【人口減時代・何が解決策なのか】(03) 団塊世代よ、しっかりと責任を果たせ

20151219 06
今年、“団塊の世代”は全て65歳以上の高齢者となった。1946年から1950年生まれを団塊の世代とすると、その数は凡そ1200万人。日本人口の約1割を占める。来年から、選挙権を有する年齢が20歳から18歳に引き下げられるが、それでも有権者の2割近くは団塊の世代だ。有権者数の約4割が65歳以上となり、若い世代が選挙にあまり行かないことを考えれば、高齢者の投票を通じた発言力はかなり大きい。日本の民主主義は、その意思決定の中核を現役を退いた団塊の世代が担うシルバーデモクラシーの時代に突入した。団塊の世代は、果たして日本社会に重くのしかかる傘の雪となるのか? それとも、その雪を払うのに一役買うのか? 自分たちの生活を守ることだけを求めて、できるだけ多く税からの分配を獲得しようとするのか? 日本全体の未来を考えて行動するのか?――来年は、そのことが問われる年になるだろう。その選択は日本の命運を決する。だから、団塊の世代の責任は重大だ。私自身も1947年生まれで、団塊の世代の1人である。節目節目で、同世代についての考察や提言を発表してきた。団塊の世代が日本の傘の雪を払うことに貢献するには、乗り越えなければならない大きな壁がある。先ず、それは戦後直ぐに生まれた団塊の世代が、“戦後”なる時代の空気を目一杯吸って育ってきたことに依る“経済主義”と“私生活主義”という性向である。経済主義とは、政治信条・思想・哲学・理念、更には文化的価値よりも経済を重んじる価値観である。軍国日本が敗れ去り、敗戦を「アメリカの物量に敗れた」と認識した日本は只管、復興と成長に邁進し、経済勝ち優先の社合を創り、正にその中に団塊の世代は生きてきた。1966年に1000ドルを超えた日本の1人当たりGDP(国内総生産)は、1981年に1万ドルとなった。団塊の世代は、この“黄金の15年”に10代から30代の青春期を過ごし、右肩上がりの経済が齎す豊かさを謳歌した。「経済こそが現実の様々な問題を解決する」――団塊の世代がそのように思い込んだとしても無理はない。団塊の世代の中には、1960年代末の“全共闘運動”等の学生運動に身を投じた者も少なくなかったが、大学を卒業すると直ぐに背広に着替え、企業戦士になっていった。彼らは、激しいイデオロギー対立に依って世界が分断された冷戦時代にあっても、決して“政治的”だったとは言えない。寧ろ、アメリカに安全保障を依存する安定した社会で経済的繁栄を享受してきた。

経済主義への埋没の中で、団塊の世代のもう1つの行動原理である私生活主義が生まれた。これは、西欧近代で生まれた“個人主義”とは似て非なるものである。個人主義には、「国家権力と対峙し、その緊張と葛藤の中から“個”を確立しよう」という気概があるが、私生活主義にそれは無い。ただ只管に、「自分の自由に生きたい」「誰からも干渉されたくない」と主張して生きてきた。非干渉主義を貫くには覚悟がいるが、若し高齢化した団塊の世代が、自分たちの生活を守る為の福祉を国に求め、定年後は悠々と趣味の世界に生きるというのでは、社会は機能しない。団塊の世代が最も忌み嫌う言葉は“滅私奉公”である。日本史上、初めて「人に迷惑をかけなければ好きなように生きていい」と許された世代であり、そのメッセージは親から子に伝えられ、今や日本の通奏低音となっている。万人が自由に生きられる社会を築くのは悪いことではない。しかし、団塊の世代は“公”に奉じることを忌み嫌い過ぎたのではないだろうか? “公”と言うと、国家のことを頭に浮かべるかもしれないが、ここで言う“公”とは、国家と“私”の中間に広がる社会のことである。古今東西、如何なる社会でも人は1人で生きられない以上、地域・学校・会社等を通じて、皆が過ごし易い社会を協力して築こうとする。しかし、今の日本社会は嘗ての安定と繁栄を失い、少子高齢化・非正規雇用の増大等に依って大きく揺らいでいる。私が今、高齢者となった団塊の世代と共有したい問題意識は、課題解決の下支えに貢献することである。しかし、これまで述べてきたことから明らかなように、“公”に奉じる為には、団塊の世代に染みついた経済主義と私生活主義を脱しなければならない。そのハードルを乗り越えた上で、“1人1つのNPO(非営利組織)”を心に刻み、行動を起こすことだ。自分がこれまで培った能力や経験を活かせば、関心が持てる分野で、世の中に貢献できる糸口がどこかに見つかる筈だ。例えば、私は『戦略経営塾』という中堅企業の経営者を育成する場を2011年に設けた。これも、私なりの1つの答えだ。




教育だけではなく、医療・介護・地域社会等、今の日本が支援を必要としている分野はいくらでもある。肝腎なのはボランティアではなく、NPOであることだ。お金を貰うことでプロ意識が生まれ、継続性と責任を伴うからだ。税金さえ払えば社会問題を解決できる時代は終わった。例えば、高齢者の福祉にかかるお金は毎年膨らみ続けており、これを公的予算だけで賄うことは近い将来、難しくなるだろう。その時には、税金をできるだけ使わずに、国民1人ひとりが福祉に参画し、汗をかいて、福祉を支えるシステムを作らなければならない。そのようなシステムを今から構想し、その礎を築くNPOを団塊の世代に担ってほしい。国家の押し付けではなく、自立した個人が、NPOを介して織りなすネットワークから新しい社会を築くこと。それが、団塊の世代の最後の大仕事ではないだろうか。


寺島実郎(てらしま・じつろう) 『日本総合研究所』理事長・『三井物産戦略研究所』会長・多摩大学学長。1947年、北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。三井物産ワシントン事務所長・三井物産戦略研究所所長・三井物産常務執行役員を歴任。『脳力のレッスン 正気の時代のために』(岩波書店)・『世界を知る力』(PHP新書)等著書多数。


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