【2016年の世界経済を読み解く】(07) “起業の聖地”も新たな時代へ――グローバル化と急速なテクノロジーの進化で世界中がシリコンバレー化する時代は直ぐそこに

20160111 02
20世紀末まで、シリコンバレーは比類無き技術革新の発信地として世界に君臨し、他の追随を許さなかった。例えば、フランス政府は暖かいカンヌの近くに“地中海版シリコンバレー”を作ろうとしたが、似ていたのは気候条件と食文化くらいで、それ以上には発展しなかった。しかし、21世紀に入るとシリコンバレーのライバルが続々と現れてきた。ニューヨークにはシリコンアレー、テルアビブ(イスラエル)にはシリコンワディといった具合に、“シリコン”を冠したハイテク都市は今や世界各地にある。ロンドンでも、7~8年前から郊外にシリコンラウンドアバウトが出現した(今は“テックシティー”と改名されているが、ロンドン経済の成長エンジンとして優秀な人材を引き付けている)。ベルリンでは、20分に1件の割合で新興企業が生まれているという。パリのアル・フレシネは、ヨーロッパ最大の起業支援センターを目指している。企業価値10億ドル超えを達成した新興企業(通称“ユニコーン”)は、今やアメリカ以外でも珍しくない。こうした現象の背景には、複数の要因がある。経済のグローバル化で資金の流れが速まり、投資先の選択肢も飛躍的に増えた。地球上のどこにいてもベンチャー資本家の援助を受けられるし、キックスターターのようなクラウドファンディングのサイトで資金を調達することもできる。インターネットのおかげで優れたアイデアは急速に広がり、共有され、より磨かれていく。そうしたアイデアを現実に変える能力も、日に日に進化している。部品や資材は世界中から簡単に調達できるし、3D印刷のような新技術に依って製品化までの時間は大幅に短縮された。

また、世界金融危機後の景気後退は、在来型の産業に打撃をもたらす一方、大企業を飛び出した有能な人材が多数出現する状況を生み、彼らが集う手頃な仕事場を数多く生み出した。そうした身軽で優秀でリスクを厭わない才能は、都会に集まる。仲間とシェアできる仕事場があり、各種の支援メカニズムもあり、何といっても都会の暮らしはエキサイティングだからだ。ニューヨークでは、前市長のマイケル・ブルームバーグがシリコンアレーの誕生に一役買った。市長時代の彼は新興企業の助成に力を入れ、市役所に“最高デジタル責任者”を置き、ハイテク分野の才能を伸ばす為に新たな大学を誘致した。今では多くの都市が、クリエイティブな人材を集める為に同様な政策を採り入れている。『世界経済フォーラム』の最新の報告書でも、現在の都市空間は技術革新の単なる推進力ではなく、自動運転や都市型農業といった新技術の実験場になりつつあることが指摘されている。『Uber』のような配車アプリや『Airbnb』のような民泊プラットフォームも、都市が如何に技術開発に適した環境となり得るかを示している。こうした“革新の拡散”は、未だ始まったばかりだ。インターネットが私たちの生活のあらゆる側面に浸透し続けているように、私たちはテクノロジーが広く普及して“当たり前になる”時代に突入しつつある。そう遠くない将来、デジタル世界と現実世界は見分けがつかなくなるだろう。“どこもかしこもシリコンバレー”の時代が、世界各地の都市で到来しつつあるのだ。 (マサチューセッツ工科大学センサブルシティー・ラボ所長 カルロ・ラッティ)


キャプチャ  2016年1月12日号掲載


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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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