【2016年の世界経済を読み解く】(06) “モディノミクス”の成否を決める経済改革の行方――鳴り物入りでスタートしたモディ政権は経済政策で正念場に

20160111 01
インドにモディ政権が誕生したのは2014年5月のこと。総選挙で、ナレンドラ・モディ率いる『インド人民党(BJP)』が、インド政治を長らく牛耳ってきた国民会議派に圧勝した時は、「停滞気味だった経済もこれで上向く」と大きな期待が集まった。あれから1年半が経ったが、インド経済に飛躍的な成長の兆しは無い。楽観論者たちががっかりするのは無理もない。インドには道路・上下水道・電力網等、行うべきインフラ整備事業が山ほどある。「新政権の誕生で、遂にこうした事業への投資が進む」と誰もが思ったものだ。モディ首相が“メイク・イン・インディア(インドでものづくりを)”というスローガンを掲げたことも、「インドの製造業に投資が集まる」との期待を生んだ。だが、投資は増えていない。民間の設備投資は、2011年度にGDP比33.6%のピークに達して以来、下降線を辿り、2014年度は28.7%にまで落ち込んだ。しかも、これは全国的な現象で、主要州全てで設備投資の減少が報告されている。製造業の生産能力拡大も、ピークだった2011年以降は35%も縮小した。“メイク・イン・インディア”も進んでいない訳だ。問題は、モディの経済政策“モディノミクス”に不可欠な構造改革が進んでいないことだ。とりわけ議会が紛糾して、インフラ整備に不可欠な土地収用法の改正がストップしている。この為、政府は一部の改革を州政府に任せる方針を選択してきた。しかし、どんなに中央政府が改革に意欲的でも、州レベルに移されてしまえば、その意欲も希薄になってしまう。インドで投資が伸びない2つ目の理由は、銀行や大手企業に残る資金繰りへの懸念だ。モディ政権は、国営石炭大手の民営化を進める等といった改革努力を進めてきたが、鉱業やインフラ事業に投資してきた企業や銀行は、投資先が不良債権化することに怯えている。

金融大手の『クレディスイス』に依ると、インドの銀行は貸し出しの17%が不良債権や条件緩和債権で、そのかなりの割合が回収不能になる恐れがある。この為、政府は企業の破綻処理制度を整備する必要がある。問題が慢性化する前に手を打たなければ、長期的な低迷に陥る恐れがあることは、日本やヨーロッパ諸国を見ればわかるだろう。3つ目の理由は、借入コストの増大だ。世界的な資源安も手伝って、中央銀行の『インド準備銀行』はインフレ抑制に成功してきた。だが、物価変動の影響を加えた名目金利は下がっていない。消費者物価指数(CPI)を考慮すると、公的銀行からの実質的な借入コストは、2012年1~3月期の0.75%から、2015年7~9月期には5.24%まで上昇した。準備銀行は2015年、相次いで利下げに踏み切ったが、市中銀行は不良債権問題や業績悪化への不安から、自行の貸出金利の引き下げを渋っている。資金調達コストが下がらなければ、企業は設備投資に踏み切れない。2016年は、外的条件もインドの投資拡大にマイナスに働きそうだ。アメリカ経済は回復したものの、中国経済は成長が急減速しており、日本とヨーロッパは相変わらず低迷している。インドの輸出産業にとっては、積極的な設備投資には打って出難い状況だ。兎に角、投資が戻らなければ、インドが潜在的な力を発揮するのは難しいだろう。嘗ての中国のような2桁の成長を実現するには、製造設備とインフラの大幅な拡大が欠かせない。モディ政権が今年、一番力を入れなくてはいけないのは、公共投資でも外国からの投資誘致でもない。政治的コンセンサスを構築して、大掛かりな経済改革を実現することだ。改革なくして、インドの発展を妨げる障害を取り除くことはできない。 (ハーバード大学教授 ギタ・ゴピナス)


キャプチャ  2016年1月12日号掲載


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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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