【回顧と展望2015】(04) 歴史認識――『70年談話』で終止符図る、歴史カード封じて成否持ち越し

20151231 05
戦後70年の節目を迎えた今年は、安倍首相の“歴史認識”が問われる1年だった。今月22日、自民党に『歴史を学び未来を考える本部』(本部長は谷垣禎一幹事長)が発足した。稲田朋美政調会長が「戦後の極東国際軍事裁判(東京裁判)等を検証しよう」と提案してできたものだ。稲田氏は、安倍首相と歴史認識問題では近いとされる。だが首相は、この活動とは一線を画している。本部の発足前、協力を打診された首相は、こう言って断った。「自分は、“70年談話”で歴史認識にはピリオドを打った。ここから先は、次の世代でやってほしい」。8月に発表された首相の『70年談話』は、国内外から注目された。首相は当初、70年談話で、戦後50年の『村山首相談話』を“上書き”することを考えていた。1995年に発表された村山談話は、過去の植民地支配と侵略を明確に認め、“心からのおわび”を明記している。保守派には不満が燻っている。当時、村山談話発表に先立つ国会決議の採決では、多くの自民党議員が欠席した。当選1回の首相もその1人だった。だが6月上旬、首相の側近らが首相と何度も協議して纏めた談話の叩き台には、“侵略”“おわび”“植民地支配”といった過去の談話にもあるキーワードが入っていた。「“安倍力ラー”を強めれば、中韓両国だけでなく、アメリカとの関係も悪化しかねない」と懸念した為だ。首相は判断を保留した。一方、連立を組む公明党も村山談話の継承を強く求めた。

首相は、歴史認識を巡る不毛な論争に決着をつけたかった。その為の最善策は何か。「保守層の支持を受ける自分が、過去の談話を一定程度引用すれば、中韓の“歴史カード”を封印させることができる」という結論に至った。「“おわび”ではなくて“おわびの気持ち”だ。吉田茂も岸信介も、おわびの気持ちは言っている」。首相は、こう折り合いをつけた。「過去の談話を塗り替えたい」という思いは封印した。首相は謝罪に終止符を打つことに拘り、「子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と加筆した。8月5日、首相から原案を見せられた谷垣氏は、「老若男女、右も左も統合できる内容だ」と語り、太鼓判を押した。公明党の山口代表は8月7日、首相と会食後、「隔たりは感じなかった」と満足そうに述べた。政府は8月14日の臨時閣議で談話を決定。中韓の反応は抑制的で、11月には日韓首脳会談も実現した。今月14日、首相は東京都内での講演で、70年談話に関して、「歴史認識を巡っては、左右の激しい論争が繰り返されてきたが、実は、国民は一定の認識を共有している。それを談話に落とし込むように努めた」と振り返った。そして年末、日韓両国の長年の懸案だった慰安婦問題が大きく動いた。日韓外相は28日の会談で、慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決する」ことで合意した。「今を生きる世代の責任を果たすことができた」。首相は記者団にこう語ったが、韓国内では不満も根強い。“歴史カード”を封印できたのか、最終的な成否は2016年以降に持ち越された。 (芳村健次) =おわり


≡読売新聞 2015年12月31日付掲載≡
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