【裏切り・化血研処分】(下) 記録偽装、アメリカでは“犯罪”

20160118 04
「1980年代後半より前だったら、アメリカでも今回のような改竄は先ず見抜けなかっただろう」――一般財団法人『化学及血清療法研究所』が約20年間に亘り製造記録を偽装していたことについて、アメリカの査察事情に詳しい医薬品コンサルタントのジョン・リーさんは、こう指摘する。リーさんに依ると、アメリカでは1980年代後半、後発医薬品合社のスキャンダルが社会問題化した。『アメリカ食品医薬品局(FDA)』の承認を得る為に製造記録を偽装したが、査察を行うFDAは見抜けず、ライバル企業の告発で明るみに出た。以後、FDAは記録の改竄を“犯罪”と位置付け、膨大な記録から矛盾点を突き、改竄を見抜く査察技術を磨いてきたという。1997年にイタリアの製薬企業に依る製造記録の改竄が発覚した例では、罰金・追徴金計約3320万ドル(約39億円)が科せられた。FDA査察官の経験もあるというリーさんは、「データの改竄は現在、FDAが最も注視する査察項目の1つ。ヨーロッパもここ数年、追随しつつある」と分析する。アメリカ東部のメリーランド州に本部を置くFDA。広報担当のサラ・ペディコードさんは説明した。「(ワクチンや血液製剤を含む)生物製剤ですね。査察の対象は約5800施設。2014会計年度に実施した査察は国内約2000ヵ所、国外の施設は65ヵ所」。同会計年度に行った国外査察の1つが、カナダのインフルエンザワクチン工場だ。イギリスの製薬大手『グラクソ・スミスクライン』の北米向け製造拠点で、精製水を作る過程の細菌混入防止策が不適切等として、2014年6月にFDAの警告を受けた。

製薬企業の国際化が進む中、日本企業も例外ではない。『第一三共』は、買収したインドの会社がFDAの査察を受け、「衛生管理に問題がある」等としてアメリカへの輸出を禁止された。2014年に会社を手放し、インドからの撤退を余儀なくされた。「国際的な基準から逸脱すれば、経営に打撃を与えかねない」「現場に基準の順守を如何に徹底させるか、常に神経を尖らせている。(化血研の問題は)信じられない」。製薬大手の関係者は口を揃える。日本で製造記録を偽装しても、巨額の制裁金を科せられることはない。国の保護政策の下、日本の血液製剤とワクチンメーカーは、国際化に取り残された“特殊な業界”として存続してきた。規模が小さく、どこか1つに問題が起きれば、供給不足に陥る構造的間題を抱える。「国家レベルの危機管理が日本は遅れている」。先月24日、小児科医や患者団体が厚生労働省で記者会見を開き、口々に訴えた。厚労省は化血研製のワクチンの出荷を一旦差し止めたが、医療現場が混乱。今月8日、化血研に110日間の業務停止命令をしたものの、ワクチンは全て対象から除外せざるを得なかった。薬事行政の根幹を揺るがした化血研問題。厚労省は先月25日、血液製剤・ワクチン産業の在り方を見直す作業部会を急遽設置した。メンバーの1人である東京大学の渋谷健司教授(国際保健政策学)は、「ワクチン等の産業は国が関与する必要があるが、現在の“護送船団”では問題が繰り返されるだけだ」と指摘する。作業部会は14日に初会合を開き、今春を目途に結論を出す。国民の健康・安全を守る業界として再生できるか。失われた信頼を取り戻すのは容易ではない。


≡読売新聞 2016年1月11日付掲載≡


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