【2016年の15大問題】(09) これまでの“静穏”こそ異常、地震・火山は活動期に戻った

20160101 21
日本で一番恐れられている『南海トラフ地震』や『首都圏地震』が起きないまま、内閣府で対策が検討されてから2年が過ぎた。だが、不安材料がある。2011年の東日本大震災(地震名は東北地方太平洋沖地震、マグニチュード9.0)の影響がじわじわ及んできていることだ。この巨大地震は東日本全体を載せたまま、北米プレートを東南方向に大きく動かした。この為に、日本各地に生まれた歪みが、其々の場所での地震リスクを高め、また火山活動も活発化させている。この影響は数十年以上も続く。抑々、首都圏には“地震を起こす理由”が多い。首都圏の地下では、プレートが3つも鬩ぎ合っている。太平洋プレートと北米プレートとフィリピン海プレートだ。其々のプレートが地震を起こすだけではなくて、お互いのプレートの相互作用でも地震を起こす。首都圏の地震は10万人以上の犠牲者を生んだ関東地震(1923年)以来、少ない状態が続いている。江戸時代から大正時代には、地震は遥かに多かった。江戸時代中期以降、関東地震までは24回ものM6クラス以上の地震が襲ってきた。平均すれば、6年に1度にもなる。地球物理学者から見れば、首都圏が今まで静かだったのは異例だ。寧ろ、もっと地震が多いのが普通なのである。2015年5月の埼玉県北部の地震等、首都圏は東日本大震災をきっかけにして、今まで続いてきていた“一時の”静穏期間が終わって、謂わば“普通の”――つまり、今までよりは活発な地震活動に戻りつつあるように見える。日本には地震が多いだけではなく、火山も多い。日本の面積は世界の0.25%しかないのに、M6を超える世界の大地震の22%が起き、世界の陸上にある火山の7分の1も日本にある。プレートの動きに依って岩が我慢できる限界を超えると起きるのが地震、そしてプレートが約100kmのところまで潜り込んだところで溶けてマグマになり、それが上がってきて起きるのが火山噴火だ。地震はプレートの動きの直接的な、火山は間接的な反映になる。

太平洋プレートの衝突は千島列島から東日本、そして西之島新島の先まで続いているから、火山は日本列島を串刺しにした線上に並ぶ。東日本火山帯である。同じように、西日本ではフィリピン海プレートが潜り込むことに依って西日本火山帯が作られている。日本にある活火山は、この2つの火山帯の上に並んでいる。日本には、活火山と認定されている火山だけでも110もある。しかし、他方で日本人が風光を愛で、温泉を楽しみ、四季を味わえるのも、このプレートの衝突の“おかげ”でもある。プレートの衝突が高い山や火山を生んで日本の景観を作った。これらの山は、四季のはっきりした日本の気候も作っている。温泉は勿論、地下から上がってきたマグマの熱が作ったものだ。2014年9月に起きた御嶽山の噴火は、戦後最多の被害者を生んでしまった。だが、噴火の規模から言えば、日本で過去に起きた噴火に比べると、この噴火は極小さなものだった。御嶽山が噴出した火山灰や噴石の容積は、東京ドーム(124万㎥)の3分の1ほどの量に過ぎなかった。19世紀までの日本では、各世紀に4回以上の“大噴火”が起きていた。“大噴火”とは東京ドームの250杯分、3億㎥以上の火山灰や噴石や溶岩が出てきた噴火をいう。この“大噴火”は、17世紀には4回、18世紀には6回、19世紀には4回あった。ところが、20世紀になると、大噴火は1914年の鹿児島県・桜島の噴火と1929年の北海道・駒ケ岳の噴火の2回だけで、その後100年近くは“大噴火”は起きていない。理由はわかっていない。しかし、この静かな状態がいつまでも続くことはあり得ない。寧ろ、“普通の”状態に戻ると考えるのが地球物理学的には自然である。このところ、各地で火山活動が活発なのは、東北地方太平洋沖地震の影響が及び始めているのではないかと考えられる。M9を超える地震は、過去に世界で7つ知られているが、その後に例外無く、近くで複数の火山が噴火した。




「今後、御嶽山噴火よりもずっと大きな“大噴火”が、21世紀に少なくとも4~5回は起きても不思議ではない」と考えている地球物理学者は、決して少なくはない。“大噴火”よりも更に大きな“カルデラ噴火”もあった。放出されたマグマは、東京ドーム10万杯分にもなる噴火だ。カルデラ噴火は、日本では過去10万年間に12回起きた。九州に多かったが、北海道でも本州でも起きている。カルデラ噴火が、日本でこれから先ずっと起きないことはあり得ない。間隔は不揃いながら、数千年毎にこれからも起き続けるに違いない。ところで、7300年前の鬼界カルデラの噴火では、九州を中心に西日本で、先史時代から縄文初期の文明が断絶してしまった。縄文初期の遺跡や遺物が東北地方だけに集中しているのは、この理由からだと考えられている。世界でも、火山の大噴火で滅びてしまった文明は幾つもある。今までの100年ほどは、“異常に”日本の火山活動も首都圏の地震も少なかった。しかし、これらが東北地方太平洋沖地震という巨大地震をきっかけに、“普通”に戻りつつある。そして恐ろしいことは、文明の発達と共に社会が自然災害に弱くなっていることだ。同じ大きさの地震が江戸を襲った時よりは、東京を襲ったほうが遥かに震災は大きくなる。火山災害も同じだ。私たち日本人は、火山やプレート活動の恩恵を受けている。だが同時に、地震国・火山国に住む“覚悟”と、考えられる限りの“備え”を持っているべきであろう。


島村英紀(しまむら・ひでき) 地球物理学者・武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都生まれ。東京大学理学部物理学科卒。同大学大学院地球物理学博士課程修了。博士(理学)。東京大学助手・北海道大学教授・北海道大学地震火山研究観測センター長・国立極地研究所長等を歴任。『火山入門 日本誕生から破局噴火まで』(NHK出版新書)・『地震と火山の基礎知識 生死を分ける60話』(花伝社)等著書多数。

               ◇

■日本の要警戒火山と火山対策の現状
2014年9月27日11時52分頃、御獄山(長野・岐阜県境)が水蒸気噴火した。御嶽山では同月上旬より火山性地震が頻発していたが、火山性微動は噴火の約10分前までは発生しておらず、噴火時には気象庁の発表する“噴火警戒レベル”は1のままだった。レベル3に引き上げられたのは、噴火後の12時36分のことである。噴火警戒レベルとは、火山活動の状況に応じて“警戒が必要な範囲”と、防災機関や住民等の“取るべき防災対応”を5段階に区分して発表する指標だ。段階は其々、レベル1(活火山であることに留意)・レベル2(火口周辺規制)・レベル3(入山規制)・レベル4(避難準備)・レベル5(避難)と定義される。全国で活火山は110を数えるが、気象庁は2015年10月現在、47火山を24時間体制で常時監視しており、噴火警戒レベルはその内の32火山で運用されている。先述の御嶽山噴火は、死者58人・行方不明者5人を出す戦後最悪の火山災害となった。これを受けて、2015年7月には『改正活動火山対策特別措置法(活火山法)』が成立した。改正活火山法では、噴火で被害が及ぶ恐れのある地域を、国が“火山災害警戒地域”と指定できると規定された。災害警戒地域の周辺自治体には、自衛隊・警察・消防・火山専門家等に依る“火山防災協議会”の設置が義務付けられる。協議会は専門的知見も取り入れながら、噴火の影響範囲を示したハザードマップ等を検討。自治体はその議論を踏まえて、住民や登山者等に対する情報伝達手段の整備や、避難計画の作成を進める。また改正法では、ホテルやロープウェイ駅等の集客施設の管理者に利用者の避難計画作成や訓練実施を課した他、登山者に対しても予め入山届を提出する努力義務規定が設けられた。改正法に基づき、常時監視対象の火山も、八甲田山・十和田・弥陀ヶ原を追加して計50火山となる見通しだ。噴火警戒レベルも、これら全ての火山での導入を目指す。2015年中に予定される改正法施行を前に、同年6月に噴火した箱根山の地元・神奈川県や箱根町に依る火山防災協議会のように、既に避難計画を纏めたところもある。だが一方で、常時監視火山のうち10火山では情報不足の為、ハザードマップが未作成のままとなっている等、多くの自治体で試行錯誤が続いている。


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