【誰がテレビを殺すのか】(03) 風水に縋る経営トップに現場からも責任を問う声

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東京都内の高級住宅街の一角。高い壁と監視カメラに囲まれた一際目立つ大邸宅の主は、フジテレビ内部で“天皇”と称される日枝久会長、その人だ。その前日に下方修正された今年4~9月期決算の発表日の夜。本誌記者は所謂“夜回り”と呼ばれる取材の為、日枝会長の帰宅を待っていた。よくあることではあるが、企業の広報部を通した正攻法の取材依頼が断られたからだ。トップ人事は、企業の行方を左右する。業績を好転できない亀山千広社長の責任、延いては日枝会長は自らの任命責任について、どう考えているのか。午後8時過ぎ。車のルームライトに顔を照らされた日枝会長を乗せたハイヤーが現れ、表玄関に停車しようとした瞬間、走り寄る記者の姿に気付いたのか、日枝会長を乗せたまま車は再び加速し、自宅から遠ざかっていった。呆気に取られたまま、数分後に裏口の方に回ると、今度は遠目にこちらの様子を窺う2つの人影。ところが、目が合ったと思うと、人影は素早く死角へと身を翻してしまった。取材失敗を覚悟しながら、更に待つこと約20分。再び同じハイヤーが走り去った方向から近付き、“待ち人”が姿を現した。「広報を通してよ。1人に(アポ無し)取材を許したら、皆に対応しなくちゃならなくなるから」。そう言って、自宅の中に入ろうとする日枝会長に、亀山社長の経営責任に対する考えを投げ掛けた。「一々責任を問うていたら切りがないでしょ? 週明けに会社に来たらじっくり話すから、広報にそう言って。ポートフォリオを見てよ。250億円あるから。大丈夫、大丈夫です」。“大丈夫”という言葉を笑顔で何度も繰り返しながら、自宅の中に消えていった。だが、日枝会長が受けるとした取材は、実現することはなかった。広報から、日枝会長の指示で、「本人ではなく、“代役”が取材に応じたい」という連絡が入ったのだ。

「経営者が“風水”なんかに拘り出したら終わりだ」――そう溜め息を吐くのは、フジテレビのある中堅社員だ。風水とは言わずもがな、古代中国発祥で、韓国や近年の日本でもブームになった、“気”の流れを物の配置でコントロールすることで幸運を招こうというスピリチュアルな思想だ。今年春、お台場・フジテレビの社屋前に『テレビの泉』と名付けられた小さな噴水が出現した。同社員に依れば、この噴水設置を主導したのが、日枝会長が「業績悪化の責任は問わない」とお墨付きを与えた亀山社長だという。「『風水に拘って造らせた』という話が社内で広まっている」(同社員)。人知を超えたものに縋りたくなる気持ちはわからないでもない。何せ、亀山社長が2年半前の2013年6月、9代目のフジテレビ社長に就任してから、同年3月期決算において234億円あった営業利益が、来年3月期(予想)は15億円と9割以上も落ち込む見込みなのだ。亀山社長は、人気ドラマ『ロングバケーション』や『踊る大捜査線』を世に送り出したヒットメーカーで、現場の人望も厚かったという。視聴率や業績低迷の打開の為に社長に大抜擢したのは、日枝会長の鶴の一声だ。だが、経営の数字は視聴率のようには取れない。就任から僅か2年半で、これほど業績を悪化させては、この人事が失敗だったことは火を見るより明らかだろう。




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更に、日枝会長や亀山社長の意向が強く働いているとされる近年のフジテレビの人事は、トップ人事以外でも首を捻りたくなる事態が続いている。去年6月には、“視聴率奪還”の為に全社員の内の3分の2に当たる約1000人という、開局以来の大規模人事異動を実施した。その際、人気ドラマ『東京ラブストーリー』等で知られる大多亮常務に対し、テレビ局の要である編成制作局長から僅か1年で事実上の更送を行った。一方で、看板バラエティー『めちゃ×2イケてるッ!』を手掛けた片岡飛鳥氏を、2年ぶりにバラエティー制作に復帰させた。ところが、その片岡氏が舵取りをした今年の長時間特別番組『FNS27時間テレビ』の視聴率は、期待を裏切って歴代ワースト3位という大失敗。亀山社長が10月の定例会見で、今後の打ち切りを示唆する事態に発展した。片岡氏には現場からも、「『俺が面白いと思う企画しか通さない』という倣慢な態度を取っていたが、見事にコケてしまった」(制作若手社員)、「今は片岡さん以上に、結果を出していない彼の責任を問わない上層部のほうがどうかしていると思う』(別の制作若手社員)といった批判の声が巻き起こっている始末だ。上の図は、現場の心の声。殿上人の耳にどれほど届いているのだろうか? 信賞必罰は人事の常。フジテレビの出口の見えない低迷を見れば、その理はトップ自らにも及ぶべきではないか? メディア業界ではアポ無し取材にも逃げも隠れもしない豪気なタイプとされる日枝会長の、今回の“塩対応”(アイドル等の素っ気無いファン対応を表す造語)。そして、事の真偽はそれこそ神のみぞ知るだが、少なくとも「社長がとうとう神頼みを始めた」という噂が流れる社内の空気。これらは、嘗ての“絶対王者”フジテレビが現在立たされている苦境を如実に表している。


キャプチャ  2015年11月14日号掲載


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