【インタビュー・明日を語る2016】(03) テロ対策“非軍事”も重要、難民受け入れは長い目で――前ドイツ首相 ゲアハルト・シュレーダー氏

20160108 04
昨年11月のパリ同時テロは、人類にとって恥ずべき行為だった。私は必要な限り、テロとの戦いを支援したい。この事件の背後にいるイスラム過激派組織『ISIS』(別名:イスラム国)に対し、軍事作戦を展開せねばならない。ただ、ISISのような組織との戦いは、軍事作戦だけでは十分でない。(ISISが拠点にする)シリアで起きている紛争には、平和的な外交手段に依る対処も必要だ。3つの対処法が挙げられる。先ず第1は、シリアの政治問題の解決だ。(米欧やロシア・中東等の関係国がシリア和平への工程表で11月に合意した)ウィーンでの協議が小さな希望となっている。(シリアのアサド政権を支える)ロシア抜きで、協議は成立しない。アサド大統領との対話も必要だと確信している。2番目に重要なのは、ISISに対する軍事作戦。3番目は、西欧諸国が警察や司法の力でテロ攻撃を封じ込めることだ。こうした手段の一方で、ヨーロッパで暮らす移民出身の若者に、将来への展望を与えることが重要だ。若者が良い職業に就き、経済的な恩恵を感じられる機会が無ければ、(テロ事件への関与等)深刻な問題を生む。このことは、テロ事件の起きたフランスで明白になった。教育や福祉政策を充実させ、移民出身の若者を上手く労働市場に組み込んでいくことが必要だ。私が首相在任中の2001年、国際テロ組織『アル=カーイダ』に依るアメリカ同時多発テロが起きた。当時、私は『北大西洋条約機構(NATO)』での決定に基づき、決断をした。アメリカが(空爆を始めた)アフガニスタンでの支援を要請し、我々は軍事的手段でそれに応えた。NATO加盟国としての義務であり、派兵の判断がぶれることはなかった。今も、この時の決断は正しかったと考える。2016年5月に三重県で開催される主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)、更に2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本はテロの脅威と向き合うことになる。だが、国民の“自由の権利”を侵してはならない。国内の安全保障とのバランスを保ちながら、対処することが重要だ。

ドイツでは今、難民危機への対処が最重要課題として論議されている。2015年だけで約100万人が入国しており、対処できるかが問題だ。メルケル首相は昨年9月、難民を喜んで受け入れる意向を示した。当時、これ以外の選択肢は無かっただろう。問題は、急激な流入を管理できなかったことだ。収容施設の確保を最優先すべきだ。紛争を逃れてきた難民と、経済目的でやって来る移民を(入国段階で)明確に区別する法が整備できていないことが問題だった。受け入れは、人道主義の立場からは正しい選択だったが、計画性を欠いた。政治的な迫害に加え、宗教や性差別に関わる人権侵害から庇護を求める人々が、安全にドイツに来られるようにせねばならない。就労までサポートできる体制を整えることが肝要だ。現在、バルカン半島等から難民ではない人々が紛れ込んで入国しているが、ドイツは全ての人々を受け入れることはできない。「政治難民以外は、出身国に送還されるべきだ」と考える。ヨーロッパ各国が早急に政治決着を図り、分担して難民を受け入れる必要がある。難民たちには、一刻も早く落ち着ける場所が必要だ。『ヨーロッパ連合(EU)』が難民の受け入れ人数を加盟国に割り当てたことについて、一部の東欧諸国が反発していることには納得できない。EUは『ダブリン協定』で、「難民が最初に入国したEU加盟国が難民申請手続きを行う」という取り決めを定めたが、協定に反する行動が相次ぎ、問題を起こした。「メルケル首相が寛容に難民を受け入れる姿勢を示した為に、ドイツを目指してEU入りする難民が殺到した」という批判は間違っていない。将来的に、この難民問題をドイツは克服できると考えている。高齢化社会を迎え、人手が必要だ。(難民として)若い人が大勢やって来ることはチャンスでもある。勿論、不安を抱く人はいる。だが、反イスラム団体が行うデモに参加する人は多くない。ドイツには、市民が難民を手助けし、彼らを温かく迎える土壌がある。1950~1970年代、トルコから迎えた労働者はドイツに留まり、その第2・第3世代が今、社会の第一線で活躍している。難民が社会に溶け込むには10年・15年と時間がかかる。それでも、実現は可能だ。 (聞き手/ベルリン支局 井口馨)


≡読売新聞 2016年1月4日付掲載≡


スポンサーサイト

テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR