【回顧と展望2015】(03) 軽減税率――“不協和音”官邸主導でケリ、自公譲らず対象線引き難航

20151231 04
「今回は疲れた。政治的なパワーを使ったなあ」――安倍首相は、消費税の軽減税率の制度設計等を盛り込んだ与党税制改正大綱が決まった今月16日、周辺にそう語った。公明党の意向を尊重するように指示しても、自民党税制調査会は思うようには動いてくれなかった。最後は“官邸主導”で、食品全般等に年1兆円規模で軽減税率を適用することで決着したが、首相官邸と自民党の間にはしこりが残った。軽減税率の議論の迷走は、今年9月初旬、マイナンバーカードを活用し、増税分の一部を後から給付する“財務省案”の表面化に端を発する。自公両党は、昨年12月の衆院選政権公約で軽減税率導入を掲げた。しかし財務省は、対象品目の線引きやインボイス(税額票)導入等を「面倒臭い」(麻生財務大臣)として、給付案を纏めた。自民党税制調査会の野田毅会長(当時)も、この案を支持した。これに対して自民党の中堅・若手議員は、「納得できない」「次の選挙で四方八方から批判を浴びる」等と声をあげた。それでも野田氏は財務省案に固執した為、事態は膠着。首相は10月13日、野田氏を更送せざるを得ず、後任に宮沢洋一氏を充てる人事を行った。宮沢氏は首相に、「ちゃんと軽減税率を導入します」と約束。首相は周辺に、「宮沢さんは、意気に感じてやってくれるだろう」と語った。宮沢税調会長となってからの与党協議では、軽減税率の導入が粗既定路線となったが、今度は自公が対立した。公明党が1兆円規模で“食品全般”への軽減税率適用を求めたのに対し、宮沢氏は「外食を除く線引きはできない」「安定財源が見つからない」として、“生鮮食品”(軽減額3400億円)等に限る案を唱え続けた。

自民党税調は長年、税財政の制度や業界団体の事情に精通し、その専門性を力の源泉としてきた。財源を巡る自公間の溝に直面しても、最高幹部で作る税調の非公式会合・インナーの面々は知恵を出そうとしなかった。自公の不協和音が目立つようになると、公明党の支持母体『創価学会』からは、来夏の参院選での選挙協力解消や、連立離脱の声が漏れ始めた。創価学会幹部は、「自民党は、公明党が譲歩するとでも思っているのだろうか? 生鮮食品だけでお茶を濁す軽減税率なら、増税反対に舵を切る」と語った。宮沢氏ら税調の面々では埒が明かないと見た首相と菅官房長官は、谷垣幹事長に公明党との調整を任せた。しかし、その谷垣氏も財政再建論者であり、“1兆円規模”案に中々首を縦に振ろうとしなかった。結局、首相は今月9日、首相官邸に谷垣氏を呼び、公明党に配慮する形で決着を図るよう指示。“1兆円規模で食品全般”という大枠が決まった。自公両党内では、「活字文化を重視し、新聞・書籍・雑誌等の出版物を軽減税率の対象に加えるべきだ」との声が多く、首相も同調していた。だが、大綱を纏める最終盤、自民党税調と財務省は「有害図書の線引きが難しい」として出版物を対象から外そうとした。「煮え湯を飲まされ続けた税調と財務省の意地だ」(首相側近議員)との見方も出たが、最後は首相サイドが、出版物については“継続協議”で決着を図った。軽減税率を盛り込んだ税制改正関連法案は、年明けの通常国会で与野党対決法案となるのが確実な状況だ。外食の線引き等について、政府は詰めの作業を急いでいる。首相や財務大臣は、法案審議で立ち往生するような事態を避ける為、綿密な答弁の打ち合わせを予定している。 (円入哲也)


≡読売新聞 2015年12月30日付掲載≡


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テーマ : 増税
ジャンル : 政治・経済

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