年収1億からドン底へ、周りが全部債権者に見えた…それでもまた成功したい!――『マネーの虎』たち、転落後の地獄の10年を全告白

「ノーマネーでフィニッシュです」。俳優・吉田栄作(45)の声が冷たく響く。絶望・諦め・号泣……様々な表情を浮かべるチャレンジャー(出資希望者)に、虎たちが容赦なく吠える――。「その顔としゃべり方が、めっちゃ腹立つ。開き直ってるじゃないですか。謙虚になれよ!」「あなたは悪意のない泥棒だよ。悪意のない泥棒が、一番タチ悪い」「ヒジョーに浅い、人間が浅いわ」。ITバブル最中の2001~2004年に放送された異色の“投資バラエティ番組”『マネーの虎』(日本テレビ系)。各業界で成功した経営者=“虎”たちが時にキバを剥き、時にネコになりながら提案された新事業を審査し、出資するかどうかを決めていた。毎週、辛辣な意見で出資希望者をこき下ろしてきた“虎”たち。番組終了から10年が経過した今、彼らはどこで何をしているのか。

とんこつラーメン店『なんでんかんでん』で一世を風靡した、川原浩史(50)。絶頂期には年収1億円超を稼ぎ出していた。当時よりも痩せたが、ギラギラした眼光は変わらない。「あの頃は、街を歩いてるだけで話しかけられるようになったね。突然『ごちそうしてくれ』って言われて、牛丼をおごったこともあるよ。ピーク時は年商3億、僕の給料も月に1000万くらいはあったからね。番組に出演できなかった人が、直接店に融資のお願いをしにくることもありました。実際に出したこともありますよ。“被るだけで毛が生える帽子”とか。2000個作ったけど、全然売れずに今も残っていて、大損。1個3000円で作ったから600万。講演会などで手売りしたけど、まだ千数百個残っているんです。売り方を変えてもう1回売り出しますよ」




本業では、環七沿いに出店した本店を2012年に閉店。客の路上駐車が原因で死亡事故が起きたこともあった。「路上駐車の取り締まりが厳しくなったことと、若者の車離れもあって、幹線道路沿いの店は客が入りにくくなった。1日の売り上げが10万円とか、ピーク時の10分の1くらいになってしまって、なんとなく情けなくなったんです。それで、渋谷の近くに店を借りる予定だったんだけど、新しいビルのオーナーが『とんこつの臭いがきついから、ビルの14階まで換気扇をつけろ』と言ってきた。見積もりをとったら400万、家賃も値上げされて45万円と言われて、立ち消えになったんです。今はライセンス契約のお店が何店かあるくらいかな。借金も数千万円くらいはあります。フランチャイズの責任者が逃げた分の損失や、催眠術バーを作ったのに区の条例だかに引っかかって営業ができなかったときの損失が大きいね。番組での出資も、400万~500万くらいは回収できてないんじゃないかな。まあ、ある程度の損は織り込み済みだったけど」。現在は歌手・タレント活動をこなす傍ら、アボカドで育てたブランド豚のプロデュースや手品グッズの販売を考えているという。「催眠術を11年くらいやっているんですが、その師匠が催眠術をかけやすくする手段としてマジックもやっている。それで僕もマジックを勉強して、今度グッズを販売します。練習いらずの手軽で面白いマジックが楽しめますよ」。手品グッズで成功して、『なんでんかんでん』直営店の復活を目指すという。

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エンターテイナーとしても活躍中。なんでんかんでんTシャツを着て、記者にマジックを披露する川原。使用する『ミスターなんでんかんでんの一発でオンナを口説けるマジックセット』(仮)は、発売時期未定。価格は5000円(仮)。

飲食業を目指すチャレンジャーに厳しい指摘を投げ続けた元エイチワイシステム社長の安田久(52)は、番組終了後に倒産。現在も外食にこだわっている。

――番組出演のきっかけは?
「人づての紹介でプロデューサーとディレクターの方が来て『投資番組があるんだけど、1000万円くらいまで出せますか?』って聞かれて(笑)。番組には、ジュラルミンケースに2000万円くらいを入れて持って行っていました」

――印象的なエピソードはありますか。
「出資関連で言えば、(美空ひばりの息子で“虎”の1人だった加藤)和也君(43)がおカネを出したパスタ屋さんを、僕が否定したんですよ。今も4~5店舗くらいやっているんですけど、最近も誹謗中傷みたいなネットの書き込みがありました。『安田、何見てんだよ。成功したからお前の主張は間違っていた』なんて。希望者は外食系で、『お客様が大事で、利益は度外視』と説明したんですが、僕は『最初にカネありきが当たり前』と言ったんです。あの時は、『こんなの失敗するよ』と思ったんだけど、10年経ってみると『彼の言っていることは正しかったなぁ』と思うところもあります」

――出資して後悔は?
「ありますね。あまりにもカネを出してなくて、『そろそろ出さないと』という思いもあったし、パフォーマンスな面もあるから『500万とか1000万だったらいいかな』って。普通なら、出会って1時間や2時間の人間に大金なんか出せませんよね。番組終わってから、『よく払ってたな~』と思うことはあります」

――番組に出て変わったことは?
「メリットは、有名になって事業をやりやすくなったことですね。銀行もポンと融資してくれたりとか。良くなかったのは、勘違いしちゃったこと。おカネがあると思われて、いろんな人から『カネを出してくれ』って言い寄られたり、自分も天狗になったり。やっぱりカネとテレビの力とはいえモテたから、合コンばっかりしてました。番組出演前からの夢の1つが、株式公開だったんです。それで“47都道府県の活性化プロジェクト”を立ち上げて上場しようと考えたんですが、資金繰りに苦労する中でリーマンショックや震災が起こって、出店していた銀座や六本木の店のサラリーマン需要がなくなって2011年の6月に倒産してしまったんです。ただ僕の場合、額も多くなかった(負債総額3億6000万円に対し債権者約200名)し、債権者を回って謝罪もしたので、家に押しかけられることはなかった。ただ電車を使うようになった時に落差を感じました。嫁からPASMOを渡されたときに、使い方がわからなかったんですよ。電車に乗っても人の目が気になるし。『あの人、こっち見てるけど、債権者なんじゃないか』っていう恐怖感もありました」

――どうやって立ち直った?
「嫁さんですね。番組に出ている2002年に結婚したんですが、その頃から一時期会社がおかしくなって、社長としてはひもじい暮らしをさせたんです。そうこうしてたら、会社が倒産して……。離婚されることも覚悟していたんですが、『稼いで来い!』と一喝されました。その言葉のおかげで踏ん張れています。今は著名な経営者たちを講師に迎えて、外食経営者を育てる“外食虎塾”というのをやっています。僕が果たせなかった上場の夢を、自分の生徒たちに叶えてほしいという思いがあるんです」

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出資希望者とは毎回ガチンコ勝負だった。「編集で発言が前後することはあったが、ヤラセはなかった」(安田)。スタッフから「次のチャレンジャーは女性だから最初はあまり厳しくしないで」と言われたこともあるという。

他の虎たちも、それぞれ悪戦苦闘中だ。堀之内九一郎(67)は昨年、リサイクルチェーンの生活創庫が経営破綻。取材を申し込んだものの「そっとしておいてくれ」との回答が。小林敬(57)は20億の負債を抱えて自己破産した後も、外食関連のコンサルタントとして再びの成功を夢見ている。南原竜樹(54)も一度経営破綻した後、数々の企業を立ち上げつつ、六本木などのイベント企画で活動中。事業の成否にかかわらず、“虎”たちのあくまで貪欲な姿勢は、今も変わることがない。 《文中敬称略》


キャプチャ  2014年12月12日号掲載


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