【インタビュー・明日を語る2016】(09) 憲法改正には各党の合意を、手厚い財源で復興の加速を――熊本県立大学理事長 五百旗頭真氏

20160117 01
安倍内閣は近年、珍しく安定した政権運営を続けている。衆参両院の捻れを解消し、首相官邸が一元的に指導力を発揮できる体制になった。首相を支える中枢として現実主義者の菅官房長官が各方面と調整に当たり、公明党が嘗ての中道野党的な役割を政権内で果たしている。安倍首相が第1次内閣の経験から学習していることも大きい。第1次内閣では、防衛庁の省昇格や教育基本法の改正等、保守色の濃い政策に取り組んだが、閣僚の失言・失態が相次いだ。第2次内閣は先ず、アベノミクスを掲げることで、誰もが願う経済の再生に焦点を合わせた。悲願だった安全保障関連法の整備は、デフレからの経済再生の道筋をつけてから取り組んだものだ。関連法の国会審議では、デモが国会を取り囲む事態となった。それは戦争に次ぐ戦争の後、1945年の敗戦を迎えるという強烈な国民の原体験故のものだった。戦争を想起させる法整備が過剰反応を招いたが、実際には日本が世界で戦乱を起こそうとしている訳ではない。軍拡を続ける中国が尖閣諸島を奪う意志を持つことへの控えめな対応に過ぎない。一方、民主党は政権を経験したにも拘らず、統治感覚を身に付けなかったようだ。何れ再び政権を担う覚悟があるならば、少なくとも外交安全保障は現実的な平和論を語るべきだ。夏の参院選では野党が安保関連法の是非を改めて問うだろうが、大きな争点にはならないだろう。安保関連法は施行されても、自衛隊の運用面で目に見えるような動きは考え難い。とりわけ、韓国との慰安婦問題という棘への対処を昨年末に行ったことは大きい。首相官邸は、女性が輝く社会・地方創生等といった前向きと思われることを先取りしている。ただ、どれも実体が伴うかはこれからだ。野党は目先に捉われず、観念論に陥らず、対立軸をしっかり作り、政策能力を高める長期構想で政権と対峙すべきだ。憲法改正は、考え方を変えてはどうか。自民党が両院で圧勝して3分の2以上の議席を確保し、全面改正するのは感心しない。誰が見ても不都合な条文や国民生活上必要な内容を、各党の合意で改める。先ずは、例えば私学助成を禁止した89条の見直し等から入り、1つひとつ協議と合意を積み上げていくべきだ。

今年は、東日本大震災5年を迎える節目の年だ。経済財政が厳しい時代だけに、被災地に冷たい対応になっても不思議ではなかったが、歴史上、最も手厚い復興になっている。これは、国民が復興税を受け入れたことが大きい。私は大震災直後、『東日本大震災復興構想会議』の議長を務めた。議長の基本方針として財源に復興税を含めたことに、異識も噴出した。しかし、被災地の復興メニューの議論が深まっていく中、財源の裏付けという認識を共有できた。2015年春から3回に亘って復興現場を視察したが、壊滅的被害を受けた街ほど、今や槌音高く再建工事が行われている。その工事レベルは想像を超えており、岩手県陸前高田市では川向こうの山を崩して、ベルトコンベヤーが街の中心まで土を運び、元々あった丘に接続する形で約10mの高台を作っている。甚大な被害を受けた三陸で、少なくとも100年に1回の津波に安全な街作りが進んでいるのは画期的だ。安倍内閣は、民主党政権時代の復興政策を継承しつつ、財源を大きくして復興を加速させている。被災地で心配なのは、少子高齢化・人口減少の問題だ。折角増税までしたのに、人が減りゴーストタウン化するのは悲しい。コミュニティーとして魅力があり、若者が集まる賑わいの街をどう作っていくのかが問われている。大震災の経験から、東京への過度な一極集中が如何に危険かがわかった。人口と首都機能を地方に分散させないといけない。中央省庁の一部移転も、覚悟を持って進めるべきだ。権限を手放したくない省庁は抵抗するだろうが、このままでは地方も首都も瀕死となりかねない。地方創生を掲げる安倍内閣には、強いリーダーシップを期待したい。また、大災害時の危機管理と全国的な事前対処の為、省庁や自治体の枠を超えて統合的に指揮できる“防災庁”のような機関を創るべきだ。東京電力福島第1原発事故の発生当初、出動した自衛隊・消防・警察の指揮系統が定まっていなかった。また、起こってからの後追いではなく、事前に全体的な対処システムを構築するのは非常に大事だ。 (聞き手/政治部 杉田義文)


≡読売新聞 2016年1月10日付掲載≡


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テーマ : 安倍政権
ジャンル : 政治・経済

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