【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(45) “良識派”が嫌う過激な政治家が支持を集める理由

『ISIS』(別名:イスラム国)のメンバーや、その過激な主張に共感する者のテロが相次ぎ、欧米諸国では移民排斥の訴えが勢いを増しています。首都のパリがテロに見舞われたフランスでは、2017年の大統領選挙の前哨戦と位置付けられた地域圏議会選挙で、マリーヌ・ルペン率いる極右政党の『国民戦線(FN)』が、全13地域圏の内の6地域圏で第1回投票のトップを獲得(第2回投票では何れも他政党がトップを奪還)。アメリカでも、大統領選挙の共和党候補者争いでトップを走るドナルド・トランプ氏が、“一時的なイスラム教徒の入国禁止”を提言して物議を醸しています。こうした潮流に対し、殆どの大手メディアは「由々しきことでございます」と眉間に皺を寄せるばかり。事の本質をきちんと整理できていないように見えます。

フランスのメディアや知識人は、2011年にFNの2代目党首に就任したルペンという女性を甘く見ていたと思います。最近は同性愛や人工中絶の容認等、極右政党としては斬新な方針を打ち出してゲイコミュニティー等から支持を得ていましたが、それでも「こんなファシストを擁護するのは頭の悪い少数派だけだ」と歯牙にもかけませんでした。しかし、ルペンは只管庶民に語りかけた。理念よりも“リアル”を押し出して。実際のところ近年、多くのフランスの庶民は“多文化共生”を心から歓迎している訳ではなく、その理念の下で自国社会に移民や難民が増えていく“違和感”を何とか呑み込んでいるだけだった。ルペンは、そんな違和感で大きく膨らんだ無数の風船に1本1本、針を刺していったのです。トランプにしろ、ムスリム入国禁止発言の後の世論調査でも支持率はトップのままです。彼はただの“困った極右オヤジ”ではなく、表立って本音を言えない一定数のアメリカ人の溜飲を下げている。だからこそ、メディアや知識層が彼の失言を繰り返し批判する一方で、「よくぞ言ってくれた」「差別的だが真理を突いている」といった賛同や消極的支持の声も上がり、結果的に「全ムスリムを監視するのは是か非か?」といった非常に低次元な議論へと持ち込まれてしまうのです。




自国が大きな危機に見舞われたり、本音の言い辛い社会状況に陥った時に、一部の大衆の間には「思い切り差別したい」「乱暴に振る舞いたい」という“愚連隊志向”が芽生えます。フランスは実際にテロの被害に遭ったばかりで、アメリカも2001年の“9.11”の記憶が新しく、最近もISISがテロの標的として名指ししている。他にも、例えば多くの難民を受け入れているドイツの移民排斥運動では、「政治家と大手メディアが世界を支配し、真実を隠している」という陰謀論が跋扈し、“ライイング(嘘吐き)メディア”という言葉がすっかり定着しています。近年は日本でも、思想の左右に関わらず、群衆心理に乗じて気に入らない相手を罵倒する人が多い。「韓国人が悪い」「安倍が悪い」「東電が悪い」…。無知な若者がそうなるのは仕方ない面もありますが、いい年こいた大人が“その欺瞞的構造を薄々わかりながら乗ってしまう”ことには危うさを感じます。“日本のトランプ”も、そういう危うさの中から生まれるのかもしれません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)・『チャージ730!』(テレビ東京系・不定期)等に出演中。


キャプチャ  2016年1月11日号掲載


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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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