【回顧と展望2015】(01) 安保関連法――集団的自衛権容認へ新解釈、法制局長官も整合性に腐心

集団的自衛権の限定的な行使を柱とした安全保障関連法は、世論が大きく揺れる中、9月19日に成立した。来年3月に施行されると、他国が武力攻撃を受け、日本の存立が脅かされて国民の権利が根底から覆される“存立危機事態”では、集団的自衛権を行使できるようになる。与野党が激しく対立した国会審議で、安倍首相や中谷防衛相らの答弁を補佐したのが、内閣法制局の横畠裕介長官だった。野党は横畠氏に対し、「集団的自衛権の行使は違憲だ」としてきた従来の法制局の答弁との整合性を追及した。横畠氏は、“身内”の長官OBからも憲法解釈の変更等を批判された。宮崎礼壹元長官は、野党推薦の参考人として衆議院の委員会に出席し、「憲法9条に違反する。撤回すべきだ」と断じた。阪田雅裕元長官は同じ委員会で、一定の理解を示しつつも、「従来の政府解釈の基本的な論理の枠内とは言えない」と指摘した。自民党内からは、横畠氏に同情する声も漏れた。横畠氏は昨年5月に急遽、次長から昇格した。前任の小松一郎長官が体調を崩した為で、小松氏は翌月に死去した。

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外務省出身の小松氏は、 憲法解釈変更に積極的な一方で、国際法の専門家でもあり、“理論派”揃いの法制局内に直ぐに溶け込んだ。横畠氏は小松氏と綿密に打ち合わせ、限定的な集団的自衛権の行使が何故合憲と言えるのか、新たな解釈を考えた。その結果、事例を大きく2つに分けた。1つは、「日本が直接武力攻撃を受ける訳ではないが、武力攻撃を受けた場合と同様の被害が日本国民に及ぶ」という事態だ。安倍首相が代表例に挙げた“中東のホルムズ海峡が機雷封鎖されるようなケース”がこれに当たり、集団的自衛権の行使は例外的な場合に限られることになる。もう1つは、「日本への攻撃が確実で、反撃しないと手遅れになるというケース”。これも、相本に攻撃が及ぶことが逼迫した事態に限られる。集団的自衛権を行使するには閣議決定が必要だ。閣議の準備をしている間や、決定直後に日本が攻撃されれば、個別的自衛権で反撃することになる。2つのケースとも、国際法上は集団的自衛権に該当するとしても、「日本の存立や国民の権利を守る為に、必要最小限度の自衛の措置という意味では、個別的自衛権と同じ」という訳だ。安保関連法は、多くの安保政策を変更した。海外での邦人救出や、国連平和維持活動(PKO)で国連関係者等を助ける“駆け付け警護”も、新たにできるようになる。その際の武器使用も可能になった。陸上自衛隊は今月17日、群馬県の相馬原演習場で、外国の治安悪化を想定し、在留邦人を日本大使館から空港へと運ぶ訓練を行った。法施行後には、隊員が武器を手に、邦人救出の訓練も行う。防衛省は今後、どのような状況でどこまで武器を使うのか、使用基準の改定を進める方針だ。1991年のペルシャ湾への掃海艇派遣から始まった自衛隊の国際協力活動は、新しい段階へと踏み出す。 (栗林喜高)


≡読売新聞 2015年12月26日付掲載≡


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