【裏切り・化血研処分】(中) 国が依存、対応に矛盾

20160118 03
先月中旬、一般財団法人『化学及血清療法研究所』に厚生労働省から連絡が入った。「3月までに500万人分のワクチンを製造してほしい」。エジプトを中心に人への感染が急増している鳥インフルエンザの国内上陸に備え、国が備蓄するワクチンの製造依頼だった。発注額は20億円を超える。厚労省はその数日前、化血研に組織の見直しを求める異例の行政指導をしたばかり。化血研の元理事は、「厚労省は化血研に頼る一方で、『業務停止をしろ』と言う。対応は矛盾している」と疑問を投げかけた。同省側にも、止むに止まれぬ事情があった。他メーカーのワクチンは有効期限が1年なのに対し、化血研のワクチンは3年と長い。しかも、僅か3ヵ月で同じ品質の製品を納品できるメーカーは、国内には化血研以外に無かった。今月8日に出した業務停止命令で、厚労省が季節性インフルエンザワクチンを処分対象から外したのも、事情は同じだった。同ワクチンは年間3000万人が接種し、大きな利潤を生む。同省の担当者は「本来は製造停止にしたかった」と言うが、化血研の同ワクチンのシェア(市場占有率)は約3割。他の3メーカーに増産を打診したが、「生産が間に合わない」との回答を受けていた。同省幹部は、「処分の実効性が乏しいことはわかっているが、国民の健康に直結するワクチンや血液製剤を切らす訳にはいかなかった」とジレンマを口にした。

結局、同省は化血研の35製品のうち、8割近い27製品は業務停止の対象から外さざるを得なかった。血液製剤やワクチンの製造は公益性が極めて高い。しかも、需要が限られている為、新規参入し難い分野だ。不足すれば患者や国民の命に関わる一方で、外国製では有事に安定供給される保証が無い。ただ、国のジレンマは、ワクチンや血液製剤の安定供給を特定のメーカーに委ねてきたツケとも言える。「国の体質は昔から変わっていない」。患者団体『ポリオの会』代表の小山万里子さん(66)は指摘する。ポリオワクチンは2000年代以降、安全性の高い不活化ワクチン導入が世界的に広がったが、国内では稀に手足の麻痺等の副作用を起こす“生ワクチン”の使用が続いた。当時、ポリオワクチンの製造は1企業だけ。この企業に依る不活化ワクチンの開発が遅れたのが原因だったが、国は積極的な対策を講じなかった。結局、国内で不活化ワクチンが導入されたのは2012年になってからだった。小山さんは、「国は『化血研に薬を作る資格が無い』と言うが、国民は化血研の製品を使用せざるを得ない。こんな異常事態を招いたのは、メーカーに依存し過ぎた国の責任だ」と批判した。


≡読売新聞 2016年1月10日付掲載≡

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