専門家が最も注目したのは、製造工程の“上流”で抗凝固剤のヘパリンを添加したことだ。ヘパリンが製品に残留すれば、出血し易い血友病やフォンヴィレブランド病の患者には命取りになりかねない。報告書に依ると、添加は1989年頃、国の承認を得る為の臨床試験中に起きた問題を回避する為の苦肉の策だった。日本薬科大学の山口照英客員教授(65)は、「製造工程の中で粗除去されており、承認書の変更を国に申請していれば問題にならなかった」と指摘する。だが、化血研は「やり直しを指示され、市販の遅れが生じる可能性がある」(報告書)等として、この工程を隠したまま臨床試験を続行した。

ヘパリンは、ワクチンの製造過程でも使われていた。ポリオ等の感染を防ぐ4種混合ワクチン。予防接種法で受けるべきだとされる定期接種の1つだ。血液製剤の不正発覚を受けた調査で、承認書に記載せずに成分の抽出に使っていたことが発覚した。厚生労働省は9月に出荷自粛を要請したが、ヘパリンの残留量が検査限界以下等として、2ヵ月後には解除した。だが、現場では混乱が続く。東京都文京区の『細部小児科クリニック』。1歳7ヵ月の次女を連れて接種を受けに来た女性(43)は、「将来、娘に万が一のことがあるかもしれない」と別の会社のワクチンを選んだ。細部千晴院長(53)は、「思った以上にお母さんたちの不安が大きい」と話す。長年、化血研のワクチンを使ってきたが、今後は9日に発売されたばかりの別の会社の製品に切り替えるという。無断で工程を変更し、隠蔽工作を重ねた化血研。第三者委員会の報告書は、「『製造方法を改善しているのだから、当局を誤魔化しても問題はない』という独善的な“研究者の驕り”が、不正の根幹だ」と結論付けた。本来なら、違法な工程の見直しが先決だが、厚労省は大きな副作用報告が無いこと等を理由に、一部出荷を認めざるを得ない。「とても許される行為ではないが、我々の薬の選択肢は限られている」。関西地方の血友病の男性は、苦渋の表情を浮かべた。だが、研究者の暴走は深刻な薬害の温床でもある。花房医師は言う。「多くの患者さんが不安に思いながら使っている。それを肝に銘じるべきだ」 =おわり

■「代替なし」、出荷認める
今回の不正発覚を受け、厚労省は化血研の全ての血液製剤と4種混合ワクチンについて、ヘパリン残留量を検査。「何れも検出限界以下か極微量で、基準値以下だった」としている。インフルエンザワクチンは、添加物として加えた塩化ナトリウム(食塩)の濃度が承認書と異なっていたが、問題が無いことを確認した。残りのワクチンは調査中で、出荷は自粛されている。血液製剤は原則的に出荷を停止しているが、厚労省は、『コンファクトF』を含む5製品12品目については「代替品が無い」等として、出荷を認めている。


≡読売新聞 2015年12月12日付掲載≡


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